レビュー

「X68000 Z」レビュー

オリジナルとの比較や当時の資産を「X68000 Z」で活用するための方法も解説

【X68000 Z LIMITED EDITION EARLY ACCESS KIT】

開発元・発売元:瑞起

販売形式:クラウドファンディング

募集期間:2022年12月3日~2023年1月28日

発売日:[初期生産分] 3月29日

[2次生産分] 5月中旬
価格:49,500円

 クラウドファンディングで3億円オーバーを集め、2023年3月末より“アーリーアクセスキット”の出荷が始まった「X68000 Z」。今回、その製作元である瑞起から貸出機を拝借できたので、実機レビューをお届けする。オリジナルとの比較や付属ソフトの挙動のほかに、当時実機で利用していたファイルやフロッピーディスクを「X68000 Z」で利用するための方法も解説していこう。

 瑞起が2022年6月8日(ロクハチの日)に発表し、同年の東京ゲームショウで初お披露目した「X68000 Z」は、シャープより1987年3月22日に発売されたパーソナルワークステーション「X68000」を現代風にアレンジして復活させたプロダクトだ。基本的には、これまでに発売された「PCエンジンミニ」や「イーグレットツーミニ」などのような“ミニ”ものではあるが、大きく異なるのは“「X68000 Z」はパソコンとして使用できる”ということ。プリインストール(そして後から追加)されたゲームしか遊べないというのではなく、このハード上でプログラムを組んだり、実機が活躍していた時代のソフトなどを「X68000 Z」上で楽しむことができるのだ。

 今回は、瑞起の「X68000Z LIMITED EDITION EARLY ACCESS KIT(ZKXZ-003-GR)」を用いて、同梱のゲームがどのような感じで動くのかだけでなく、簡単な実機との比較や、当時の資産を「X68000 Z」へと移動させる方法なども述べていこう。

 なお、アーリーアクセスキットは3月末から4月上旬にかけて第1陣が出荷されているが、第2陣が5月中旬から発送されているとのことなので、再び盛り上がりを見せるだろう。

2022年東京ゲームショウでお披露目された「X68000 Z」と、比較用のX68000。このタイミングから、多いに盛り上がっていた。

ハード面だけでなく、ケースやマニュアルなども当時をしっかり再現

 到着した輸送用のダンボールを開けると、当時の外箱を模した箱が現れる。初代機の箱は見つからなかったので、筆者がリアルタイムで購入したX68000XVIの箱と並べて撮影してみたが、非常に似せて作られているのがわかるだろう。箱の右側には“X”のイメージイラストが配置され、左側には収納されているハードが線画にて描かれているのも同じ。機種型番の右側、ラウンドサークル内に本体カラーが書かれているところも合わせているなど、細かいところへの配慮も伺える。

XVIの外箱と並べてみたが正面だけでなく、側面も当時のデザインを再現。

 こうして見るとわかるが、当時の箱でSHARPまたはシャープ株式会社と書かれていた部分には、「X68000 Z」では“株式会社瑞起”または“ZUIKI”の文字が入っている。ここが、以前に発売された「パソコンミニ」シリーズとは決定的に違う部分。「パソコンミニ」シリーズは、当時の本体や箱に書かれていたメーカー名の部分は敢えて空白のままで、プロダクトを復活させた会社(ハル研究所)の名前を入れることはせず、あくまでも黒子に徹していた。それに対して「X68000 Z」の場合、当時のメーカー名が書かれた部分は、これでもかと言わんがばかりに株式会社瑞起やZUIKIの名前が入れられ、同社の製品であるという主張の激しさを感じさせる仕上がりとなっている。このような部分からは、当時のハードを復刻した会社の、そのスタンスというものがわかるだろう。

これは箱の側面部分だが、こうして見るとX68000のXよりも、Zの文字の方が大きいのがわかる。

 箱を開けると、本体とキーボード、マウス、同梱ソフトなどが入っており、HDMIで接続できるモニタがあれば即座に起動することが可能だ。取扱説明書も同梱されているが、マニュアルは瑞起の公式サイトから見られるPDF版を参照する方が正確なので、軽く目を通しておく程度で問題ない。当時の本体やキーボードなどと並べて撮影してみたので、そのサイズ感を眼で体験してほしい。

