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★iPhone/iPod touchゲームレビュー★

「バーチャル・パッド・コントロール」の操作が秀逸
美麗な3Dグラフィックスで展開されるTPS

「ブラザーインアームズ: アワーオブヒーローズ」

  • ジャンル:3Dカジュアルシューティング
  • 開発元・配信元:ゲームロフト
  • 利用料金:1,200円
  • プラットフォーム:iPhone/iPod touch
  • 配信日:11月23日(配信中)


 ゲームロフト株式会社から11月23日にリリースされた、iPhone/iPod touch向けの3Dカジュアルシューティング「ブラザーインアームズ: アワーオブヒーローズ」は第二次世界大戦も終盤の1944年、“史上最大の作戦”として有名な「ノルマンディー上陸作戦」を皮切りに展開されたヨーロッパ西部戦線を舞台に、連合軍(アメリカ軍)の兵士としてドイツ軍と戦っていく内容だ。

 「ブラザーインアームズ」シリーズは、Ubisoftの看板タイトルの1つで、10月から11月にかけて最新作「ヘルズハイウェイ」がXbox 360/プレイステーション 3向けに発売されている。映画「遠すぎた橋」の舞台となったマーケットガーデン作戦を舞台としたFPSで、実在したアメリカ軍・第101空挺師団の兵士を主人公に、分隊長として部下を率いて戦っていく設定だ。

 本作はこの本家シリーズのiPhone/iPod touch版という位置づけで、カジュアルユーザー向けに簡略化されているが、その雰囲気は伝わってくる。本家シリーズの特徴である「チームプレイ」の要素は切り捨て、主人公キャラクタが戦場を駆け巡る、シンプルな内容となった。ざっくり言ってテレビドラマ「コンバット!」の世界観で、主人公のサンダース軍曹になりきって活躍できるゲーム、と捉えてもらえばいいだろう。

 なにより特筆すべきなのは、フル3Dグラフィックスのアクションシューティングである点だ。価格も1,200円とiPhone/iPod touch向けのゲームアプリとしても高価な部類だが、グラフィックスの完成度は高く、プレイステーションとプレイステーション 2の中間くらいのクオリティは出せているという印象。ボリューム感や、遊び込める要素もあり、現状では最高水準の内容だろう。まずはこれだけの「大作」アプリを企画し、きちんと作り込んだ開発陣に敬意を表したい。



■ バーチャル・パッド・コントロールという斬新な操作系

冒頭プリレンダーのCGムービー。PSP並のムービーで、iPhone/iPod touchとしては、かなり力が入っている
チュートリアルが1本と、3~5本のミッションが入ったキャンペーンが計3本用意されている
ロード中には過去の戦争での名言が表示される。中にはシニカルなものもあり、ニヤリとさせられる
 本作の最大の特徴は、画面レイアウトとアクション設計にある。まず画面レイアウトはシリーズ本来のFPSからTPS(3人称視点シューティング)へと変更され、キャラクタの周囲の状況がわかりやすくなった。その上で操作方法として「バーチャル・パッド・コントロール」と呼ばれるインターフェイスが採用されている。これは画面左下に表示される丸いコントロールパッドを親指でスライドして操作する仕組みで、いわゆる十字キーやアナログスティックの代わりになるものだ。

 iPhone/iPod touchのゲーム開発では、マルチタッチ可能なタッチパネルや、加速度センサーありきのゲームデザインが多く、結果として「モグラたたき」や、本体を傾けて操作させるゲームになりやすい。しかし本作では、(良くも悪くも)従来のゲームコントローラーの文法に即したゲームデザインを行なった上で、iPhone/iPod touchならではの仕様を付け加えている点が、他のゲームとは一線を画している。

 この「バーチャル・パッド・コントロール」での操作感は本作のキモなので、もう少し解説してみよう。「スライド」と書いたが、ゲーム中についつい力が入ってしまうため、椅子の上でおしりを前後左右に動かすように「にじらせる」という表現が適切かもしれない。この動きでキャラクタの前後左右の動きをコントロールし、逆の手で画面上をスライドして、視点の上下左右を操作する。つまり左手の親指で前後左右に動き、右手の親指をスライドさせて照準を定める。

 このように、コンソール機の標準的なコントローラ操作を、そのままiPhone/iPod touchに落とし込んでいるのが、本作における最大の注目点だ。

 射撃は画面右下の「射撃アイコン」をタッチして行なう。照準はある程度敵に合わせると補正をかけてくれるので、それほど厳密に狙わなくても大丈夫だ(敵兵の集団に向けて撃ちまくるだけで、全員を倒せたりもする)。また画面を2本の指で拡大するように動かす(ピンチアウト)と、肩越しの視点に拡大され、精密射撃ができる。狙撃銃(望遠付きガーランド、M1C/Dガーランド・スナイパーライフルと思われる)を装備している場合は照準器での射撃が可能だ。

