インタビュー
触るとわかる今までの"龍らしさ”「龍が如く7 光と闇の行方」インタビュー
「2Dからの発想ではなく、3Dからの発想でRPGを作りたい」
2019年9月16日 14:54
セガゲームスは、東京ゲームショウ2019において2020年1月16日発売予定のシリーズ最新作「龍が如く7 光と闇の行方」をプレイアブル出展した。
弊誌では会場で実際にプレイしたインプレッションをお届けしているが、ファンとして気になるのはやはり1番気になるのは新しいバトルシステム「ライブコマンドRPG」だ。
今回はバトルシステムの話を中心に本作のチーフプロデューサーである横山昌義氏と、プロデューサーの阪本寛之氏にインタビューを実施したので、その内容をお届けする。
2Dからの発想ではなく、3Dの発想からRPGを作りたいと考えた
――本日はよろしくおねがいします。早速ですが本作の特徴である「ライブコマンドRPG」について教えて下さい。
横山氏:コマンドRPGって平面的な遊びから生まれたものなんですよ。というのもRPGは文字と数字の世界から始まりました、絵もなくテキストだけのゲームですね。例えば「敵に攻撃をした、何ポイントのダメージ与えた」というメッセージが表示されるものです。
それがファミコンなどの時代になって、例えば敵と出会ったらスライムのイラストが出てくると。ただビジュアルは変わっても、攻撃に応じてヒットポイントの数字が削られて、死んだら倒れるというタイプになってきたのですが、あくまでもやっていることは初期から変わっていないんです。そのビジュアルの表現が2Dから3Dになったりしても、そのベースは変わっていないですよね。
僕らがやりたかったのは“3Dの発想からRPGを作りたい”と思ったんですよ。テキストだけのRPGや、2Dの世界の発想の延長線ではなくて、アクションの制御で動かすRPGというのを作ることができないか、というのが大きなトライです。発想の仕方というか挑戦の仕方が違うんですね。我々は3Dの物理制御で攻撃をちゃんと正しく当てるとか、攻撃するというのをアクションで作ってきたチームなので、そこのチームの力を使ってRPGを作りたい。
「龍が如く」の独特さってどこだろうって考えた時に、現代の繁華街、歓楽街と呼ばれるところでケンカをするという行為が普通のゲームと異なるところです、世界観も含めてですね。そして「龍が如く」では街で遊ぶというのをすごく大事にしています。それは何を指しているかというと、街中にある看板や自転車だとか、カラーコーン、電柱など様々なものを武器みたいに使って敵を倒すという、まぁリアルケンカですよね、それをどう表現していくか。それをすごく大事にしています。今作ではそれをRPGでもちゃんと動かしたかったんです。
我々が今何をやっているかというと、例えば味方の目の前に自転車がある時に、キックの攻撃をすると手前の自転車を蹴ってダメージを与えたりだとか、そういったことをやっています。これはリアルタイムに物理制御を行なっているので、決まりきった事が1つもありません。キャラクターは常に動いてますし、街の状況も壊したらそのままで進んでいくので。リアルタイムの物理制御は「龍が如く6 命の詩。(以下、龍が如く6)」で自社オリジナルのドラゴンエンジンというものを作ってからトライしてきたことで、そこである程度足がかりを作って、「龍が如く 極」や、「JUDGE EYES:死神の遺言」などでさらに進化させて、やっとこういうことができるね、と思えたのが今回のシステムに繋がりました。
――3Dの発想でRPGを作りたい、という気持ちは「龍が如く6」のタイミングからあったんでしょうか?
横山氏:それ自体はありません。今作から主人公が変わり「春日一番」という人間を作ったときに、トライしたいと思いました。春日の設定から本作のベースのストーリーができていく中で、1人で戦っていくタイプのストーリーにはならず、常に仲間がいて仲間と助け合いながら生きていく、となったときに、例えばアクションでも、例えばこれまでの「龍が如く6」にもお助けキャラみたいなものがいて、追従していたことがあるんですけど「そんなキャラ居ましたっけ?」って感じなんですね、裏で戦っているから活躍できないんです。なぜかというとプレーヤーは桐生や他の主人公も含めて、そのキャラクターの背中だけを見てプレイしているんです。そのキャラクターの周りしか見えていない。それがアクションの実情なんですね。
なので仲間がプレーヤーキャラクターを助けても活躍はしないし、助けてくれている実感もないんですね。ストーリーの行きがかり上一緒にいるところがある、くらいで。これで話を進めていっても今回の「龍が如く」は面白くない、と。ストーリーを伝える上で正しくないと思ったんですね。要するに仲間と戦うこと前提で、ゲームを作る。それは何か?って、いくつも選択肢はあったんですけども、RPGが素直に一番良かったという話なんですね。
――7というナンバリングというアクションからRPGに変えられるのを決めたのはいつくらいですか?