箱を開けると、このような感じで黒い箱が3つ入っている。それぞれ本体、キーボード、マウスのケースだ。化粧箱の品質は高く、手触りも良い。
実機と「X68000 Z」を並べて撮影した。正面から見るとわかるように、「X68000 Z」は実機を特定の縮尺で縮小したサイズではなく、文字通りスケールダウンしたものとなっている。底面部分で比較すると、より一層分かりやすいだろう。
天面部分にはスリットが入れられ、実機と同じく右タワーの上面にインタラプトスイッチとリセットボタンが配置されている。小さいので、ちょっと指が太い人だと押しにくく感じるかもしれない。
背面から見ると、右タワー部分にUART端子やHDMI端子、USB端子×4、そして電源用のUSB-C端子が用意されているのが見える。左タワーには蓋が取り付けられており、ネジを外せば中へのアクセスが可能。その他の部分は、端子のイラストが彫られている。UARTケーブルは付属しているので、今後さまざまな方法で活用できそうだ。

 キーボードは、パソコンに接続して使うことも考えられているため、手前側から見ると“WIN”や“Prt Scr”なども書かれているキーがある。WindowsOSで使う際には背面のスイッチをWin側にすることで、それらのキーとして機能する仕組みだ。キータッチは好みがあると思うが、当時のキーボードと比べるとやや軽めと感じた。オリジナルと比べると、ひらがなキーの左と全角キーの右にCTRLキーが追加されたほか、ファンクションキーが太くなり、左上のSHARPロゴがオリジナルよりも大きいZUIKIロゴに変わっている。

キーボードはオリジナルと比べると、ひらがなキーの左と全角キーの右にCTRLキーが追加されたほか、ファンクションキーが太くなり、左上のSHARPロゴがZUIKIロゴに変わっている。
実機のキーボードには、左右側面にマウスを接続するための端子がそれぞれ設けられており、通常は“MOUSE”と書かれたプラスチック製のフタで閉じられている。「X68000 Z」のキーボードは、その部分は“ZUIKI”と書かれたプラスチックが設置されていた。外れないので、無理矢理取り外さないように。

 マウスはホイールが追加され、純正と比べて一回りほど大きくなっている。ボタンのクリック感だが、純正は“じわじわ……カチッ”という手応えなのに対して、「X68000 Z」マウスは今時のマウスのようにカチカチとしていて、すぐにクリック感が返ってくる。純正の方がストロークが深い、という印象だ。クリック場所を示す彫りは、純正がボタンの先端の方に寄っているのに対し、「X68000 Z」マウスはボタンの中央。X68000マウスは、ドーム部分を手のひらで包み込むようにして使うので、必然的に指がボタンの先端部分に置かれるようになっていたため、その場所にある。対して「X68000 Z」マウスは、光学式ということもあり左右でつまんで移動させるような感じで使用されるため、彫りが中央部分でも問題ない。

マウスも並べるとわかるように、純正と比べて一回りほど大きくなっている。筆者は比較的手が大きい方だが、それでもちょっと大きいかなと感じた。カバーも純正より大きいため、入れ替えたりすることはできないのが残念。
マウスのクリック場所を示す彫りは、純正がボタンの先端の方に寄っているのに対し、「X68000 Z」マウスはボタンの中央にある。
純正にはなかったホイールが付いているので、macOSやWindowsOSで使うには便利。筆者が仕事で使っているMacBook Airに接続したところ、左側面に付いている2つのボタンは認識されなかった。背面には、マウスモードとトラックボールモードを切り替えるスイッチが用意されている。
手元にあったX68000XVIのマニュアルと比較してみたが、付属のマニュアルもオリジナル版を再現したような形で作られている。色は、「X68000 Z」版の方が若干明るくなっていた。
同梱ソフトは、「グラディウス」、「超連射68K」、「システムディスク」の3本。それぞれ、当時のフロッピーディスクラベルを模したシールが貼られたSDカードとして収録されている凝った作りに。

