あなたにとって「LoL」のどこがどうおもしろい?

【第1回】実況・解説の立場から語る「LoL」eyes氏・Revol氏インタビュー

「成長を感じられるから『LoL』は面白い」

9月3日 収録

 「League of Legends(以下、LoL)」 を運営するライアットゲームズは、以前の記事でもお伝えした通り新規参入に力を入れている。その一環である公式番組「GGTV」の始動や、奇抜な「ロル君」を登場させたWeb CMは話題となった。キャッチーな活動を展開することによって「LoL」に関心を示した人も多いはずだ。

 その一方で、「LoL」というゲームそのものの魅力は非常に多岐に渡り、その面白さを端的に人に伝えるのが難しいのもひとつの事実。そこで今回は様々な立場で「LoL」に関わる方々に連続インタビューを行ない、「LoL」の面白さや魅力、「LoL」はどのようなゲームで、どんな環境におかれているかなど、様々な角度から「LoL」のアレコレを追究していく。

 第1回となる今回は、「LoL」の日本公式リーグである「League of Legends Japan League(以下、LJL)」にて実況・解説を務めるeyes氏とRevol氏両名に話を聞いた。現在公式とプレーヤーの架け橋的な立場にいるお2人だが、eyes氏は「ランク戦」をかなりの勢いでプレイするプレーヤーで、一方Revol氏はゲームプレイよりも国内、海外で行なわれる「LoL」の試合観戦が好きなのだという。インタビューにおいては「LoL」の面白さや魅力、楽しみ方からeスポーツについて、そして既存プレーヤーが新規プレーヤーとどう接するか、などなど話題は極めて多岐に渡った。

LJLで実況を務めるeyes氏(左)と、解説を務めるRevol氏(右)
競技シーンの試合は現地での観戦の他、Webでも配信されている。集団戦は試合の見どころだ

シーズン1から「LoL」をプレイする最古参。現在は実況・解説のためにプレイ

――現在はLJLで実況・解説を務めるお2人ですが、どのような経緯で現在の立場で「LoL」と関わることになったのでしょうか?

eyes氏:僕は「ニコニコ動画」で「LoL」の配信活動をしていたのですが、2014年にLJLが発足したときに(Riot公式リーグは16年より)人の繋がりで声がかかり、現在まで実況をやらせていただいています。その半年後に僕がRevolさんに声をかけました。当時は解説の担当が毎回異なっていたので、誰か1人に固定させたいと思っていました。そんな中、ネットを探していたら海外リーグやメタに詳しいRevolさんを見つけたんです。

Revol氏:僕は元々海外のメタ(アイテムやキャラクターの性能による、その時々で主流の戦術)やプロリーグの情報を記事にしてネットにあげていたんです。それをeyesさんが見てくれて、声がかかりました。僕はeyesさんのことを一方的に知っていて、配信も見ていたんですが、その人から突然TwitterのDMで連絡がきたので当時は驚きましたね。

――お2人ともLJL発足前からネットで「LoL」関係の活動をされていたんですね。因みに、「LoL」自体はいつごろからプレイしているのでしょうか?

Revol氏:僕はシーズン1、つまり「LoL」最初のシーズンからプレイしています。先に「LoL」をプレイしていた友達に薦められて始めました。当時は日本サーバーが無かったのでNA(北アメリカ)サーバーで始めましたが、昔から友人と色々なゲームをプレイしていて海外のゲームはプレイし慣れていたので、特に英語にも抵抗はありませんでしたね。

eyes氏:僕もネット上の友人から教えてもらって始めました。ファミコン時代から色々なゲームをプレイしていましたが、当時は"洋ゲー"の方が面白く感じていたので海外のゲームも結構プレイしていましたね。でも、MOBAというジャンルのゲームは「LoL」が初めてだったので、最初はてこずりました。

Revol氏:行くべきレーンが3つあって、どれか1つに行かなければいけないというルールから理解しないといけませんでしたからね。

――多くの「LoL」プレーヤーは「初心者時代に1度はやめたけど戻ってきてハマった」という経験をしていると聞きますが、お2人も似たような経験をしましたか?

eyes氏:いえ、1度もやめたことはありませんね。ずっと成長を感じることができていたので。そもそもシーズン1って1か月くらいプレイしているだけで、周囲よりうまくなれたんですよ。新規のプレーヤーがどんどん入ってきてましたからね。ごく稀に「DOTA2」などの他のMOBA(マルチプレーヤー・オンライン・バトル・アリーナ)をプレイしていたような凄くうまいプレーヤーがいたくらいですね。