横山氏:「龍が如く6」が終わってすぐくらい、春日一番という主人公を生んでからです。そこを一番最初にやったんです。こういうゲームにするという企画書を作るところからではなく、春日一番という「龍が如く」の次の主人公は?ということからスタートしているんです
ですので、春日一番のストーリー・物語でやっていこう、と決めたときからですね。具体的に言うと2年前の8月26日に「新・龍が如く」プロジェクトは春日一番というキャラクターで行きます、と発表しているので、それ以上前から企画は進行していました。
――個人的には龍が如くスタジオはチャレンジし続けるスタジオだと思っているのですが、今回SNSなどでは今回の反響が大きいですよね。
阪本氏:予定調和がすごく嫌なんです。ある意味安心感はあるんですが、その安心感を何年も続けていると新しいことが何もできない。ないもので驚かせて喜んでもらいたいと考えていますね。
横山氏:挑戦はみんなしたいというのは前提にありますね。SNSなど、いわゆるネットの反応ってその答えが全てではないと思っています。そういった反応に影響を受け続けていくのは楽なんですけど、その結果売上は減ると考えています。
触ってみるとわかる、“意外と"これまでの「龍が如く」と変わらないフィール
――リアルタイムに状況が変わっていくと伺いましたが、オブジェクトを使った攻撃などもあるイメージでしょうか。
阪本氏:落ちている物もそうですし、車に轢かれるなんて要素もその1つです。大きい国道のようなところに出ると、自分や味方も轢かれる可能性があります。
横山氏:全然公開していない情報なのですが、これまでの作品でもストーリーが進んでいくと、例えば敵の本拠地的な雑居ビルの中でバトルする、というようなスペシャルなシチュエーションがあったじゃないですか。そういうところで地形が変化していったりとか、状況変化が起きるというシステムがあります。現時点では街中のバトルしか公開していないので。
――例えば最初はビルの中ですが、何らかのきっかけでビルが崩れてってステージが変わるとかそういうイメージでしょうか。
横山氏:例えばそういうことがあるかもしれません。
阪本氏:ほかにも人が生活していないような場所に、危険なオブジェクトもいっぱいあるので。
横山氏:例えばガスボンベが爆発したりとか、そういうシチュエーションですね。
――それは流れ弾などによって爆発する形でしょうか?狙って爆発させることもできますか?
横山氏:両方ありますね。
阪本氏:制御は何も変えていなくて、操作方法だけシンプルにまとめて、複数主人公で大人数の攻防戦を表現した結果このシステムになりました。やっぱりターンとかコマンドというとオーソドックスなRPGをイメージされるんですけど、今作のバトルを表現する適切な言葉がなかなかなくて……。「ライブコマンドRPG」の「ライブ」というのは、コロコロ変わる状況の中で、コマンドを選んでバトルしていくという意味を込めているんですね。
横山氏:コマンドRPGって言ったからこそこれだけ注目を浴びましたし、コマンドRPGといったからこそのYahoo!トップですからね(笑)。ゲームショウの話題の中でYahoo!トップになったのはうちだけですからね。こんなの初めてですから、嬉しいですよね。(インタビューを実施したのは東京ゲームショウ3日目。2日目にYahoo!のトップニュースに掲載されていた)
――プレイして感じたのが、バトル部分の感覚も意外とこれまでのシリーズと変わらない印象を受けました。
横山氏:そうなんです、“意外と変わらない”という印象でいいんですよ。意外と変わらないところを目指したので(笑)。「あれ?これって『龍が如く』じゃない?」っていう、それでいいんです。
――むしろキャラクターや職業ごとにユニークな技、従来のシリーズ作品でいうヒートアクションが用意されていて、もっと幅が広くて……。確かにこれまでと入力方法は違うんですけど、ちゃんと「龍が如く」に仕上がっているし、素直に面白いと感じました。
阪本氏:今回展示しているバージョンは普通の攻撃を押したらそれを眺めるという技が多いのですが、技の途中でボタンを連打したり、カウンターでボタンの入力を求める技があったり、他にもジャストガードや、スウェーのように、コマンドを選んだ後にさらに追加入力ができる技も登場します。
そうなると移動だけがAIに制御されていて、その中でスキを見てコマンドを入力するというような仕様が製品版には入ります。そうなるとさらにこれまでの作品と大きくは変わらない操作感になっていくと思います。
――操作感は変わらないのに複数のキャラクターが操作できるというのは、さらに魅力的なポイントですね。
阪本氏:アクションをベースに、キャラクターを切り替えられる方がいいんじゃない? とも言われるのですが。色んなキャラクターを切り替えるアクションってあるじゃないですか、でもそれって広大なマップで常に敵と戦い続けるゲームじゃないと相性が良くないんですね。
街中のリアルなケンカを4:4とかで4:8でテンポ良く、みんなが力をあわせて殴り合うというのを実現したいので。移動は賢いAIに委ねて、何をいつ撃つか、どこで何を撃つか、というのに集中したゲームを作りたかったんです。
――何種類くらい職業は登場しますか?