早速「X68000 Z」を動かしてみるものの、一筋縄ではいかず……

 見た目の比較が終わったところで、早速動作チェックに入ることに。実機の場合、ドライブ0にディスクを挿入して電源を入れれば自動的に読み込みが始まるので、その感覚で同梱されていた「グラディウス」のSDカードをスロット0に挿入して電源を入れてみる。しばらく待つと、ゲームが起動……するかと思いきや、なぜか「ディスクから起動できません。正しいディスクをセットしてください。」という、X68000ユーザーにはお馴染みのエラーメッセージが表示されてた。何か手順を間違えたかな? と思い、リセットボタンを押して待ってみたが、やはり結果は同じ。

 重い腰を上げてマニュアルを見てみたのだが、それらしきことは書かれていないのでブラウザから検索してみると、公式サイトに最新版のマニュアルが掲載されているのを発見。それを読んで、ようやく正しい手順が判明した。

 インタラプトスイッチを押しながらリセットボタンを押して、“「X68000 Z」 Setup utility”メニューを起動させなければならないとのこと。せめて同梱ソフトくらいは、SDカードスロットに挿入して電源オンで起動できるようにしてほしいものだ。

迷ったら、瑞起公式サイトのマニュアルをチェックすると良い。ページ下部に、各種最新マニュアルが用意されている。

 セットアップユーティリティ画面ではいくつかのことができるが、主に使用するのは“Manual boot”と書かれた項目だろう。これを選ぶと“Choose for booting slot”と表示され、SD0、SD1、X68 Emulator、X68Z Launcherを起動できる。X68 Emulatorを選べばエミュレータが立ち上がり、X68Z Launcherを選択すればゲームランチャが動く仕組みだ。

インタラプトスイッチを押しながら電源を入れるか、既に電源が入っている状態であればインタラプトスイッチを押しながらリセットボタンを押し、どちらの場合も画面に青バックが表示されたところでインタラプトスイッチを離せば、セットアップユーティリティ画面に遷移する。メニュー画面ではカーソルを本体のSDカードスロットボタンとインタラプトスイッチ、または接続したキーボードで操作できるが、もっさり感がありワンテンポ待たされるように感じた。この画面でマニュアルブートを選ぶと画面が遷移する。
セットアップユーティリティ画面には、ブートデバイスのセッティングや時刻設定、メモリ容量といったエミュレータ内部のパラメータ変更が行なえるほか、実機と同じフォントを使用するためのフォントインストール、そして工場出荷時に戻すためのファクトリーリセットなどが用意されている。

 同梱されている「グラディウス」や「超連射68K」をプレイするためには、SDカードスロットに対象ゲームを入れてから(後から挿入しても問題はない)電源オン後にセットアップユーティリティ画面を起動させ、そこからゲームランチャを選択、SD0またはSD1アイコンでENTERキーを押すかダブルクリックする。これでタイトル詳細画面に変わるので、初回は“NEW GAME”を選べば各タイトルが起動する。

セットアップユーティリティやゲームランチャでは、製品付属のキーボードとマウスで操作可能。動作保証外ではあるものの、一般的なUSB接続のPC用マウス、キーボードも使用できる。
ゲームプレイ中にSDカードをイジェクトすると、エラーが表示されて強制的にゲームランチャのメインメニューに戻されるので、ゲーム中はSDカードを抜かないように。
ちなみに、「グラディウス」、「超連射68K」両SDカードをPCのSDカードスロットに挿入してみたが、“フォーマットしますか?”のメッセージが出た。付属のシステムディスクSDカードは、サイズ10バイトのファイルが1つ見えたのみ。すべてプロテクトがかかっているためかと思われる。誤ってフォーマットしないように注意したい。

 同梱されているゲームについて、それぞれゲームランチャからタイトルを選択して起動、プレイするまでを動画にしてみた。当時所持していた人であれば、懐かしい想い出に浸れるのではないだろうか。なおグラディウスの映像だが、撮影機材の都合で途中から上下部分が明るく出てしまった。ご了承いただきたい。

