インタビュー

「FFXIV: 漆黒のヴィランズ」プロデューサー吉田直樹氏インタビュー

ついにすべてが明かされたジョブ&バトル調整。その意図を全ジョブ分聞いた

6月28日 アーリーアクセス開始

7月2日 正式サービス開始

 スクウェア・エニックスのMMORPG「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ」のアーリーアクセスが6月28日からスタートする。5月15日から17日まで、「漆黒のヴィランズ」を先行体験できるメディツアーが開催され、プロデューサー兼ディレクターの吉田氏から話を聞く機会も得ることができた。新ジョブや新アクション、フェイスや新エリアなど試遊で遊ぶことができた要素について、色々と聞いてきたので試遊レポートと一緒に楽しんで欲しい。

 なお、試遊機は4月30日のバージョンであり、インタビューはその内容を前提としている。最終調整前なので、リリース時に大きく変更される可能性があることをご了承いただきたい。

【ロンドンメディアツアーの試遊会】

全てのタンクに必要なアクションを実装

吉田氏: 遠路はるばる、ありがとうございます。

――今回、海外のメディアさんはどれくらい参加されているんですか?

吉田氏: 僕は数えていないですが、ヨーロッパだけで5、60? 70? 聞くんじゃなかった(笑)。これはヨーロッパだけですからね。

――まだこれから北米がありますものね。今回は4月30日バージョンということでしたが、開発はもう完成に近づいている感じですか?

吉田氏: 僕がこのメディアツアーに来ている段階で、「希望の園 エデン零式」以外のバトルコンテンツは、もう調整が終わっています。今は「エデン零式」の最終調整が続いているところです。メインシナリオは5割くらい僕のフィードバックが反映された状態じゃないかと思います。あと一週間くらいで全部取り込めるんじゃないかと思います。

――発売が近づいてきましたが、今はまだ作業中なんですね。

吉田氏: そうですね。調整した部分の後追いチェックのために、こちらでもログインしてみないといけないですね。

――先ほどまで開発バージョンを試遊していましたが、結構大きく変わってましたね。順番に聞いていきたいのですが、まずはタンクですが、TPがなくなってどうなるかな、と思ってたんですが、あまり影響がないように感じました。

吉田氏: 影響はないです。多分もうそんなにTPを意識してなかったんじゃないかと思います。「4.X」シリーズで、TPを意識しなくてもいいようにバランスの数字付けをしていたので、なくなっても単純に表示が減っただけで。多分プレイ感は、ほとんど変わらないと思います。

――タンクは、新ジョブのガンブレイカーも触りましたが、プレゼンテーションで説明があったように、だいたい並びになってる感じがしますね。

吉田氏: そうですね。基本的にタンクは、MTをやるにしてもSTをやるにしても、最低限必要なもの、――多少効果が違うとか、見た目が違っているとしても、このシチュエーションではこのアクションが必要というものについては、4ジョブ全員が必ず持っているという状態にしました。ジョブ固有のシステムによって、どのジョブが好きかで決めてもらえればいいようにバランスを取っています。

――MTとSTが2ジョブずつという形ではなくて、4ジョブがどれでもできるという形なんですね。

吉田氏: もともとそういう調整をしようとしていた訳ではなく、何度も議論を重ねていまの方向に落ち着きました。マッチングの時に「MTとMTになった」とか「ST同士になった」みたいなことになると結局プレーヤーに面倒をかけてしまうので、それを防ぐためにも4ジョブが横並びになる調整を行なうことにしました。メカニクスでゲーム体験の差を作っていった方がみんな幸せになるだろうと。例えばパーティ全体に対しての防御バフが強い、弱いなど、どうしても性能面比較に話題が集中します。タンクとしての体験の差や遊びとしての体験差以上に、性能差に注目が集まっていたので、今回の調整ではどのタンクを使っても同じことができるようにしたうえで、プレーヤースキルの差を出せるようにしていこうという感じになっています。

