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【特別企画:学生eスポーツの今】「League of Legends」編

日本最高峰の大学生「LoL」プレーヤーたち――東京工科大学e-SportsサークルA2Z&芝浦工大eSportsサークル

10月19日 公開

特別企画:「学生eスポーツの今」

 「eスポーツ」の流行は目覚ましく、今やその流れはプロに限らず、一般の社会人や学生にまで波及し始めている。中でも次世代のeスポーツを支えるのは、なんといっても若きプレーヤーたちだ。

 そこで今回は「学生eスポーツの今」として、学生大会が存在する「コール オブ デューティ ワールドウォーII」、「League of Legends」、「ストリートファイターV」の3タイトルをピックアップ。学生たちにインタビューを行ない、彼らが「今」どのようにeスポーツに取り組んでいるのかを探る。

第1回:「コール オブ デューティ ワールドウォーII」編
第2回:「League of Legends」編(本稿)
第3回:「ストリートファイターV」編

今回の座談会は「LFS(ルフス)池袋 esports Arena」の協力により行なわれた。本会場は都内最大級のeスポーツ施設であり、「LoL」の学生イベントはもちろん、様々なイベントが行なわれている。また、個人のユーザーに対しても最高レベルのゲーミング環境を提供している

 ライアットゲームズのPC用MOBA「League of Legends」。現在開催中の世界大会「2018 League of Legends World Championship」など大規模な世界大会が毎年話題になるが、実は学生の活動が盛んなタイトルでもある。

 ライアットゲームズは学生向けのコミュニティ支援プログラムとして「LeagueU」を運営しており、学生リーグを関東・関西で行なうほか、各種イベントのサポートを行なっている。「League U」のほとんどのイベントは学生を中心として運営されており、大会の実況・解説も学生が務めるなど、文字通り学生主体の活動となっている。

 今年7月には「LeagueU」が主催する全日本大学「LoL」選手権「JCC 2018(League of Legends Japan Collegiate Championship 2018)」のオフライン決勝戦が行なわれ、出場選手はもちろん、多くの学生が観戦し、その後のアフターパーティも楽しんでいた。

 今回は、プロリーグとは一味違った、学生ならではのシーンの真っ只中にいるプレーヤーたちの声を聞くため、JCCで決勝を争った「芝浦工大eSportsサークル(以下、SEC)」と「東京工科大学e-SportsサークルA2Z(以下、TUT)」のメンバーにお集まり頂いて座談会を行なった。なお、TUTはJCCで優勝を飾ったことにより、日本代表の学生として国際大会にも出場したチームでもある。

左からTUTのOrangeNa選手、NanaAlly選手、MadEmperor選手、Cine選手と、SECのAloudy選手、moyashield選手、こめっこ選手、めぐみん選手、あおあふ選手、ネリーマのはね選手。計10名が座談会に参加してくれた

サークル活動の基盤は「オンラインで練習」

――まず、両サークルの設立経緯を教えてください。

SEC Aloudy選手:僕たちは初期メンバー3名が「LoL」をやっていて、「5人でノーマルをやりたい!」と思いサークルを設立しました。人を集める段階でSNSで声をかけていたら思った以上に人が集まってしまい、今では総勢50名、その内「LoL」プレーヤーが30名もいるサークルになりました。勿論、「LoL」だけじゃなく他のゲームをプレイしているメンバーもたくさんいます。例えば「レインボーシックス シージ」などですね。

――プレイタイトルが違うメンバー間での交流はあるのでしょうか?

SEC ネリーマのはね選手:いえ、残念ながらあまりないですね。


――なるほど。TUTさんはいかがですか?

TUT Cine選手:僕たちはもう設立メンバーが卒業してしまっているので、経緯はわかりませんが約60名が参加してるサークルです。SECさんと同じで、格闘やバトロワ系タイトルなど色々なゲームをやっているメンバーが集まっていますが、あまりタイトルを跨いだ交流がないのも同様ですね。

SEC めぐみん選手:もちろん、メインのゲーム以外もプレイしますし、「LoL」を触らない時期もありますけど、やっぱりメインゲームのメンバーで固まりますね。

TUT NanaAlly選手:僕たちもそんな感じです。寧ろ、「LoL」をずっとやり続ける人は少ないですね。「LoL」は帰る場所という感じです。結局、1番奥が深くて、面白いゲームですから。

SEC あおあふ選手:確かにそうですね。僕たちは「LoL」歴がそれなりに長い人が多いです。シーズン2からプレイしているメンバーもいます。だけど、みんな1度「LoL」を辞めています。それでも、友達の影響だったり、面白いと感じるゲームがなくなったりして「LoL」に帰ってきたんですよね。

TUT MadEmperor選手:僕たちも昔からプレイしているメンバーが多いのですが、中には日本サーバーのオープン後から始めた人もいます。それでも、やっぱりみんな1度辞めたり、たまに離れたりして、でもまた何かの拍子に戻ってきて……というのを繰り返しています。「LoL」はそれだけ面白いゲームなんですよね。

――新入生もゲーマーが多いのでしょうか?

