ニュース

【特別企画:学生eスポーツの今】「コール オブ デューティ ワールドウォーII」編

学業としてeスポーツを学ぶ異色のゲームエリート集団――東京アニメ・声優専門学校「T.A」

9月3日 公開

特別企画:「学生eスポーツの今」

 「eスポーツ」の流行は目覚ましく、今やその流れはプロに限らず、一般の社会人や学生にまで波及し始めている。中でも次世代のeスポーツを支えるのは、なんといっても若きプレーヤーたちだ。

 そこで今回は「学生eスポーツの今」として、学生大会が存在する「コール オブ デューティ ワールドウォーII」、「League of Legends」、「ストリートファイターV」の3タイトルをピックアップ。学生たちにインタビューを行ない、彼らが「今」どのようにeスポーツに取り組んでいるのかを探る。

第1回:「コール オブ デューティ ワールドウォーII」編(本稿)
第2回:「League of Legends」編
第3回:「ストリートファイターV」編

 昨年末から今年の3月にかけて開催された「コール オブ デューティ ワールドウォーII」全国大学生対抗戦。この大会で優勝を飾ったのは、2年連続で決勝へと駒を進めていた「T.A(ティー・エー)」というチームだった。

 学生サークルばかりが出場する大会において、「T.A」はかなり異色のチームと言える。このチームの母体となる東京アニメ・声優専門学校は、2016年に「eスポーツ プロフェッショナルゲーマーワールド」という専攻学科を設立。「T.A」はその授業活動の一環として活動するチームなのだ。

 学業として、そして卒業後は職業としてeスポーツに関わろうと同校を選んだ「T.A」は、連載として取り上げる他のチームとはかなり立ち位置が異なりはする。しかし、だからこそ連載のテーマである「学生にも浸透しつつあるeスポーツの今」として浮かび上がるものもあるはずだ。

 今回インタビューに応じてくれたのは、優勝メンバーにして大会終了後に同校を卒業したOB、まこんぶ選手、トキノメ選手、あるふ選手、そして優勝時にリザーブ選手として名を連ねていた在校生、ブラック選手の4人だ。彼らがどうゲームと接し、大会優勝という輝かしい成績を残せたのか、話を聞いてきた。

今回インタビューを受けてくれた4人。左からブラック選手、まこんぶ選手、トキノメ選手、あるふ選手。このうち、在校生はブラック選手のみ。現在は講師も務めるまこんぶ選手はSunSisterに一時在籍し、プロ対抗戦の出場経験もある
【「コール オブ デューティ ワールドウォーII」 全国大学生対抗戦 決勝進出チーム紹介PV  東京アニメ・声優専門学校 「T.A」】

入学当初はサークルのような形でスタート

――「eスポーツ」を学ぶ専門学校という存在はかなり珍しいですよね。まずはこの学校についてお聞かせください。専攻として関わるタイトルは入学後に選ぶのでしょうか?

まこんぶ選手:僕たちすでに卒業した3人は1期生になるのですが、入学当初は「League of Legends」をはじめとする3タイトルが公認タイトルとしてあって、事前の面談や書類でそのどれを専攻するかを選ぶ形でした。「コール オブ デューティ ワールドウォーII」はその3つに含まれていなかったので、当初はふつうの大学でいうサークルみたいな扱いだったんです。

――どんどん新しいタイトルが出てきますけど、学校としてもわりと柔軟にそこへ対応してくれるということなんでしょうか?

まこんぶ選手:詳細な基準は学校に聞かないとわかりませんが、部門として正式に新しいタイトルを加えるときは、日本での大会運営がしっかりされているか、収入源として成立しうるかなどが基準になっていると思います。そうした基準に満たないタイトルは「プレイしてもいいけど、あくまでもメインにはしない」、つまり、ふつうの大学で言うサークル活動みたいな形でプレイすることになります。

――eスポーツの選手として入学されたかたは、授業としてどういうことを学ぶのでしょうか?