 このほか状況に応じて、数種類のアクションアイコンが随時画面の右横に表示される。これによりパラシュートの綱を切ったり、戦車の砲塔にグレネードを投げ込んだり、軽機関銃を射撃するといった、さまざまなアクションができる。また右上にグレネードアイコン、左上に武器アイコンが表示されており、タッチするとこれらの武器を選択できる。本体を前後に傾けて弾倉を交換したり、グレネードの投擲地点を決めたりと、加速度センサーを用いた操作方法もサポートしている。

 このように本作のキモは、iPhone/iPod touchのインターフェイスをフル活用した操作系にあり、これを「今までと違って操作しにくい」と捉えるか「実験的でおもしろい」と捉えるかで、評価が大きく変わる。筆者も最初、何の予備知識もなく本編ミッションから開始してしまい、いきなり躓いてしまった。幸い、しっかりしたチュートリアルが用意されているので、まずは操作方法に慣れるところから始めてみよう。余談だが、このチュートリアルはよくできており、ここでも制作陣の本気度が感じられる。

 なお、基本の操作方法は3パターンあり、上記スタイルの「ノーマル」ほかに、「2サークル」と「サイトムーブ」が選べる。「2サークル」では画面左右に2つの「バーチャル・パッド」が表示され、左側で前後左右、右側で照準を行なう。「サイトムーブ」では「バーチャル・パッド」は画面左下に1つだけだが、右手で画面をタッチすると、その方向に向けて移動方向が決まる。筆者には、この「サイトムーブ」が一番遊びやすく感じられたが、画面が右手の親指で隠れてしまうという欠点もある。このほか加速度センサーを用いて、本体を左右に傾けて左右移動を行なうオプションもある。タッチパネルの反応速度も調節できるので、いろいろ試してみることをオススメする。

 繰り返しになるが、本作の仕様の多くは、この操作方法でいかに快適にアクションシューティングを遊ばせるか、という点に集約している。FPSからTPSに変更された点や、照準補正なども、カジュアルユーザー向けというより、より快適に遊べるようにするためという印象が強い。レベルデザインやゲーム展開などの要素もよくできており、操作に慣れると思わずハマってしまう魅力がある。建物の壁越しに敵兵を狙い、パッと飛び出して撃つ、といったアクションもユニークだ。これなどもiPhone/iPod touchのタッチアクションを効果的に使った仕様だろう。

【スクリーンショット】
ノーマルモード。画面をスライドさせて視線(照準サークル)を直接操作する 2サークルモード。画面の左右にバーチャル・パッドが表示される サイトムーブモード。写真ではわかりにくいが、画面をタッチした方向に直接視線が移動する
グレネード弾はグレネードアイコンをタッチ後、本体を直接傾けて投擲位置を指定する 操作モードは武器アイコンをタッチ後、オプション画面で選択できる タッチパネルの操作感度や、加速度センサーの切り替えなど、さまざまな設定が可能だ



■ まずはチュートリアルで操作に慣れよう

フランス北西部・ノルマンディー地方の郊外を舞台にした「ノルマンディーキャンペーン」
「チュニジア」キャンペーンでは、北アフリカの砂漠地帯を舞台に作戦が展開される
「アルデンヌ」では、ベルギーのアルデンヌ地方が舞台で、「バルジの戦い」がモチーフのようだ
 枕が長くなってしまったが、改めてミッションの紹介に移ろう。本作の主人公は(特に説明はないが)、シリーズ同様の米第101空挺師団に所属する(と思われる)一兵士だ。

 ただし、本作では「ノルマンディー」、「チュニジア」、「アルデンヌ」の各キャンペーンで、全16種類のミッションが用意されており、「常に最前線の部隊に転属させられる最強の兵士」という扱いだ。それだけに任務の内容も、村の制圧から敵中横断、はたまたV2発射場の制圧とバラエティに富んでおり、飽きさせない。

 ちなみにチュートリアルの「タフ ミッション」では、ノルマンディー上陸作戦で無事に降下できたものの、パラシュートが木に引っかかってしまい、降りられなくなるシーンからスタートする。ここで画面をタッチして視界の移動方法を学び、次いでアクションアイコンをタッチして、パラシュートの紐を切って地面に降りる。次に「バーチャル・パッド」を用いて、マーカーに従ってステージ上を移動する方法を学ぶ。音声は英語だがメッセージは日本語で、ローカライズも丁寧に行なわれており、迷うことなく進んでいける。

 橋の下までくると、対岸にドイツ兵が出現するので、遮蔽物の影に隠れて戦闘する。初期装備の武器は「トミーガン」ことトンプソンM1A1短機関銃で、画面をスライドして照準アイコンを敵兵に重ね、赤く変わったところで射撃アイコンをタッチして攻撃する。その後、壁沿いに移動して飛び出しざまの奇襲、ピンチアウトによる精密射撃、本体を傾けてグレネードの投擲と、一通りの操作を学んでいく。本ステージのキモは敵戦車の破壊だ。4号戦車とおぼしきドイツ軍戦車が登場するので、地面にあるM9A1バズーカ砲を拾って攻撃しよう。無事に戦車を破壊して、最終ポイントまで到達できれば、任務成功となる。