TUT OrangeNa選手:そうですね。すでに何らかのゲームをプレイしている新入生が多いです。あとは大学生になって1人暮らしを始めて、PCも買ってゲームができるようになったことがきっかけでサークルに入ってくれる人もいます。「LoL」未経験という人も多いですが、初心者講座もやっていますし、すでにランクを回している1年生もいますよ。

SEC Aloudy選手:僕たちのサークルにも、「LoL」に興味を持ってきてくれた新入生が結構な数います。TUTが他のサークルと共催していた「新歓LoLフェス」にも来てくれました。

座談会は終始和やかな雰囲気で行なわれた

――練習等はどのような環境で行なうのでしょうか?

TUT Cine選手:オンラインでつないで練習しています。恐らく、多くのサークルがそうやっていると思いますね。PCのあるサークル室を持っているのは東大くらいではないでしょうか。

SEC めぐみん選手:普段はゲームにログインすると誰かがいて、一緒に遊んだり、練習したりします。大会前は日程を決めて集まるんですが、ちょっと遅刻などは多いですかね……。オンラインで集まる分、気が緩みやすいのかもしれません。

TUT NanaAlly選手:確かにオンラインだと集合時間は緩くなりがちですが、オンラインなら家の距離が遠くても集まれますし、遅くまでできるのはいい点ですね。

――オンラインという事は、通話ソフトを使ってやり取りをするんですよね?

SEC ネリーマのはね選手:そうですね。普段は「Discord」を使っています。プレイ中に雑談したり、指示を出せたりするので通話は必須です。ゲーム中って、怒鳴りあったりするイメージがあるかもしれませんが、僕たちは仲がいいのでゲーム中に喧嘩をしたことはありません。ただ、遅刻が原因になって喧嘩になったことはありますが(笑)。

TUT MadEmperor選手:僕たちも仲がいいのでプレイ中に言いあったりすることはないですね。

――練習の内容ですが、練習試合(スクリム)などを組むのでしょうか?

SEC こめっこ選手:そうですね。でも、スクリムはそんなに頻繁にはやっていません。モチベーション次第ですね。新しい戦術などを試したくなると上がります。JCCの前はコミュニケーションの確認を取るなどもしましたね。

TUT OrangeNa選手:大会前でも、各大学が協力しあってスクリムをもっと開けるようになれば、学生サークル全体として良い事だと思います。今後、スクリムを気軽にできるような環境をつくっていきたいですね。

――両チームではスクリムを組んだことはありますか?

TUT Cine選手:いえ、不思議なことに実はないんですよね。個々のメンバーがノーマルで遊んだりはするのですが、チーム同士だと前回のJCCの決勝戦が久しぶりの対戦でした。SECさんには予選で1度負けているので、あの時はBan/PICK(どのチャンピオンを使用禁止・使用するかの選択。戦略のぶつかり合いとなる競技シーンでは重要となる)を事前にかなり詰めました。

SEC moyashield選手:スクリムは知り合いの繋がりで組まれる事が多いのですが、なんでTUTと組んだことがないんだろう……不思議ですね。

学生ならではの競技シーンは「風のうわさ」でメタが決まる!?

前回のJCC決勝でも、プロ顔負けの熱い戦いが繰り広げられた

――普段の練習がオンラインとのことですが、オフラインでの活動はやはり「LeagueU」の支援があってこそなのでしょうか?

TUT OrangeNa選手:そうですね。「LeagueU」が無かったらここまで学生競技シーンやオフラインイベントは活発になっていませんでした。

SEC Aloudy選手:「League U」はPCの貸し出しやイベントの景品の提供などをしてくれています。大規模な大会の運営や、学生の競技シーンが生まれたのも「LeagueU」の存在が大きいです。

――今ちらっと学生競技シーンの話が出ましたが、確かにプロリーグとは違ったメタが形成されていて、学生大会だと普段見られないようなチャンピオンがピックされたりしていますよね。

TUT NanaAlly選手:そうですね。そういう特殊なメタができた主な要因は、みんなプロと違って使えるチャンピオンの幅が狭いからだと思います。珍しいチャンピオンがピックされるのはもちろんですが、特定のプレーヤーの得意なチャンピオンを片っ端からBanするようなこともよくありますからね。

SEC moyashield選手:大会で珍しいチャンピオンが暴れると、すぐに横のつながりで話が流れてくるんですよね。「〇〇さんはあのチャンピオンが強い!」というのが風のうわさで流れていくと、次の試合からはずっとBanされ続けるか、対抗策としてそのチャンピオンに有利なチャンピオンを出され続けてしまいます。

TUT MadEmperor選手:そうなると、使えるチャンピオンを増やしていくしかありません。特にそのパッチで強いチャンピオンは使えないと話にならないので猛練習しますね。そうすると「あいつは今強い〇〇が使えるらしい」というのが噂になってBanされるようになりますが、Ban枠(各チームがBanできるのは各5体、合計10体まで)を使わせることでBan/Pickを有利にできるので。

――プレイの質もプロ顔負けですが、Ban/Pickまで深いやり取りがあるのですね。TUTの皆さんは今年8月に行なわれた国際学生大会に出場されましたが、海外の学生との対決でもそういった情報戦はあったのでしょうか?

