★ PCゲームレビュー ★

世界的ベストセラーがついにPCゲーム化!

ハリー・ポッターと賢者の石


 全世界で大ベストセラーになっている小説「ハリー・ポッターと賢者の石」が、12月1日の映画公開にあわせて、完全日本語版のPCゲームとして発売される。
 主人公のハリー・ポッターは幼い頃に両親を亡くし、意地悪な叔父一家と暮らしていたが、ある時、魔法学校からの入学を知らせる便りが届く。驚き戸惑いながらも魔法学校に入学して勉強をし、友人のロンとハーマイオニーと学園生活を楽しむハリーだったが、禁断の廊下の奥に隠されたものの存在が新たな事件を呼び起こすことになり……、というのが原作「ハリー・ポッターと賢者の石」のストーリーであり、今回ゲーム化されたものの下地になっている部分だ。


■ ゲームの元になった「ハリー・ポッター」って?

もちろんハグリットも登場。彼のお使いのために、ホグワーツ地下の危険な溶岩地帯を通り抜ける羽目に
 「ハリー・ポッター」シリーズは、主人公の魔法使いハリーの学校と冒険の物語である。よくファンタジー小説と称されることが多い原作だが、「指輪物語」や「ゲド戦記品」などを読んだ人間、ゲームで日々どっぷりとD&D的ファンタジー世界に浸かっている人間からすると、ファンタジーという言葉でこの小説を表すのは、やや違和感がある。確かに魔法やモンスターも登場するのだが、それよりは現代のイギリスが舞台であること、寄宿学校を思い起こさせる寮生活の様子、キャラの立ち方、あっと驚くストーリー展開などのほうが読んでいる時の魅力となっている。

 孤児であるハリーの家族愛への飢えといった要素も含めて、単なる児童小説、ファンタジー小説とは趣きの異なったものだ。かといって、暗いだけの内容ではなく、からっとしたユーモアが底辺にあるため、大人でも子供でも最後まで楽しんで読むことができる。

 現在、原作の日本語版は静山社から第3作まで(英語版は第4作まで)発売されているので、映画やゲームを楽しむためにも、ぜひ一読されたい。文章のテンポがいい英語版をそのまま読むのもお勧めだ。

グリフィンドールの談話室でハーマイオニーやロンと相談。ハグリットのドラゴンをロンの兄に引き渡さなくてはならない
 ゲーム「ハリー・ポッターと賢者の石」は、主人公であるハリー・ポッターとなり、魔法学校ホグワーツで授業を受けたり、校内を探索したりしながらストーリーを進めていくアクションゲームになっている。ゲーム内では、原作でおなじみのキャラクタが次々と登場するほか、授業パートで上手に実技をこなしてハリーが所属するグリフィンドール寮のポイントを稼いだり、魔法使いカードを集めたりといった、原作に登場する要素をさまざまにアレンジしてゲームの中に詰め込んでいるのが特徴である。

 基本になっているのは3人称視点でのアクションで、基本的なゲームの展開は……

授業や学内の移動、仲間との会話、ムービーなど

アクションステージ

授業や学内の移動、仲間との会話、ムービーなど

アクションステージ

という風にアクションステージの合間に会話やムービー、学校内の移動などをはさんで進んでいく。

 アクションステージでは移動とジャンプ、それに各種の魔法を使う。魔法はゲームを進めるにつれ種類が増えていき、アクションステージの各所にある謎を解くために必要になってくる。だが、種類を自分で切り替える必要はなく、たとえば鍵を開く魔法だったら、ドアにカーソルをドラッグしただけで自動的にその魔法のカーソルが表示されるといった具合で、FPSや3人称視点のアクションアドベンチャーなどのように、使う前にいちいち魔法を切り替える必要はない。移動・ジャンプ・魔法の3つのアクションを上手くこなしてステージをクリアしていくのだ。

スプラウト先生の植物学の授業。危険な植物に対処するための呪文を学ぶ 首なしニックがセーブについて解説。お約束どおり、皮一枚つながったまま頭が外れる ホグワーツの玄関ホール。壁には各寮の盾が飾られている