――まだ少ししか触ってないのですが、実際のパーティプレイにおけるガンブレイカーならではのプレーヤー体験というのはどういうものなのか教えてください。

吉田氏: 「FF」シリーズのガンブレードって、銃を撃つときもあれば、斬る時もあるという武器ではなくて、もともとのコンセプトは、斬った時にトリガーを引くことで斬る威力が増すというか、斬ると同時に爆発を与えることでダメージを高めるという考えでデザインされている武器なんです。ガンレイカーは、そのトリガーを引くというところを、ゲームの中でどう提供していくかということを考えて、ウェポンスキルを使った時に、「ソイル」というものを使うアビリティを挟むことで、斬った後にトリガーを引いたような手ごたえを体験できるように作られているジョブです。今までのタンクのような特定のローテーションをシチュエーションで使い分けるというより、ソイルのあるなしを常に選択肢としてチョイスしていくようなジョブになっています。他の3タンクに比べて、遊び方が全然違う研究のしがいがあるジョブになっているのではないかと思います。

――技の分岐が今までのような一本道にはなっていないんですね。

吉田氏: そうですね、そこをガンブレイカーならではの特徴にしてるつもりです。

【ガンブレイカー】

プレーヤーからのフィードバックを反映してストレスだった部分を調整

――ヒーラーなんですが、学者の攻撃の手数がかなり減ってて、賛否が分かれそうな調整だなと感じました。ヒーラーの調整の方針を改めて教えていただけますか。

吉田氏: ヒールを極力せずに攻撃に回すというのが、ヒーラー本来の遊び方とは違うだろうなというところがあって、今回それぞれの特徴は活かしたまま、改めてヒーラー3ジョブの横並び調整を行ないました。もともとコンテンツのクリア自体はどのヒーラーを使っても差が出ないんですが、学者だけが極端に攻撃に寄っていて、プレーヤーのフィードバックが火力の出やすさ出にくさにどうしても寄ってしまうので、まずはきっちりとヒーラーの役割を再定義して、横並びに調整したうえで、それぞれの攻撃の仕方で特徴をつけようという風に変えました。巴術士から学者と召喚士が分かれることによって残っていた弊害部分を今回整理したことが大きいですね。単純に学者の火力を下げたいというわけではなく、ヒーラーとしてバランスを取ろうとしたと考えていただけると助かります。

――ミアズマなどは、巴術士の間は使えるけれど、学者になったら使えなくなってクラスのアクションからも消えてしまうということですか。

吉田氏: クラス側でも調整されてます。

――逆に白魔道士はかなり使い勝手がよくなったという印象を受けました。

吉田氏: 白魔道士はあらゆる回復行動にほぼキャストが必要で、回復量は大きいものの、先読みというか、攻撃にあわせて先行入力して、攻撃をくらった瞬間に全体を戻してから移動するみたいなシチュエーションが多く、攻撃をする暇がないということが、学者や占星術師に比べるとストレスになるというフィードバックをいただいていました。そのため、攻撃力を上げるというよりも、移動しやすくすることで次にやれる行動の選択肢を増やすという方向で調整しました。それを攻撃に回してもいいし、余裕をもってヒールの準備をしてもいい。とにかく機動力をちゃんと高めて、プレーヤーのやりたい行動の選択肢の幅を広げるのが、白魔道士の調整ポイントです。後はヒーリングリリーが使いにくかったと思いますので、そこはバトルが開始されれば自動的にスタックされていくという状態になっています。リリーが溜まれば即インスタントヒールに回すことで機動力を高めるということになっています。

――意識して貯める必要がなくなるのは便利ですね。

吉田氏: そうですね。ストレスと面白さは紙一重ではあるのですが、ややストレスの方が高いだろうというものに関しては、基本的にリソースは自動的に貯まるか、貯まったら嬉しいというものに統一しようということで調整されているものが多いです。

――DPSでいうと例えば、吟遊詩人とか、竜騎士もそうですけど、最初に必ず「ストレートショット」や「ヘヴィスラスト」を入れたりしていたのがなくなりましたね。

吉田氏: それが常に頭の中に回っているという状態がしんどいだろうなと。特に、そのジョブの仕組みを理解している人と、うろ覚えの人との差があまりにもつくので、そこはもう今回すっきりシンプルにしました。管理しないといけない煩わしいものを、減らせるものは減らそうと。

――たくさん数字を見ているのは確かに大変でしたからね。

吉田氏: そうなんです。特に吟遊詩人は恐ろしいほど面倒くさかったと思うので、かなりメカニクスも変えて、シナジーも変えたので、単純に詩人としては遊びやすくなっているはずです。

――詩人はさっき触った感じだと、結構強くなってるような印象を受けたんですが、それはただ単に、遊びやすくなったからそう感じるんでしょうか。

吉田氏: そうですね、ストレスが減ったので、詩人本来の、動きながらいろんなアクションができるというところが活きたんじゃないかと思います。

【踊り子】

――踊り子はかなりシナジー寄りのジョブですね。クローズドポジションで1人を対象にしつつ、踊りでパーティを支援するという形ですか?

