【特別企画】

「PS4」日本発売10周年! PSハードの歴史を大きく変えたゲーム機

【プレイステーション 4(PS4)】

2014年2月22日 日本発売

価格:41,979円(発売当時)

 ソニー・コンピュータエンタテインメント(現:ソニー・インタラクティブエンタテインメント)の家庭用据え置きゲーム機「プレイステーション 4(PS4)」が日本で発売されて、本日2月22日で10周年を迎えた。

 PS4は、現行機であるプレイステーション 5(PS5)が販売されている現在も、新たなタイトルが発売されているため「まだ5~6年前のゲーム機でしょ?」と思われている方も多いかと思う。そのため、本日で10周年という節目を迎えたことに驚いた方もいらっしゃるだろう。

 実はPS4、それまでの「プレイステーション」ハードと異なる部分が多くあり、“プレイステーションの歴史を大きく変えた”ゲーム機でもある。そこで本稿では日本発売10周年を記念して、PS4のハードウェア、そして発売されたゲームタイトルを振り返っていきたい。

【PlayStation 4 Launch|The PS4 Launch Video】

よりゲーミングPCらしくなったPS4。後方互換性なしなど“新時代のPSハード”に

 まずは軽く「プレイステーション」シリーズの据え置きハードの歴史を振り返ろう。原点である初代「プレイステーション」は1994年12月に発売。3Dグラフィックに特化したハード設計で「ファイナルファンタジーVII」や「バイオハザード」といった数々の名作が登場し、1億台以上を売り上げシリーズ初代から確固たる地位を築いた。

 初代PSから約5年後となる2000年3月には「プレイステーション 2」が登場する。当時最先端のスペックを駆使したリッチなグラフィックスと「DVD-ROM」を採用し、ゲーム機としてのみならずDVDプレーヤーとして爆発的に普及。最終的には1億5,500万台を売り上げ、名実ともに“世界で最も売れたゲーム機”となった。この記録は2024年現在も破られていない。

 そして2006年11月発売の「プレイステーション 3」では“ハイビジョン時代”に突入し、今ではポピュラーな規格となった「HDMI」や「Blu-ray」といった最新規格が採用された。当時は歴代PS機で最も高価(60GBモデルで59,980円)なハードであったが、供給不足も重なり各地で売り切れが続出。累計販売台数は約8,700万台と“1億越え”は果たせなかったが、長く愛されたハードとなった。

初代プレイステーションと2018年に発売された「プレイステーション クラシック」
2000年に発売された「プレイステーション 2」。1億5,500万台を売り上げ“世界で最も売れたゲーム機”の称号を持つ
2006年に発売された「プレイステーション 3」。画像はCECHA00(右)とCECHB00(左)と呼ばれる最初期型

 PS3から7年が経ち、2013年11月に「プレイステーション 4」がアメリカ・カナダにて先行発売。日本は第1次販売国(いわゆるTier 1)から外れるどころか、先行発売から約3か月後という最後発での発売となった。日本生まれのゲーム機がTier 1から外れたことは話題となり、2020年にはSIE社長兼CEOであるジム・ライアン氏が「(日本で発売を遅らせたのは)良いアイデアではなかった」と姉妹誌・AV Watchでのインタビューに答え、現行機「プレイステーション 5」では日本がTier 1に復活している。

 PS4がそれまでのPSハードと異なる部分として、まずはAMD社のAPU(CPUとGPUを統合したもの)を採用したことが挙げられる。初代PSからPS3までは、SCEがカスタマイズまたは専用に開発した自家製のCPUを採用しており、初代PSはMIPS社のCPUをカスタマイズした「R3000A」、PS2は東芝と共同開発した「Emotion Engine」、PS3は東芝、IBMと共同開発した「Cell」を搭載していた。

 だがPS4では一転、AMD社のAPUを採用。もちろん、PS4向けにカスタマイズはされているが、CPUはAMDの「Jaguar」、GPUはAMDの「Radeon」となり、よりPCに近いハードウェア構成となった。これによってPCゲームを移植しやすくなり、サードパーティは複数のプラットフォームでゲームタイトルをリリースしやすくなったのだ。

