レビュー
「マーベル ミッドナイト・サンズ」レビュー
ヒーローの戦闘と日常に入り込む。無限の「IF」が詰め込まれたマーベル式シミュレーションRPG
2022年12月1日 12:50
- 【マーベル ミッドナイト・サンズ】
- 開発元:Firaxis Games
- 販売元:2K
- ジャンル:シミュレーションRPG
- 発売日:12月2日(PS4、Nintendo Switch、Xbox Oneは2023年予定)
- 価格:
- PC:8,250円(税込)~
- PS5/Xbox Series X|S:9,350円(税込)~
マーベルコミックスのスーパーヒーローたちを題材としたゲームは数多くリリースされているが、その歴史上、初と言われるプレーヤーの分身を主人公として操作できるシミュレーションRPGが12月2日発売の「マーベル ミッドナイト・サンズ」だ。
映画「アベンジャーズ」のように他の映画やコミックス、アニメなどで活躍したヒーローたちが一堂に介して、より巨大な敵と対峙するというのは、アメコミヒーロー作品の特徴でもあり、魅力の1つでもあるのだが、本作もその魅力が盛りだくさんの1本となっている。
今回も登場するヒーローはやたらとゴージャスだ。ドクター・ストレンジ、ブレイド、アイアンマン、スパイダーマン、ゴーストライダーなど、単体でも主人公として1本の映画やゲームなどになっているヒーローたちが登場し、共闘する様子はプレイする前から思わずエキサイティングする。
加えて、日本ではややマイナーなタイトルだが、「ミッドナイト・サンズ (Midnight Sons)」と呼ばれる原作が本作のベースであり、ラスボスとして君臨する悪魔の母、リリスはこの原作で登場したヴィラン(悪役)だ。さらに本作では、こうした超常現象に強いヒーローたちが各作品から呼ばれて、新たな「ミッドナイト・サンズ(Midnight Suns)」を結成しているという世界観なのだ。そのため、比較的マイナーかも?と思われるようなヒーローたちが本作では華々しい活躍を見せており、彼ら、彼女らの作品をもっとチェックしてみたくなるという、好奇心をくすぐられる要素も備える。
また、主人公のハンターをプレーヤーが自在にカスタム可能な、いわばプレーヤーの分身にしたことで、マーベルヒーローたちの世界に自分が直接入り込み、戦闘だけでなくヒーローたちの日常までも共に過ごすことができるという、他の作品にはない本作ならではの楽しみ方が可能になっており、スーパーヒーローたちと会話したり、考えを聞いたりといった様々なコミュニケーションまでもロールプレイできるというのも、本作ならではの魅力であり、無限の「IF」が詰め込まれた点こそが、本作最大の魅力と言える。
シミュレーションRPGとしての内容については本作のファーストインプレッション記事でも触れているので、本稿ではこの辺をおさらいしつつ、物語を進める事でさらに楽しめるようになるユニークな仕掛けの数々を語っていくことにしよう。なおプレイについては、2Kから提供されたコードを使用している。
カードバトル要素強めのシミュレーション!立ち位置やヒロイズムポイントが重要
本作はシミュレーションRPGとなっているが、厳密にはシミュレーション要素も含むカードゲームバトルという側面が非常に強い。シミュレーションRPGと聞いてまずイメージするのは「ヒーローをここに移動してこの攻撃を撃つ」……といったような操作だと思うが、本作は少しイメージが違う。つまり、カードを使用することで、移動と攻撃なども含めてのアクションが一括で行なえるようになっており、通常のシミュレーションRPG以上にスムーズな操作感となっている。
一方でシミュレーション要素ではキャラクターの“立ち位置”が非常に重要で、攻撃をした際のノックバックや、フィールド内のオブジェクトを活かした攻撃などには、この立ち位置が大きく関わってくる。敵との戦闘をより有利に進めるために、敵との位置関係や環境利用を意識するといいだろう。
本作に用意されたアビリティカードは、通常攻撃「アタック」と特殊能力を使う「スキル」、ヒーロー固有のスペシャルなアクション「ヒロイック」の3種類。戦闘に参加するヒーローにはそれぞれに設定されたデッキがあり、カードはこのデッキの内容を元にランダムで配布される。