吉田氏: パーティ内に相棒を作るという感じです。パートナーを1人決めるという、そこがちょっと変わった遊びになってますね。

――今はこの人、今はこの人と状況で切り替えていくこともできますね。

吉田氏: 踊り子は移動方法も、向いている方向に対して一定距離移動するという、ターゲットしなくても移動距離が自在に操れるというちょっと特殊なアクションを持っているので、うまく使いこなせるととても気持ちのいいジョブだと思います。いろいろ試していただけたらなと思います。

――踊るときに、ダンスのアイコンを順番に押しますが、あれは全部ランダムですか。

吉田氏: ランダムです。

――普通にやっている間は失敗のしようはないんですけど、ギミックの間にあれをこなすのは結構難しいものなんですか?

吉田氏: いや、そこまでじゃないです。最速、最効率でやろうとすると、いきなりは難しいのかもしれないですけど、徐々に慣れていくものですし。

――アクションの説明を見ると、成功した場合と失敗した場合で威力に差がついているじゃないですか。成功0の時、1つの時、2つの時と。そんなに失敗するのかなと思って。

吉田氏: 一応用意されているんですよ(笑)。

――踊り子の幻扇は、侍でいうところの必殺剣のようなものなんですか?

吉田氏: そう言ってしまうと、ちょっと誤解を生みそうな気がしますね(笑)。

――幻扇はあくまでも追加ダメージのダメージソースというだけですか? 時々発動するダメージソースで、溜めて使う。

吉田氏: Procしていたら優先的に使う、というイメージです。踊り子は極端にスキル差が出にくいようにはしてあります。人気ジョブになるだろうなとは思っているので。ある程度は、誰が触っても極端に差が出ないようにしているつもりです。

――踊り子って、例えば「猛者の撃」のように、ワンボタンで一気に火力をブーストするようなアクションがなく、段取りを踏みつつ底上げするようなものが多い気がします。

吉田氏: そうですね。パーティに貢献するという割合を多くしてる分だけ、その辺りでバランスを取っています。

――近接はどれもいい感じになってますね。

吉田氏: ありがとうございます。とくにモンクは、お待たせした分だけ、ぜひ使っていただきたいなと。「疾風迅雷IV」を僕らがためらった理由がわかってもらえるんじゃないかなと思います(苦笑)。今はいいんですが、たぶんパッチ5.4ぐらいになると、恐ろしい速度になるかなと……。

――グローバルクールダウンのタイマーがぶんぶん回るわけですね。

吉田氏: そうです。その分、相当なスピードで攻撃し続けないと、ダメージロスにつながってくるので、結構難しいかなと思います。

――そこを楽しむジョブということになるわけですね。

吉田氏: それと、これまでは「疾風迅雷」が落ちたときのリカバリーが本当に大変だったので、ボスがいなくなった後に、維持できるような状態も作ってあります。今回は、そうそうモンクの正統進化ってこうだよねという風になっているのではないかと思います。

――竜騎士に関してはいかがですか?。

吉田氏: 竜騎士も、まさに正統進化という感じになっています。あとは、「ジャンプマスタリー」という特性を修得すると、「ジャンプ」が「ハイジャンプ」に変化します。それによってスピードが速くなるため、そこでのストレスが減ることになります。

――忍者は分身の術でかっこよくなりましたね。

吉田氏: はい。開発チーム内では、もっと派手に分身してくれ派と、忍者なんだからさりげなく分身してるぐらいがいいだろう派があって、最後まで調整していました。

【暗黒騎士の分身技】

――暗黒騎士の分身は自律している感じですが、忍者の分身は自分の行動を追随する感じなんですね。

吉田氏: そうです。暗黒騎士の方は分身ではなくて、内なる暗黒を引き出して、自身の闇の部分すら戦わせるという考え方です。

――“あれ”はフレイなんですか?

吉田氏: さぁ、どうなんでしょうね……。

――レベル80のクラスクエストでその辺りが語られるんでしょうか?

