★ PCゲームレビュー★

名に恥じない傑作クエスト群が魅力
人気シングルRPGシリーズの最新作

「マイト&マジック9」

  • ジャンル:シングルプレイRPG
  • 発売元:イマジニア
  • 価格:7,800円
  • 対応OS:Windows 95/98/Me/XP/2000
  • 発売日:4月26日(発売中))


 「マイト&マジック」は数々のプラットフォームに移植されてきた息の長いRPGの人気シリーズである。ネットRPG全盛となっている昨今だが、シングルプレイならではの、じっくりと練られたストーリーと世界観を堪能しながらゲームを進めていくのも、また楽しい。「マイト&マジック」シリーズ最新作である「マイト&マジック9」は、膨大でバラエティに富んだクエストが、冒険者気分を盛り上げてくれるシングルプレイRPGだ。今回紹介するのは日本語マニュアル付英語版だが、夏には完全日本語化も予定されている。


■ クエスト主体のシングルRPG

 「マイト&マジック9」(以下MM9)は、4人のキャラクタで編成されたパーティを操作し、広大な世界を冒険しながら数々の問題を解決し、大陸の危機に立ち向かっていくシングルプレイRPGである。連綿と続くシリーズではあるが、ストーリー的には各作品ごとに独立しており、初めてマイト&マジックシリーズにチャレンジする人でも違和感なく世界に入っていけるストーリーだ。

 プレーヤーはチェディアンと呼ばれる地域で難破した冒険者だ。このチェディアンには地域ごとに6つの大氏族(クラン)があり、それぞれのクランでは“ヤール”と呼ばれる独自の指導者をたてて生活をしている。だが、西部地方のベルドニアが、突如、巨大な軍勢チェディアンへ進軍を始めた。それを知ったプレーヤーは、チェディアンの6つのクランを統一勢力とするため、各地のヤールへと進言をしにいくことになる。

 ゲームは、この6つのクランのヤールたちを説得する事で進んでいく。彼らを納得させるために、盗賊退治やダンジョン探索などの様々な依頼やイベントをこなしていき、戦闘やクエストクリアなどによってキャラクタを成長させていく。ゲーム中には数多くのクエストが待ち受けているのだが、それらを次々と解決していくことでメインの物語も進み、さらに多くの謎が明らかになっていく。つまりMM9は、クエスト解決でストーリーが進み、戦闘やクエストクリアでキャラクタが成長していくという、今時珍しくストレートなRPGなのである。

街の人々に話を聞いて、クエストを受けたり重要なヒントを得たりする 檻を破ったモンスターが街で暴れまわっていたり。冒険は意外性に満ちている 各地の勢力をまとめるのが当面の目標。一つの目的が果たされると新たなストーリーが展開する


■ キャラクタを育てる喜び

イマジニア公式サイトに掲載されているMM9で就けるクラス一覧。2段階にわたってクラスチェンジするので、キャラ作成前に最終的なプランをしっかり定めておきたい
 ゲームの柱の一つとなっているのはキャラクタの成長だ。プレーヤーが操作する4人のキャラクタは、戦士系か魔法使い系かを決めて作成される。戦闘やクエストクリアによって経験値を得てレベルアップし、レベルが上がる時に得られるスキルポイントによって、スキルの熟練度をあげることができる。スキルは各種武器の攻撃力が上げられる武器スキルのほか、様々な呪文を唱えられるようになる4系統の魔法スキル、宝箱の罠をはずすスキル、アイテムを鑑定するスキルなど23種類が用意されている。

 キャラクタは最初は戦士か魔法使いのどちらかなのだが、ゲームが進み、プロモーションクエストと呼ばれる特別なクエストをクリアすると、合計2段階の進化を遂げ、上級職へとクラスチェンジする。上級職になるとヒットポイントやスペルポイントが増えやすくなるほか、各種スキル能力も高められる。MM9は職業によって育成できるスキルが異なっていて、戦士では魔法は第一段階までしか使えないが、魔法使いの上級職ならばもっと強力な魔法が扱える熟練度までスキルを高められるようになっている。

 キャラクタのレベルを上げて成長させ、職業を変えたり、スキル熟練度を上げたりすると、グンとキャラクタが強くなったのが実感できる。このキャラがどーんと強くなるのがMM9のポイントで、キャラクタを強くして戦闘で楽をし、より強い装備をさせたいがために、どんどんクエストを解いて、経験値を稼ぎたくなるのだ。