デッキはヒーロー1人につき8枚のカードで構成されており、それら全てのカードがシャッフルされ配布されるため、ヒーロー3人でバトルする場合は、24枚のカードから6枚といった形でごく一部しか利用できない。そのため、全てのヒーローが活動できず、偏りがあって特定のヒーローしか動けないといった事態も発生する。このような場合は、「引き直し」というアクションも用意されており、これを使う事で現在配布されたカードのうちどれかを引き直しできる。
本作ではカードを使ったアクションを行なうと、ヒロイズムと呼ばれるポイントが獲得できる物と、このヒロイズムポイントを消費するカードが存在する。ヒロイズムポイントを使う事で、より強力な攻撃や補助が可能なヒロイックカードが使えるようになる。
ヒロイズムポイントは、カードを使う以外にもフィールド内のオブジェクトを活かしたアクション「環境利用攻撃」などにも利用できる。この環境利用攻撃はカードポイントを消費しない。つまりカードを使い切ってしまった状況であっても敵に攻撃を仕掛けることができるので、ヒロイズムポイントをどのように貯めて、どこに消費していくかも、本作における重要な攻略ポイントと言える。
なお、本作ではカードによるアクション以外にもシンプルな「移動」も用意されている。敵の範囲攻撃などもあるため、カードポイントとは別に移動ポイントがあり、これを使う事でヒーローたちを特に制限なく、任意の場所に移動することが可能だ。ただし移動ポイントは1ターンにつき1ポイントしかないため、全てのヒーローを自由に移動できるわけではない。全てのヒーローを移動させたいような場合は、カードを使ったアクションを利用しての移動メインで立ち位置を変更し、カードがなかったり、カードを使う余裕がないヒーローの移動に移動ポイントを使う、といった戦略が必要だ。この辺りが通常のシミュレーションと異なる、本作特有のポイントと言える。
バトルでゲットした報酬から新たなアビリティカード獲得!
本作の成長要素は、バトルに参加して経験値を得ることで可能なレベルアップと、新たなアビリティカードの収集と、カード自体の強化だ。本作のデッキを構成するアビリティカードは非戦闘時にヒーローたちの拠点である「大聖院」内にて強化できる仕掛けが用意されている。
本作ではバトル報酬などで「ガンマコイル」というアイテムが得られる場合がある。このガンマコイルを、大聖院の奥に用意された怪しげな研究エリア「煉魔炉」にいるトニー・スタークに声をかけて解析することで、新たなアビリティカードがゲットできるのだ。ここで得られるカードはこれまでと異なる新たなアビリティの可能性もあるし、全く同じアビリティの場合もある。
同様にバトル報酬などで「アーティファクト」というアイテムを手に入れた場合は、同じく「煉魔炉」にいるドクター・ストレンジに調査を依頼することで、「エッセンス」というエネルギー(リソース)が手に入れられる。エッセンス自体は実は大聖院内をうろうろしているだけでも拾える上に、フィールド内に不定期に湧き出す物なので、見かけ次第逃さず拾っておけばどんどんと貯められる物なので、なるべく多く貯めておくことをオススメしたい。
リソースは後述のカード強化に使えるほか、戦闘時に利用可能な戦闘アイテムを作成する素材としても使える。この戦闘アイテムについては、バトルに1つだけ持ち出しが可能となっており、カードポイントやヒロイックポイントなどを消費せず、いつでもどこでも利用が可能なため、厳しい戦闘のお供には是非持っていきたい。
カードの強化自体はブレイドのいる訓練所にて行なえる。条件が整ったアビリティカードのみアップグレードでさらに強化が行なえる。例えば最初のアップグレードは同じアビリティカードを2枚持っていること、そして前述のリソースポイントを消費することでアップグレードが可能だ。
アップグレードを行なう事で、カード自体の能力が上がったり、新たな追加能力が付加される。例えばアイアンマンの「クイックブラスト」のアタックカードは、通常はクイックのアタックカード(使用して敵を倒せば、カードの利用制限回数が減らない)なのだが、強化されることで、さらにアイアンマン用のカードが1枚追加で引ける能力が付加される。
このようにバトルに連れ出してヒーローたちのレベルを上げ、新たなカードを手に入れたり、さらにカードを強化したりと、ヒーローがどんどんと強くなっていく。
また、研究エリア「煉魔炉」自体もアップデートが可能となっており、「煉魔炉アップグレード」の項目から強化することで、新たな施設がどんどんと増えていく。前述の戦闘アイテムが作成できる「アイテム作業台」はこのアップグレードで新たに追加された設備となっている。強化可能になったタイミングで通知が出るので、そこを見逃さずに欠かさずアップグレードしておきたい。