まこんぶ選手:基本的には専攻するゲームをプレイすることにいちばん時間をかけます。ほかにはビジネスやネットにおけるマナーなどの基礎知識を学んだり、海外進出を見据えているような人の場合は英会話を学んだりもします。1年次にはなかったのですが、eスポーツの歴史や現在の傾向を学ぶ授業もありました。

eスポーツの専攻科を擁する東京アニメ・声優専門学校には、PC本体はもちろん、チェアやヘッドセット、マウス、キーボードに至るまでゲーミンググレードで揃えられた機材が並ぶ教室が3つある。しかし、正式な部門として認められていなかったため、「T.A」の選手たちはこの中でもアウェイ感を抱きながら日々の研鑽を重ねていった

――各大会へ出場するかどうかは学校が決めるんですか?

まこんぶ選手:自分たちで大会に関するリサーチを行ない、出場するかどうかも自分たちで決めます。出場することだけでなく、勝ち負けもきちんと学校には報告していました。上位まで勝ち進むと学校の人たちも応援してくれたりしましたね。さっき述べたサークル活動的に取り組んでいたタイトルでもコンスタントに上位入賞ができたりすると、正式なタイトルとして取り上げてくれるようなケースもありました。

――2年目にリザーブのブラック選手が加入するわけですが、メンバーは最初から優勝時と同じ4人だったのでしょうか?

トキノメ選手:「コール オブ デューティ ワールドウォーII」が学校が認める正式なタイトルになるかどうかという時期に、ほかに2人くらい参加したことはありますね。

まこんぶ選手:その人たちはチームに合わないといった理由で抜けてしまったので、基本的にはずっと同じメンバーでした。

部門があることを知らなくて自分で作ろうと思ってました(ブラック選手)

――皆さんはこの学校へ入学されるときはプロのゲーマーを志望されていたんですか?

まこんぶ選手:「コール オブ デューティ ワールドウォーII」のメンバーは全員がゲーマー志望でした。ほかのゲームではプレーヤーとしては難しいのでマネージャーやアナリスト、大会運営を目指すようになった人もいますね。

――これからeスポーツがもっと流行っていくと、ゲームをちゃんとわかっている人は大会運営でどんどん必要になっていくでしょうね。

まこんぶ選手:eスポーツが流行ってきたから、と参入してきたイベンターもいますし、現状はゲームを完全に理解している人たちが運営している大会はあんまり多くないんですよね。

――皆さん入学する前からゲーマーを目指していたとのことですが、「コール オブ デューティ」以外のゲームもされていたんですか?

あるふ選手:僕は「コール オブ デューティ」しかやっていなくて、この学校にもこのゲームをするために入学しました。

トキノメ選手:自分も「コール オブ デューティ」だけですね。

まこんぶ選手:マジか!? 僕のときは「『コール オブ デューティ』は部門として無理だと思う」と最初から言われていたんですよ。ただ、何かしらのゲームでeスポーツのプロになる自信だけはあったので、とりあえず他の部門、「Counter-Strike: Global Offensive」でやっていこうと思っていました。戦術の立て方などで「CS:GO」を参考にできた部分もあるので、いい経験にはなりました。

ブラック選手:自分も「コール オブ デューティ ワールドウォーII」をするつもりで入学しました。ただ、入学前はこの部門があるのを知らなくて、自分で部門を作ろうと思っていたんです。

――スゴい熱意ですね。

ブラック選手:自分が好きなゲームですから。入学したときはまだ「コール オブ デューティ ワールドウォーII」がサークルみたいな扱いだったので、メインのタイトルを決めるように学校から言われたんですが、それを押し切ってこのゲームだけに絞りました。

まこんぶ選手:そんなことがあったの? 度胸あるヤツだな(笑)。

eスポーツの成熟には、下の世代からの脅威が必要

――この学校の「eスポーツ プロフェッショナルゲーマーワールド」という専攻学科が作られて3年目に入ったわけですが、プレーヤーとして、あるいは専門に学ぶ学生として、この2年で変わってきたと思えるところはありますか?

まこんぶ選手:eスポーツがどんどんメジャーになってきているので、中堅以上のチームがスポンサーを見つけやすくなってきていますね。

――人気が出ることでスポンサーが強いところに集中しているわけではないんですね。

まこんぶ選手:スポンサードの内容にもよるのですが、わりと気軽にスポンサーとなっていただけるケースが増えました。もちろん、成績が悪いとすぐに離れてしまうことにはなりますが、自分たちの社名を広めるチャンスとして、中小の企業に多く参入していただけるようにはなりました。勝てば企業PRにもなりますし、プレーヤーとしても自分たちの収入につながる可能性も増えますから、これは良い傾向だと思います。

――マイナス面もありますか?