【X68000 Z「グラディウス」 - GAME Watch】
【X68000 Z「超連射68k」 – GAME Watch】
付属していたシステムSDで起動し、X-BASICを起動。簡単なプログラムを実行させ、簡易ベンチマークを採ってみた。「X68000 Z」での結果は一番上の写真。対して、手元のX68000XVIで10MHzと16MHzで駆動させた時の結果が下の二つ。早い方が16MHzで、遅い方が10MHzに設定した時のものだ。XVI16MHzでは10秒、XVI10MHzでは18秒のところ、「X68000 Z」は21秒だった。

 同梱タイトルはゲームランチャから起動させることがわかったので、まずは「グラディウス」を、X68000 Z版と実機版でそれぞれプレイし比べてみた。「グラディウス」はいうまでもなく、1985年5月にコナミ(当時)からアーケードゲームとしてデビューした、パワーアップ型のシューティングゲーム。その長いレーザーと、当時は斬新だったオプションというシステムで、アーケードゲーマーを虜にしたタイトルだ。

 実機でFDから立ち上げタイトルが表示されるまでと、「X68000 Z」のゲームランチャ画面からの起動時間は、ほぼ同じ。肝心のプレイした感じも、到達できた3面までは同一と言って良い。筆者は“ゲームはキーボードでプレイ”する派なので、どちらの「グラディウス」もキーボードで検証してみたのだが、キーカスタマイズはもちろん、ゲーム中に斜めに移動しながらショットを撃ったりするのも問題なかった。X68000版はアーケード版とは敵の挙動などが異なるが、そういった部分も体験した限りすべて同じ。操作性もまったく問題なく、当時と同じ感覚で遊ぶことができた。

 なお、上記で試した簡単な速度比較ベンチマークでは、実機よりも遅く表示された「X68000 Z」だが、「グラディウス」に関して処理落ちなどは見受けられない。あくまでも推測だが、当時のプログラムそのままではなく、いくつかの部分を「X68000 Z」が搭載しているエミュレータ向けに最適化しているからだと思われる。実機版と同じ感覚で遊べるように仕上がっているのだから、これは歓迎されるべきポイントだろう。

例えば1面最後の火山シーンだが、アーケード版ではオプション×3にレーザーを装備していると、左下でショットとミサイルボタンを押しっぱなしにしておけば、ほとんどの火山弾を破壊できる。これに対してX68000版はレーザーが途切れることがあり、撃ち漏らした火山弾に当たることも多いため、逃げておくのが安全。このような部分も、当時と変わらずだ。
2面は、道中はほぼアーケード版と変わらないが、最後のザブが多数出現するシーンのパターンが違う。
モアイ面も、アーケード版より難しい感じになっている。途中で処理落ちして、プレーヤーの動きにゲームが追随してこないといった問題も皆無だったので、安心して遊べる。

 続いて、同梱されていたもう1タイトル「超連射68k」をプレイ。こちらは当時実機版を遊んでおらず、今回が初体験。いわゆる、敵弾の数が多めの縦スクロール型シューティングゲームだが、弾幕とまではいかないので、そこまで敷居は高くないはず。道中、特定の敵を倒すとパワーアップ、シールド、ボムの3アイテムを落とすので、それらを回収しながら先へと進んでいくのだが、アイテムは“基本的には”3種類のうち1つしか取れないので、その場しのぎではなく先を見越した選択が要求されるのだ。

 最初の読み込みに時間がかかるものの、そこを過ぎてゲームが始まってしまえば、待たされるポイントは一切ない。凝った演出や多数の弾が画面を覆い尽くすような場面でも、処理落ちなどは見られなかった。おそらくは、こちらも「X68000 Z」のエミュレータに合わせてチューニングが行われているためだろう。

 敵のパターンを覚えて出現即撃破ができるようになれば、爽快感も大幅にアップするはず。90年代に流行ったシューティングゲームをリスペクトしているので、あの時代前後にゲームセンターでこの手のジャンルにハマっていた人ならば、熱くなれるのは間違いない。とはいえ、「X68000 Z」ユーザーの年齢層を考えると、敵弾の多さにプレーヤーの目が先に参ってしまうかも。