新たなアビリティカードの追加については、前述のガンマコイルの解析以外にも、ストーリーを進めることで追加されるコンピューター「C.E.N.T.R.A.L.」から挑戦できる「ヒーロー任務」を遂行することでも獲得が可能だ。このヒーロー任務ではアップグレード済みのアビリティカードが報酬として用意されていて、待つだけで任務は完了する。
ただし、ヒーロー任務参加中のヒーローは、任務が終わるまでミッションのバトルに参加できなくなるため、バトルの事も考慮してヒーロー任務を行なう必要がある。
なおバトルについては、ストーリーを進められるストーリーミッション以外にも「通常」ミッションが用意されており、これらはいつでも挑戦可能だ。こうしたミッションをクリアすることで、慌てずともヒーローたちをじっくり強化しながら進めるスタイルでのんびり遊ぶのも面白い。通常ミッションでは、過去にストーリーミッションで挑んだ敵に再挑戦が可能なので、より効率的に倒すための攻略を考えて挑戦するといった楽しみ方も可能だ。
まるでオープンワールド?広大な敷地内を探索する「大聖院敷地内の探索」
本作はストーリーを進めていくと、主人公の新たな能力「力の言葉」が使えるようになる。この能力は戦闘で使うといった能力ではなく、大聖院のフィールドの一部で使う事で、新たな道が開けるようになる能力なのだ。そして、力の言葉が使えるようになったその日から、大聖院周辺のマップを探索する新たな物語が始まる。
大聖院の周辺には主人公が幼い頃から過ごした大自然と遺跡のような物が点在している。これらをくまなく探索していくことで、主人公の血統、ブラッド一族の謎が解かれ、新たな能力や主人公、ハンターの生い立ち、これまで積み重ねてきたハンターの物語が分かるようになっていくという仕組みだ。
ちょっとしたおまけかと思ってフィールドの探索を開始してみたのだが、この大聖院周辺のフィールドが、想像以上に広い! 原則としてほぼ自然の中に石垣や石の壁、歩道などの人工物がわずかに存在する敷地となっているため、予想以上に広く感じられる。このフィールド探索では、ハンターは自由に歩き回ってフィールド内を物色できる。ただし、移動は可能だがジャンプ操作が行なえないため、移動可能な場所をひたすら走り回ることになる。
そして色々な謎の欠片があちこちにありすぎる! まぁ、その殆どはタロットカードやハンターの昔の日誌などといったコレクターズアイテムがメインとなるのだが、後日、薬の調合などに使用する素材の回収や、「神秘の力」と呼ばれる回収アイテムの量や質が向上する能力を強化するためのポイントが得られるなど、強化の側面もあるため、侮れない。
そしてこの能力は「力の言葉」以外にあと3つ用意されているようで、これら能力がどのタイミングで解放されていくのか、続きが気になると寝る間を惜しんでプレイし続けてしまう中毒性がある。
その他に探索フィールドには青く光る「安息地」と呼ばれる不思議なエリアもある。ここは後述のヒーローたちとの交流で使用するエリアとなっているが、1つの安息地につき1人のヒーローとしか来られない仕組みのようなので、より多くの安息地を把握しておく必要があるのだ。
さらにこのフィールド探索は、本編のストーリー進行とは別に進められるものなので、いつでも探索に出られる。広い上に、いくつかのエリアに分割されているので、バトルに疲れたら大自然の中をのんびり歩いて気分転換といった用途にも使える。
スーパーヒーローたちと仲良くなる!交流モードでよりフレンドリーに
上でも触れたが、スーパーヒーローたちと夢の交流は本作の大きなポイントのひとつだ。本作では主人公のハンターが既存のヒーローとは異なるオリジナルヒーローということもあり、様々なコミュニケーションが取れる交流イベントが用意されている。大聖院に集まったヒーローたちと友好関係を深めたり、プライベートを共に過ごすことができるという、バトルとは異なった魅力ある仕掛けが用意されている。
友好関係の深め方は様々だが、例えば、ニコ・ミノルと交流を深める時は映画を観るなど、基本的には各ヒーローたちの趣味などに寄り添う形の物が多い。逆に前述の「安息地」を使う場合は、ハンターが主導して大自然の中を散歩してトークをする形がメインとなっている。こうした交流イベントはヒーローごとに豊富に用意されており、これだけで遊び続けたくなるほどのボリュームなのだ。
