インタビュー

「サイバーパンク2077」は各国ローカライズチームの力を逆輸入し、“リアルな言語”が飛び交う多様性社会を作り上げている。CD PROJEKT RED 本間覚氏インタビュー

2020年4月16日 発売予定

価格:
7,980円(税別、通常版)
29,800円(税別、コレクターズエディション)

 「サイバーパンク2077」の音声は、世界中のローカライズチームが力を合わせて収録している。CD PROJEKT RED ジャパン・カントリーマネージャーの本間覚氏がTGS2019にてそう明かしてくれた。

CD PROJEKT RED ジャパン・カントリーマネージャーの本間覚氏

 「サイバーパンク2077」では、多種多様な言語を話す人物たちが登場する。たとえば、TGS2019で上映されていた日本語吹替版プレイデモでは、ハイチ系の人たちを見ることができるが、彼らが話す言語は日本語ではなくハイチ・クレオール語で、それらはそのままハイチ・クレオール語として再生される。それらの言葉は喋っている人の頭上でいったん文字として表示されたのち、上書きされるように日本語に書き換わっていく。

 多種多様な言語、という中には、当然日本語も含まれる。「サイバーパンク2077」には日本人が登場することがすでに明かされているが、こうした“もともと日本語を話す人物”の、海外版における音声収録に関しても本間氏ら日本チームが部分的に関わっているそうだ。

 一般的に、ローカライズチームはすでにある言語を翻訳して各地域に届けることが役目となるが、「サイバーパンク2077」ではその力を逆輸入している。各国のリアルな音声をナイトシティ中に響き渡らせることで、これ以上ないクオリティの多様性社会を描こうとしている。まさに「サイバーパンク2077」ならではの開発手法だ。

 そのため本間氏ら日本チームが収録する日本語音声は、海外版にも実装されるという。海外版の日本語は世界の人に向けての日本語になるため、「さじ加減は難しいが、多少はわかりやすい日本語を入れた方が喜ばれるかな」と意識して、味付けを若干コントロールしているという。いずれにしろ、「サイバーパンク2077」の中では、かつてのハリウッド映画のような怪しい日本語が響きそうにないことが本間氏の話から明らかになった。

「フジヤマ、ゲイシャ、みたいなのは音声ではやりません」とのこと

 となると気になってくるのが「日本人キャラクターはいつ見られるのか」だが、本間氏によれば「今はまだ明かせない」という。

 原作TRPG「サイバーパンク 2.0.2.0」から続く本作の世界観においては、日本語は富裕層が喋る言葉として設定されており、その中には権力を持つ企業に属し、ストーリーに関わってくる人物もいるのだそうだ。ただひとつ明確なのは、英語版をプレイしていても日本語を聞く機会はある、ということだ。

 ちなみに日本語版の字幕・音声の仕様については、基本的には日本語と英語の字幕・音声をゲーム内で切り替えられるようにする方針だという。ただしパッケージ版の場合は容量の関係で入り切らない可能性もあり、もしそうなった場合は追加ダウンロード等で対応する可能性が高いとのことだ。

右奥のビルに浮かんでいる「arasaka」のロゴ。日本人がどのように描かれ、どのように登場するのか。まだ謎に包まれている
よく見ると運転手の免許証に「ナーラーヤン勇」とある。ナーラーヤン勇。特に今回のインタビューとは関係なさそうだが、ナーラーヤン勇である
TGS2019のプレイデモに登場するヴードゥー・ボーイズのプラシド(左)と、リーダーのブリジット(右)。英語がやや不得意であるハイチ人の英語版での雰囲気を再現するため、日本語でも一定のルールを設けて不自然な日本語を表現しているという。リーダーのブリジットは末端のチンピラと比べて言語能力が高いため、その加減に若干差をつけているそうだ
会話の選択肢については「ウィッチャー3」に近いとのこと。黄色はストーリーが進む選択肢、青はストーリーを進めず、情報収集などをするための選択肢。黄色の項目が複数ある場合は、決断の時だ

 また、TGS2019前日にはキアヌ・リーブス氏がブースを訪れたが、これはその直前に電撃的に決まったことだったそうだ。キアヌ氏は「感動するくらいいい人」で、「噂には聞いていたが、会ってみると本当に気さくで、誰にでも分け隔てなく接してくれる」と印象を語ってくれた。

本間氏も一緒に写真を撮ったそう。うらやましい!

 さらにローカライズ作業や音声収録以外に本間氏が取り組んでいるのは、海外での情報展開を、できる限りラグなしで日本に届けること。CD PROJEKT RED JapanのTwitterなどがまさにその活動の1つだが、これは本国ポーランドのオフィスにも常駐の日本人スタッフがおり、連携が取りやすい環境にあるから。「大事な取り組み」として、今後も続けていくとした。

 加えて、今後の日本国内向けの展開も規模としては「ウィッチャー3」とは「比べ物にならないほど」だそうで、こちらにも期待したい。

 なお、TGS2019のプレイデモシアターの内容であるが、本間氏によれば「全体から見ればこれはほんの一部の一部でしかない」という。だとしたら、本編はどれほどの規模になるのか。未だ想像もつかないが、今後の情報公開が非常に楽しみだ。

目を覚ませよ、サムライ!