吉田氏: ほんのちょっと触れられてはいますが、あまりフレイと紐付けて欲しくはないですね。そもそもフレイという存在自体が、英雄の持っている内なる負の感情が人格化してるだけなので。内なる負の部分すら操って力に変えるというのが、今回の……まあちょっと中二設定ですね(笑)。あれで暗黒がさらに人気出てくれるといいなと思います。

――暗黒騎士は毎回ジョブクエストも人気がありますし、今回かっこいいですからね。

吉田氏: そうですね。暗黒騎士は「ダークアーツ」を外したので、これでシンプルに使いやすくなったかなとは思います。

――機工士は大きな変更が入っていますが、ロボについても実装意図などを教えていただけますか?

吉田氏: 機工士に関しては、大きくメカニクスを変える上で、最終的にどういったジョブを目指そうかと考えた時、ガンナーではなく機工士なので、いろいろな兵器を使っていくようなジョブがいいだろうと。これからもジョブが発展していくときに、次はどんな兵器を使うんだろうということをコンセプトにした方が機工士らしいだろうと決めて、銃で何かをするとかガウスバレルがどうとかいうよりは、兵器をたくさん使うようなジョブにしようということで、今回ああいったデザインになっています。
 バトルの動画を見ていただくと、要素が多すぎて何が何だかわからないけど、なんかスゲーという感じは伝わるのではないかと。見た目にも面白いので、メカを扱って戦うことに重点を置きました。ヒートゲージも管理が面倒でよくわからない上に複雑というものではなく、とにかく貯まったら嬉しいというリソースに統一しました。

――ヒートで攻撃が変化するというのがなくなり、オーバーヒート状態との差が分かりやすくなりましたね。

吉田氏: そうです。シンプルになりました。

――「リコシェット」と「ガウスラウンド」がチャージアクションになりましたが、ローテーションも大きくかわりそうですね。

吉田氏: もちろんです。

――ローテーションに関してはどのジョブもかなり変わるのですか?

吉田氏: 変わったジョブは相当変わっていますが、正当進化したジョブはそこまで大きく変わってないです。赤魔道士や侍は、僕らが慣れてから開発されたジョブですので、メカニクスを維持し完全正当進化しているという感じだと思います。いくつかのジョブに関しては、がらっと変わっていますが、その分慣れると良さが分かっていただけるかなと。

――召喚士と赤魔道士は、スケジュールの都合でまだ触れていないんですが、どう変化しているか教えていただけますか。

吉田氏: 召喚士は口で説明するのがすごく難しい。ペットの呼び出しが、すべてインスタントになったので、シチュエーションに応じてペットを使い分けてもらえるようになりました。ですので、より召喚士らしくなったかなと思っているのと、「サモン・バハムート」をローテーション中に撃った時、偶数回にはやることがなくて暇だったのがフェニックスを呼べるようになるので、常にどちらかを召喚しながら戦うようになっています。スタート前にエーテルフローを貯めるのがめんどくさいというところも、そういうものではなくしてしまっています。ペットにアクションさせることで、任意にバフをつけて戦っていくってことになるので、複雑でよくわからなかった部分がかなり綺麗になって、召喚士らしくなったことが大きいのではないかと思います。

――赤魔道士に関してはいかがですか?

吉田氏: 赤魔道士は何もいうことがないくらいの正当進化です。大きいものでは、範囲攻撃を明確に強化してるのと、コンボの4段目の後ろにインスタント発動の5段目が追加されたので、次の行動のために移動しながら使ってもらうという形で、単純に気持ちよくなっているはずです。また「デプラスマン」で死ぬのが嫌だという人のために、「デプラスマン」とリキャストを共有して、その場で一回転するだけの技を追加したことなどが挙げられます。

――オメガでたまに落ちてましたからね。

吉田氏: ステージが狭くなって、どうやっても「デプラスマン」が使えないという時に、火力のロスがストレスだと思うので、そういう時に代用してもらうようになっています。赤魔道士は使いやすいところが人気の秘訣なので、使いやすさはそのまま維持してます。

――侍も赤魔道士と同じくらい正当進化だということですが。

吉田氏: 侍はより効率的に繰り返し居合術が使えるように、まさに居合ジョブになっています。

――今回のバトルバランス調整で、苦心したところや、吉田さんからどうしてもと通したものはありますか。

吉田氏: 僕のメイン担当は黒魔道士と、あとは使用感を確認するという意味で赤魔道士でした。赤魔道士はすんなり特に何もなかったです。置き換えアクションによって、ホットバーの数も少なくして、ユーザビリティも向上したと思います。逆に黒魔道士は結構苦労しました。proc「サンダガ」を挟むタイミングを一時期変えていたんですが、調整初期はアストラルファイアの継続時間が変わっていなかったのでストレスに感じられていました。proc「サンダガ」を1つ損したような印象がどうしても残っていたんです。