■ ゲーム初心者にもやさしい段階的なゲーム進行

まずはダンブルドア校長のお話から。キャラクタの造形は映画版の俳優に準じている
ウィーズリーの双子がホグワーツの歩き方を教えてくれる。セーターにはしっかりGとFの頭文字が
 ゲームを始めて少しすると、フレッドとジョージのウィーズリー兄弟が基本的な操作やアクションの仕方を伝授してくれる。これはチュートリアルに当たるもので、離れた場所へのジャンプの仕方、高い場所へのよじ登り方などが習得できるようになっている。その後も、魔法の使い方やちょっとした謎の解き方などをステージをクリアするに従って習得していくように工夫されている。プレーヤーは徐々に色々なアクションを学び、繰り返し使用することで、ゲームも終盤になる頃には、自然とホグワーツの中の冒険をガンガン進められるようになるわけだ。

 ゲーム中、ハリーは度々、魔法の授業を受けることになる。例えば、クィレル教授の授業では、フリペンドの呪文(パネルを動かしたり、花瓶を壊したりする呪文)を学ぶのだが、画面上に表示された呪文の形をマウスのドラッグでなぞり、その正確さで点数をつけてもらうことになる。初回はゆっくりでも合格できるのだが、徐々に合格ラインは高く、そして制限時間は短くなる。これにいい成績で合格すると寮にたくさんの点をもらうことができるのだ。

 また、こういった授業の後にはチャレンジコースという最終実技試験のようなアクションコースが付属しており、直前に習った魔法を使って、チャレンジスターや秘密の小部屋、そして魔法使いカードを集めながらゴールを目指すことになる。

 魔法は前述したとおり、魔法をかける対象物にカーソルをドラッグしたまま合わせ、ボタンを離すと発動するため、呪文の切り替えがなく楽であり、その「ギューッ、ポン!」という感じの呪文発動が心地良い。

呪文の形をマウスのドラッグでなぞっていく。制限時間が速くなると、あせって失敗したり 習得した呪文を使って、チャレンジコースの謎を解き明かしていく 呪文は原作とオリジナルあわせていろいろ用意されている。こちらはウィンガーディアム・レビオーサ

マダム・フーチの指導で、いよいよほうきに乗ることに。飛んでいる間も先生の叱咤激励は続く 規定の輪を制限時間内にくぐっていく。呪文の授業と同じく、徐々に難易度があがっていく ほうきに乗ることをおぼえた後は、ドラコ・マルフォイとのほうき対決もあり


■ クィディッチの試合を楽しむ

 原作でも大きく取り扱われているクィディッチ(ほうきに乗ってのスポーツ)だが、ゲームの中でもばっちりと登場する。まずはマダム・フーチから飛行についての授業を受け、その後クィディッチの試合に出ることになる。

 クィディッチ場は映画版とほぼ同じデザインで、その中を飛び回り、原作同様にスニッチを獲得すればいいのだが、これがなかなか難しい。ブラッジャーがぶんぶん飛びまわっているし、ほうきでの細かな方向転換がなかなか難しいので、本物のハリーのように、スニッチが光ったと思ったら急降下というわけにはいかないのだ。

 ほうきの操作は授業の時と同じで、AとZキーで加速・減速、矢印キーで方向転換となっている。ちなみに下キーを押すと柄先が上昇するという、フライト系な操作方法にオプションでカスタマイズすることもできる。

 授業と違うのはスニッチを掴まなくてはならないことで、スニッチの後ろにホワホワとできる金の輪っかを潜っていくと、スニッチの絵が描かれたバーが上昇し、それが満タンになり、かつ手を伸ばせる位置に来た時、Ctrlキーか右クリックでスニッチを掴むことができる。スニッチを掴んだら勝利だ。

 一度、ゲーム本編でクィディッチの試合をすれば、ゲームのトップメニューに、クィディッチの寮対抗試合をできる項目が登場するので、好きな時にこのスポーツを楽しめるようになる。

グリフィンドールのユニフォームを着て、いよいよ試合に。ハリーはもちろんシーカー 対戦チームであるレイヴンクローのシーカーと争いながらスニッチを追いかける ようやくスニッチをキャッチ。ブラッジャーにぶつかって、体力ポイントは0ぎりぎりだ


■ アドベンチャーというよりアクションゲームである

スネイプ先生はやっぱり意地悪。授業を遅刻したのでグリフィンドールから5点引かれた
女子トイレにトロール出現! ハーマイオニーのピンチにロンとハリーが駆けつける
 アクションステージ部分では、山あり谷ありジャンプあり、トゥームレイダーばりのアクションをこなさなくてはならない時もある。時折、敵対者との直接的な戦闘も折り込まれていて、ステージクリア型のゲーム進行に飽きた時の息抜きになっている。

