★ PCゲームレビュー★
FPSゲーム界では、第二次世界大戦をモチーフにしたリアル系タイトルに対する人気が非常に高い。特に今回紹介する「Medal of Honor: Allied Assault」(以降MoHaa)に対するユーザーの期待感は桁違いの大きさだ。ゲームタイトルにもなっている「Medal of Honor=名誉勲章」とは、南北戦争以降アメリカが関わった戦争で危険を顧みず兵役義務以上の任務を遂行し、勇敢に戦った兵士に与えられる勲章のこと。アメリカ国民すべての代表として大統領から直接授与される最高峰の勲章であり、複製はもちろん対象者以外が着用していても罰せられてしまうほど厳格なものだ。アメリカ人にとっては特別な思い入れのある勲章である。アメリカで1月22日に発売された英語版の売り上げがあっという間に40万本を越えたことから考えても、その人気やMedal of Honorに対する特別な思いを見ることができる。 ■ スティーブン・スピルバーグも名を連ねる筋金入りのリアル系FPS
掲載したスクリーンショット、特にノルマンディー上陸作戦のものを見ていただくとわかるが、映画「プライベートライアン」の雰囲気そのままの世界が再現されているように感じると思う。それもそのはずで、MoHシリーズの1、2作目は「プライベートライアン」を撮ったDREAMWORKSスタジオが制作に携わっており、Mohaaの製作に関しても相当なアドバイスを送ったことは想像に難くない。エンディングロールを見ていると、「プライベートライアン」の監督であったスティーブン・スピルバーグの名前がクレジットされていたりするから驚きだ。 ■ Quake IIIエンジンによる画像とは思えない美麗な映像
ちなみにスクリーンショットを取るために映像の設定を最高にしたところ、筆者の環境(Pentium III 933Mhz+Geforce3)でもFPSは20程度に落ち込んでしまった。クオリティよりフレームレートを重視するFPSゲーマーの常として、Pentium4への乗換えを真剣に考えてしまった。 一方のサウンドも実にクオリティの高い内容に仕上がっている。MoHaaのサウンドチームは、ユーザーに音によってゲームの世界をより実感できるようにサウンドを仕上げてきた。この手のゲームでは重要な、登場する武器や各種効果音はハリウッドのサウンドチームの手によって実際の武器の音を録音している。
この点、どこかのサンプリングCDから持ってきた、画一的な銃声に比べると格段の違いだ。特にM1 Garandライフルは抜群の出来映えで、装填された弾を打ち切ったときの挿弾子(クリップ)放出音がすばらしい。今までにも第2次世界大戦をモチーフにしたFPSはあったが、MoHaa以上の音を再現したモノは今まで無かったといっても過言ではない。
■ 敵味方問わず優秀なAIの行動に驚かされるシングルミッション MoHaaのシングルミッションは全部で6つ。欧州戦線にアメリカ軍が展開し始めるきっかけとなった1942年11月8日のトーチ作戦前夜を皮切りに、6ミッション20数ステージの作戦をこなしていくこととなる。以下、簡単に各ミッションの概要を説明しよう。
シングルミッションをプレイしていて何が一番驚くかといったら、敵味方関係なくAIが非常に賢いという点に尽きる。こちらを発見すると、味方を呼ぶ、伏せもしくは膝立ちになってこちらを銃で狙う、建物の影などに隠れて撃ってくる、プレーヤーが近づくと横っ飛びして避ける、複数で行動していた場合散開して複数の方角から突入するなどの行動をとる。さらに、手榴弾を固まってるところに投げ込むと、投げ返す、退避する、手榴弾の上に覆いかぶさって自分を犠牲に仲間を救うなど驚くべき行動パターンを見せてくれるのだ。 おまけに行動のどれもが、戦闘という行為において合理的だったりするから感心してしまう。それもそのはず「プライベートライアン」、「プラトゥーン」、「7月4日に生まれて」といった戦争映画に携わったDale Dye元大尉がMoHaaのアドバイザーとして参加しており、開発者は説得力のあるMoHaaを作るため、Dye大尉についてペイントボール(サバイバルゲームの一種だが、使う弾が色付きの水が入ったものになっている)による模擬戦闘訓練を受け、その経験をMoHaaに反映しているからだ。 そんな賢いAIが牙をむいて襲い掛かってくるから、シングルは非常にやりがいのあるものになっている。特にAIの視線や音に対する反応は非常に高いものとなっており、Hardにレベルを設定した場合、潜入ミッションにおいて敵を攻撃する際、一瞬でも悲鳴を上げさせたら敵がワラワラ集まってきて速攻で死亡、Mission5では敵スナイパーがどこから撃っているのかさっぱりわからない(実際かなりいやらしい位置に配置されている)と、かなり不条理な……というか実際の戦場らしい戦闘が楽しめる。
ただ、残念なことに毎回毎回敵の配置が変わったりはしないので、若干覚えゲーになっている感はある。加えてストーリー分岐がまったく無く、ほぼ一本道のゲーム進行というのも寂しいものがあるのは確か。Allied Assaultという副題がついているのだから、全20数ステージ中3人以上で行動するステージが、Misson1、3、5、6の冒頭ちょこっとだけというのは少々さびしくもある。MoHシリーズにおける主人公の所属はOSS(アメリカ戦略情報局)の工作員なので、潜入ミッションがメインのゲームになってしまうのは仕方の無いところではあるし、もともとがコンシューマー機用のゲームなので、そこまで複数の味方をいじれないということもあるのだが、なんともさびしいところだ。 ■ 映画「プライベートライアン」の冒頭を完全に再現したMission3冒頭
