レビュー

「ウィッチャー3 ワイルドハント」“新世代機向けアップデート”レビュー

もう1度「ウィッチャー」をプレイしたくなる! 7年の時を経て“最新仕様”に

【ウィッチャー3 ワイルドハント:新世代機向けアップデート】

12月14日 配信開始予定

 CD PROJEKT REDが2015年にリリースした「ウィッチャー3 ワイルドハント」。発売以来、数々の「Game of the Year」を総なめにしたのち、追加DLCやプラットフォームも拡大するなど、今なおプレイされ続けているオープンワールドアクションRPGの一つだ。

 そんな“過去最高のビデオゲーム”として呼び声が高い本作に、過去最大のアップデートが到来する。それがプレイステーション 5やXbox Series X|Sに正式対応した“新世代機向けアップデート”だ。レイトレーシングへの対応を含むグラフィックスの向上や、DualSenseの機能を駆使したユーザー体験の向上、新コンテンツやフォトモードなど、「ウィッチャー3」が2022年仕様に生まれ変わった。

 そこで本稿では「ウィッチャー3」の新世代機向けアップデートのレポートをお届け。「パフォーマンス」と「レイトレーシング」の2つのモードのグラフィックスの違いや、ハプティクス機能などのユーザー体験の向上、フォトモードを中心に、2022年仕様の「ウィッチャー3」の魅力をお伝えしていく。

【ウィッチャー3 ワイルドハント コンプリートエディション 新世代機向けアップデートトレーラー】

「ウィッチャー3」が最新のグラフィックス機能に対応! 60FPSの“パフォーマンス”か、30FPSの“レイトレーシング”か。

 まずは「ウィッチャー3」のストーリーについて軽くおさらい。ニルフガード帝国と北方諸国の戦乱を舞台に、プレーヤーは怪物退治の専門家(ウィッチャー)である“リヴィアのゲラルト”を操り、<予言の子>とも呼ばれるシリを探す旅に出る。途中には、戦争にまつわるグロテスクなシーンや、男と女の関係からくるエロティックなシーンもあるなど、ゲラルトの物語のみならず、人間の“欲”を映し出すような、興味深いストーリーが展開される。

 「ウィッチャー3」は、2015年発売の比較的新しいタイトルで、グラフィックスも古いとは思わせないが、近年の大幅なグラフィックス性能の向上を見ると、物足りない箇所もあった。そこで新世代機向けアップデートでは、PS5やXbox SX、現行世代のPCの性能を活かすため、グラフィックスが大幅に強化されている。

 1つ目はレイトレーシングに正式対応したこと。現実世界と同じように、光の道筋と反射をGPUにて導き出すことで、ゲーム内でよりリアルなライティングを実現している。PS5やXbox SXでは、オプションから「フレームレートモード」を選択することで、「パフォーマンス」と「レイトレーシング」の2つのモードから選ぶことができる。

グラフィックの設定には、オプション画面より「ディスプレイ」を選択
ディスプレイを選択した後に「グラフィック」を選択する。少し設定が深いところにあるので、注意したい
「フレームレートモード」が今回の目玉となる部分。レイトレーシングと……
パフォーマンスの2種類より選択可能だ。詳しい違いはのちほど

 今回プレイに使用したのはPS5。「レイトレーシング」は、その名の通りゲーム内でレイトレーシングを実行する。レイトレーシングは、専用のコアで演算するほどの重い作業の為、レイトレーシングを引き換えとして、フレームレートは“目標30FPS”となっている。一方の「パフォーマンス」は、レイトレーシングを実行しない代わりに、フレームレートが“目標60FPS”となり、より画面がヌルヌルな環境でプレイすることができる。

 なお、解像度はどちらも“動的解像度”。戦闘シーンなどの重い場面に出くわすと、解像度を落としながらレンダリングするかわりに、フレームレートを稼ぐというものだ。だが、新世代機向けアップデートではAMD社のアップスケーリング技術「AMD FidelityFX Super Resolution」に対応し、解像度を落とした状態でも、映像品質を維持することができるようになった。

