「モンスターハンター:アイスボーン」レビュー

モンスターハンターワールド:アイスボーン

極寒の地で再び繰り広げられる熱い狩猟生活!Steam版の圧倒的美麗グラフィックスを体感せよ!

ジャンル:
  • ハンティングアクション
発売元:
  • カプコン
開発元:
  • カプコン
プラットフォーム:
  • Windows PC
価格:
4,888円(税込、通常版)
発売日:
2020年1月10日

 2019年9月6日にPS4版が発売された「モンスターハンターワールド:アイスボーン(以下、アイスボーン)」、そのSteam版が2020年1月10日、ついに発売となる。

 長い歴史を持つ「モンスターハンター」シリーズは、幅広い層のゲーマーから愛されており、筆者も「モンスターハンターポータブル 2ndG(以下、2ndG)」からプレイするシリーズの大ファンだ。「モンスターハンター:ワールド(以下、MHW)」が発売された当初、今までの作品とは比べ物にならないスケールに多くのプレーヤーが驚愕したことだろう。モンスターたちの精細なディテールや、生態系を感じさせる作りこまれたマップは、モンハンシリーズ新時代の到来を感じさせる出来栄えだった。

 「アイスボーン」はそんな「MHW」の拡張版だ。新マップや新モンスターに加え、過去作から復刻されたモンスターや、さらにはやりこみ要素も含まれる「アイスボーン」は、まさにファンが待ち望んだ拡張版といえよう。筆者は既にPS4版をプレイ済みだが、だからこそSteam版での「アイスボーン」の世界がどれほどものか見てみたくなった。果たして「アイスボーン」は大作ゲームで目の肥えたPCゲーマーたちをも満足させうる出来栄えなのか?

PCゲーマーに特化したUIで快適プレイ

 さて、前述の通りPS4版が一足早く発売されていたこの「アイスボーン」だが、Steam版ではよりPCゲーマーが快適にプレイできるよう、UIに改良が施されている。特に設定の項目はPS4版と比べて格段に増えており、各々の環境に合った設定でのプレイが可能だ。

 まずディスプレイ設定の違いを以下のスクリーンショットで確認してほしい。PS4版ではディスプレイの設定はほとんどいじれなかったが、Steam版ではフレームレートや解像度、アスペクト比などの変更が可能となっている。

PS4版のディスプレイ設定画面
Steam版のディスプレイ設定画面

 またSteam版はFidelityFXに対応している。FidelityFXは描画処理を低解像度で行なうことによりフレームレートの向上を図る機能だ。解像度が下がることに抵抗を感じるプレイヤーも多いかもしれないが、FidelityFXの画像は特殊なエフェクトのおかげで、シャープにはなるが粗い印象は受けない。

FidelityFX オフの状態
FidelityFX Sharpness値最大

 さらに、影やテクスチャの品質、水面反射や植生の揺れの有無などを変更することもでき、細かいところからPCの負荷を減らすことが可能となっている。広大なマップが舞台となる本作では、これらの設定項目は非常にありがたい。

ディスプレイの詳細設定画面

 加えて、Steam版ではPS4版にはなかったキーコンフィグの設定まで設けられている。各操作にメインキーとサブキーを割り当てることができ、さらに近距離武器と遠距離武器でコンフィグが独立しているため、非常にカスタマイズ性が高い。ショートカットキーも充実しているため、アイテムや弾選択もワンボタンで行なえることになる。筆者はゲームパッドでプレイしてしまったが、慣れればキーボード操作の方が圧倒的に高いDPSを叩き出せるだろう。

キーコンフィグ設定画面

モニターに広がる一面の銀世界!

 プレイしていて筆者がまず気づいたのは、ロードの速さだ。PCの性能にも依るだろうが、PS4版と比べるとロードが格段に速い。気になって検証してみたところ、以下のような結果が出たので参考にしていただきたい。

ロード時間検証結果

 グラフはSteam版を第9世代intel Corei7およびGeForce RTX 2070、PCI Express 3.0 x2接続のSSDを搭載したPC、そしてPS4版を現行のPS4(Proではない)でプレイした結果だ。ルートAは「セリエナ」から「渡りの凍て地」までのロード時間、ルートBは「渡りの凍て地」から「セリエナ」までのロード時間を表しており、結果はそれぞれ5回検証したサンプルの平均値となっている。

 一目でわかるように、ロード時間はSteam版の方が圧倒的に速い。なお、Steam版のディスプレイ設定はすべて「高」もしくは「最高」となっている。高画質を短いロード時間でプレイできる点では、Steam版の方が快適といえるだろう。

 「アイスボーン」の舞台となる新マップ「渡りの凍て地」は、その名の通り雪深いマップだ。ホットドリンク必須の寒冷地マップはシリーズ恒例だが、「渡りの凍て地」は一味違う。見渡す限り銀世界で、ハンターの膝ほどまで雪が積もっており、さらには背景の山々も雪をかぶっている。グラフィックスの面ではやはりPS4よりも精細に表現されていて、PCの描画能力で見ると、プレイヤーまで寒くなってしまいそうだ。

見渡す限りの雪景色

 マップにはポポやガウシカなど、寒いマップにピッタリなシリーズお馴染みの小型モンスターがいる。「アイスボーン」では彼らの背中に騎乗できる新要素「ライド」が追加されており、狩猟生活に疲れたハンターはポポの背中に乗って牧歌的なハンターライフに身を投じることもできる。

おなじみのポポ
そしてガウシカ
ポポにライド!