2023年11月にアメリカ・カナダにて先行発売となったPS4
PC寄りのハード構成となったPS4。発表時も「x86 CPU」や「Enhanced PC GPU」など、PCに近いことが謳われている
【プレイステーション据え置き機のハードウェア構成】
PS(初代)PS2PS3PS4PS5
CPUMIPS社 R3000Aベース + GTEEmotion Engine(SCE・東芝の共同開発)Cell Broadband Engine(SCE・東芝・IBMの共同開発)8コアx86-64 AMD Jaguar 8コアAMD Ryzen “Zen2” 8コア16スレッド
GPUSCE独自GPUGraphics Synthesizer(SCE開発)RSX Reality Synthesizer(SCE・NVIDIAの共同開発)AMD Radeon based graphics engine(1.84 TFLOPS)AMD Radeon RDNA-based graphics engine(10 TFLOPS)
メインメモリ2MB(+ビデオメモリ1MB)RDRAM 32MB(+ビデオメモリ4MB)XDR DRAM 256MB(+ビデオメモリ GDDR3 256MB)GDDR5 8GBGDDR6 16GB
内蔵ストレージなし(メモリーカードにセーブデータを保存)なし(メモリーカードにセーブデータを保存。40GBの外付けハードディスクドライブユニットあり)HDD 20GB~500GBモデルまで複数HDD 500GB、1TB、2TB(PS4 Proのみ)カスタムSSD 825GB、1TB
【PlayStation 4 Announcement Live Stream(Replay)】

 次に前世代機との後方互換性を廃したこと。PS2とPS3は初代PSとの後方互換性があり、PS3は最初期型に限りPS2との後方互換性も備えていたが、PS4ではPS4用ディスクのみをプレイでき、それまでのPSハードのディスクを一切受け付けない。

 これは、先ほどのPS2やPS3のアーキテクチャに関する部分と関係があり、ハード構成が特殊だった時代のPSハードとの互換性を、コストの観点から実装しなかったものだと考えられる。実際、AMD社のAPUを採用しているPS5では、PS4の“ほぼ全てのゲームをプレイできる”後方互換性を備えており、アーキテクチャやコストの問題でPS4は“新時代のPSハード”として歩むことになった。

PS4はそれまでのPSハードとの後方互換性が一切ない。

 そしてコントローラーにも大きな変化があった。それまでの「DUALSHOCK」は新たな機能は追加されても、形状は初代PSからPS3まで引き継がれてきた。だが、PS4に付属する「DUALSHOCK 4」は形状を大きく変更。グリップが太くなり持ちやすくなったほか、中央部分に「タッチパッド」が新設され、左右の「START/SELECT」ボタンは「SHARE/OPTIONS」ボタンに置き換えられた。

 筆者は手のサイズが比較的大きく、PS3に付属していた「DUALSHOCK 3」はグリップが薄いため持ちにくく感じていたが、「DUALSHOCK 4」はグリップがふっくらとして、持ちやすくなったことに感動した記憶がある。スペック云々よりもコントローラーを実際に手に持った感触で、次世代機であることを自覚した瞬間でもあった。

初期のPS3に付属していた「SIXAXIS」。“DUALSHOCKシリーズといえばこの形”という方も多いのではないだろうか
PS4に付属する「DUALSHOCK 4」。より持ちやすくなったグリップ部分やタッチパッド、SHAREボタンの新設など、それまでの「DUALSHOCK」から大きく変わった

 さらに「プレイステーション」ハードとしては初めて、世代途中での“上位機種”となる「PS4 Pro(CUH-7000シリーズ)」が2016年11月に発売された。発売された当時は、4K解像度に対応したテレビのラインナップが拡大し、ハイビジョン時代から4K時代への移行が始まった時期だ。

 だが、まだPS4はリリースされて3年ほどで次世代機の投入はまだ早い。そこで4K解像度に対応した上位機種「PS4 Pro」と薄型化した新型「PS4」を2016年末に相次いで投入。さらにVRヘッドセット「PlayStation VR」も発売するなど、PS4は時代のニーズに合わせて、ハードウェアを進化させていったのだ。

4K解像度に対応したPS4 Proは2016年11月に発売
PSハード初のVRヘッドセットで、2016年10月に発売された「PlayStation VR」

ソシャゲの波に負けず、数々の名作が登場! 今なお新作が発売されるPS4

 PS4発売当時はスマートフォンの普及が本格的に始まり、ソーシャルゲームの波が押し寄せ、ゲーム専用機の地位が揺らいでいた頃。日本で発売される際も“キラータイトル”に匹敵するようなゲームは少なかったが、じっくりとタイトルラインナップを拡大し、今では累計4,000本以上のタイトルが発売され、10周年を迎えた現在でも新作が発売されている。

 ファーストパーティでは「Horizon Zero Dawn」や「Marvel's Spider-Man」、「The Last of Us Part II」、「グランツーリスモSPORT」、「Ghost of Tsushima」、「ゴッド・オブ・ウォー」など、今でもファンの多いタイトルが多数発売。「Game of the Year」に輝くタイトルを多数送り出してきた。

