「Horizon Zero Dawn」レビュー

Horizon Zero Dawn

絶品のグラフィックスと自由度の高い狩猟が魅力

ジャンル:
  • オープンワールド・アクションRPG
発売元:
  • Guerrilla Games
開発元:
  • ソニー・インタラクティブエンタテインメント
プラットフォーム:
  • PS4
価格:
6,900円(税別)
発売日:
2017年3月2日

 「KILLZONE」シリーズなどで知られる開発元「GUERRILLA」による制作など、発売前から高い注目を集め、実写プロモーションビデオまで製作されたPS4用オープンワールド・アクションRPG「Horizon Zero Dawn」。大災厄によって人類文明が壊滅的な打撃を受けた1,000年後の世界を舞台に、プレーヤーは熟練ハンターの「アーロイ」となり、人類に代わり大地を支配する機械の獣たちと過酷な戦いを繰り広げていく。

 発売から約1カ月が経過し、すでにクリアされた方々も少なくなさそうだが、各社から新作が多数リリースされた時期だけに「気になっていたけどまだ手を出していない」という人もおられるかもしれない。そんな人向けに、ここでは本作の注目ポイントを順次お伝えしていこう。

クエスト形式でテンポよく展開するストーリー ~豊富なサブクエストでマイペース進行もOK~

 ゲームスタート直後、プレーヤーは幼少期のアーロイを通して“作品の世界観”を体感していく。衰退した人類は部族を核とした中世的な社会を形成。そんななか、アーロイはとある事情から“異端児”として生を受け、地域をおさめるノラ族から白眼視され迫害を受けつつも、育ての親「ロスト」に師事し過酷な環境を生き抜く術を身に着けていく。

 RPGの導入部は作風によってまちまちだが、「Horizon Zero Dawn」は幼いアーロイを実際に操作するプレイパートを盛り込むなど、実に丁寧な手法を用いている。生い立ちなどにまつわるさまざまな秘密や伏線はゲームを進めることで少しずつ明かされるが、その“情報量”が絶妙。人々が暮らす世界の概要、たまたま落ちた禁断の地で拾った奇妙な装置「フォーカス」など、片っ端から気になって仕方がない事柄がクエスト形式でテンポよく展開されていく。

 本作は、アーロイの成長、さらには世界の秘密に迫っていくメインクエストのほか、そこから派生するサイドとサブのクエストが多数用意されている。メインクエストもなかなかのボリュームだが、サイドとサブもメインに引けをとらない質量で、どちらをどう進めていくかはプレーヤーにゆだねられている。ひたすらメインを進めてもいいし、サブが気になるならそっちを徹底してもいい。各クエストで区切りとなる場所には必ずセーブポイントが用意されている親切設計もポイントで、本筋も寄り道も気兼ねなくグイグイ進めていけるのがいい。

 個人的にサブクエストでやや冗長さを感じるものもあったが、本作は“RPG”につきジックリ腰をすえてキャラクターを育てたい人には逆にちょうどいいかもしれない。いずれにしても「あれ、本編どこまで進めたっけ?」となるくらいふんだんに用意されており、寄り道が好きな人はこれだけで手を伸ばす価値が十二分にあるはずだ。

定番ではあるが導入部はチュートリアルを兼ねている。基本だがとても重要なことを教えてくれるので流さずきちんとプレイされたし
成長したアーロイは試練に挑む。勝利すれば義勇兵となり異端児でも部族の仲間として認められるが、その試練でアーロイの運命は変転していく
メインクエストはアーロイがノラ族の天命の使者に任ぜられたところからが本番。過酷な旅が幕を開ける
サイドやサブクエストも総ボリュームはメイン並。経験値や報酬も得られるので余裕があれば順次こなしておきたい

