レビュー
「CRISIS CORE –FINAL FANTASY VII– REUNION」レビュー
ソルジャーの夢と誇りを紡ぐ男たちの物語!
2022年12月6日 19:00
- 【CRISIS CORE –FINAL FANTASY VII– REUNION】
- 発売元:スクウェア・エニックス
- 開発元:スクウェア・エニックス
- ジャンル:アクションRPG
- プラットフォーム:PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switch/PC
- 発売日:12月13日
- 価格:
- 6,820円(通常版)
- 10,120円(デジタルデラックスエディション)
- CEROレーティング:C(15歳以上対象)
スクウェア・エニックスより、12月13日に発売されるアクションRPGの「CRISIS CORE –FINAL FANTASY VII– REUNION」(以下、リユニオン)。本作は、2007年にPSP向けに発売された「クライシス コア -ファイナルファンタジーVII-」のリマスター版だ。ゲームそのものは、大ヒットしたRPG「ファイナルファンタジーVII」(以下、FF7)の前日譚となっている。
本作では主人公をクラウドではなく、あえてザックスという別のキャラクターを立てることで、ソルジャーたちがどのような道のりを歩んで来たのか、その歴史の一部を体験することができるようになっているのだ。
この「リユニオン」についてはこれまで何度か紹介してきたが、リリースに先駆けてメインストーリーを最後までプレイする機会がもらえた。ちなみに筆者は、オリジナル版もリアルタイムでプレイしていたものの、あまりにも時間がたっているということもありすっかり忘れていた部分がほとんどであった。そうした意味でも、新鮮な気持ちでゲームを堪能することができた。
ということで若干前置きが長くなってしまったが、今回は全体的なプレイを通してわかった本作の魅力と特徴についてレビューしていく。あらかじめお断りしておくが、本稿ではゲームのネタバレに繋がる部分もある程度含まれているため、ご了承願いたい。
PSPの名作が高精細なグラフィックとフルボイス化で生まれ変わった!
リメイク版で生まれ変わった部分については、以前のプレビュー記事などでも紹介してきたが、まずはおさらいということで簡単にポイントだけ触れておこう。まず大きく変わったのがグラフィックスのHD化だ。単純に元のグラフィックスを高解像度化したというものではなく、キャラクターの3Dモデルも新たに作り直されている。
PSP版にてオープニングなどで流れるカットシーンは、高精細なCGで描かれたキャラクターたちが動いていたが、今回の「リユニオン」では、グラフィックスを進化させつつそのクオリティに近いイメージでゲーム内でも遊べるといった感じだ。また、それに合わせてセリフもほぼフルボイス化されている。PSP版では、テキストだけのセリフの部分も多数あったが、そちらにも声が付けられているため、より物語に感情移入できるようになった。
それらに加えて、操作性も大きく向上しているところもポイントのひとつにあげられる。PSP版の操作性はお世辞にも扱いやすいとはいえなかった。しかも本作はどちらかというとアクション要素が強いため、そのままゲームプレイの爽快感にも影響する部分だ。そうした不満が今回は大きく解消されており、最新のゲームとほぼ同じような感覚でキャラクターを操ることができるようになっている。
また、カットシーンも不要な場合はスキップすることができる。たとえば召喚獣などを呼び出すと、長いカットシーンが流れるが、さすがにバトル中に何度も見ているとスキップしたくなってくるときがある。今回はそれが可能になっており、ゲームプレイのテンポ感が上がった感じだ。
本作におけるバトルでは剣による攻撃やマテリアを使った魔法などを織り交ぜてリアルタイムで戦っていくため、アクション性が他のシリーズ作品よりも高くなっている。とはいえ、ゲーム序盤はそれほどアクションがメインというわけではないなと思っていた。しかし、ゲームを進めていくにつれて、ザコキャラもどんどん固く手強くなっていく。
ボス戦にいたっては、油断すると一撃で倒されてしまうシーンも出てくるため、それなりに緊張感が生まれる。死にゲーというほどではないものの、ゲームを通してある程度プレーヤー自身がバトルに慣れていく必要があるのだ。
実はこの辺りのバランスは絶妙に計算されており、ゲーム進行に合わせて封印されていたものが徐々に解放されていくような作りになっている。たとえば、ザックスがソルジャークラス1stに昇格を果たすと、装備できるマテリアの数が4つから6つまで増える。また、それに合わせて異なるマテリアを組み合わせることで別のマテリアを作ることができる「マテリア合成」という要素も解放されていくといった感じだ。さらにゲーム中盤からは、待望のバスターソードも扱えるようになるのである。なお、マテリア合成についてはプレビュー記事にて詳細に解説している。
バスターソードの入手でザックスの戦闘スタイルが大きく変わる!