まこんぶ選手:eスポーツに参入したばかりの選手は大会で頭角を現わさないと見向きもされなくなってきている感じはありますね。以前はプロがそうした選手をケアするというか、情報交換も行なっていたのですが、徐々にプロもインタビューや動画配信などプロとしての活動に時間を取られるようになって、その余裕がなくなってきている感じはします。

――つまり、プロとそうでない人の格差が大きくなってきているということですか?

まこんぶ選手:そうですね。戦術や技術に対する視点が、やっぱりプロとそうでない人は違うんですよ。僕はもともとプロのなかでも情報共有をしてお互いを高めていく努力をしないと、競技シーンが終わってしまう恐怖を感じているんですね。プロが閉鎖的でありすぎると、たとえば5年後とかに今のプロを継ぐ次の世代が育っていない可能性があって、それが恐いですね。

教室ごとにPCの仕様が微妙に違うようだが、機材としては申し分ない環境が揃っている。ゲーミンググレードのPCは「学校に並ぶ備品」として考えると、かなり派手。その違和感が筆者の目にはかなり新鮮だった。

――ゲームタイトル自体も変わるのがeスポーツとはいえ、ノウハウの継承がなければ成熟もないですよね。

まこんぶ選手:もうひとつ、下の世代からの脅威がないと、自分たちの成長も止まってしまうと思います。世代交代の問題は、eスポーツ選手のセカンドキャリアの問題でもあるんですよね。野球とかサッカーなら引退後にチームのコーチであったりアドバイザーなどに就ける可能性がありますが、eスポーツでは現状はそれが成り立っていません。閉鎖的に「今だけでも」という考え方はわからなくはないですが、長い目で見たときに、果たしてそれがチームや競技にプラスになるかは疑問です。

まこんぶ選手はeスポーツ選手のセカンドキャリア育成の活動に邁進

――皆さん、卒業後はゲームに関するお仕事に就かれているんですか?

あるふ選手:僕はゲームのデバッグをしています。

トキノメ選手:僕は卒業後の4カ月間、自衛官をやっていたんですけど、それを辞めてeスポーツに戻ってきました。

まこんぶ選手:卒業後はSunSisterでプロとして活動していましたが、それを抜けた今はeスポーツ選手のセカンドキャリア形成をしたいと思って活動しています。そこを確立しないと、業界としての先行きが暗いと思うんです。プロとして活動しているあいだも収入の低い選手が多いのが現状です。であれば、プレーヤーとしての環境以上にセカンドキャリアの可能性は広げていかないとならないと思っています。そのために試行錯誤を続けている状態ですね。

――確かに産業として考えた場合、eスポーツはまだそこが未整備ですよね。

まこんぶ選手:eスポーツ選手を志す人も、プロ選手になることがゴールになっていて、選手になったあとのことまで見据えられていないのが現状ですよね。それがセカンドキャリアをイメージできないことにも繋がっていると思います。

――まこんぶ選手は卒業後はSunSisterの一員としてプロ対抗戦にも出場されていましたが、プロとして戦ってみて、それまでと何か違っていたことはありますか?

まこんぶ選手:いちばんは「下手な姿を見せられない」というように、意識が変わりましたね。プロのチームはふだんの練習がオンラインなので、プレイがチーム以外の人たちの目にも触れますから、一瞬も気が抜けないんです。そこはプロならではの難しさや厳しさと感じました。

――そもそもどういった経緯でSunSisterへ参加されたんですか?

まこんぶ選手:卒業前に一般のチームにも参加していたのですが、そこにとある企業のスポンサーを受けることになり、その企業にSunSisterを紹介していただきました。結果として、チームがそのまま「コール オブ デューティ ワールドウォーII」部門としてSunSisterに参加した形です。

他を知ることでチームが活性化

――優勝された大学対抗戦以前にはどんな大会に出られていたんですか?