キャラクタが成長してスキルが育てば、より強力な武器や防具も装備できる 経験値が貯まったら、訓練所でお金を払ってレベルアップする。序盤は金欠で苦労する スキルは本を買ってキャラクタに習得させる。職業によって習得できるできないがある


■ 戦闘はターン制+リアルタイム制

 戦闘はマイト&マジック特有のリアルタイムとターン制を融合したものだ。フィールドを歩いていると、向こうからもモンスターがやってきて、そのまま戦闘にリアルタイムで突入する。まるでFPSのように、そのまま攻撃ボタンを連打して戦闘を続ける事もできるが、ここでEnterキーを押すと、時がとまり、素早いものから攻撃しあうターン制の戦闘へと切り替わる。

 MM9ではリアルタイム制でも、ターン制でもどちらでも戦えるのだが、ゲームになれないうちは、モンスターが見えたらすかさずEnterキーを押してターン制に変え、ということになるだろう。攻撃は直接攻撃と遠距離攻撃、そして魔法による攻撃や攻撃補助の3種類を、キャラクタの特性に合わせて戦闘を行なっていく。

 これまでマイト&マジックというと、骸骨ドラゴン何十匹など大量にモンスターが現れる印象が強かったが、今作ではほどほどの個体数となった。ただし、数が減ったからといってパワーダウンしているわけではなく、それぞれのモンスターが考えて行動するようになり、なかなか苦戦させられる。なので、骸骨戦士が5、6匹で襲い掛かってくると、前作までの10匹程度にはドキリとさせられる。モンスター個々に迫力があるわけだ。

 また、ゲームが進むと各地にいるNPCを雇え、最大7人のパーティで進む事になる。このNPCメンバーたちは戦闘に参加するほか、それぞれに特殊能力を持っていて、銀行家なら得られるゴールドの増量、盗賊なら罠開けの能力がアップといったように能力面でもパーティに貢献する。

 ただし、NPCメンバーたちを雇うのにはお金がかかり、月に何ゴールドとか、手に入れたゴールドの何%とかを持っていかれる。また、NPCメンバーはアイテムを装備したり、能力が成長したりすることはない。あくまでもメインなのは最初からの4人のメンバーであり、NPCメンバー3人はパーティを援護するオプション機のような扱いになっている。

敵との戦闘はリアルタイム制でもターン制でも、どちらでも戦える。敵も頭がよく、複数だとパーティーの後ろに回りこんできたり、間合いを取ったりする


■ バラエティに富んだクエスト

 キャラクタの育成と共にもう一つの柱を成しているのは、各地で受けるクエスト(人々からの依頼や事件などのイベント)だ。メインストーリーを進めるためのクエストがあれば、街の人々のささいな頼み事があったり、その種類も様々なのだが、共通して言える事は、解決すると経験値とお金がたっぷり入る事。クエスト以外でそんなにたっぷりと経験値が入る機会はないため、クエストを解決するために東西奔走するとキャラクタが成長し、お金も増えてゲームのストーリーも進んでいるといった具合だ。

 クエストはバラエティに富んでいて、新しい教会を建てるために新人のプリーストを探したり、人々を苦しめる盗賊を退治したり、ラブレターを届けたり、クイズに挑戦したりと実に様々。複数のクエストに並行してあたれるので、新しい街や地域を探索する時、「ここには今受けてるクエストの手がかりがあるだろうか」、「次にはどんな事件が待っているのだろう」と冒険者気分を強く味わえる。

各地域の指導者達の頼みごとを聞いて、統一勢力に強力を要請するのがゲーム序盤の主な仕事 出色の出来であるキャラ、アヒル教団の僧侶。腕をパタパタしてグワグワと鳴き真似をする サーカスでミニゲームをしたり、クイズにチャレンジしたりすることもある

こちらの言う事を聞いてくれない依頼者との会話。ユーモラスなやりとりが冒険を楽しくする 現在受けているクエストは一覧表に自動記載される。どこにいけばいいかもこれで確認 各地やダンジョンのマップはすぐにその場で見られる。脇道をマップで見つけることもあった