「Horizon」シリーズの原点となる「Horizon Zero Dawn」は2017年3月発売
ニューヨークの街をウェブスイングで駆け抜ける爽快感が味わえる「Marvel's Spider-Man」
2020年6月に発売された「The Last of Us Part II」はThe Game Awards 2020の「Game of the Year」に輝いた

 サードパーティは“マルチプラットフォーム化”が一気に進み、ライバルハードである「Xbox One」や「Nintendo Switch」、そしてPCと同時に発売されることが増えた。

 スクウェア・エニックスからは「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて」や「ファイナルファンタジーXV」といった国民的RPGのナンバリング作品や、「NieR: Automata」といったコアな作品が登場。「FFVII」リメイクシリーズ第一作目となる「ファイナルファンタジーVII リメイク」は発売当初PS4限定のタイトルとなっていた。

 カプコンからはPSVRに対応した「バイオハザード7 レジデントイービル」やリメイク作の「バイオハザード RE:2」のほか、久々にPSハードでもリリースされた「モンスターハンター:ワールド」が発売。当時、筆者の周りでは「モンハンワールド」をきっかけに、友人たちが続々とPS4デビューを果たしていったことを覚えている。

国民的RPGのナンバリングタイトル「ファイナルファンタジーXV」は2016年11月に発売された
「モンハンワールド」をきっかけに、筆者の周りでもPS4ユーザーが増えた印象だ

 筆者が一番プレイしたタイトルは「グランド・セフト・オート V(GTAV)」だ。2013年にPS3で発売された「GTAV」だが、2014年に次世代機アップデートとしてPS4に対応。“何をしても自由”なロスサントスで強盗を働いたり、超高速ドライブをしたり、米軍基地に乗りこんだりと好き放題やっていた。

 そんな「GTAV」は2022年にPS5向けのアップデートも実施され、“次世代機アップデート”が2回実施された息の長いタイトル。かれこれ10年以上続編が出ていなかったが、遂に「Grand Theft Auto VI(グランド・セフト・オートVI)」が2025年に発売される。

 また、コロナ禍の序盤はPS4で「Apex Legends」にのめり込んだ。ステイホームが求められていた時代に、フレンドとボイスチャットを繋ぎながらバトロワに熱中。その後PC版に移行したのだが、PS4は「Apex」と出会わせてくれた思い出のハードだ。

筆者がプレイしたタイトルで、一番プレイ時間の長かったタイトルは「GTAV」。何をしても自由な世界で、やりたい放題やっていた
コロナ禍の期間は「Apex Legends」と巡り合った。ボイスチャットを繋いで、PS4でプレイしたのはいい思い出だ

 2024年現在でもPS4対応タイトルが発売されており、現行機のPS5と前世代機のPS4に対応した“縦マルチ”対応のタイトルが増加。ファーストパーティでは「Horizon Forbidden West」や「グランツーリスモ7」が発売されているほか、サードパーティからは「アーマード・コア6」や「ストリートファイター6」といった話題作が縦マルチで発売されている。

 直近では「グランブルーファンタジー リリンク」や「ペルソナ3 リロード」といった注目作もPS4で登場。ただ、新作タイトルが少しずつPS5向けにシフトしているのも事実で、2月29日に発売される「ファイナルファンタジーVII REBIRTH」はPS5専用タイトルのほか、先述の「グランド・セフト・オートVI」や「モンスターハンターワイルズ」といった2025年発売予定のタイトルは、PS5/Xbox Series X|Sと現行機向けに展開される。

「ストリートファイター6」や「グランツーリスモ7」など、PS5/PS4に対応した“縦マルチ”のタイトルが増えた
2024年2月現在でも「グランブルーファンタジー リリンク」といった最新作が発売
一方で「モンスターハンターワイルズ」など、今後のタイトルはPS5/Xbox Series X|Sといった現行機での発売が予定されている

 現行機のPS5はPS4の後方互換性を有していて、プレイできないタイトルは“ほぼ”ない。PS5は、PS4の約5倍のグラフィックス性能を持っており、SSDの採用によってPS5に最適化されたタイトルはロード時間“ほぼなし”を実現するなど、快適なゲーム体験を味わうことができる。PS4ゲームをプレイする際も、グラフィックス強化やロード時間の短縮といったメリットがあり、徐々にPS4が引退を迎える時期も近付いてきた。

 だが2023年11月に発売された新型PS5は、デジタル・エディションが59,980円、ディスクドライブ搭載版が66,980円と歴代PSハードでも高額な価格設定となった。そのため、なかなかPS5に手を出しづらいというゲーマーの方もいるだろう。またPS5ユーザーの方でも、PS4には「PS5 Remote Play」というリモートプレイ機能があり、サブ機として運用することができる。PS4は現役ハードとして、まだまだゲーマーに愛され続けるだろう。