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【連載第49回】韓国最新オンラインゲームレポート

KOGIA、「2009 世界ゲーム市場展望セミナー」を開催
今年のトレンドは再びオンラインFPSか!? モバイルゲーム市場にも異変あり

1月20日~21日開催

会場:ソウル建設会館

 韓国ゲーム産業振興院(KOGIA)は1月20日から21日までの2日間、ソウル市内建設会館において「2009 世界ゲーム市場展望セミナー」を開催した。

日本市場の発表を担当したJOGA事務局長の川口洋司氏
 KOGIAは韓国文化体育観光部によって1999年に設立された団体だ。韓国オンラインゲームの輸出相談会を行なったり、国内企業に対して海外の情報提供などを行なっている。また、「G-Star」の主催団体でもあり、ゲーム専門の人材を育てるゲームアカデミーのサポートなど、韓国ゲーム業界に対してあらゆる側面からサポートを行なっている団体だ。

 そのKOGIAが今回主催したセミナー「2009 世界ゲーム市場展望セミナー」は、海外現地で活動する人たちを集め、世界各国の状況を報告してもらい、2009年のゲーム産業の事業展望を説明するという内容だ。開催初日には海外ゲーム市場の枠で、アメリカiPhoneの成功や中国内における中国産ゲームの動向のほか、日本市場の説明も行なわれた。

 日本の発表では有限責任中間法人日本オンラインゲーム協会(JOGA)事務局長の川口洋司氏が登壇した。多くの日本企業は3月期決算であるため、データは2007年のものが使われたが、2008年の業界の動向として日本オンラインゲーム市場の鈍化と、オンラインゲーム会社の“勝ち組、負け組”への二極化、不正アクセス急増について説明された。

 2日目は韓国ゲーム市場について説明された。特にオンラインゲーム市場は、トップが2年ぶりに「AION」にとって替わった他、企業のM&Aなど業界全体が非常に大きく動いた1年であった。本稿では韓国オンラインゲーム市場の決算と展望について話したNCSoftイ・ジェソン氏の講演を踏まえて2009年の韓国オンラインゲーム市場を占いたい。

売り上げなどは2007年のデータだったが、タイトル数、オンラインゲーム会社数などは2008年の情報だった。2008年オンラインゲーム会社は123社で、サービス中は271タイトル。また、日本でも不正アクセスが急増したことが報告された


■ トップ交代を果たしたMMORPGと活発的なM&Aが注目されるなか、業界の二極化が裏目に……

韓国オンラインゲーム市場の決算と展望について発表NCSoft常務取締役のイ・ジェソン氏
韓国ゲーム市場規模についての資料は「2008 大韓民国ゲーム白書」で2007年度のものだ。2007年、韓国ゲーム市場規模は5兆1,436億ウォンで、オンラインゲーム市場は2兆2,403億ウォン。2003年以降、韓国の制作配給市場で最大の規模を誇っている
 韓国オンラインゲーム市場の決算と展望について発表したのはNCSoft常務取締役のイ・ジェソン氏だ。韓国メディアやKOGIAの発表をデータとして使い、2008年の韓国オンラインゲーム業界の動きと2009年の展望について説明した。

 イ・ジェソン氏は大きくRPGとカジュアルとオンラインゲームの種類を分けた2008年タイトル規模から紹介した。スポーツ、音楽、シューティングなどにあたるカジュアルゲームは2008年に59本が登場し、2007年の54本に比べてそれほど差が見られなかったが、RPGだと2008年は34本で、2007年の23に比べて48%も増加した。また34本のRPGの中でもMMORPGは28本で、ジャンル別に見ても一番多い年になった。

 また2008年は「AION」を筆頭としたMMORPGのヒット作が多く生まれた年だ。「AION」、「Prius Online」、「アトランティカ」、「天地大乱」は、今でも同時接続者数において数万を維持している人気タイトルだ。一方、これらのヒット作の登場でも、同じMMORPGジャンルである「リネージュ」シリーズや「World of Warcraft」の人気には変化が見られなかった。MMORPG以外でもトップゲームの人気はそのまま継続している。

 それでは同時接続者20万を越える「AION」のユーザーはどこからやってきたのだろうか? それは今回、公開された資料の中ではユーザーの移動に関するデータがなく、疑問が残ったところだった。

 韓国の大手ポータル「Hangame」の会員数は3,000万人、「Nexon」は2,500万人と言われている。韓国の人口が約4,800万人ということを考えれば過半数の国民がオンラインゲームをプレイしていることになる。トップを走るタイトルの人気が変わらないということは中盤以下のゲームが、大きくユーザー数を減らしていることを意味し、業界の二極化がさらに深刻化している。

 その影響はメーカーサイドにもハッキリと現われている。2008年に入ってM&Aが活発に行なわれている点だ。5月に行なわれたT3EntertainmentとHanbit SoftのM&Aを始め、7月にはNexonとNeople、10月にはNHN GAMESとWebzen。そして、12月にはEAが「Raycity」などのデベロッパーJ2Mを買収した。実力のある中堅メーカーは大手資本に次々に飲み込まれている。

 一方、韓国オンラインゲームは2008年度の年間輸出金額において10億ドルを達成した。10億ドルを達成したのは韓国コンテンツ産業では初めてで、当初の予想より2年早く達成したという。NHN、Nexon、NCSoftの3大手メーカーの海外売り上げは2007年より20%増加し、合計4億8000万ドルと推計されているという。これらの3つのメーカーだけで全体の48%を占める。

