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会場:ベルサール神田
会場では全21のセッションやパネルディスカッションと、協賛各社の展示が行なわれた。本稿では取り急ぎ、基調講演を中心にカンファレンスの概要をお伝えしたい。個々のセッションについて別稿で詳しくお伝えしていく予定だ。
■ 変遷を続けるOGC。オンラインサービスがゲーム中心からコミュニティ中心への傾向が鮮明に
OGCは、ブロードバンドの普及促進を目的にソフトバンクグループを中心に設立されたBBAの下部組織 オンラインゲーム専門部会(SIG-OG)が定期的に開催していた分科会がそのはしりとなっている。 現在のような形になったのは、2005年2月に開催された「アジアオンラインゲームカンファレンス(AOGC)」からである。アジアのオンラインゲームを包括的に扱ったチャレンジングなゲームカンファレンスとして、日本のみならず、韓国、中国などからスピーカーを集め、基調講演はスクウェア・エニックス代表取締役社長の和田洋一氏が担当するなど、日本最大級のゲームカンファレンスであるCEDECに並ぶ勢いを見せた。 その後は、アジアでのオンラインゲーム市場の頭打ち、あるいはコミュニティ市場の急成長により、アジア単位から日本単位に、オンラインゲーム単体からコミュニティサービスまで包含した、広義でのオンラインエンターテインメントを扱ったカンファレンスとして現在に至っている。 実質的な主催単位もSIG-OGではなく、2008年にBBAの新たな枠組みとして新設されたワーキンググループのひとつ「ゲーム&コミュニティWG」となっている。WGの部長は、SIG-OGから引き続きIGDA日本代表兼CESA理事の新清士氏が務めているため、ゲーム色が完全に消えて無くなるという心配はなさそうだが、新氏は冒頭の挨拶の中で、「マスに向けてアピールしたいプラットフォーマー(この場合は、ゲームプラットフォームではなく、はてな、mixi、ニコニコ動画等のコミュニティサービスプラットフォームを指す)にはOGCにバリューを感じていただける一方で、すでに一定数の顧客を獲得したオンラインゲームパブリッシャーの協力を得ることが難しかった」と今回のスピーカー選定の苦労を報告した。 その結果は、そのほとんどがコミュニティ系というセッションプログラムに如実に表れているが、この発言は、本来主役であるべきオンラインゲームパブリッシャーが、コミュニティサービスを行なっているメーカーと比較して守勢に回っていることを実感させる。その要因は、新規コンテンツ開発が不十分だったのか、コミュニティ対策、不正対策、RMT対策といった部分に拘泥しすぎたためかどうかは不明だが、ひとつ確実に言えるのは、オンライン上でゲームだけを提供すれば、ユーザーが満足していた時代は完全に終わってしまったということだ。 今回セッションを担当するコミュニティサービスを挙げていくと、「ニコニコ動画」(ニワンゴ)、「はてなブックマーク」(はてな)、「価格.com」(カカクコム)、「mixi」(ミクシィ)、「プーペガール」(プーペガール)と、メジャーどころ、新鋭どころが勢揃いといった状態となっている。オンラインゲームの分野では、NHN Japanとケイブのみという惨憺たる有様なのとは実に対照的である。 ゲームメディアとして、OGC2008の基調講演でコーエー代表取締役社長の松原健二氏が語った「(コミュニティサービスが)横をスッと駆け抜けて追い抜いていった」というワンフレーズが、身にしみて感じられる状況といえる。もちろん、OGCの参加状況だけで何を語れるわけでもないが、オンラインゲームとコミュニティを併記したカンファレンスである以上、バランスのとれた内容を望みたい。
■ いよいよコミュニティサービスが勢いを増す2009年。オンラインゲーム最大手NHNの取り組みは!?
そのNHN Japanは、2008年、M&Aや新規事業の始動などの影響により、約115億というオンラインゲームパブリッシャーとしては2位以下を突き放すダントツの数字を挙げながらも、固定費の増大と利益率の低下に苦しめられた1年となった。そのNHNが今年どのような舵取りを行なうのかは大いに注目されるところだ。 スピーカーを務めたNHN Japan代表取締役社長の森川亮氏は、オンラインゲームパブリッシャー最大手としての気負いや、コミュニティサービス企業の猛追に対する焦りのようなものは一切感じさせず、淡々と自社サービスの紹介に終始した。内容的には、森川氏が2007年11月に韓国のゲームカンファレンスKGC2007で発表した「ハンゲーム2.0」のアップデート版といった感じで、我々が身を乗り出すような新発表は一切なかったが、自らの成功体験や自らが正しいと確信するサービスモデルを、丁寧に実直に上塗りしていくという基本スタンスはむしろ好感が持てた。 比較的目新しい情報としては、2008年もっとも注力した事業となったケータイ版ハンゲーム「ハンゲ.jp」の報告と、1月28日より電撃的にサービスを開始した新アバターサービス「アバターCool」の紹介の2点が上げられるが、いずれも意外なほどの苦闘ぶりが伝えられたのが印象的だった。 ハンゲ.jpは、「ハンゲームを超える」という大きな目標を掲げ、2008年3月にサービスが開始されたビッグプロジェクトだが、会員数は2008年12月末時点で約67万人に留まっている。ハンゲームのユーザー数(2008年12月末時点で約1,890万人)とは大きな大きな隔たりがある。 森川氏は「まだユーザー数少ないが、数字は順調に伸びている」と堅調ぶりをアピールしたが、韓国本社からの激しいプレッシャーに晒されていることは想像に難くない。今後の方針として森川氏は、「PCとモバイルの融合を進め、シームレスな環境を整備し、リアル(現実世界)との接点を増やすことで価値を高めていきたい」と述べ、まだまだ進化の途上であることを強調した。その進化に期待したい。 「アバターCool」は、1月28日からサービスが開始されたばかりの新アバターサービス。既存の3頭身アバターを「アバターPure」と再定義し、まったく新しい4.5頭身の新アバターを提供するという、こちらもまたビッグプロジェクトだが、メディアにはサービス開始当日まで発表を伏せ、情報公開を一部のハンゲームユーザーのみに絞ったために、「これまで手に入れてきた膨大なアバター資産がリセットされてしまうのでは!?」というネガティブな噂がコミュニティ間で広がり、大きな反発を招いたという。 森川氏は情報の開示の仕方については触れず、「新しい選択肢を用意したかった」とコメントするに留めたが、古くから迅速な情報開示、丁寧なコミュニティ対策で、1,000万超のユーザーを牽引してきたNHN Japanらしからぬ珍しい失敗事例といえる。現在は、コミュニティも落ち着きを取り戻し、「アバターPure」と「アバターCool」が並列する環境に馴染み始めているという。
個人的には、この「アバターCool」の初動ミスの報告が今回の基調講演でもっとも聞き応えがあった。今後、この新アバターサービスが、NHN Japanのビジネスの中でどのような位置づけとなり、国内外のアバタービジネスにどのような影響をもたらすのか、そしてまたNHN Japan全体としてどのような成長を遂げていくのか、引き続き注目していきたいところだ。
□ブロードバンド推進協議会のホームページ (2009年2月5日) [Reported by 中村聖司]
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