1面開始後すぐに多数の敵弾がプレーヤーを襲うが、ある程度シューティングゲームを経験している人ならば楽勝なはず。筆者はテンキーでプレイしたが、やりこむならばジョイスティックの方がいいかもしれない。
道中、特定の敵を倒すとアイテムが出現する。3つ全部ガメる方法もあるが、危険と隣り合わせの度胸が必要だ。
ステージラストには、ボスが出現。1面から避けるのが難しい弾を放ってくるので、苦手な人はあらかじめシールドを取っておくなどの対策を講じておこう。

過去の資産を実機へと持っていく方法は? その一例を紹介

 挙動に関して一通り見てきたが、気になるのは当時の資産をどのようにして「X68000 Z」へと持ってくるか、ではないだろうか。今後の展開として、HDD-SASIに対応すると発表されたので、それが実現すればHDDイメージを扱えるようになるのだが、それまではFDイメージで何とかやりくりするしかない。

 筆者は当時から、HDDではなくFDからブートする形で運用していたので、まずはその5インチ起動ディスクを「X68000 Z」で使うべくいろいろと調べ、実行してみた。ここに掲載した内容はあくまでも一例であり、他の方法も存在する。必ずしも本記事内容通りである必要はないので、自分なりの方法でも試してみてほしい。なお、以下で名前を掲載しているソフトの大部分は古いものなので、すべて自己責任にてお願いしたい。もっとも、X68000ユーザーであれば自力で何とかする精神があるので、その点は心配ないとは思うが……。

 「X68000 Z」が扱えるのは、“XDF”形式のイメージ。そのため、まずは5インチFDの中身ををどうにかしてXDF形式に変換しなければならない。それを一発で行なうソフトや手順は探し出せなかったが、「make_hd.exe」というPC-98用のMS-DOS向けソフトを利用すれば実FDの中身をいったん“D88”形式に変換でき、更に出力されたファイルに対して「d88toXDF」というソフトを使えば、最終的にXDF形式へ変換できるとわかったので、その方法を試してみることにする。

どちらのソフトも、Webで検索すればすぐに見つかる。くどいようだが、くれぐれも自己責任で。

 筆者宅にはPC-9821Ap2+外付け5インチFDDが現役で稼働しているので、外付け5インチFDDにX68000XVIで使用していた起動ディスクを入れ、まずは「make_hd.exe」で“HUMAN2.D88”というファイルに変換した。

 続いて、このファイルをWindows上へと移動させたいのだが、残念ながらこのPC-9821Ap2にはSDカードリーダどころかUSBポートすら付いていない。そこで、3.5インチFDDとUSBポートを搭載している手元のFM-Vノートへデータを移し、そこで作業を続けることを思いついたので実行へ。

 PC-9821シリーズであれば3モードの3.5インチFDDを搭載しているので、あらかじめ3.5インチFDを1.44MBでフォーマットしておき、そこに“HUMAN2.D88”をコピー。このFDをFM-Vの3.5インチFDDに挿入して、ここで「d88toXDF.exe」を実行し“HUMAN2.D88”を“HUMAN2.XDF”へと変換後、出力された“HUMAN2.XDF”をSDカードへコピーすることで(USBポートに接続できるSDカードアダプタを使用)、最終的にX68000で運用している実FDの中身を「X68000 Z」で使うSDカードスロットへと移動することができた。

 その際は、「X68000 Z」で使うSDカードを先にFAT32形式でフォーマットしておくことと、SDカード内に“X68000Z”というフォルダを作成しておき、その中にXDFファイルをコピーすることを忘れないように。

筆者が今回使用したのはPC-9821Ap2+外付け5インチFDDだが、PC-9821Xc16のようなUSBポートのあるPC-9821シリーズ+外付け5インチFDDを使えば、もう少し手っ取り早く作業が進みそうだ。本体に5インチFDDを内蔵したPC-9821を使用する場合は、3モード対応の外付け3.5インチFDDが必要となるだろう。ちなみに、FM-VのUSBポートに接続するSDカードアダプタは、このPC-SCRW3-Kを使用した。