 また、クエストに関連してダンジョンに入る事もあるのだが、ただモンスターがうろうろしているだけの場所ではなく、冒険者を驚かす色々な仕掛けも施されている。例えば、トラップの床を踏むと針山が飛び出してきたり、通り過ぎた通路の後ろからモンスターが現れたり、天井が崩れてモンスターが落ちてきたりと、一時も気が抜けない。ダンジョンではかなり緊張感のある探索を楽しめる。

壁の色が違っているところを叩いてみたら、崩れて穴が開いた。このような、ちょっと気づきにくい謎も多い インプが湧き出てくる悪魔の暖炉。ひたすらインプたちを叩いて応戦 トラップ床を踏んでしまって、とげとげがグサリ。トラップ床はジャンプしてよけなくてはならない

クモの巣がかかって視界が悪いダンジョン。進んでいくと、通路の先が徐々に明らかになる 突如、後ろからモンスターが襲ってくることも。真っ暗な中で幽霊に襲われてギョッとする ダンジョンや建物自体が奇妙な形をしていて、何が待っているかワクワクさせられる事が多い


■ 軟弱を許さないゲーム序盤

島にいる老女の頼みごとを聞くのが一番最初のクエストになる。彼女の話を良く聞こう
 さて、クエストとキャラクタの育成がこのゲームの大きな魅力ということは力説してきたが、実は、このゲーム、開始直後は非常に辛い旅をさせられる。チュートリアルはあるものの、今時のゲームのように親切なものではなく、まさしく難破して放り出されたゲーム内のキャラクタ達と同じように、プレーヤーは何もわからない状態でゲームをスタートする。しかも手持ちの装備は貧弱だし、まだまだ能力も弱い。迷い込むとすぐに殺されてしまうような凶悪なダンジョンはあるしで、適当に移動しているとすぐにゲームに詰まってしまう。

 ただし、2番目の島(最初の島はチュートリアル)で、人々の話を良く聞いてクエストをクリアするということを学ぶと、自然と島から脱出でき、最初の街にたどり着ける。このゲーム開始後1時間のとっつきにくさを乗り越えて最初の島を脱出できれば、晴れてゲーム本編とMM9の面白さの中に突入できるわけだ。もし、このゲームを購入してプレイする予定があるのならば、最初の島での冒険で挫折せず、これを本編への準備段階と思ってほしい。


■ グラフィックとインターフェイスはもう一息。それでもやっぱり面白い

 マイトマシリーズはこれまでオリジナルのグラフィックエンジンで3D世界を築いてきたが、MM9ではLithTechエンジンをRPG用にアレンジしたものを使っている。今回、不満に思うのがこのグラフィックで、これまで以上にダイナミックで広大なフィールドや、人間の背の高さを考慮してきちんと作成されたリアルな街並など、良い点も多いのだが、一方で、解像度800×600固定、NPCキャラクタの顔がテクスチャ貼り付けで表情に乏しい、木がペラ紙をつぎはぎしたみたいでちゃちいといった欠点も多い。そのため、3D世界としてのダイナミックさ、リアルさは進歩したのに、全体的に一昔前のゲームのような印象を受けて非常に損をしている。

 また、インターフェイスももうひとつな印象。右手マウスでフリールックと攻撃、左手十字キー(もしくはA、S、D、W)で移動なのはFPS風でとてもプレイしやすいのだが、ドアの開閉などのアクションと敵を攻撃するアクションがFPS風に別系統になっており、ダンジョンなどでは攻撃とドアの開閉といった一連の操作を同じボタンでできない。以前の作品とは違う操作体系にゲーム開始当初はやや手間取った。

 また、装備画面やショップ画面でアイテムを複数同時に扱えないことなどもストレスがたまった。ただし、今作ではキーコンフィグが可能なので、慣れと工夫次第では、かなりプレイしやすくなる。もし十字キーで移動の操作をするならば、ドアを開けたり、アイテムを得たりといったアクションキーを右Ctrlキーに割り振って左手小指で押すようにしたら、移動や攻撃、ドアの開閉や宝箱の開閉もスムーズに行なえる。

