「龍が如く7 光と闇の行方」レビュー

龍が如く7 光と闇の行方

新しくて面白い!システムもキャラも変わったがそのスピリットは間違いなく「龍」!

ジャンル:
  • ドラマティックRPG
発売元:
  • セガゲームス
開発元:
  • セガゲームス
プラットフォーム:
  • PS4
価格:
8,390円(税別)
発売日:
2020年1月16日

 セガゲームスより2020年1月16日に発売予定の「龍が如く7 光と闇の行方(以下、龍が如く7)」。本作はシリーズ誕生から15周年を迎える「龍が如く」シリーズの正当ナンバリング作にふさわしい、シリーズの魂を受け継いだ作品である。

 そもそも「龍が如く」シリーズの開発チーム「龍が如くスタジオ」は毎作我々を驚かせるスタジオだが、数々のチャレンジの中でも最新作「龍が如く7」は最も大きな挑戦を感じさせた。

 これまでのシリーズ作品&スピンオフ作品では“アクションバトル”に重きを置いたアクションアドベンチャー作品だった。しかし、今作ではJRPGの系譜を受け継ぎながらも、「龍が如く」シリーズがこれまで培ってきた技術や演出がふんだんに詰め込まれたバトルスタイルのRPGに仕上がっている。

 エイプリルフールにコマンド式の戦闘バトルの動画が公開されたときは、「随分と手の込んだエイプリルフールネタだな」と思ったものだが、まさか本当にコマンド選択式のRPGとして、しかもそれが正式ナンバリングシリーズとして発売されるなどとは全く想像できなかった。

 そのインパクトの大きさはかなりのもので、8月に実施された新作発表会のあとはSNSなどを中心に戸惑っているファンが多く見られたものだ。筆者もその1人である。

 だが東京ゲームショウでの体験プレイ、店頭体験会、配信中の体験版、そして今回の先行プレイ……と何度もプレイを重ねた結果、確かにこれまでの「龍が如く」シリーズとは違う。だがシリーズを通して流れる根源的な魅力はそのままだし、むしろゲーム作品としての魅力は大きく増している印象を受けた。早速その魅力についてお届けしていこう。

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コマンド式RPGバトルの魅力!

 まずは何を置いても本作のシステムについて語りたい。これまでのシリーズ作品のバトルは簡単な操作で繰り出せるド派手な喧嘩アクションが特徴のゲームだった。バトルスタイルの変更や、プレーヤーキャラクターが変わるといったことはあったものの「アクションバトル」というシステムは変わらなかった。

 だが冒頭でも述べたとおり本作はRPG、しかもJRPGの系譜にあるコマンド式バトルを採用している。敵との戦闘になると「攻撃」、「防御」、「極技」、「その他」というコマンドが表示されるので、それらを選択して敵と戦っていく。この部分は非常にオーソドックスでこれまでにRPG作品をプレイしたことがあれば画面を見た瞬間から何の違和感もなく操作できるはずだ。

 だが本作のバトルはただのコマンド選択式のRPGバトルではない。公式ページでは「ライブコマンドRPGバトル」と謳っており、これは味方や敵の位置はAIでリアルタイムに動かされ、街の状況も止まることなく変化していくというもの。キャラクターは能動的にフィールドにある看板や自転車を使って攻撃したりするし、ダウンした敵には自動的に他の仲間が追撃を入れたりもする。敵味方の立ち位置が非常に重要で、弱っている敵を攻撃しようとしてもルート上に他の敵がいたら攻撃を妨害される……など、動きのあるバトルが楽しめるのだ。

 さらに、いわゆる必殺技にあたる「極技」ではタイミングよく△ボタンを押したり、□ボタンを連打することで追加ダメージが入る「ジャストアクション」という要素や、敵の攻撃にあわせて×ボタンを押すことで「ジャストガード」が発動し若干被ダメージを少なくできる要素など、コマンド選択式ながらも能動的なバトルが可能で、雑魚戦ですら楽しめるのだ。面倒であれば自動的にキャラクターたちが行動してくれるオートモードもあるのでレベル上げをするだけならそちらを使っても良い。戦闘を楽しみたいときと、サラリと戦闘を済ませたい時を両立させているのはRPGとして非常に遊びやすい。

ベースはコマンド式のRPGバトルだが、AIが立ち位置を調整したり、ダウンした敵に仲間が追撃を入れたりする
タイミングにあわせてボタンを入力することで追加ダメージを加えたり、被ダメを減らすことができるので気の抜けない戦闘が楽しめる