Revol氏:僕は1度辞めましたよ。ただ、壁にぶち当たったとかではなく、新チャンプとして実装されたエリス(蜘蛛に変身するチャンピオン)の足の動きが気持ち悪くて……。僕、虫が苦手なんですよ(笑)。でも、シーズン2のワールズ(世界大会)を見て戻ってきました。アメリカで行なわれているゲームの大会で、決勝が韓国と台湾のチームの組み合わせ、それでダークホースとして上がってきた台湾チームをみんなが応援するという構図が面白かったんですよね。「いったい何が起こってるんだ!?」と思って、そこからプロリーグにもハマっていきました。


人間と蜘蛛の形態を使い分けるテクニカルなチャンピオン「エリス」。

eyes氏:僕もワールズはわざわざ夜勤明けにネットカフェに行って試合を見ましたね。シーズン2のワールズは最初から見ましたし、試合の内容も覚えています。それくらい華々しかったんですよ。一方でワールズを見た人がどんどん参入してきたことでゲームの研究も進んで、シーズン3以降はある意味初心者にはちょっと優しくなくなってしまいましたね。


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――では、時を経て、現在はどのようなスタイルで「LoL」をプレイしているのでしょうか?

Revol氏:シーズン1の時は1シーズン通算で1,000試合くらいやっていたのですが、現在はメタなどを知るためにも観戦にその時間をつぎ込んでいますね。クライアントを立ち上げるのは新チャンプの挙動などを確認するためということが多いです。やはり仕事で解説をやっている影響は大きいですね。

eyes氏:僕は逆に、実況のためにたくさんランク戦を回すようにしています。実況はスキルを見て、何を話して何を話さないか取捨選択しないといけない。そのために、プレーヤー目線でゲームを見る必要があります。自分がこの距離で、こういうタイミングだったらこのスキルを使うだろうな……みたいなことを予測しながらではないと、僕は実況ができないんです。だから1年間で300試合しかプレイしなかった時は全然スキルが見えませんでした。なので、今は意識的に回すようにしていますね。

成長を感じられるからこそ「LoL」は面白い

――では、それほど熱中してしまう「LoL」の楽しさは何処にあると思いますか?

eyes氏:やはり「LoL」の魅力は様々な楽しみ方がある事だと思います。私は成功体験を積み重ねていくのが好きなんです。「自分自身をRPGしていく」って言ったらいいのかな? 自分自身をロールプレイングして成長させている感じです。格ゲーとか、カードゲームとかそういうeスポーツになるようなゲームはそういう要素があると思います。

――つまり、プレーヤーとして自分がレベルアップしていく感覚ですね。

eyes氏:そうですね。勝ち負けに関わらず、「LoL」は成長をダイレクトに感じられるんです。新しいゲームが始まったらチャンピオンのレベルも、装備も真っさらになりますが、知識やスキルは積み重なっていくし、プレイの中でそれを感じられる。僕はそういう部分が好きですが、Revolさんは僕とタイプが違うんです。

Revol氏:僕は「LoL」の競技試合を観戦することが好きなんです。「LoL」はサッカー観戦でボールを目で追いかけているだけで楽しいのと同じように、なんとなくでも観戦できてしまう、そんなちょうどいい複雑さを持ったゲームだと思います。だから初心者でも上級者でも観戦は面白い。僕も今でこそ戦略やメタといった部分も楽しんでいますが、初心者の時は集団戦やレーンでの戦いばかりを見ていました。

eyes氏:集団戦ならチャンピオンの役割やアルティメットの性能さえ覚えれば気楽に見れますからね。表面だけでも面白いゲームなんです。だから、知識があまりなくても観戦は楽しめる。あったらより深く楽しめるというのが、「LoL」の魅力なんじゃないでしょうか。

Revol氏:プレイの方だと、腕の差を知識で補えるのもポイントですよね。FPSみたいなゲームは腕の差がダイレクトに出やすい印象がありますが、「LoL」はそうではない。逃げても勝てるときもあるし、育っている敵も複数で囲んで叩けば倒せる。もちろん、プレーヤースキルで相手を圧倒してもいい。こんな風に、色々な手段があるのが「LoL」の数ある魅力の1つですよね。