バスターソードは、「FF7」の主人公であるクラウドが背中に背負う大剣でメイン武器でもある。だがそれだけにとどまらず、あまりにも印象が強いことから「FF7」シリーズを象徴するようなイメージにもなっている。ザックスは最初からこのバスターソードが使えるというわけではなく、とあることがきっかけで使えるようになるのだ。
バスターソードを入手すること、新たな戦闘スタイルを手に入れることができる。実は入手した直後はそのことにあまり気が付かず、同じスタイルで戦闘を続けていた。しかし、あるとき戦闘画面に「バスターソード熟練度」と書かれた表記が追加されていたことに気が付いた。それまで結構な戦闘を繰り返してきたはずなのだが、その熟練度が1パーセントにも満たない数値だったのだ。そこで、どうやったらこの熟練度が上がっていくのか悩んだのである。
そのときに、バスターソード入手時に新たなスタイルを会得したことを思い出した。PS5での操作を例にいうと、バスターソードを入手した後は、□と×ボタンを同時に押すことでガード効果を持つ「構え」の状態になる。そこから□ボタンを押すとアビリティの威力が増大する「強撃」を繰り出すことができるのだ。APは消費してしまうもの、攻守揃った流れで攻撃を与えていくことができるようになるというわけである。
実際にバスターソードでの戦闘スタイルを意識して使うようにしていくと、たしかに熟練度は上がっていった。この数値が上がることでどんな効果があるかまでは実感できなかったのだが、それよりもバトルでこのバスターソードを活用することで、ある程度ゴリ押しできることがわかったのだ。
全体を通して特に苦労した敵が、脱走したソルジャークラス1stのジェネシス戦と、ゲーム終盤に登場したキングベヒーモスだった。とくにキングベヒーモスは、普通に剣による攻撃とマテリアで魔法などを織り交ぜて戦うよりも、バスターソードを活用したほうがゴリ押しすることができた。最後はたまたま召喚獣のオーディンを呼び出せたことで倒せたのだが、それでも十分過ぎるほどバスターソードの威力を感じることができた。
個性豊かなキャラクターたちとついつい引き込まれる緻密なストーリー
ザックスからクラウドへと引き継がれていくことになるバスターソードだが、実は元々の持ち主はザックスの兄貴分ともいえるソルジャークラス1stのアンジールだ。背中にバスターソードを背負ってはいるものの、「使うと汚れる、欠ける、磨り減る」といい、めったに使わず大切に扱ってきた大剣である。そのアンジールはザックスに「夢を持つんだ。そして誇りも」という言葉を常に語りかける。
バスターソードはアンジールの分身ともいえる武器だったが、それを引き継いだのがザックスである。バスターソードは、ただの武器ではなく、アンジールがいつも口癖にしていたソルジャーの夢と誇りの象徴ともいえるものだ。そして、その男たちの思いがこもった大切な武器を、バトンを受け取っていくかのように、「FF7」の主人公であるクラウドが引き継いでいくことになるのである。
アンジール自身は、義理人情に厚く信念の塊といった性格の人物だが、少し前にソルジャークラス2ndや3rdを引き連れて脱走したジェネシスの後を追うように、自らも姿を消してしまう。物語が進むにつれて、彼らの脱走の原因が「プロジェクト・G」と呼ばれる実験がきっかけだったことが明らかになっていく。
ストーリーは想像以上に練り込まれたものとなっており、ソルジャーたちの過去にこんな出来事があったのかと驚かされる展開が随所に盛り込まれている。そして、ひと通り物語を楽しんだ後は、エンドロールで絢香さんが歌う主題歌「Why」を聴きながら、それまでの出来事が走馬灯のように蘇ってきた。ゲームを遊び終わった後、こうした余韻に浸ることができたのは、名作ならではといったところだろう。
