インタビュー

【TGS2022】瑞起「X68000 Z LIMITED EDITION」インタビュー

“歴史をもう一度” 開発経緯やこだわりを深掘り!10月の情報解禁に期待高まる

【X68000 Z LIMITED EDITION】

10月8日 詳細発表・予約開始予定

 瑞起は、2022年9月15日から18日まで開催されている東京ゲームショウ2022にて、2022年6月8日に突如発表したX68000ミニ改め「X68000 Z LIMITED EDITION」のモックアップを展示した。同時に張り出されたポスターなどによれば、2022年10月8日に詳細を発表、同日から同社HPにて予約を受け付けるとのことだ。ただし、現時点では不明な部分が数多いため詳細を探っていたところ、幸運にも来場していた瑞起 執行役員 商品企画部 部長の米内雄樹氏に話を聞くことができた。インタビューの模様をお伝えしよう。

今回いろいろと話を聞かせてくれた、瑞起の執行役員 商品企画部部長の米内雄樹氏。

――まずは、「X68000 Z LIMITED EDITION」を作ることになった、そもそものきっかけを教えてください。

米内氏:我々の会社は各種ミニハードの実績が豊富で、そこで培った技術やノウハウが一定以上あります。セガさんやコナミさん、タイトーさんなど、先方からオーダーをいただいて作ってきました。なので、ハードウェアは間違いないというところと、ソフトの部分もある程度実績が積み上がってきているので、ソフトウェアをお客さんからもらうのではなく自社の製品として出すというのをチャレンジしてみよう、という声が社内でありました。そのときに、何をターゲットにしようかねというのをみんなで意見を出し合っているときに、「そういえばX68000好きな人が社内にいたよね」というところがきっかけで、プロジェクトがスタートしました。

――しかし、仁義を通さなければならないところも、さまざまありますよね。

米内氏:そうですね、まずもってシャープさんから許諾を頂けるかというところが大きくて、そこをダメ元で相談し始めたところ、そこに関してはOKが出ました。これは作れそうだということがわかったので、もう一段深掘りしてみよう、というのをずっと積み重ねて、今回に至る流れですね。

――キーボードやマウスもですか?

米内氏:キーボードとマウスについては、正直最初の段階では構想にはなかったんです。実機が普通に流通していた当時を知っている方々にお話を聞く機会があって、それを繰り返していると、本体もそうですけどキーボードやマウスに対する思いも皆さんすごくお持ちというのがわかりました。今はもう手に入らない状況だということで、であれば我々がそれさえも復活することができるかどうかの検討もしてみようとなり、これまで物作りは小さいものから大きいものも含めて散々やらせていただいたので、検討を始めたらいけそうだと。そこで、キーボードのご相談もシャープさんにさせてもらったところ、OKだったという流れです。





――マウスは、当時のようにトラックボールにもできます?

米内氏:そこのギミックに関しては詳細をまだ言ってないですけど、普通にマウスとしても使えるし、蓋を開けてトラックボールとしても使える仕様です。

――当時のマウスにはひっくり返すとスイッチがついていて、それでボールの上げ下げをしてましたよね。そのギミックまで再現しているのでしょうか?

米内氏:それに近い形になっています。皆さんの話を聞くと、その辺のギミックであったりとか、キーボードであれば今のWindowsキーボードにはないボタンがあったり、配列も違うし、キーボードにインジケータがあるという部分にもこだわっていて、そのあたりもセットで復活できるといいなという声をいただいたので、そこももちろんやってます。

――このキーボードとマウスは、「X68000 Z LIMITED EDITION」本体に繋がるんですよね。

米内氏:もちろん繋がります

――本体正面には差し込み口がないようですが、後ろですか。

米内氏:そうです。

――キーボードやマウスが実物大なら、当時の実機にも挿さるんじゃないかと考える人も多いと思いますが、実機には挿さらないのでしょうか。

米内氏:挿そうと思えば挿さるんじゃないんですか?