 そうして敵を倒すと経験値を入手できる。経験値を稼ぐことでレベルアップしていく……というのも王道のJRPG的な要素だ。本作のキャラクターたちはそれぞれ固有のジョブを持っている。キャラクターにはキャラクターレベル以外に「ジョブランク」というジョブごとのレベルがあり、戦闘などを通じて経験値を獲得することでそれぞれが成長し、最終的にキャラクターの強化に繋がるというシステムだ。

キャラクターレベルとジョブランクがあり、これらを上げることでキャラクターが成長していく

 だがここからがまた「龍が如く」シリーズらしいアレンジがされている部分なのだが、「龍が如く7」は現代日本の繁華街を舞台にした作品だ。つまり「戦士」や「魔法使い」といったような王道ファンタジーRPGに出てくるようなジョブは存在しない。

 ではどんなジョブが存在するのか?各キャラの初期ジョブの一部を紹介しよう。「フリーター」、「ホームレス」、「刑事」、「チーママ」などなど、ジョブというか職業ではある。とてもRPGの戦闘キャラのジョブのようには思えない。だが名前だけの一発ネタではないのが本作のまたすごいところだ。例えばホームレスであれば「クサい息」という極技が使える、ホームレスのクサい息なので相当臭いのだろう、敵の防御力を下げることができる。そう、これは名前こそ一発ネタ、ギャグのように見えるが、これはJRPGを「龍が如く」で解釈した結果なのだ。例えば「ホームレス」ならば「クサい息」で敵の物理防御力を下げ、「熱気ブレス」で火属性の攻撃を浴びせる。魔法使い的な職業だ。

 ファンタジーRPG的な解釈でいくと、「刑事」は重戦士、特に防御に重きを置いたナイトのような職業である。「刑事の煽り」という極技で敵のヘイトを高めさせてターゲットを自分に集め、「警棒カウンター」という敵の近接攻撃にカウンターを食らわせる極技で、味方を守りながら敵にカウンター攻撃を浴びせていくというような戦い方ができる。

このスクリーンショットは「機動隊員」の極技で味方の防御力を上げている。ジョブの名前こそ現代風だが戦闘スタイルはオーソドックスなRPGスタイルだ
キャラクターには弱点属性という概念もある。うまく弱点をついて戦っていきたい

 またコマンド選択式のバトルの利点は他のキャラクターが何をやっているのか、どう戦っているのかがわかることだ。これまでの「龍が如く」シリーズでも味方キャラクターと共闘するようなシーンはあった。だが視点は操作しているキャラクターを中心にしていて、共闘しているキャラクターは”同じフィールドで暴れているキャラクターがいる”程度の印象だった。だが今作は違う。主人公の春日一番と共に戦い、極技を使い、サポートし、回復する。それぞれのキャラクターが活き活きと描かれるのだ。

 そういったこともあり、キャラクターへの思い入れは自然と深くなった。口は悪くどこかひねくれた部分を持つ「ナンバ」、元刑事ながら酒と女好きのオッサンである「足立宏一」、気が強い一方で仲間に夜食を作ってくれるような優しさを持つ「向田紗栄子」。仲間になった経緯やバックグラウンドはそれぞれ異なるものの、どのキャラクターも魅力的に感じる。

 特に筆者は「ナンバ」がお気に入りのキャラクターだ。いくつか理由はあるのだが、その1つがまずナンバを演じる安田顕さんの演技だ。あらゆる事に対して斜に構えるようなひねくれた一面を見せる一方、「もしかして紗栄子は俺に惚れてんのかな?」と謎の自信を持つなど、“ひねくれているけど、どこか憎めないおじさん”であるナンバをリアルに表現している。

 また小さい頃勇者に憧れていたという春日をバカにするような素振りもせず、むしろ盛り上げてくれたり、馴染みのバーに忍び込んで勝手に超高級なお酒を飲み干してしまったりと、魅力的なエピソードに事欠かない。

 ちなみにバトル的にも初期ジョブのホームレスが非常に使い勝手がよく強力なので序盤から活躍してくれるというのもある。もちろんナンバも転職できるのだが、妙にホームレス姿がマッチしているキャラクターだ。

仲間キャラクターが非常に魅力的なのが今作の特徴だ

 そしてシステム的にもキャラクター同士の絆を感じられるシステムもある。それが春日との「絆」という要素だ。絆のレベルを上げないと転職できないジョブがあるというゲーム的なシステムの面もあるのだが、何より仲間同士の何気ない会話が面白いのだ。