 ステージはジャンプで進んで、魔法で謎解き・戦闘というパターンが多く、それなりの操作テクニックは求められる。ジャンプに失敗して奈落の底に落ちればゲームオーバーだし、ハリーの体力ポイント(画面左上に表示されている雷マーク)が0になってもゲームオーバーになってしまうので、セーブポイントが決められているので、ステージクリア直前で足を踏み外し「ああああああああああっ」と絶叫したことも多かった。お子様向けといって侮れないのである。

 さて、最後に、強調しておきたいのは、このゲームは学園アドベンチャーというよりアクションゲームであるということだ。プレーヤーはハリー・ポッターとなってホグワーツ内を探索したり、授業で魔法を習ったりするのだが、それらはあくまでステージとステージの合間にある要素であり、全体的に見れば、ほぼ一本道進行のアクションゲームである。なので、「ハリーになって魔法で授業を受ける」とか「ホグワーツの中を探索」といった言葉から受けるであろう印象―ホグワーツでの学園生活をシミュレートする―というのとは、ややベクトルが違うゲームである。

 ただし、家庭用ゲーム機などにありがちな単なるキャラゲーという事態には陥っておらず、ストーリー性もあるし、全体としてのクオリティは保っている。ゲーム中にはおなじみの登場人物やエピソードが上手にてんこ盛りされていることもあって、原作ファンを裏切るような内容では決してない。

 また、このゲームの対象年齢はティーン以下にあるように思われ、例えばアリス・イン・ナイトメアのように、コアゲーマーが好むような気難しく通好みなアクション性ではない。どちらかといえば、ライトゲーマーやファミリーが楽しめるような、より一般的な層にアピールする軽快なアクション性に仕上がっている。ただし、終盤になると難易度はそれなりに高くなってくるので、ゲームが苦手な人は、ジャンプを自動的にしてくれるオプションなどを利用することになるだろう。

 原作の愛読者としてこのゲームを遊んだ時、「うお、ピーブスがっ」とか「うお、首なしニックの首がカパッと」とか「うお、ブラッジャーが、いててて」といったような、読んだ者にしかわからない内輪受けな感動がどこを遊んでいても常に登場するため、ファンとしては、もうプレイしているだけで幸せな気分だった。ゲームとしてシビアに見てしまうと、操作性で多少もたつく部分もあるが、海外もののアクションゲームとしてはまずまず及第点だろう。

 反対に原作を知らない者には合間合間に説明のナレーションが入るとはいえ、ゲームに酔い、世界観を掴むに至るには厳しい感じがした。まずは原作を読んでからプレイするほうが無難だ。

取った百味ビーンズの数は簡単に確認できる。真ん中の小びんが各寮の得点。ス、スリザリンに負けてる…… ステージのここそこで魔法使いを手に入れられる。アルバムで確認できるが、残念ながら魔法使いは動いていない ロンを援護して呪文で応戦。シングルプレイなので、こういう、ちょっとした協力が嬉しい

アクションステージの舞台はホグワーツの屋上から地下まで様々。ピーブスとの対決や、透明マントを身に付けてフィルチに見つからないように夜中の校内を歩くといった場面もある

(c)2001 Electronic Arts Inc. All Rights Reserved.
HARRY POTTER, characters, names and related indicia are trademarks of and (c) Warner Bros.WB SHIELD:TM & (c) Warner Bros.(s01)


□エレクトロニック・アーツ・スクウェアのホームページ
http://www.japan.ea.com/
□「ハリーポッターと賢者の石」の公式ページ
http://www.japan.ea.com/hp/
□関連情報
【11月23日】「ハリー・ポッター」の世界を忠実に再現! PS、GBC「ハリー・ポッターと賢者の石」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20011122/eas.htm
【11月13日】デジキューブ、「ハリーポッターと賢者の石」を全国のコンビニと書店で販売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20011113/hpcube.htm
【11月12日】EAS、「ハリー・ポッターと賢者の石」を12月1日に発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20011112/harry.htm

(2001年11月26日)

[Reported by 西尾ゆき]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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