ザックスやアンジール以外にも個性豊かな面々が登場する。事件のきっかけを作ったソルジャークラス1stのジェネシスは、常に古典叙事詩である「LOVELESS」を引用するといった、ナルシストな雰囲気を持つキャラクターだ。声を演じるのは歌手のGACKTさんだが、その語り口調や見た目も含めて、まさにはまり役といった感じである。
「FF7」では絶対的な敵役のセフィロスだが、本作では最も信頼できるソルジャーのエリートとして登場する。しかし、本作の物語が進んで行くにつれて闇に落ちていくことになるのだ。このセフィロスとアンジール、そしてジェネシスの3人はそれぞれが親友であり、よきライバルでもあった。その関係性が作中でも描かれており、こちらも見どころのひとつとなっている。
また、前日譚といえば、ゲームに限らず映画などでも必ずと言っていいほど元になった作品のキャラクターたちが登場する。本作では「FF7」のヒロインであるエアリスが登場し、ザックスとの出会いも描かれている。それに加えて、「FF7」のもうひとりのヒロインであるティファもほんの少しだが登場する。
実はプレイ前に少しだけ気になっていたところは「本作はオリジナルのPSP版とどこまで同じなのか?」というところだった。というのも、「FF7」のリメイク版にあたる「FINAL FANTASY VII REMAKE」では、別の世界線と思われるザックスの姿が描かれていたからだ。そのため本作もそちらに寄せているのかな? と思ったのだが……この点についてはベタではあるが、ぜひゲームをプレイしてご自身の目で確かめて欲しい。
クリア後もミッションをやり込みたい人は最後のセーブデータに注意!
途中で調べ物をするなど寄り道も多かったが、メインストーリーをクリアした時点でのプレイ時間は23時間だった。また、かなりやり込んだつもりだったが、クリア時点での「ミッション」クリア率はわずか36パーセントであった。つまり、本編を遊び終わった後も、まだまだやりこみ要素があるというわけである。
ゲームをクリアした後、セーブデータを保存しておくと2週目がプレイできるようになるのだが、ここでひとつ注意してほしいところがある。2週目で引き継がれるデータは、レベルと経験値、SP、所持金、プレイ時間、一部のアイテム、マテリア、一部の装備品、D.M.Wの達成率とブレイク回数、リーチ回数、バスターソードの熟練度、メールのみである。つまり、ミッションはまた1からとなるため、1週目の続きをプレイすることはできないのだ。
最初のプレイでやり残したミッションを最後までクリアしたいときは、セーブデータを上書きせずに別のスロットに保存しておくようにしよう。
今回のプレイでは、敵とのバトル以外でもいくつか詰まったポイントがあった。そのひとつがエアリスのためにワゴン作りの材料を集めるという、ちょっとしたクエストだ。何度も同じ場所を行き来しても進展がなく、もしかして、バグでフラグが立たないのでは? と少し焦ったのだが、そのときPSP版でも同じようなクエストを遊んでいたことを思い出し、なんとか先に進めることができた。
同じように、マテリア合成のレシピなどもPSP版をほぼ踏襲したものになっており、同じレシピが利用できる。ある意味、オリジナルそのままの要素は残しつつも、今風に遊びやすくしているということの証といえる部分かもしれない。
何はともあれ、久々に「FF7」の世界に戻り、物語を思う存分堪能した気分だ。リメイク版の続編である「FINAL FANTASY VII REBIRTH」でもザックスが登場するのか気になるところだが、まずはその前におさらいとして遊んで欲しい1本である。
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