 例えば足立とコインランドリーの前を通った時には「コインランドリーの怪談」という話を始める。幽霊でも出たのかと思いきや、なぜか乾燥機が自動で延長されていて、お気に入りのTシャツが縮んでしまった、という拍子抜けの話をされる。こういった何気ないシーンからも足立というキャラクターが立体的に浮かび上がってくるのだ。そうして浮かび上がってきたキャラクターがストーリー上で活躍する、この描かれ方が非常に魅力的だ。

仲間同士とのちょっとした雑談がキャラクターに深みを増している

圧巻の大人のドラマは健在!様々な思惑が交錯する

 今回はネタバレを避けるために序盤のみのプレイ、かつその中でも大きなストーリー展開のみの紹介に留めるが、様々な組織・人物の思惑が交錯する人間ドラマは健在で、とにかく続きが気になる。

 これまでのシリーズは圧倒的なカリスマとその侠気で物語を引っ張っていくキャラクター「桐生一馬」が主人公だったが、今作では人懐っこさと世話焼きな性格の新主人公「春日一番」を中心に物語が展開されることで、「これまでの主人公ならきっと真っ直ぐに突っ込んでいったが、今回は違うのか」という新しい感覚が味わえる。

 大きな流れとしてはこうだ。主人公の「春日一番」は東城会系荒川組の組員だった。兄貴分の殺人の罪を肩代わりして警察に出頭した春日が18年の刑期を過ごし出所するところから始まる。出所する日には出迎えが来てくれると考えていた春日だが出迎えてくれる人は誰もいなかった。神奈川県警の人間だと言い張る怪しい男「足立宏⼀」が「お前には帰る場所なんてどこにもない」と話しかけてくる。

 足立の言葉を信じられない春日は真実を確かめるべく神室町に行くのだが、元々所属していた荒川組は東城会の傘下だったはずなのに、ライバルの近江連合の傘下に入っていることや、彼が生まれ育ったソープが廃墟になっているのを目の当たりにする。文字通り家族も戻る家もなくなっていたのだ。

 そして決定打になったのが本当の親のように慕っていた荒川組の組長「荒川真澄」だ。現状を目の当たりにしても信じられない春日は荒川の元を訪れる。するとそこは近江連合の会合の真っ最中だった。荒川は「すまねぇなイチ……死んでくれ」という言葉と共に、決別を告げるように一発の銃弾を春日に撃ち込む。

春日を出迎えてくれる人間はおらず、代わりに足立という怪しい男が待っている
文字通りに帰る場所を失った春日
本当の親のように慕っていた荒川からのまさかの言葉

 かろうじて命をとりとめた春日は横浜の伊勢佐木異人町で目覚める。そこでホームレスのナンバをはじめ仲間たちと出会うのだ。戻る場所もない、生きる目的さえも失った春日だが持ち前の人懐っこさや義理深さから様々なトラブルに巻き込まれながらもそれを解決していく。そして仲間たちと出会い絆を深めていくのだ。

すべてを失った春日は横浜の伊勢佐木異人町という街で目覚める。ホームレスのナンバに生きる術を教えてもらうのだが……
様々なトラブルに巻き込まれ、それを解決していく

 あくまでもあらすじとしてサラッと紹介したが、それぞれの仲間たちとのエピソードは決して軽いものではない。苦節があったからこそ共に仲間として戦うときは愛着が沸くのだ。特に今回のストーリーではと共に戦ってくれる「仲間」のエピソードを丁寧に描写しており、仲間1人でひとつの章をまるごと使うほどのボリュームになっている。

 また、ストーリーに関連して今作から一気にプレイのハードルが下がったことは記しておきたい。「龍が如く」シリーズは正式なナンバリングタイトルだけでも「0~6」までの7作品がある。しかも時系列は繋がっていて、基本的には「桐生一馬」というキャラクターが主人公となる、いわゆる”続き物”になっていたのだ。こうなってしまうとなかなか新規に始めるのはハードルが高く感じてしまう。

 だが今作は主人公は新しいキャラクター「春日一番」であり、ゲームシステムも一新されている。新しく「龍が如く」シリーズに飛び込むには最高のタイミングだと言える。

 もちろんシリーズファンを置き去りにしているわけではなく、時系列はこれまでのシリーズ作品と繋がっているので“神室町の今”を知ることができるし、極道組織である東城会や近江連合などは相変わらず登場する。知っていると「あの東城会や近江連合にそんな出来事が」と驚きを感じられるし、新たに始めるプレーヤーにとっては「そういう大きな組織がなんとなくライバル的な存在なんだな」という事が伝われば大丈夫だ。

多すぎるサブストーリー、やりこみ要素の高すぎるミニゲーム!