絶品のグラフィックが支える美しい世界観

 本作を起動してまず驚かされる、ひたすら繊細かつ丁寧な質感と高度な技術に裏打ちされた圧倒的なグラフィックス表現だ。まだ赤ちゃんのアーロイ、育ての親ロスト、部族と長老たち、村や周辺の地形など、次々と視野に飛び込んでくるそのいちいちに思わず「凄い!」とうならされる。導入部はもちろん、いざゲーム本編が始まってからも、フィールドの作りこみの凄さに思わず「よくもまぁここまで丁寧に!」とまたまたうならされる。

 エリアごとに変化していく風景は、卓越したアートディレクションのセンスのたまものか、全体環境、世界観の“芯”を損なうことなく、各エリアの特色を出すことに成功しているのも凄い。うっそうとした森林、ひたすら雄大な荒野、響き渡る環境音が印象的な渓谷……どこにいても「これは『Horizon Zero Dawn』の世界だ」としか表現しようのない没入感。オープンワールド形式で味わう極上の“冒険”すなわち「どこに何があるんだろう」というRPGの基本中の基本が、ただただ楽しい。

 人類にかわり地上の主となった機械の獣たちも、メカニックな外観と動物らしさのハイブリッド感がたまらない。サイボーグ的な外観とは裏腹に、敵の察知、単独、群れ、さらには機械の獣同士の争いなど、本作における“野生”がきちんと息づいており、狩る側のプレーヤーは当然“生態の観察”が必要不可欠になる。アイテム作成のためフィールドの素材を集めている最中、知らないうちに機械の獣の縄張りに足を踏み入れて襲われるなんてのもザラだ。

 他のオープンワールド形式の作品と比較すると、本作のフィールドは決して広大とまではいえないものの“密度”に関しては他に類を見ないレベルで注力されている。適度なスケールと濃い作り込みのバランスが「Horizon Zero Dawn」独特の質感、手触りに貢献しているといえそうだ。

タイトルまでのイントロダクション。この時点で映像美の極致といった感じ
フィールドの隅々まで堪能できる徹底された作り込みは「素晴らしい!」の一言。RPGの基本「フィールド探索」がとても楽しい
機械の獣たちは造形やモーションに思わず目を奪われる。他の機械の獣の死骸を漁っていたり、ときには喧嘩を始めるといった生態も垣間見られてこれがまた楽しい

獲物を観察して狩る ~自由度の高いハンティングアクション~

 本作の戦闘は“狩猟”がテーマ。槍や弓などで直接攻撃もするが、自分よりはるかに大型の敵も登場するため、要所で“罠”の存在が重要になってくる。

 大きさに限らず、機械の獣には動物的な“行動パターン”があり、R3ボタンでフォーカスを起動してチェックすると、機械の獣の弱点と歩き回る足跡が表示される。前述の“観察が重要”というのはコレで、ほぼ複数以上で行動している機械の獣たちに何も考えず接近すると、たいていは複数以上で逆襲され、よほど弱い相手でもない限りボコボコにされてしまう。

 小型の機械の獣は、初期から取得できる“サイレントストライク”による闇討ちが基本。背の高い草木などに隠れ、接近してきた相手にインフォメーションが出たらR1ボタンで一撃。背後など死角から忍び寄ってもオーケーで、サイズを問わず大ダメージが与えられる。近くにいる敵を呼び寄せるスキル「ルアーコール」も序盤から使える有効なコンビネーションだ。

 小型の敵はだいたいこれで片付くが、問題は中型以上。これらは「ロープキャスター」「トラップキャスター」といったワイヤーの罠をメインに、ダメージ、行動不能、状態異常を狙っていくことになる。このとき思い出して欲しいのが、フォーカスによる敵の弱点と行動パターンのチェック。素直に追いかけてくる敵はいいが、頭がいい機械の獣はあからさまなワイヤーや設置型の罠を避けることがあり、察知される前にすべての準備を終わらせておくのが基本。