 筆者は「レイトレーシング」と「パフォーマンス」の違いが見わけられるか心配だったが、それは杞憂に終わった。「レイトレーシング」を選択すると、光源に対する影や、水面に映る空が画面内に再現されており、“こうも違うものか”と実感させられた。また「パフォーマンス」では「よくよく考えると、ここに影がないのは変だな」と思う部分も、「レイトレーシング」にすると影が再現されている。さらに、環境光の反射も再現されており、現実に近い感覚がゲーム内で味わえるのが特徴だ。

こちらの画像は「パフォーマンス」モード。中央の焚火している箇所には、柱が数本立っているが……
「レイトレーシング」モードを選択すると、焚火の光源を基に、柱の影が再現されている。“よく考えると”、影がないのは不自然ということに気づかされるのだ
こちらは「パフォーマンスモード」。外から強い光が照りつけている
同じ場面での「レイトレーシング」モード。床からの照り返しがゲラルトにあたり、少し明るくなっている
「パフォーマンス」モードの外の様子。美しい空が広がっているが……
「レイトレーシング」モードでは、川の水面に空の反射が再現されている

 だが、「レイトレーシング」モードのフレームレートは“目標30FPS”。映像の“ヌルヌル度合い”は低めで、戦闘シーンでは、時折「あ、今フレームレートが下がってるな」と感じさせる場面もあることは事実だ。画面がカクつくまでには下がらないが、プレーヤーによっては酔ってしまう可能性もあるだろう。

 そのため、「ウィッチャー3」のストーリーを存分に楽しみたい人、美しい世界でゆったりプレイする人は「レイトレーシング」。一方、タイムアタックに挑戦する人や、スピーディな戦闘を楽しみたい人は「パフォーマンス」を選択するなど、それぞれのプレイスタイルで「フレームレートモード」を選択することをオススメする。

 なおPC版のアップデートでは、レイトレーシング対応のほか、NVIDIAのアップスケーリング技術「DLSS」に対応。同社のGPU「GeForce RTX」シリーズにて利用できる機能で、AIを利用することで、視覚的な損失を発生させないまま、フレームレートを向上させることができる。またXbox Series Sでは、60FPSの「パフォーマンス」モードと、より高いビジュアルを優先する30FPSの「クオリティ」モードが追加される予定だ。

「レイトレーシング」モードだと、戦闘シーンの直後はフレームレートが下がる場面も見られた。プレイスタイルに応じてモードを変更するのがオススメだ

乗馬時の繊細な振動や、剣の重さを再現! “ハプティック&アダプティブトリガー”でユーザー体験が向上

 新世代機向けアップデートではグラフィックス以外にも、ユーザー体験を向上させる機能が追加されている。既にご存知のかたが多数だと思うが、PS5の純正コントローラー「DualSense」には、ユーザー体験を向上させる要素として、従来の振動機能を強化したハプティックフィードバックや、R2・L2トリガーに抵抗を加える「アダプティブトリガー」が実装されている。「ウィッチャー3」の新世代機向けアップデートでは、この2つの機能に対応した。

 まずはハプティックフィードバック。「ウィッチャー3」での移動手段は、ゲラルトの飼い馬・ローチでの移動が基本だ。ローチが歩き出すとコントローラーから「コツコツコツ」と軽快なリズムで振動し、全力疾走させると「ドドドッドドドッ」と、ローチが力強く地面を蹴り上げる連続した振動が、手のひらに伝わってくる。ローチにはかわいそうだが、敢えてゆっくりと歩かせたり、急に全力疾走させたりと、この振動がクセになってくるのだ。

 またハプティックフィードバックは、所持品などのメニュー画面でも適用されている。調薬が完了した際に、“ズーン”という低音が鳴るが、DualSenseからも“ズーン”と重たい振動が来る。あらゆる場面でフィードバックが流れてきて、“この場面で振動するのか!”と筆者自身も驚いた。なお、振動機能が苦手な方などは、ハプティックフィードバックをオフにすることもできる。

ローチが歩いているときは「コツコツコツ」と軽快なリズムで振動
ローチが全力疾走すると「ドドドッドドドッ」と、大地を蹴り上げるような連続した振動になる
調薬後には“ズーン”という振動が伝わってくる