――プレイを通して成長していく中で目が肥えていき、視聴者としても成長していくんですね。

Revol氏:そうなんです。でも、成長にも面白さにも終わりが見えなくて、どんどん天井が上がっていくんですよね。

eyes氏:底が見えないという意味で、天井というよりは「沼」ですよね。知れば知るほど奥が深くて、中々抜け出せなくなっていきます。

Revol氏:確かに「LoL」は沼ですね(笑)。実際、観戦でも知れば知るほど深みにはまっていきます。初心者の内は戦闘のようなアクション的なポイントが伝わりやすいですが、ハマっていくと戦術を追いかけるようになって……。特にジャングラーの動きに詳しくなり始めたら沼としかいいようがないです。でも、ユニバース(ストーリーや世界観)やかスキンといった、プレイや観戦とは違った楽しみ方もあります。そうしたコンテンツも魅力の1つですよね。


「LoL」には様々なスキンが存在。中にはスキルの見た目やセリフが変化するものもある。

世界観を掘り下げるユニバースは、キャラクターの詳細や意外な一面を見ることができる。

――多様な楽しみ方がある「LoL」ですが、eスポーツもそのうちの1つでしょうか?

Revol氏:そうですね。今、LJLが盛り上がっているのはそれは選手はもちろん、そのチームや選手のファン、運営も含めたみんなが試行錯誤を重ねながら頑張った結果だと思います。かつては日本で行なわれる「LoL」の競技試合を配信で観戦する人ばかりでしたが、今では特定のチームや選手を目当てに会場に集まるようにもなりました。

 日本のeスポーツ文化は遅れていると言われていますが、今ではそんなことないと思うんですよ。文化の認知度だけ見ればもう追いついていると思います。最近、アメリカのスポーツチャンネルがeスポーツを取り上げたときだって「なんでゲームがスポーツチャンネルでニュースになるの?」みたいなコメントは寄せられていましたからね。

eyes氏:確かに、文化としての広がりは海外と比較しても差がないと思います。日本のeスポーツに足りないのはビジネスとしてやっていくだけの屋台骨ではないでしょうか。

Revol氏:そうですね。1つ気になるのがeスポーツという言葉の使われ方です。今は使う人によってeスポーツに対する捉え方が異なるので、誤解を生まないようにあまり公の場では使わないようにしています。もし、誰かに何かを聞かれても、僕は「LoL」のプロシーンを主語にして話すようにしていますね。もちろん、他のゲームの大会が成功しているのを聞くと嬉しいですよ。でも、ちょっと言葉が独り歩きし過ぎている気がしてしまいますね。

eyes氏:人によってとらえ方が様々なのもeスポーツの魅力だとは思います。ただ、最近は賞金額やオリンピックの種目になれるか、といった話題性のあるニュースばかりが取り上げられているので、もう少し競技の部分に触れて欲しいなぁ、と思っています。もちろん、そういう話があること自体はいいことなのですが、やはり競技やプレイする選手あってこそのeスポーツなので。

――メディアとしては耳が痛い話です。

eyes氏:「お金を稼ぐためにプロゲーマーになったわけじゃない」という選手もいます。シンプルに「LoL」で1番になりたいという想いから、競技シーンに参加した選手は少なくありません。もう少し、そういう選手に注目がいくといいなと思っています。

Revol氏:もちろん、お金を稼ぐだけ稼いで引退するような選手が出てきてもいいんですよ。話題性と競技性、どちらも重要なものですし、両立すべきです。そういう意味では、昨年放送された番組で「ストリートファイターV」のときど選手の取り上げられた際は素晴らしかったですね。賞金の話だけではなく、格闘ゲームシーンの盛り上がり方や、文化の定着などについても取り上げていてバランスが取れていました。もちろん、密着取材をしないとあそこまで詳しく紹介するのは難しいでしょうが。

eyes氏:とても難しい話なんですよね。でも、今後「LoL」が日本のeスポーツを引っ張てくれたら嬉しいですし、それに貢献していきたいですね。

既存プレーヤーは初心者をまず褒めるべき

――ところで、9月には公式番組である「GGTV」が開始されました。番組は初心者向けの内容ですが、お2人はコーチとして参加してみてどのように感じましたか?

Revol氏:番組内で初心者の方に教える中で、やはり、新規プレーヤーには付きっ切りで教えた方がいいと思いました。PCゲームに慣れていない人は、マウスとキーボードでゲームをすることにも慣れていないので、チャンピオンの歩き方やカメラの操作といった基礎的な部分からアドバイスが必要になります。

eyes氏:「LoL」というゲーム自体が、「コアゲーマー向けのゲーム」としてスタートしたので、そういったユーザーには優しくありませんでした。現在はライアットゲームズも新規参入にも力を入れ始め、チュートリアルの改良や、「GGTV」、ロルくんのWebCMなどの活動も見られるようになりましたが、いざ初心者の方がプレイするとなると、難しいゲームだと感じるでしょうね。


「GGTV」はTwitchで配信中のライアットゲームズ公式番組。芸能人や声優、ストリーマーなど、立場もプレイ経験も全く異なるプレーヤーが集い、「LoL」をともに楽しんでいる

――そんな中で、新規プレーヤーを増やしていくために私たち既存プレーヤーは何ができるでしょうか?