――ローテーションの変更で撃つ暇がなくなったということですか。

吉田氏: そうですね。開発終盤までそのままだったんですが、これまでのローテーションよりも撃つものが1発増えているんだったら、アストラルファイアも時間延長しないと気持ちよくならないと、最終的に2秒伸ばしてもらいました。それによってローテーションが綺麗にはまるようになりました。あとは「アンブラルソウル」でアンブラルブリザードを維持し続けられるようになっているので、ずっと「トランス」しながら我慢するというよりは、常にアンブラルブリザード状態の最大値を維持しておいて、MAXダメージからボスに攻撃を再開できるようになるのがかなり大きいです。

 後は「激成魔」のリキャストが短くなってるので、「サンダガ」に使うか、「ファイア」に使って確定ファイアprocを抱えておくかで、たぶん腕の差も出しやすくなってると思います。「ポリグロッド」は2スタックになっていて、「ゼノグロシー」は無詠唱なので、今までは無理に「ファウル」を撃たなければいけなかったタイミングでも、2発貯めておいて撃てるタイミングでインスタントで撃って火力を取り戻すみたいなことができるようになりました。これで移動は相当楽になっているはずです。より純粋な火力ジョブとして使っていただけるようにしたつもりです。

――ピュア火力の黒魔道士と侍は今回もシナジーアクションの追加はありませんか?

吉田氏: ないですね。そこは変わらないです。

――今回のジョブ調整でシナジーを全体的に下げました。これによって今までのシナジーがないために特定のジョブがパーティに入りづらいという状態が解消されると考えていますか?

吉田氏: これは逆もあったかなと考えていて、シナジーがないから入れないのではなく、強すぎるシナジーがパーティの枠を埋めていたのだと。要するに、竜騎士は絶対に入れて吟遊詩人とずっとつながっておけとか、タンクは防御スタンスを切るからヘイトコントロールをしてくれる忍者がいたほうがいいとか。必須だと思われていたジョブが枠を埋めていたので、それ以外が入る余地がなかったという点も大きい。タンクはタンクスタンスの内容を変更し、どんなアクションにもヘイト係数がかかるように調整してあげることで、忍者からヘイトコントロールの役割は消しました。突耐性デバフもなくなるので、それによってパーティ編成の幅が広がるかなと思っています。

――今回のジョブバランス調整の方針が決まったのはいつぐらいですか。

吉田氏: タンクの方針が決まったのは2018年の10月ぐらいだったと思います。タンクは影響が大きいのでまずはタンクの方針から決めないとということで。

――その時に攻撃スタンスを全部なくすということを決めたんですね。

吉田氏: 一番最初に決めたのはMTとSTの絡みをどうするかですね。そこを決めたらそれに合わせてデザインが決まってくるので、その後スタンスを廃止しましょうということになりました。現状はアタッカースタンスしか使われていない状態になっていたので、だったらタンクスタンスと何もつけていない状態でいいじゃないかと。タンクはシンプルに言うと、ほかのジョブより硬く、敵視を集められ、味方にも自分にも防御バフを張れる。それ以外はひたすら火力を出すための行動をすればいいというジョブになっているはずです。プレーヤーの皆さんがプレイしたいタンク像に近づいているはずです。単純に敵視を取りたいときは、スタンスをオンにすればよく、なんのペナルティもありません。STに移動する時にはそれを切ればいいだけになっています。

――わかりやすくていいですね。

吉田氏: これまでのようにMTの時とSTの時で、スキルローテーションが変わったりしないので、純粋に腕の差をコンテンツに合わせて出してもらえばいいかなと思っています。

仲間たちとの旅をフェイスで表現。その時に応じた様々なセリフも

――フェイスを連れてダンジョンに行ってきたんですが、結構みんなしゃべりますね。とくにダンジョン終盤には、結構ストーリーに関わるようなことも話したりしていましたが、基本的にメインストーリーを追う時にはフェイスを連れていった方がいいんでしょうか?