 さらにマップには「MHW」からの新要素である環境生物も多数生息している。温泉に浸かるギンセンザルや、ジャケットを纏ったような容姿のキブクレペンギンなど、どれも愛らしい。また環境生物の中には特定の条件下でしか出現しないレアなものもいる。これらは全て捕獲可能で、レアな環境生物を捕獲してマイハウスに飾るのもやりこみ要素の1つだ。

温泉に浸かるギンセンザル
キブクレペンギンの群れ

過去作からのモンスターたちがそろい踏み!

 シリーズのファンにとって「アイスボーン」の最も魅力的な部分となるのは、過去作からの復刻モンスターたちだろう。今作には、ナルガクルガをはじめ、ブラキディオスやティガレックスなど、過去にパッケージを飾った人気モンスターたちが登場する。デザインは変わらずとも、PCで見るモデルのディテールは過去作とは比べ物にならないほど精細で、新鮮な姿の彼らを狩ることができる。

 「2ndG」で初登場したナルガクルガは、その漆黒のボディにさらに磨きをかけ「アイスボーン」に登場する。深緑の「古代樹の森」を縦横無尽に動く姿は、まるで忍者のようだ。尻尾を使った強烈な攻撃も健在で、狩猟の手応えも抜群。怒った時に目が赤く光る演出もパワーアップしており、動きに合わせて眼光が線を引くさまは圧巻だ。

ナルガクルガ
ハンターにとびかかるナルガクルガ。目が赤い線を引いている

 「2nd」から登場するティガレックスも、その圧倒的な迫力はそのままに、より生物らしい一面を見せてくれる。鱗や羽の細かい質感の違いや、たどたどしく4足で突進するさまは、今までゲームの敵でしかなかったティガレックスに、一生物としてのリアリティをもたらしている。散々暴れまわった後は疲弊して立ち尽くしてしまうのも、ティガレックスらしいといえる。

ラドバルキンに襲い掛かるティガレックス
走り回るティガレックス

 また、「MHW」にはモンスター同士が戦う「縄張り争い」というシステムがあり、過去作のモンスターたちが新モンスターたちと大迫力で戦う姿もしばしば見られる。シリーズのファンとしては、どうしても復刻モンスターを応援せざるを得ない。

ティガレックスVSオドガロン
ナルガクルガVSオドガロン

本作の氷の古龍、イヴェルカーナ!

 今作の最大の引きとなるのは、パッケージを飾る新モンスター「イヴェルカーナ」だろう。ゲーム序盤からその存在がほのめかされるこのモンスターは、万物を凍てつかせる古龍として、「渡りの凍て地」に君臨する。

イヴェルカーナのシルエット

 「アイスボーン」のストーリーは、新大陸に異変がおきるところから始まる。氷属性の飛竜であるレイギエナの活性化や、大陸全土の寒冷化、さらにはアンジャナフが氷漬けになっている場面も……この影響は主人公が本編で拠点としていたアステラにも及び、ハンターたちは新大陸撤退を迫られるほどの物資不足に陥ってしまう。

 痕跡を集めながら進めて行くと、これらすべての原因となっているのがイヴェルカーナだということが判明する。イヴェルカーナが何らかの理由で住処である「渡りの凍て地」を出たことで、大陸全土に気象変動が起きていたことになる。移動するだけでこれだけの影響力を持ってしまうとは、古龍という存在の壮大さが伺えるストーリーだ。

イヴェルカーナの痕跡

 そんなイヴェルカーナだが、氷を主属性とする古龍はメインシリーズでは珍しく、「キリン亜種」を除けば唯一無二の存在だ。4足の細いボディに、鳥のような広い翼、そして鋭い眼光はまさに西洋の「ドラゴン」から連想させられるフォルムだ。通常時の青いしなやかなボディも美麗だが、怒り状態の時に鎧のように氷結晶を身に纏った姿からは神々しさをも覚える。

氷を纏ったイヴェルカーナ

 狩猟の手応えも抜群で、他の古龍に比べても遜色ない、非常に強力なモンスターとなっている。極寒の環境を活かした数々の攻撃をかいくぐるのは、一筋縄ではいかない。地面から氷の棘で攻撃してきたと思えば、今度は上空からつららを落としてくる。イヴェルカーナ討伐には氷耐性装備が必須だ。筆者が挑んだ際には、必死にイヴェルカーナの攻撃を避けながら少しづつ攻撃していき、戦いは45分以上にも及んだ。あわや時間切れになってしまう緊迫感の中、ついにイヴェルカーナを討伐した時の達成感は最高だ。

他にも数々の新要素が!

 「アイスボーン」には、「MHW」をプレイしていたハンターには嬉しい新要素がいくつもある。例えば、全武器種に新モーションが追加されている。今まで使ってきた武器でも新鮮な狩りを楽しめるし、また他の武器種もより魅力的に思える。

 また、獣人族を写真で撮影する「観察依頼」をはじめとするサイドクエストも充実しており、ハンターを飽きさせることを知らない。スロット形式でアイテムが手に入るミニゲーム「蒸気機関管理所」も中々の中毒性で、一度始めると止め時を見失ってしまうことも。

蒸気機関管理所

 細かな変更点としては、集会所から加工屋へ行けるようになっていたり、ルームサービスをマイハウスへ行くことなく受けれるようになっていたり、プレイの質を高める調整も施されている。

新たな拠点となるセリエナ

 総じて、PS4版をプレイ済みの筆者からしてもPC版「モンスターハンター:アイスボーン」は拡張版として非常に満足のいく仕上がりになっており、Steam版で「ワールド」を楽しんでいたプレーヤーたちは間違いなく楽しめる内容だ。しばらく狩猟生活から足が遠のいていたプレーヤーも、ハンター仲間を誘い集め、ぜひ「アイスボーン」の世界に身を投じてみてほしい。