横山氏:男女で職業が分かれていて、ベースでそれぞれ4、5職あって、そこからさらに上級職に行って……という形なのでかなりの数になりますね。
――上級職にもハローワークで転職できるんですか?
横山氏:そうです。春日が勇者になるイベントが有ったと思うのですが、あれだけが特殊です。春日以外は勇者になれないんですね。他にもキャラクター固有の職業があって、安達が刑事だったりとか、ナンバがホームレスだったりとか。
――キャラクター固有の職業があるということは、キャラクター固有のアクションもあるということですよね。
阪本氏:その通りです。安達は元刑事という設定なのでそれで覚える技もありますし、ナンバも初期の職業がホームレスなので、プレイしたバージョンではホームレスの技が使えます。
――実際にプレイできた部分のストーリーで「職がないからハローワークに行こうぜ」という話の展開はユニークで面白かったです。
横山氏:あれは本編のストーリーの一部です。
阪本氏:みんな一文無しなので、働かないと食っていけないんですね。本当に0円スタートですから。100円の重みをみんな味わうんです(笑)。
横山氏:そうなんですよね。100円200円の重みを味わってから、とんでもない世界へと入っていく。会社経営なんかもありますしね。
――今回プレイできたバージョンでは3キャラクター、そこに助演女優オーディションで選ばれた鎌滝えりさんを加えて4キャラまでは発表されていますよね。ほかのキャラクターももちろん仲間になりますよね?
横山氏:います……が詳細は秘密です。それはストーリーが関わってくるので。
阪本氏:現時点で言えるのは、新しく仲間になるキャラクターも専用の職業を持っているということですね。
――春日の仲間の中に過去のレジェンド達が加わるなんていうことは……
横山氏:続編ですから。過去作のキャラクターで生きているキャラクターはもちろん今作でも普通に生きてますよ。それ以上は秘密です、それがストーリーなので(笑)
――東城会のレジェンド達が今何をやっているかがすごく気になります。
横山氏:なぜ東城会が消えたのか、というのが話の核の謎ですから何も言えません(笑)。
阪本氏:色々想像していただければと思います(笑)。
横山氏:ただDLCなどで仲間に加わるということではないです。生きているキャラクターは必要に応じて登場する可能性があります。
――最後に読者にメッセージをお願いします。
横山氏:これだけ話題になると、今までよりも積極的に試してみたいとか触れてみたいと思ってくださる方がいらっしゃると思います。東京ゲームショウも限りがあって2、3,000人とかにしか体験してもらえないわけです。
となってくると「もっともっと」となるでしょうから、今後何かしら体験できる方法を提供したいと考えています。そういうので触ってみてもらってもえればと思います。触ると「あれ『龍が如く』じゃない?」って思っていただけると思います。
阪本氏:今回プレイいただいた東京ゲームショウのバージョンはスタンダードなバトルを体験できるバージョンで、技とかも少し絞っています。次に体験できる機会があればもっと仕上がっていて、遊んでみたときのストレスだったり、これじゃないという感触が全部払拭できると思います。
――本日はありがとうございました。