吉田氏: そうしなければならないようにしているつもりはないのですが、一緒に旅をしている感じを出したいのと、今まではなんのかんの言いながら結局は光の戦士だのみだったという感じをなくしたいという思いがありました。彼らもダンジョンへ行くと言ってるけどどうする? という感じで。今まで通りプレーヤー同士で行っても構わないけれど、彼とも一緒に行くことができる。行ったら行ったでNPCたちが一生懸命頑張っている……そういったところをゲーム体験として作りたかったというところが大きいです。

――ダンジョンに行くときだけ、どこからともなくヒカセンの集団が現われるのは、確かにストーリーにこだわりがある人にとっては違和感だったかもしれないですね。

吉田氏: ただ効率を重視するならプレーヤー4人の方がいいですし、フェイスの場合まとめ狩りには対応してません。普通にプレイしていったら、ものすごく優秀に動いてくれると思います。ちゃんとストーリーに関わったことや、そのダンジョンに行くときの心情に合わせたセリフを言ったりするので、連れていって楽しいです。同じダンジョンでも、キャラによってリアクションが違ったり。RPGとして楽しむために用意しているものなので、まずはプレーヤー同士でクリアして後追いで遊んでもらってもいいですし、単純に選択肢ですね。

――今回はミンフィリアたちと旅をするということですね。最初からあのメンバー全員が使えるんですか?

吉田氏: メインストーリーの展開上、NPCたちはだんだんと合流していきます。スタンドアローンのRPGと同じですね。IDによっては、このキャラは別行動しているので連れていけないということもあり、連れていけるキャラはダンジョンごとに違います。

――今回のパーティメンバーは試遊用の特別バージョンなんですか?

吉田氏: いえ。今回体験していただいたIDはシナリオ上でもあのメンバーで行きます。

――途中でサンクレッドが訓練の成果をどうのこうの、と言ってましたが。

吉田氏: サンクレッドがどこでガンブレードを会得したかという話がストーリー上出て来るのですが、その話題ですね。あまり言うとネタバレになりますね(笑)。

――ミンフィリアらしき少女が双剣士だったのも結構驚きました。

吉田氏: それもシナリオをプレイすればわかります。これ以上は語れないです。重大なネタバレになるので。

メインストーリー以外のクエストやF.A.T.E.でも世界設定を楽しめる

――フィールドも色々と見て回りましたが、拠点となるクリスタリウムはかなり高低差がある町ですね。階層によって雰囲気も違っていて。

吉田氏: クガネが基本平面だったので、クガネに慣れていると構造を覚えるまではちょっと戸惑うかもしれないですね。すごく凝って作られてる分だけ、都市内転送網をうまく使わないと迷うかも。その分、ものすごく雰囲気が良くて、細部まで徹底して作られています。

――住宅地の中にも入れる部屋があったり、かなり細かく作られてますね。

吉田氏: 「紅蓮のリベレーター」の時は僕らも効率的に作りすぎて、入れる建物が少ないと特に海外の方から言われました。そこに特に体験がないとしても、世界観に沿った部屋があるというだけで、例えばハウジングの参考にしたり、そういうことが大切なんだろうなと思って、今回はメモリの限界ぎりぎりまでできるだけ内側も作っています。全部の部屋に入れるわけではないですが。

――今回からWindowsの32ビットサポートを切ったことで、できることが増えたりといったことは関係ありますか?

吉田氏: そこはあまり変わらないと思います。どちらかと言うと、あまりにも少ないメモリで遊んでいて「クラッシュしたんですが」と報告を受けても、メモリ的にもう限界だよな……と。

【アマロと黒い鳥】

――クリスタリウムに黒い見慣れない鳥とアマルジャっぽい蛮族がいますね。

吉田氏: あれはアマロです。あの鳥は第一世界の生物で、チョコボ以上に相棒として使われています。アマロはメインシナリオにも絡んでくる存在です。アマロの生態もかなり詳しく語られています。第一世界のロアはいろいろなところで語られていくので、ロア好きにはたまらないんじゃないかと思います。

――F.A.T.E.でも、そういうストーリーが楽しめるということで、ストーリー好きには嬉しいですね。

吉田氏: そうです。クリスタリウムの成り立ちとか、もともとレイクランドはエルフたちの強力な国が支配していた地域だったんです。そのエルフの騎士団というか、自警団の物語みたいなものも本編では設定しか出てこないんですが、F.A.T.E.で語られていたりします。全体が世界を楽しめるようなデザインになっているかと思います。

――今回既存ジョブのジョブクエストはレベル80のみで、「ロールクエスト」という新しいクエストがあるということですが、ジョブのアクションはそのロールクエストで覚えていくんですか?