 さらに、DualSenseからの新機能「アダプティブトリガー」にも対応。R2トリガーにて発動できるゲラルトのアビリティ「印」は、衝撃波を繰り出す「アード」ではトリガーが2段階ボタンのように振る舞っていた。一方、範囲内の敵の動作を遅くする「イャーデン」では、R2トリガーを押し込むと、トリガー自体が振動し、罠を配置したことがすぐにわかるようになっている。同じ「印」でも、効果によってトリガーの振る舞いが異なるのは、とても面白い。

 なお、今回のアップデートで対応したハプティックフィードバックとアダプティブトリガーは、PS5・PCにて使用できるDualSense向けの機能となっている。Xbox Series X|S付属のXboxワイヤレスコントローラーでは新機能を体感できないため、注意が必要だ。

ゲラルトのアビリティ「印」よりアードを発動している様子。R2トリガーが2段階ボタンのようになり、2段階目を押し込むことで衝撃波が出る
一方、イャーデンを発動すると、R2トリガー自体が振動し、イャーデンを設置していることが指先から伝わってくる

ドラマ「ウィッチャー」×新クエストで聖地巡礼!? 「ウィッチャー3」にもフォトモードが遂に実装

 今回のアップデートでは、ゲーム内の作りこまれたワールドで、“映え写真”を撮影できるフォトモードが「ウィッチャー3」にも遂に実装された。「ウィッチャー3」は作りこまれたマップが魅力で、ゲラルトを連れて様々な“映え写真”を撮りたいユーザーも多かったのではないだろうか。

 フォトモードはワールドを散策中に、R3ボタン+L3ボタン同時押しで起動可能。スティックやR2・L2を操作し、画角の変更やズームすることはもちろん、傾きなども変更することができる。さらに、ボケ量を操作する「被写界深度」タブや、エフェクトも追加できるなど、本格的な撮影が可能だ。

フォトモードでは、スティックやボタンを駆使して、映える角度を探す
被写界深度の操作やエフェクトの追加など、本格的な撮影が可能だ

 さらにアップデートでは、新たなコンテンツとして、新クエスト「<永遠の炎>の影で」が実装。こちらはサブスクサービス「Netflix」にて配信中のドラマ「ウィッチャー」シリーズと、ゲーム「ウィッチャー」シリーズの物語を“繋ぐ”クエストとなっている。フォトモードと組み合わせて、ドラマの聖地巡礼をすることもできそうだ。

 残念ながら筆者は「Netflix」に加入しておらず、ドラマは見られていない。だが、ドラマを見ていないプレーヤーでも、新クエストとして楽しむことができるとのこと。こちらはぜひ、「ウィッチャー3」の新世代機向けアップデートを適用した状態で、プレイしてほしい。

ローチに乗ったゲラルト。疾走感のある画角に仕上げた
印「アード」を繰り出すゲラルト
最年長ウィッチャー・ヴェセミルの1枚。食べているのはリンゴのようだ

“最新仕様”となった「ウィッチャー3 ワイルドハント」。既にプレイした方も、これからプレイする方もオススメの1作に

 ここまで「ウィッチャー3 ワイルドハント」新世代機向けアップデートのレポートをお届けしてきた。レイトレーシングによるグラフィックスの向上や、最新のコントローラーへの対応など、最新仕様となった本作は、既にプレイした人はこれまでの「ウィッチャー3」での体験をアップデートできるほか、これから「ウィッチャー3」をプレイする人は“最高の状態”となった「ウィッチャー3」からプレイすることができる。

 また、ドラマ「ウィッチャー」シリーズから参入してきたユーザーに嬉しいコンテンツも追加。「サイバーパンク2077」で色々と話題になったCD PROJEKT REDだが、今回のアップデートで「ウィッチャー」というIPがストーリーでも、グラフィックスでも、まだ世界で通じるタイトルであることを証明している。今回のアップデートを機に、まだ見ぬ「ウィッチャー」次回作にむけて、CD PROJEKT REDには頑張ってもらいたい。

ゲラルトの豪快な入浴も、最新グラフィックスにリニューアル。次回作でも豪快な入浴に期待したい