前作よりダイナミックさとリアルさは格段に進歩した今回のグラフィック。天候で大きく変化する景色も良い。文字の見にくさがマイナス点か

ゲーム内では時間が流れ、夜になると閉まってしまうお店もある
MM6でプレーヤーを悩ませたニコライ王子が成人して登場。近くには父親からの手紙も落ちている
 最新ゲームと比較してグラフィックやインターフェイスに文句があるものの、それでもなお、MM9はお勧めしたい。なぜなら、MM9のクエストとキャラ育成の面白さはグラフィックがどうのといったことを軽く凌駕しているからだ。モンスターやクエスト、ダンジョンといったファンタジーRPGならではの基本部分がよく練られており、ゲームバランスも申し分ない。軟弱者を拒絶するかのようなゲーム開始直後のないないづくしの冒険によって、初めてのクエストクリアの喜びはいっそう増すし、メインストーリーとなる6つのクランを結びつけるクエストがスタートしたあたりから、ゲームは俄然面白くなってくる。

 また、これまでのシリーズ作品には世界3大チーズを集めるクエストやカードゲームのチャンピオンを目指すクエストなどがあったが、今回は、信者達がグワグワと鳴く怪しげな「アヒル教団」が登場するなど、一種独特のユーモアが光っている。MM6でプレーヤーに鮮烈な印象を与えたニコライ王子が登場して、サーカスへの職を探していたり、シリーズのファンを喜ばすような、ちょっとしたお遊びも好ましい。

 MM9はマイト&マジックシリーズのポイントである、物語性豊かなクエストが満載だ。次から次へと新たな事件やイベントが起こるため、プレイしていて飽きない。また、冒険の進み具合とモンスターの強さなども良く考えられていてゲームが進めやすく、クエストを解決してキャラクタの成長を楽しみながら、じっくりといつまでもプレイできた。文字が見づらいなどグラフィック的に難はあるが、内容やゲームバランス的には手堅くまとめられており、シリーズ通してのファンも安心してプレイできるクオリティである。じっくり遊べるシングルRPGが好きならば、MM9はまさしくそんなタイトルだ。

 ちなみに、今回紹介したのは日本語マニュアルつきの英語版だが、日本の発売元イマジニアががんばっており、日本語マニュアルつき英語版の購入者は、夏発売の完全日本語版へ2,000円でアップグレードするサービスを行なう予定だ。しかも、2002年4月26日から2002年5月31日のキャンペーン期間中に日本語マニュアルつき英語版でユーザー登録すると、アップグレードが無料になるという。

 また、アップグレード版ではない完全日本語版にはゲームに役立つ特製グッズが同梱されるとのことなので、アップグレード版(つまり今、マニュアル付き英語版を買う)では金銭的なメリットが、完全日本語版の単体パッケージでは攻略やプレミアグッズといった要素でのメリットがあるわけだ。MM9を購入を考えている人は、どちらを買うかよく検討してほしい。

教会ではステータス以上を回復してもらえる。ただし、状態に応じたお金が必要 徒歩でテクテク移動するほか、他の街へ船で移動する事もできる 街の酒場ではいろいろな情報を仕入れられるほか、部屋をとれば体力が全回復する

(c) 2002 The 3DO Company. All Rights Reserved. 3DO, Might and Magic, New World Computing, and their respective logos, are trademarks or registered trademarks of The 3DO Company in the U.S. and other countries. All other trademarks belong to their respective owners. New World Computing is a division of The 3DO Company.


【マイト&マジック9】
  • ジャンル:ジャンル:シングルプレイRPG
  • 開発元:3DO
  • 発売元:イマジニア
  • 価格::7,800円
  • 対応OS:95/98/Me/XP/2000
  • CPU:Pentium III 400MHz以上
  • メモリ:64MB以上(128MB以上を推奨)
  • HDD:1GB以上
  • ビデオメモリ:16MB以上
  • ※完全日本語版への有償アップグレードサービス付 (2,000円)。ただし、2002年4月26日~2002年5月31日のキャンペーン期間中に日本語マニュアルつき英語版でユーザー登録すると、アップグレード代が無料になる


□「マイト&マジック9」公式ホームページ
http://www.imagineer.co.jp/pc/products/mm9/
□関連情報 【4月9日】イマジニア、「マイト&マジック9 英語版」から完全日本語版への無償アップグレードキャンペーンを実施
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020409/mm.htm
【4月4日】イマジニア、「マイト&マジック9 英語版」から完全日本語版への無償アップグレードキャンペーンを実施
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020404/mm9.htm

(2002年4月30日)

[Reported by 西尾ゆき]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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