さらにこのトーク自体も曲者で、どのヒーローと会話する場合も、複数の選択肢が登場し、選択肢次第でヒーローとの友情がスムーズに上がるか、それどころか下がってしまうかが決まる。会話の内容については、ヒーローごとの情報が色々とチェックできる物になっているため、単なる友情ポイントのステータス以上の楽しみが待っている。
友情を深めるにはシンプルに会話を行なうだけでプラスになる場合もあれば、訓練場のトレーニングを一緒に行なうことでも友情が深められる場合もあるなど、様々な方法がある。トレーニングについては4日に1回という制約があるので、満遍なく仲良くやっていくのがいいだろう。トレーニングを終えると、リソースが手に入る場合があるほか、一緒にトレーニングしたヒーローとの友情ポイントがさらに上がる。
友情が深まっていくと、一緒にバトルに参加した際にボーナスが付与されるなど、バトルが有利に進むような仕組みが用意されている。どのヒーローとも臆せず、ガンガン仲良くしていきたい。たとえばブレイドは、見た目や話し方は若干怖いが、仲良くなってくるとちょっとしたジョークも飛ばすなど、なかなか楽しいヤツなのが分かってきたりして色々と発見があるだろう。
その他にも本作には「スーパーリンク」と呼ばれる、スーパーヒーロー専用SNSが用意されており、こちらでヒーロー同士のテキストのやり取りが楽しめる仕組みとなっている。朝起きるとゲーム画面上に通知が表示されて、スーパーリンクの更新履歴が分かるようになっており、ゲームの世界でも通知が出るのかと不思議な感覚に陥る。普段はあまりメインのエピソードとは関連しないが、世界観が深まる興味深い要素だ。
また拠点では「目標」が設定されており、一通りの目標が終わると時間帯は夜になる。このような状況になった場合にやることは、前述のフィールド探索か、寝るかの2択だ。
基本的には研究、訓練所、ヒーロー任務、スーパーヒーローとの交流、ミッション(敵とのバトル)、といったアクションを一通り終えたら素直に自室のベッドに戻って寝てしまうのが流れ。これにより新たなストーリーが展開し、新たなミッションや、新しい交流、訓練などが行なえるようになる。
常に忙しくて現実離れしているスーパーヒーローでも、しっかり「睡眠」を取る描写があるのは面白い。ただし夢の中でストーリーが進展する場合もあるので、油断も隙もないのが本作の魅力の1つでもある。
ニューヒーロー、ハンターの運命や如何に?
「マーベル ミッドナイト・サンズ」は非常に多くのエッセンスが詰め込まれたシミュレーションRPGだ。ここまで紹介した内容のほか、ハンターが光と闇のどちらに進んでいくかが、会話の選択肢に仕込まれており、選択次第で、どんどん光のヒーローになっていったり、闇のヒーローになっていったり、という仕掛けも用意されている。ストーリーにどこまで影響するかは不明だが、マルチエンディングの可能性もありそうで、この辺りもオリジナルの主人公ならではの自由度が感じられて、好印象だ。
そしてなんといっても、スパイダーマン、アイアンマン、キャプテン・マーベルといった比較的SFの世界観で活躍したヒーローたちと、ドクター・ストレンジやニコ・ミノル、マジックなどの超常的な世界観で活躍したヒーローたちが一堂に介する大胆さと、それでいて強引さを感じさせないマーベルらしいストーリー展開は見ていてとても自然に入り込める内容に仕上がっていると感じた。
マーベルヒーローたちが本作の主人公、ハンターと共闘して、超常的な世界観である「ミッドナイト・サンズ」に登場した悪魔の母、リリスを相手にしたバトルを展開するという、世界を天秤にかける壮大な親子ゲンカの行きつく先は天国か地獄か。是非最後までストーリーを見届けてみたい1本に仕上がっている。
そして、自身の分身とも言えるハンターが、戦闘以外でスーパーヒーローたちとコミュニケーションが取れるという、本作ならではの交流イベントの数々がある。ヒーローたちの知られざる一面をさらに奥深く知る事ができるのはマーベルヒーローファンにとってもありがたい内容で、さらには自身の分身がマーベルヒーローたちの世界に入り込んで活躍してくれる。そうした中で、ヒーローたちとの距離をさらに縮められる仕掛けこそ、他では見られない本作最大の魅力ではないだろうか。
マーベルファンなら迷わずプレイしてほしいことは言うまでもないが、スーパーヒーローたちの新たな側面を知ったり、より親近感が持てるようになったりする点では、マーベル作品を映画やコミックスなどのざっくりとしたイメージでしか知らない人にこそオススメしたい1作だ。
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