 2007年の韓国オンラインゲーム市場はなかなかヒット作が現れず、冬の時代と目されていたが、2008年はMMORPGの活躍で業界全体がひとまず息を取り戻したかのように見えた。しかし、水面下では既に飽和状態にある韓国オンラインゲーム市場で、二極化がさらに加速しているのではないかと考えられる。

2008年はMMORPGが28タイトルで特に多かった。他にはシューティング11タイトル、スポーツ8タイトル、FFPS8タイトル、リズムアクション7タイトルになっている(左)、2007年のデータに基づいた「2008 大韓民国ゲーム白書」では2009年にゲーム輸出額10億ドルを予想していたが、2008年の11月に早くも目標の10億ドルを達成した。3大手メーカーで、その48%を占有している(右)


■ 2009年は再びFPSがトレンド!? 人気作の続編や海外有名ゲームのオンラインFPS化で第2幕が到来か

PCバン(ネットカフェ)の利用率はRPGがダントツで多い。2008年11月26日に発表された東洋総合金融証券産業分析レポートでは「AION」(茶色)の登場でも「サドンアタック」(空色)以外、RPGタイトルでは大きい変動が見られなかった
一方、FPSジャンルではトップとの差がどんどん縮まった。続編や海外大作FPSが注目される1年になりそうだ
 イ・ジェソン氏は2009年の展望としてFPSブームの第2幕を予見した。PCバン(ネットカフェ)のゲームリサーチサイト「Gametrics」のデータによれば、FPSゲームの人気の差がどんどん狭まっているという。2008年1月の利用率は「サドンアタック」14%、「Special Force」6%だったが、12月には10%と4%になっている。他にも「Counter-Strike:Online」が1.8%、「A.V.A」が1%を記録している。新作FPSの登場で、各タイトル間の差がじわじわと縮められていた。

 こうした中、2009年も新作FPSの登場が予定されている。最初の韓国産オンラインFPS「カルマ」の続編「カルマ II」が1月22日からオープンβテストが実施されたほか、「Special Force II」の登場も予想されている。また「Quake Wars Online」、「Battlefield Online」と海外FPSのオンライン版も登場する予定だ。FPSタイトルの差が縮まっている中でこうした新作の登場により、ユーザーの動向が注目されるところだ。

 一方、他のジャンルでは「Age of Conan」(運営元Neowiz Games)や「Warhammer Online」(運営元NHN)といった海外発の大作が今年中の展開が見込まれている。そのほかにも「Tera」、「C9」、「KuF2」、「マビノギ英雄伝」など、国内産の大作のリリースも数多く予定されており、どのタイトルが今年を代表する1作となるかはまったく予想が付かない。

 早くも成果を出しているのは1月からオープンβテストに入ったGameHIのオンラインメカアクション「Metal Rage」だ。既に同時接続者2万人突破がリリースされたほか、Nexonのカジュアルシューティング「バブルファイター」でも同時接続者1万人の突破がリリースされている。

 昨年から続く大が小を飲み込むM&A案件も2009年も継続しそうだ。イ・ジェソン氏は最近の経済不況で企業価値が低下しているため、資金力のある大手企業によりM&Aがいっそう活発に行なわれる見込みだという。すでにいくつかのゲーム企業が絡むM&A案件のリーク情報が流れている。今年も韓国ゲーム業界ではM&Aが主要なトピックのひとつになりそうだ。

 韓国文化体育観光部は2012年までにゲーム産業に3,500億ウォンを投資し、年間輸出を50億ドルまで成長させると2008年12月に発表した。その計画の内容も今年から明らかになる見込みである。大量の大作と業界の再編成、2009年の韓国オンラインゲーム市場は昨年にも増して激しい1年になりそうだ。

Webゲームでは依然として「Hangame」、「Netmarble」、「Pmang」、「Mgame」が強い。なかでも「Hangame」のシェアーはポーカーゲームで70.94%、花札ゲームで42.11%とダントツである。2008年のWebゲーム売り上げ予想額2,300億ウォン(左)、「2008 大韓民国ゲーム白書」の資料によると2007年の韓国にとって、日本市場は31.10%と1番大きかった。欧米市場の進出は相変わらず、混乱だという。2009年はFPS、スポーツなどを中心に海外で展開される予定だ(右)


【韓国コンソールゲーム市場の決算と展望】
韓国コンソールゲーム市場の決算と展望について発表したのは韓国Microsoft EDD Team取締役のソン・ジンホ氏。韓国では2008年にようやく3つのゲームコンソールが揃った。2009年は、ハードウェア3,003億ウォン、ソフトウェア1,717億ウォンの売り上げを予想しているという。また、未だに違法コピーも堂々と行なわれており、旧型PSPが新型より値段が高い現状などが報告された

【韓国モバイルゲーム市場の決算と展望】
「韓国モバイルゲーム 市場の決算と展望」のセッション講師を務めたのはCom2us取締役のイ・ソン氏。韓国モバイルゲームは2006年までは2,390億ウォンで23.3%の成長を遂げたものの2007年は2,518億ウォンで5.4%増、2008年には2,719億ウォンで8.0%増と成長が鈍化していることが報告された。その理由は端末の世代交代が進んでいないからだという
今まで韓国では携帯の端末にWIPIという韓国独自プラットフォームの搭載を義務付けられていたため、iPhone 3Gといったスマートフォンが発売されてなかった。今年の4月からWIPI搭載の義務化が廃止されるため、韓国モバイルゲーム市場でiPhone 3Gの展開が注目される

□韓国ゲーム産業振興院(KOGIA)のホームページ(韓国語)
http://www.kogia.or.kr/

(2009年2月12日)

[Reported by Dong Soo “Luie” Han / 三浦尋一]



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