まこんぶ選手:前年の同じ大会や、それとは別に、個人でもチームでも出場できる大学生の大会が夏にも行なわれるのですが、そちらにも出場していました。これらはオフラインの大会で、あとはオンラインの大会が多かったですね。

――学生向けの大会が主だったんですか?

トキノメ選手:「コール オブ デューティ ワールドウォーII」に関して言うと、当時は小さなものを含めると2カ月に1回くらい、大きなものは半年に1回くらいのペースで大会が開かれていました。

あるふ選手:当時の僕たちとしてはとにかく実績が欲しかったので、大会の規模に関わらず、出られるものはほとんど出ていましたね。

――学生向けと一般とで大会に出るときの意識に違いはありましたか?

まこんぶ選手:一般の大会だとセミプロみたいなチームも出てくるので「胸を借りよう」という気分でプレイしていましたが、大学生だけの大会の場合、自分たちはeスポーツの学校という看板を背負っているので、そこのプレッシャーは大きかったですね。同世代の人たちには負けられないという思いがありました。


もちろんドライビングシートも完備。しかもフォーミュラカータイプと、GTカータイプの両方が置かれていた。ゲーム好きの人間にとってはなんとも羨ましい環境である

――今春の大会以前に優勝経験はあったんですか?

トキノメ選手:ベスト4とか3位が最高でした。

――まさに卒業前の集大成みたいな優勝だったんですね。それまで届かなかった優勝ができた理由は何だと思いますか?

トキノメ選手:ずっと同じメンバーで戦ってきていたのですが、大会前にメンバーそれぞれが別のチームで経験を積む試みを取り入れたんです。

まこんぶ選手:他のチームの練習を見させてもらったり、4人のうち3人しか集まらなかったチームに助っ人という形で参加させてもらったり、そういう経験をみんなで持ち寄って大会に挑みました。

まこんぶ選手:たとえば「他のチームのこんな練習方法を採り入れてみたらどうか?」とか、それまでだったら出なかったような意見が聞けたりして、大会前のミーティングが大いに活性化したんですね。そうした経験が生きた大会になったと思います。

――この学校はかなりの数のゲーミングPCが揃っていたり、他校に比べて環境に恵まれていますよね。それを有利と感じられたことはありますか?

まこんぶ選手:学校で実際に顔を合わせながら夕方まで練習できたアドバンテージは大きかったと思います。

――具体的に練習はどのくらいされていたんですか?

まこんぶ選手:毎日夜10時から午前2時くらいまでオンラインでプレイするのが基本でした。部門として学校に認められはじめてからは、学校の5、6限を練習に充てていいことになったので、学校で3時間、オンラインで4時間、毎日6~7時間練習していたことになりますね。

学生のeスポーツチームは卒業による世代交代が課題

――在校生として次に目指す大会などは決まっているんですか?

ブラック選手:いちばんは「コール オブ デューティ」の新作で行なわれるであろう次の大学対抗戦を目指すつもりです。大会の詳細などはまだまったく決まっていないのですが、たぶん開催されると思うので。もし開催されなかったとしたら、同じような大きな大会を目標にしています。

――ディフェンディングチャンピオンとしては負けられない戦いですね。

ブラック選手:優勝時の選手はみんな卒業してしまっているので、プレッシャーがスゴいですね。

――優勝時はブラック選手はリザーブ選手として在籍していたわけですが、ブラック選手が加わった状態、つまり誰かが抜けた状態での練習もかなり積まれていたんですか?

まこんぶ選手:あくまでも主力選手4人で戦う前提でいましたが、ブラック選手を入れたときのプランはいくつか立ててはいました。それと、チームの戦術についてのミーティングではブラック選手にも意見を出してもらい、情報共有をしっかりと行なうことも心がけていました。

――リザーブ選手としては、ほかの4人の誰が抜けてもいいように4人分の役割を練習していたんですか?

ブラック選手:さすがに自分はそこまで器用ではないのですが、ある程度はこなせるよう努力してました。どちらかというと、4人の役割をそのまま引き継ぐというより、自分のできることを磨いて、チームの作戦に対応できるようにしようと考えてました。

――優勝時のチームとしての戦い方など、知識はきちんと継承されている、ということですね。

まこんぶ選手:チームが強くなるために何をするべきかといったことはきちんと伝わっていると思います。個々の試合ごとにも変わってくるような細かい話はさすがに無理ですが、チームの運営の仕方みたいなところは伝わっているんじゃないでしょうか?