――実機はS端子のピン数が増えたような形ですが、挿さるけど使えるかどうかはまた別、という話です?

米内氏:両方あると思いますね。キーボードとマウスは「X68000 Z LIMITED EDITION」で使っていただきたいですし、それ以外でも使えるようになればより良いと思いながら作ろうと考えてます。

――当時のマウスは今の時代、ボールが割れている個体が多いので、これが実機に繋がるならありがたい周辺機器になると思います。

米内氏:それは、10月8日の発表をお待ちください。

当時のX68000用キーボードとマウス。マウスの裏側にはMとTと書かれたスイッチがあり、これをT側に移動してマウス上面の蓋を外すとトラックボールになる仕組みだった。

――予約受付の段階で、値段は発表されますか。

米内氏:必ず出します。2022年6月8日にプロジェクトやりますと発表しましたが、今日までのもっと早い段階で皆さんにお知らせできるつもりで進めていたんです。途中で検討を重ねると、いろんな課題や、もっとこうしておかないと、などが出てきて時間が必要になり、現在に至ったという流れですね。

――外観は、なぜ初代にしたのでしょうか。

米内氏:やっぱり、歴史をもう一度やりたいなという思いがあったからです。昔の実機は、無くなっていくばかりですよね。直してくれる職人のような方もがいますが、それが叶わない人もいて、じゃあいずれX68000界隈の文化はなくなるんですか? という話が出るので、その文化をもう一回やり直すのではないですけど、我々が何かしらの力でそれをお手伝いをできたらいいなという思いがあったので、初代にしました。

――「X68000 Z LIMITED EDITION」には、瑞起さんの社名が右下に入っていますが、これを入れた意図はなんでしょうか?

米内氏:シャープさんのブランドロゴはシャープさん以外は許諾できないというのがあって、本来の場所に“SHARP”とはもちろん入れられません。とはいえ、何も入れないよりかは、そこにはその当時のメーカー名が入っていたのですから、我々は「我々が責任を持って出す商品」ということで、そこは我々の名前を出させてもらいましょう、ということで入れています。

さまざまな角度から「X68000 Z LIMITED EDITION」を撮影した。隣にある実機と比較すると、その大きさがわかるかもしれない。

正面からのアップと、天面。正面はFDスロットの部分に小さな溝が2つ開いているのがわかる。その下に位置するEJECTボタンも、実際に機能しそうだ。またPHONES部分には、“何か”が挿さりそう。天面にはキャリングハンドルが見えるが、これは実機と同じくポップアップする。

――では、「X68000 Z LIMITED EDITION」の“Z”の意味はなんでしょうか。

米内氏:そこは、おいおい発表させていただきたいと思いますが、まず言えるのは“ZUIKIのZ”である、というのは間違いないです。読み方は“ゼット”です。

――当時、シャープから新機種としてX1turboZが出たときは、一部では「Zはゼータと読むのでは?」という話もありましたが。

米内氏:ゼータ論もありましたよね。しかし、我々は“ゼット”でいきたいです。

――細部の色にもこだわっていますよね。パワーボタンのオレンジとか。

米内氏:今回展示している本体についてはまだ完全版ではないので、これからもう少し色校正をしますけれど、かなり実機に近い色味を再現できているかなと思っています。

――ということは、ガワはどこかの模型メーカーに発注したりするのではなく……。

米内氏:全部自社です。そこは、過去の経験や実績があってこそだと思っています。セガさんとかもそうですし、タイトーさんとかもそうです。ああいうミニ筐体の実績があったから実現できるところかなと。

――パワーボタンの左上にはFDスロットが見えますが、上下がちょっと詰まってますよね。ここには何が入るんですか?

米内氏:現物を見ていただくと、あそこには3.5インチも入らないし、当たり前のように5インチも入りません。じゃあただの飾りかしらと思いますよね?

――つまり、入るのは……?