揚陸艇~ビーチを突破するまでは、マジでプライベートライアンそっくり。あの映画をみて「うぉぉぉぉおぉぉぉおおおおお燃えるぜ!」と思ってしまった方は、ここのシーンをやるためだけにMoHaaを買ってしまってもまったく問題なし。
ただ、ひとつ気をつけたいのは、MoHaaはもともと13歳以上の層をメインとしたレーティングを受けているので、映画のように腕がちぎれる、胴体が真っ二つに吹っ飛ぶ、話していた通信兵の顔を見ると弾がめり込んでる、ということは無いという点。そういうのを期待している人は、現在開発中の「Soldier of FortuneII」を期待して待つように。
■ オブジェクトマッチに激燃え! のマルチプレイ
また、「CounterStrike」や「Tribes2」でもおなじみのラジオシステム(あらかじめ設定された声をしゃべることのできるシステム)も搭載され、マルチプレイなどで一斉突入のタイミングを図る際に有効な手段となっている。
さて、今回特に注目すべきなのはオブジェクトマッチ。各マップに設定された目標物をめぐって攻撃側と守備側に分かれてやりあうゲームタイプ。欧州戦線の歴史背景に準じた以下の4マップが用意されている。
・V2ロケット工場
・オマハビーチ
・橋の架かる町
■ 絶対日本語版を買っておかないと損!
今回専門チームを組んで日本語化に当たったこともあり、その訳は非常に質の高いものとなっている。少なくとも英語を直訳したようなチンプンカンプンな日本語が羅列されるような状態にはなっていない。また、収録されている日本語音声も、「アリスインナイトメア」の時のようにドンピシャとまではいかなかったが、主要キャラクタに関しては及第点といえる仕上がりとなった。プライベートライアンの日本語吹き替え版に違和感を感じない方は、完全に日本語音声でインストールしても問題ないだろう。 また、おざなりになりがちなダイアログ関連の日本語化にも手抜きはない。邦訳の質もさることながら、日本語フォントがうっとおしくないのには驚きだ。「Diablo2」の完全日本語版を例にとるとわかりやすいのだが、見やすい日本語にこだわるあまり、640×480ドット表示画面の半分が日本語フォントで埋まってしまい、とてもじゃないがゲームにならないという大失敗があった。しかし、今回の日本語版では、画面解像度が大きいこともあるが、必要な要素(誰に殺されたとか)を確実に伝えるのに最低限必要な日本語フォントの大きさとなっており、プレイしている間に気になることはまずない。ただ、完全日本語化にこだわるあまり、そのまま英語表記でよさそうなマップ名も日本語化されており、その点では少々締まらない表現になっている。The Huntを狐狩りと訳すより、英単語の使用が日常的となっている現状を考えて、そのまま表示したほうがよかったと思うのは贅沢だろうか。 日本語化の恩恵がもうひとつある。PCゲームではおなじみの訓練ミッションだが、これまで表示・音声ともに英語だったために、初心者には半分も使い物にならず、本来の目的である初心者へのゲーム説明ができていなかった。しかし、今回の完全日本語化によってトレーニングの内容も確実に理解することができるので、すんなりゲームに入っていくことができるだろう。
初心者に優しい完全日本語版、もともとPS用として作られていただけあって日本製コンシューマーゲームに近いストーリー展開と演出、リアル系とはいえEasyモードであれば理不尽な敵AIに悩まされることもない手頃な難易度。また、これからメインとなっていくであろうネットワークゲームに本格的に触れてみたいという方にはぴったりな一本といえるだろう。幸いなことに国内のMoHaaコミュニティもDemoの公開以降、徐々に盛り上がりを見せてきているので、遊び相手にも困らないことだろう。2002年イチオシのPCゲームとして強くお勧めする。
(c)2002 Electronic Arts Inc. Electronic Arts, EA GAMES, the EA GAMES logoand Medal of Honor Allied Assault are trademarks or registered trademarksof Electronic Arts in the U.S. and/or other countries. Medal of Honor is atrademark or registered trademark of Electronic Arts Inc. in the U.S. and/or other countries for computer and video game products. All rightsreserved. EA GAMES(tm) is and Electronic Arts(tm) brand.
□エレクトロニック・アーツ・スクウェアのホームページ (2002年2月8日)
[Reported by Tyokuta] |
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