 そしてこちらも「龍が如く」シリーズといえば必ず触れておきたいのが街歩きとサブストーリー、そしてミニゲームの数々だ。これまでのシリーズもサブストーリーやミニゲーム……というには少々作り込み過ぎたものがたくさん登場してきた。それらは今作でも健在で、濃厚なサブストーリーや、新しいミニゲームも多数登場している。

 その中でも印象的なのはお金にまつわるミニゲームやサブストーリーだ。すべてを失った春日はもちろんお金も失った。生きていくために自動販売機やゴミ捨て場を漁ったり、空き缶を拾ったり(ゲーム内では「サバイバル缶拾い」というミニゲーム)するところから始まる。序盤は「ヒットポイントの回復のためにちょっと飲食店に寄っていくか」なんてことが言えるような収入ではない。

 だがストーリーが進んでいくにつれて、住む家を確保し、職を見つけ……と失った人生を少しずつ取り戻していくのだ。またミニゲームとして会社経営もプレイ可能で、ホームレスから様々なものをすっ飛ばして社長になってしまうのは正に文字通りの成り上がりである。

 その他にも倒した敵が記録されていく「スジモン図鑑」や、街で困っている人を助ける「バイトクエスト」といった新要素はやりこみがいがありすぎるほど。春日の人間性を成長させる資格学校も忘れてはいけない。

 特に「スジモン図鑑」の作り込みには感心させられた。倒した敵が勝手に記録されていくので能動的にプレーヤーがとるアクションはそれほど多くないのだが、一体一体の敵に丁寧な説明テキストが用意されており、新しい敵を倒してこの説明を読むのが楽しい。

 例えば「荒くれシェフ」というキャラは「料理がまずいという客に対して、容赦なく暴力を振るう」というテキストがあったり、ユニークなところでは「アーバンマッスル」という筋肉隆々の敵キャラで「筋トレが趣味で、態度が大きく筋肉自慢をしてくる」といった記載があり、まさに図鑑という名の通りだ。しかもモデルを回転させて隅々までチェックできたり、音声も再生できるなど謎の作り込みには笑ってしまった。実用的なところでは弱点属性やドロップするアイテムなどを確認できるのでそちらが正しい使い方になるだろう。ちなみに現在確認できるだけで最大252体のスジモンが登場するということで、コンプリートを目指すにはかなりやり込みが必要になりそうだ。

 とにかくサブストーリーも多数あるし、ミニゲームもありすぎるしで、レビューのために先行してプレイしていたのだが、「時間が足りない、もっとやり込みたい」と今の段階でもずっと思っている。ミニゲームやサブストーリーに加えてキャラクターのレベル上げなどを始めてしまった日にはとても遊びきれないほどだ。

空き缶拾いや、自販機を漁るのは生きるために必要なのだ
あるイベントをきっかけに社長に就任することになる春日
倒した敵をコレクションするスジモン図鑑
街中の困っている人を助けるバイトクエスト
資格学校でできる「資格試験」で人間として成長することも忘れない
多すぎるほどのサブストーリーはどれも必見

 とにかくあれも語りたい、これも語りたいという中から特に本作で魅力に感じたところをピックアップして紹介した。繰り返しになるがコマンド選択式のRPGになった「龍が如く7」、シリーズファンであるほど期待と不安が入り混じっていることだと思うが、その心配は一切ないことをお伝えしたい。

 シリーズファンには「龍が如く」のナンバリング作として間違いなく楽しめる作品だし、シリーズ未経験の読者にもこれがシリーズに飛び込む最高のタイミングだと断言できる。過去作の歴史や登場人物などは一切知らなくても問題なく物語に入り込めるし、もし本作をプレイして過去の出来事が気になれば、ぜひ過去作をプレイしてみて欲しい。

 「龍が如く」シリーズの最新作として、そしてシリーズの入門作としてすべてのゲームファンにオススメしたい作品になっている。ぜひプレイして「龍が如く」シリーズの魅力に触れていただきたいと思う。