米内氏:まだ言えないですね。仕様自体は固まっていますが。

――東京ゲームショウ初日(9月15日)に合わせて展示したのは、上記も含めて何か発表があるなどといった理由があったのでしょうか。

米内氏:もったいつけちゃってすみません。情報を全部セットで出すというやり方もあると思うんですけれど、今日の展示はX68000というものを思い出して欲しいという思いからです。これを見たり話を聞いて、時間を少しずつ重ねて当時を思い出し、それを募らせていただく、そんな時間にしてもらいたいというのもあり、姑息かもしれませんが小出しにさせていただいているというところです。また、やっぱりここで見せたかったもう一つの理由は、これまでツイッターでは写真や画像でしか皆さんにお伝えしていなかったので、本当にやってるんですか? 作ってるんですか? っていう真実味がなかったと思うんです。こうして現物を展示させていただくことで、ちゃんと作ってるんだなと知っていただけるかと。

――確かに現物が見られないと、ガワだけなのでは? と思う人もいると思います。

米内氏:本日の展示でも、後ろは隠していますし。

――製品は、ガワだけではないんですよね?

米内氏:もちろんです。

――X68000がちゃんと動くと言うことですよね?

米内氏:そこも、10月8日に発表したいと思います。

――なにやら意味深ですね。

米内氏:なかなかまだ言えないんですよ(笑)。お察しください。

――それは、「X68000 Z LIMITED EDITION」がX68000であるということも言えない?

米内氏:我々としては、X68000だと思って進行していますが、今の段階では言えません。

ゲームショウ期間中は背面に「10月8日解禁」と書かれた紙が貼られ、肝心な部分は見えなかった。ただし、その下にあるRS-232C端子と音声の入出力端子、ジョイスティックポート2は描かれているだけなのはわかる。

――価格は、いくらくらいになりそうでしょうか。

米内氏:逆に、いくらくらいだと買うんでしょうね、皆さん。

――68,000円だと、さすがに高いという話はありました(笑)。

米内氏:こちらも、68,000円以内かしらとか、PS5と比較してどうだった、などのご意見は見ました。でも、手に届きやすい価格帯にしたいなと思います。X68000は当時高額で、憧れても買えなかった人たちがたくさんいたと思うんですよね。その人たちが大人になって同じ金額を出せるかというと、なかなかそれも厳しいと思いますので、我々としては手に届きやすい価格帯に一生懸命努力したいなと思います。ただ、皆さんはゲームをやられてたんでしょうけれど、入口はどちらかというとワークステーションだったと思うので、ゲーム大前提と言うよりはワークステーションめいたプログラミングができたりとかいう思い出があったと思うので、そういうのを聞いてるとそっちを再現したいとかですね、我々としてはそういう思いを持ちますね。それがどこまでできてるかは、まだこれから発表していくのですが。

――プログラミング方面を大事にしたい。

米内氏:そうですね。

――それとは逆に、X68000のゲームで育った人もいると思うので、そういう人たちへのメッセージは何かありますか?

米内氏:ゲームはメーカーさんがライセンスをもたれているので、我々だけでどうにかできる問題でもないというのが正直あります。我々はできる限りのことをやる覚悟でいますが、最後はメーカーさんとかからどんな協力をいただけるかというところにかかってくるのかなと思っています。

――一部では、商品名の“Z”は、X68000で有名な“とあるソフトハウス”にひっかけてるんじゃないかと深読みしている書き込みもありました(笑)。

米内氏:いろんな深読みをしたり、思いを巡らしてくれるとありがたい限りです。

――その深読みは、無駄にならない!?