Revol氏:新規の方を誘って、一緒にプレイすることは当然ですが、成功を褒めることが大事だと思います。どんな小さなことでも、成功体験を積み重ねていくというのは、先ほどeyesさんが話してくれた通りモチベーションに直結するので。人間、成功よりも失敗の方が印象に残りやすいので、誰かを「LoL」にハマらせたかったら、まずは褒めて、ある程度うまくなってから失敗を指摘すればいいと思います。

――たとえば、どんなことを褒めればいいのでしょうか?

Revol氏:「LoL」では相手に勝つことだけが成功ではありません。ラストヒットをしっかりとれたとか、タワーを折った、不利な相手に耐えきった……色々あると思います。僕も人に教わりながらうまくなっていきました。

eyes氏:僕も対戦ゲームに慣れていない人にとって、褒めることは大事だと思います。でも、対戦ゲームが好きでたまらないようなコアゲーマーの人は勝手に上手くなっていくので、そういう人は誘うだけでいいです(笑)。初心者時代に変に気を使ってプレイするよりも、基礎だけ教えて暫く放っておいたほうが、自由にプレイしてうまくなると思います。ある程度うまくなったら一緒にやればいいんです。

 実際、僕は友人に殆ど教えてもらってないんです。最初にゲームのルールとかシステム、あとビルドなどの情報サイトを教えてもらった程度で、あとは1人で黙々とプレイしてうまくなりました。

――ゲーマーにも色々いるので、それぞれにあった教え方があるということですね。

Revol氏:そうですね。現状、「LoL」はコミュニティへの依存度がとても高いゲームなんです。成功体験の積み重ねをプレーヤー同士で確立していかないといけないので、そういう意味ではゲーム側にも何かそういった仕組みがあったらいいなと思っています。

eyes氏:そういう点では、最近はやっているゲームの「デイリーミッション」みたいなのがあるといいかもしれませんね。10分でCSを50とるとか。それをクリアするともう少し難しいミッションが出て……という形のものがあればゲーム側から「何が成功か」をプレーヤーに提示できる。

Revol氏:たしかに、ゲーム側から初心者向けに目標を提示するのはいいと思いますね。チーム向けのミッションがあるとコミュニティも盛り上がりそうです。「SKTが優勝したときのチーム構成で勝て」みたいなミッションがあったらプロがより身近になって、観戦する人も増えるかもしれません。

eyes氏:他にも、使用しているチャンピオンの情報から、お勧めのチャンピオンを紹介するシステムとかもあるといいですね。ガレンならダリウス。アニーならラックスみたいに、レーンは変えずに似たチャンピオンを紹介していけば、どんどん目標が増えていくと思います。

Revol氏:使えるチャンピオンやできるロールが増える程、このゲームのプレイも、観戦も奥深いものになっていきますからね。Topがボクシングで、Midがチェスといった風に、ロールによってやるゲームの性質も変わっていくので。そこが面白いところでもあり、同時に他のレーンに行くときの障壁になってしまいますが、その障壁をミッションみたいな形でどんどん取り除いていけたらいいですね。

eyes氏:そうやって初心者が目標を達成しながら成功を積み上げて、いつの間にか沼にハマっている。みたいな環境を、ゲームとコミュニティの両方で作り上げられたらいいですよね。

――最後に、これから「LoL」をはじめようというプレーヤーに一言お願いできますか?

Revol氏:ハードルを上げる必要はないと思います。繰り返すようですが、目標を立てて達成していく喜びを知ってください!

eyes氏:コアゲーマーでやってない人は損してる。とりあえず触ってください! ゲーマー気質の人とか数字な好きな人、論理的な思考が好きな人は絶対に沼にハマります!

Revol氏:コアゲーマーじゃない人も様々な楽しみ方がるのでぜひ触ってみてくださいね。あと、既存のプレーヤーはどんどん友達を誘ってください!

――本日はありがとうございました。


今回の取材はLJL、そしてお2人の"想い出の地"ともいえるe-sports SQUARE AKIHABARA(東京都千代田区外神田3-2-12 Box’R AKIBAビル2F)の協力のもと行なわれた