TUT NanaAlly選手:はい。ピックこそ学生大会らしく、「ウディア」のような珍しいチャンピオンが暴れていましたが、特定のプレーヤーの使えるチャンピオンにBanを集中させることもありました。そういった情報は、国際大会だとコーチが集めてくれたり、グループステージでの試合を見て確認をしたりしています。でも、中国の学生は他のチームよりピックの幅が広くて驚きました。


「LoL」の国際学生大会「2018 League of Legends International Challange Cup」に日本代表として出場したTUT。プロ顔負けの大舞台で試合に臨んだ

――海外の学生と対戦してみて、感じたことはありますか?

TUT Cine選手:やはり日本と海外チームの実力差は感じました。しかし、対抗策はしっかり考えましたし、戦うこともできたのでよかったですね。あと、「LoL」以外の話になってしまいますが、大会後にホテルの前で海外の学生と少しだけ交流できました。お互いつたない英語でしたが、日本のアニメ話ができて楽しかったです。そういう交流も含めていい経験になりました。

――国内だと、海外の学生との交流はあまりないのでしょうか?

SEC ネリーマのはね選手:あまり機会がないのが現状ですが、僕たちのサークルにはブラジルの留学生が参加しています。ただ、彼の家にPCがまだないので、「LoL」はできないでいますね。以前、レンタルスペースを借りた練習会を開催した時に彼も呼んだのですが、集合時間のAMとPMを勘違いしてしまったようで、ちょっと悲しいことになってしまいました……。

一同:(笑)。

TUT OrangeNa選手:僕たちのメンバーにも、韓国人の留学生がいますが、その人は日本語が上手なのでコミュニケーションの問題はありませんね。

学生から見るeスポーツ

――最近ではeスポーツが盛り上がりを見せつつあります。eスポーツサークルに属している学生さんから見て、そういった実感はありますか?

SEC こめっこ選手:以前、中学生が「eスポーツ」という単語を知っていて驚いたことがあります。あれがもう2年前の話なので、今は小学生が知っていてもおかしくないと思います。

TUT OrangeNa選手:今まで大々的に取り上げられることが殆どなかったのに、ニュースや雑誌で取り上げられるようになったので、実際に認知度は上がっていると思います。僕らのメンバーの中にもプロゲーマーを目指しているプレーヤーがいるし、そういう人もどんどん増えていくと思っています。

――ということは、今後eスポーツサークルの役割もどんどん大きくなっていきますね。

SEC Aloudy選手:そうですね。eスポーツの先頭を走ってみたいという新入生にどんどん参加して欲しいと思っています。待ってます!

TUT Cine選手:世の中にはたくさんのゲームがありますが、「LoL」のようなコアなゲームの面白さをもっと知ってほしいと思います。

――本日はありがとうございました。


座談会終了後はランダムミッドで交流戦。両チームとも物凄く楽しそうにプレイしており、眩しくてとても羨ましい光景だった


両チームとも、今回はありがとうございました!ちなみに写真は「ちょっとふざけてもらえますか?」という無茶ぶりに応えてもらった際のもの

 連載の2回目は「LoL」学生リーグの上位2チームに話を聞いた。両チームともサークルという活動を通じて、彼らなりの距離感でゲームを楽しみ、日常の一部としてeスポーツに取り組んでいることが今回の座談会を通じて感じられた。また、学生コミュニティならではの"メタ"が存在するという点も非常に興味深く、やはり上位チームはきっちりとそのメタに対応していることがよくわかる。「新歓LoLフェス」の開催など、新たなプレーヤーの獲得にも余念がない。

 ところで、学生大会は数あれど、「LeagueU」のようにゲームの運営・開発元が学生を直接支援するのはかなり珍しい取り組みといえる。eスポーツにおいてはシーンを牽引するプロの存在も重要だが、その裾野を広げる意味では一般プレーヤーのなかでも「学生」という強固なコミュニティの発展が必要不可欠だ。そういった意味で、こうした学生に対するオフライン大会の開催や、機材のサポートは未来のコミュニティの成長に繋がっていくことだろう。「LoL」の、ひいては学生eスポーツの今後の動向にも注目していきたい。