米内氏:我々としては、それは我々に向けられた期待だと思いますので、それをかなえられるように頑張るだけかなと思っています。とはいえ、我々もビジネスの側面も大事なので、全部が全部というわけにもいかず、どこかで線を引くという瞬間が出てくると思います。そこをどこにするかとか、どのように皆さんに理解をいただくかとか、そういうところがすごく気になっているところです。

――当時買ったゲームを今も抱えて待っているという人もいると聞きますが、そういうソフトが「X68000 Z LIMITED EDITION」で有効活用される道はあったりするのでしょうか。

米内氏:今の段階では、そこもなかなか言いにくいですね。ただ上記にあるように、その当時の文化として皆さんがX68000でやられていた遊び、プログラミングやゲームなどがあると思うんですが、我々としてはそこは大事にしたいと考えています。思いとしては持っていますが、それをどう実現するかという話ですね。ここは我々だけではなく、いろんな人の力を借りながらやっていきたいと思っています。今回も、元Oh!Xの副編集長である植木さんにも一筆メッセージをもらったりしていますし、そういう形で皆さんにはご意見をいただいています。

ゲームショウ期間中、自由に持ち帰ることができたフライヤー。過去にソフトバンクから発売されていた雑誌「Oh!X」で副編集長を務めた植木氏が、メッセージを寄せている。

――「X68000 Z LIMITED EDITION」が搭載するエミュレータの互換性や完成度、搭載メモリ容量、ネットワークへの接続、継続的なアップデート、MIDI対応の可否、USBポートの有無、ディスクイメージの利用ができるのかなど、聞きたいことは山ほどありますが、何か一つくらいはポロリしてもらえないでしょうか(笑)。

米内氏:残念ながら、何も(笑)。展示で協力いただいている4Gamerの方々にも何も言ってませんので、それらの情報はすべて8日以降でお願いします。

――その10月8日から予約開始となるわけですが、予約しないと買えないんでしょうか。

米内氏:基本的には、今の段階では予約いただいた方から順にお売りする形です。

――現状では、限定販売という形だと考えておいた方が良いということですね。

米内氏:そうですね。

――Amazonなどで取り扱ったりということは?

米内氏:現時点では考えていません。すべて自社HPで予約を受け付けて販売する予定なので、欲しい場合は現段階では予約必須となります。

――販売されるパッケージは、どんな形になる予定でしょうか。

米内氏:当時は、本体とキーボードとマウスのセットで販売されていましたので、現段階では予約受付も当時と同じくセットのみでおいくら、という考えです。

――となると、当時の外箱も再現するんでしょうか。

米内氏:外箱も再現したいのですが、手に入らなくて手元に無いんですよね。もちろん、頑張って再現しようとはしています。

――販売される本体のカラーリングはグレーのみですか。

米内氏:そこは、段階をおってやっていきたいと思っています。

――ということは、もしかすると実機が歩んだ道のように後からブラックが出る可能性も!?

米内氏:そこも、皆さんがどう支えてくれるか次第だと思っています。我々としては、1回で終わりたくないんです。やるからには、歴史をもう1回と思っていますから。でもこれは、本当にファンのみなさん、ユーザーの皆さんの力ががあってこそです。

――今後の告知や情報伝達は、どうなる感じでしょうか。

米内氏:ツイッターや公式HPで行います。予約開始となる8日には、HPの情報も詳細なものに入れ替える予定です。

――サーバがアクセス過多で落ちるほどの人気を呼ぶかもしれませんね。

米内氏:実際、9月14日にツイートしたものに対しても、こんなに反応があるんだと驚きました。ひとまず、10月8日から順番に情報を出していきたいと思います。最初の段階では、これで予約しちゃおう、という人たちに予約していただけるかと思っています。そこで様子見の方もいると思いますが、段階をおって次の展開の時に予約していただく形ですね。予約期間をしばらく設けますので、焦らなくても大丈夫です。





――いずれにしても来月ですか。最後に、ポロリはないんですか?

米内氏:したい気持ちはあるんですが、我慢してるんです(笑)。

――1個くらいなら吐いてもバレないと思います(笑)。

米内氏:けっこう吐きましたよ! もうお腹痛いもん(笑)。あとは、8日以降に是非もう一度来てください。

――わかりました。ありがとうございます。