吉田氏: いいえ、今回すべてのジョブは、レベルアップでアクションを修得します。アクションをクエストやジョブクエストの報酬にはしていないので、全部レベリングだけで覚えます。

――ではロールクエストはどういう位置づけなんですか?

吉田氏: ロールクエストに関しては、メインクエストの補完と物語性を高めるもの、ということに主眼が置かれています。

――メインストーリーはずっと第一世界で進むのですか? 原初世界には帰れなくなるんでしょうか?

吉田氏: プレーヤーは行き来できます。

――そうなんですね。すぐに戻れるんですか?

吉田氏: すぐ戻れますよ。光の戦士は正確な召還方法で呼ばれたので大丈夫です。この辺りはメインクエストで説明されますよ。

――行ったり来たりできないと、ワールド間テレポやハウジングなどいろいろ困りますもんね。クリスタリウムにマーケットボードがありましたが、あれは使えるんですか?

吉田氏: 使えます。ただリテイナーは第一世界には呼び出せないので、ちょっと別の方法でアイテムをやり取りすることになりますが、この辺りもメインクエストで補完されています。こういったところは、こだわって作っています。

――第一世界は第一世界なりのということになってるわけですね。

吉田氏: そうです。

――今日はバトルばかり聞いたので、それ以外の部分についてはまたE3のインタビューで伺いたいと思います。最後にファンに向けてメッセージをお願いします。

吉田氏: 約1カ月でリリースですが、今日インタビューで聞いていただいたように、今回はプレーヤーの皆さんからいただいたフィードバックを、議論した上で割と素直に取り入れているものが多いです。「漆黒のヴィランズ」では、ジョブ間のシナジーを薄めてできるだけジョブごとのゲーム体験で差をつけるという方向にしています。煩わしかったものや、複雑過ぎたものをシンプルにして、そのジョブを気持ちよく使えるように楽しさを追求しています。全体がそういう方向に向かっていることを覚えておいていただけるとありがたいかなと思います。これまでもそうですが、ゲーム体験を最優先にしてシステムを変更/調整してきましたので、さらに遊び心地がよくなった「FFXIV」を楽しみに待っていただきたいです。ストーリーは個人的には過去最高かなと思っています。これまでの伏線に答えを出し、どんどん核心に迫っていくので、驚きの連続だと思います。ぜひテンション高く遊んでいただけると嬉しいです。

――前回は「蒼天」の最後からオメガや神龍が出てきたりしていましたが、今回はまだクリスタルタワーが関係しているということしかわかっていないから余計に気になりますね。

吉田氏: 「FFXIV」全体の物語の核心に恐ろしい勢いで踏み込んでいくので、やめどきが難しいかもしれないですね。あとは、今回暁のキャラがすごくいいです。改めて、愛着を持ってもらえるようにしているつもりでもあるので。暁メンバーそれぞれの思いみたいなものも、感じていただけると、僕らとしても作った甲斐があります。

――楽しみです。ありがとうございました。

【「FFXIV: 漆黒のヴィランズ」メディアツアーレポート目次】

【特集トップページ】
「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ」メディアツアーが開催

【最新ジョブレポート】
ジョブ別解説︓タンク編
 新ジョブガンブレイカーを迎え、ついに根本的な変更が⼊ったタンク。4ジョブ全てがMT/ST可能なバランスに

ジョブ別解説︓近接DPS編
 モンクについに「疾⾵迅雷4」が登場。忍者には「分⾝の術」も︕

ジョブ別解説︓遠隔DPS編
 シナジーの強さをウリとした新ジョブ踊り子、完全に生まれ変わった機工士

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 召喚⼠は「フェニックス」召喚を習得。⿊と⾚魔道⼠はより使いやすく

ジョブ別解説︓ヒーラー編
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【新システム「フェイス」体験レポート】
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【新エリアレポート】
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レベル80ジョブ専用装備を一挙公開 ガンブレイカー、踊り子を含む全17ジョブの装備をCGとスクリーンショットと共にお届け

【吉田直樹氏インタビュー】
「FFXIV: 漆⿊のヴィランズ」プロデューサー吉⽥直樹⽒インタビュー。ついにすべてが明かされたジョブ&バトル調整。その意図を全ジョブ分聞いた