取材当日は学校としてのイベントが開催されていた。本格的な音声ミキサーなど、ステージ機材も揃っていて、説明されないとここが学校とはとても思えない

――やっぱり他の学生も卒業によるメンバーの入れ替えで苦労していたりするのでしょうか?

まこんぶ選手:僕らが1年のときの大会ではベスト8で負けてしまったのですが、そのときは他の大学がどこもけっこう強かったんです。キーとなる強い選手がひとりいて、ユーティリティ性のある選手が1、2人くらいいるような感じで。でも2年目は核となる選手が抜けたチームが多くて、恐いと思える大学が減っていました。自分たちは前年度とまったく同じメンバーでしたし、チームとして成長もしていましたから、そういった要素がすべてプラスに働き、前年度に比べるとかなり戦いやすく感じました。

王者としてメンバー総入れ替えを乗り切り優勝を目指す新生「T.A」

――今回は学生サークルをテーマにした連載ですが、気になっていたことのひとつが、そうした卒業によるメンバー入れ替えです。現状では「コール オブ デューティ ワールドウォーII」専門のプレーヤーが4人に満たないとうかがったのですが?

ブラック選手:そうなんです。なので、他のゲーム部門の人に助っ人に来てもらうことを考えています。

まこんぶ選手:難しいのは、そのゲームにどれだけ本気で取り組んでいるかで、やっぱり意識に差が出てくるんですね。たとえば練習時間をひとつのゲームにどれだけ割けるかが変わってきますから、技術的な差が広がりすぎないかが心配です。

ブラック選手:一応、僕が先輩となるので、それをチームリーダーとしてまとめなければならないプレッシャーもスゴいです。

まこんぶ選手:ブラック選手はまとめるスキルは高いよ。

ブラック選手:頑張ります!

――卒業した先輩がアドバイザーになることもあるのですか?

まこんぶ選手:うちの場合はたまたま僕が今は講師として学校に関わらせていただいているので、まさにアドバイザーとしていろいろ教えています。

――逆に一期生として先輩がいなかったことで、苦労した点はありますか?

まこんぶ選手:機材の確保が大変でしたね。PCが置かれた部屋は3つあるのですが、基本的には「CS:GO」や「Alliance of Valiant Arms」といった正式な部門が授業として使うので、その片隅を借りてプレイしなければならなかったんです。いいプレイができて思わず声をあげてしまうと「うるさい!」と怒られたり、むちゃくちゃアウェイな環境でした(笑)。

――学校の機材はPCでしたけど、大学生対抗戦はPS4でしたよね? そこはどう対応されたんですか?

まこんぶ選手:大会に向けた練習は家のPS4でやってました。ただ、部門として認められるようになってきたときに、学校がPS4を用意してくれて、そこからは学校でも練習するようになりましたね。

あるふ選手:でもPS4が人数分なくて、何人かは家からPS4を持ってきてたのです。学校が用意してくれたのは家が遠い人の分だけで、「家が近い人は頑張って持ってきてね」と(笑)。

ディフェンディングチャンピオンとしての重圧がかかるブラック選手だが、優勝チームから継承したチーム運営のノウハウを活かし、健闘を誓う。目指すは再びの優勝、「日本一」だ

 連載の1回目としてはいきなり「eスポーツを授業として学ぶ」という異色のチームを取り上げることになった。しかし、次回以降の連載と読み比べることで、「学生eスポーツの今」がより際立つことになると思う。

 日本でのeスポーツはまさに幕を開けたばかり。専門学校でプロの育成に取り組み始め、教育機関として技術的・人間的に成長できるよう様々な方面からアプローチするなか、全国大学生対抗戦で優勝を果たした「T.A」の成果は、学校としても大きな収穫になったであろうことは想像に難くない。

 eスポーツが産業として勃興していく今後は、こうした専門学校の存在も比例して大きくなっていくのだろう。筆者個人としても非常に興味深い取材となった。全国大学生対抗戦が次回も開催されるようであれば、「T.A」の活躍に注目したいと思う。