 とはいえ、実は本作の狩猟は自由度がとても高く「こうすれば効率がいい」というのはあっても「必ずこうしなければならない」というものはほぼない。たとえば中型以上を相手に槍だけで立ち回ってもいいし、スリングや銃など好きな獲物をメインに据えてもいい。当然、キャスターで幾重にも備えた念入りなトラップを構築してもいいわけで、プレーヤーの数だけ狩猟スタイルがあるのが「Horizon Zero Dawn」のいいところ。その日の気分で狩猟スタイルを変えていくのも楽しい。

初期チュートリアルでも教えてくれるが、狩猟は獲物の観察が基本。フォーカスを使えば獲物の弱点と行動範囲を示す足跡を一定時間表示してくれる
小型の機械の獣はサイレントストライク狙いが有効。隠れた場所からルアーコールで呼び寄せて一撃!
中型以上はキャスターで罠を張るといい。最初のうちは資材を惜しまず念入りに! 石などで注意をひいてしっかり誘導したい

適度なスケール感と遊びに幅のある狩猟が超ステキ ~洋ゲーらしいカメラワークに一部ご用心?~

 最初は「うーんいかにも洋ゲーの“濃い”主人公だなぁ」と感じたアーロイの風体。とはいえ、それもプレイ前の話。いざゲームを進めていくと、つらく悲しい生い立ちと相まって(自分がおっさんという年齢もありますが)アーロイがどんどん娘のように愛おしい存在に……自分で操作する主人公なのに、視点というか心境は育ての親ロストのよう。感情移入もひとしおで、逞しく成長していく姿にしばしば目頭が熱くなる。

 狩猟については前述のとおりで、その日の気分でスタイルを変えるのが心底楽しい。雑な仕掛けはもちろん酷い目にあわされるのだが、セーブポイントやリスタート地点が要所に設定されているのでやり直しが全然苦にならない。最初はビビりながらの狩猟生活が、アーロイが育つ(逞しくなる)につれどんどん強大な敵と渡り合えるようになるのも凄くいい。アイテム作成に必要な素材集めも個人的にツボで、落ちてるものはなんでも限界まで拾う己の貧乏性を改めて実感させられる。

 人によっては「オープンワールドとしての広さ」を求めるかもしれないが、個人的にはこれくらいが凄く“塩梅がいい”と感じる。クエストに対するアクション、素材集め、狩猟、これらの各要素を今以上のフィールドスケールに収めたら、恐らく“隙間”や“空間”つまり“空虚さ”のほうが強く出てしまいかねない。統一感と厚みのあるディレクションが損なわれるようなら、広さを誇ろうとするよりフィット感を最優先したほうがよく、本作はその点でパーフェクトといっていい見事な完成度を誇っていると思う。

 もう褒めるところしかないような作品なのだが、個人的に……実は筆者、いわゆる“3D酔い”が並大抵ではなく、それでつらいケースがちょいちょいあった。「ウルフェンシュタイン」や「DOOM」系に代表される洋ゲーのカメラワークにすこぶる弱い筆者は、大半のFPSに30秒耐えられない。これはTPSなのになぜ? と思われるかもしれないが、本作は狩猟の最中はもちろん、フォーカスで何かを調べたりと右スティックを多用するため、FPS的な3D酔いを誘発する状況がたまーにあった。

 開けたフィールドは問題ないが、洞窟などの屋内、山賊の砦など壁で囲われた狭所での戦い……右スティックを頻繁かつ前後左右にグイグイやらないと敵が捕捉できない状況が続くと、三半規管が瞬時にダウンして泣く泣く半日くらいグッタリとゲームから離れることに。頻発するようならレビューそのものをギブアップという可能性もあったが、前述のとおりたまーにという程度で、なにより最後までやれたのは本作がそれほど魅力的だったということだろう。

 狭い場所で敵が大勢出てくるシーンを思い返すと若干耳の奥あたりにじわじわくるが、それ以上にフィールド探索と狩猟アクションがすこぶる楽しく、アクション好きはもちろん、グラフィックスや世界観でピンと来た人はぜひ1度手に取っていただきたい。