 あとは「X68000 Z」でセットアップユーティリティ画面を表示させ、SDカードを挿入後にX68000エミュレータを選択すればファイルセレクタ画面が表示される。ここで先ほど作成した“HUMAN2.XDF”を選んだところ、普段使用している起動ディスクを無事に「X68000 Z」でも動かすことができた。

 あわせて、X68000 LIBRARYにて、過去にシャープ・プロダクツ・ユーザーズ・フォーラムで無償公開されたシャープのソフトウェアが現在も公開されており、Human68kのバージョン3.0.2システムディスクイメージがダウンロード可能となっている。こちらを入手し、「X68000 Z」で立ち上げてみた模様を動画で撮影したので、それも掲載しておこう。

【X68000 Z「human3.0.2」 - GAME Watch】
Webからダウンロードした、Human68kのバージョン3.0.2が入ったXDFファイルを、「X68000 Z」にて起動してみた。同梱されているシステムSDから起動したHuman68kよりも、ややキビキビした動きになっている。

 なお、X68000実機のHDDに入っているファイルを「X68000 Z」で使用するXDFイメージ内に移動させたい場合は、もう少し簡単だ。前述したHuman68kのバージョン3.0.2システムディスクイメージを使用するので、最初にダウンロードしておこう。

 まずは実機X68000にて、HDD内のファイルを5インチFDにコピーし、それをPC-9821上で1.44MBフォーマットの3.5インチFDへと更にコピー。続いて、ダウンロードしてある“HUMAN302.XDF”を、VectorにあるWindows用ソフト「DiskExplorer」で開き、中身をすべて捨ててしまう。

 これで中身が空のXDFイメージファイルとなるので、あとは「DiskExplorer」の画面に3.5インチFD内にあるファイルをドラッグ&ドロップすれば、自動的にXDFイメージ内に格納される。これをコピーしたSDカードをSD1に、システムイメージが入ったSDカードをSD0に挿入してエミュレータからそれぞれ選べば、ドライブ0がシステム、ドライブ1に必要なファイルが入った状態ができあがる仕組みだ。

 システムイメージにあらかじめ音楽系ドライバや画像、PANIC、MASLファイルビューワなどを入れておき、SD1に再生・表示したいデータを保存しておけば、FD運用ではあるものの当時っぽい使い方を「X68000 Z」でも再現することができる。

【X68000 Zでシステム起動ディスクを実行してみた - GAME Watch】
ここでは、筆者が運用しているシステム起動ディスクを「X68000 Z」上にて実行させた時の動画を掲載しよう。デバイスドライバの導入やファイラー、ビューワ、エディタなど、思った以上に違和感なく動いているのがわかるはずだ。デバイスドライバ導入時にエラーが起きているのは、実機ではHDD上のファイルを指定しているため。

今後もバージョンアップが期待できるプロダクトなので、長く楽しめる

 同社がこれまで手がけてきた、アーケードやコンソール系ミニハードとは一線を画した、パソコンのミニハードとして登場した「X68000 Z」。同社の従来プロダクトとは違い、今後もエミュレータ部分などの積極的なバージョンアップや、HDDだけでなく各種デバイスがサポートされるようになるかもしれないと期待できるのが楽しみなところだ。

 当時、ゲームが目的でX68000実機を購入したというユーザーには、現状の「X68000 Z」のゲームタイトルが少ないことに少々物足りなさを感じるかもしれないが、プロジェクト自体はまだ始まったばかり。3月31日には「X68000 Z」向けの「SHOOTING68K Z-EDITION」が発売されるなど、今後も新作ソフトが登場しそうな気配なので、ゲーム情報に関しても首を長くして待っていよう。

 最後に、「X68000 Z」での市販ソフトの利用に関しては、瑞起の公式サイトにガイドラインが掲載されているので、しっかりと読んでおきたい。