 任務終了後は、ミッションタイムや敵殺害数、命中率、死亡回数などが加味されて、名声値(スコア)が表示される。突出して活躍すれば叙勲されることもある。射撃時に敵兵の頭部を狙い撃つと「ヘッドショット」となり、一撃で倒せるほか、叙勲の対象となり、名声値も上がる。また任務中に特別な行動をすると、それに応じた19種類の「実績」が得られる(グレネードで敵兵を5名以上殺害すると「グレネーダー」など)。難易度には「ノーマル」と「ベテラン」があり、標準では「ノーマル」に設定されているが、各キャンペーンをクリアすると「ベテラン」が選択可能になる。

 干し草や木箱の後ろに移動すると、屈んで敵の攻撃から身を隠せる。逆に多少の段差なら飛び越えて進軍可能だ。戦闘中にダメージを負っても、後退して物陰などで休息を取れば、ヒットポイントが回復するので、無理をせずに進もう。逆に安全地帯だと思っても、流れ弾に当たって死ぬこともあるので、休息場所に気を配ることが必要だ。

 ちなみに本作ではパンツァーファウストなど一部の武器を除き、敵弾による攻撃がわかりにくく、時には戦車に轢かれるなどして即死することもある。ただしステージ上にチェックポイント(自動セーブポイント)が多数存在するので、それほど「手戻り」感は受けない。操作に慣れないうちは、まず落ち着いて行動することが重要だ。

【スクリーンショット】
チュートリアルではシナリオ形式で基本的な操作を学習していく。難易度も低く、操作に慣れるには十分な内容になっている
照準サークルを敵兵に重ねると赤く色が変わるので、射撃アイコンをタッチして射撃しよう。壁の向こう側の敵にあらかじめ照準をつけておき、飛び出しざまに射撃もできる
画面を2本の指で拡大すると(ピンチアウト)精密射撃ができる。小銃だけでなくバズーカ砲でも可能で、狙撃銃の場合は照準機がつかえる。グレネードの投擲時は慌てないように注意



■ 歩兵・戦車・ジープの3種類のモードを切り替えて進め

最も基本となる「歩兵モード」。主に短機関銃・バズーカ砲・狙撃銃を切り替えて攻撃する
「戦車モード」では戦車に乗り込み、移動と主砲塔による攻撃を行なう。破壊力・防御力は最強だ
「ジープモード」ではハンドル・アクセル・ブレーキでジープを運転する。攻撃はオートだ
 さて、ここまでは主に「歩兵」での視点でゲーム内容を紹介してきた。本作の特徴の1つは、これ以外に「戦車」、「ジープ」という車両モードがあり、それぞれで操作が異なる点だ。PCやコンシューマゲーム機のFPSではよくある仕様だが、iPhone/iPod touchでここまで実現したのは、ちょっと凄い。

 ちなみに「戦車」モードでは、プレーヤーはM4シャーマン中戦車に乗り込む。操作は「歩兵」モードと基本的には同じだが、特性上、左右の移動はなく、代わりに右手で砲塔を上下左右に動かして照準をつける。射撃できるのは主砲塔のみで、機関銃は自動で発射してくれる。ただし機関銃は前方しか攻撃できず、左右や後方には死角が発生する。後半のステージでは敵兵士がグレネードを持って肉弾戦を仕掛けてくるので、必要に応じて後退し、兵士を蹴散らそう。

 また「ジープ」モード(本作では「偵察車両」と言われているが、おそらくウィリスMB ブローニングM2キャリバー50付きモデルだと思われる)では、プレーヤーはジープの運転手となる。画面左下に表示されるハンドルをスライドしてステアリングし、右下に表示されるアクセルとブレーキをタッチして加速・減速(後退)する。車載のブローニング軽機関銃はオートで発射してくれるので、プレーヤーは運転に集中できる。

 チュートリアルが終了すると、「ノルマンディー」キャンペーンが開始される。最初のミッション「クロスコーナー」では、ドイツ軍の装甲擲弾中隊によって要塞化された村の奪還が目的で、「歩兵」モードの内容だ。終盤に協会内に突入したところで、敵戦車が突入してくるシーンがある。ここではバズーカ砲も使えるが、隊長からは砲塔によじ登って、ハッチからグレネードを投げ込めと指示が出される。敵戦車の脇に移動すると、アクションアイコンが表示されるので、タッチすればいい。ただしアクションアイコンが表示される場所が若干わかりにくい。周囲の敵兵を殲滅していれば、攻撃を受ける心配はないので、焦らずに戦車の周りを移動するといいだろう。

 第2ミッション「スモーク スティール」では、プレーヤーは第10装甲師団の戦車部隊に派遣され、M4シャーマン中戦車を操って、敵陣深く切り込むことになる。ところが、この戦車は慣れないうちは、歩兵モード以上に操作しにくいジャジャ馬だ。幸い防御力も高いので、焦らずに操作しよう。ダメージを受けても、味方のハーフトラックの近くに移動すると、耐久力を回復してくれる。なお本ミッションでは即死ポイントと、時間制限ミッションがある。線路上にいると、装甲列車に追突されてミッションオーバー。また装甲列車が通り過ぎる前に管制塔を破壊しないと、これまたミッションオーバーだ。繰り返すが焦るほどに操作が混乱するので、平常心を保とう。

 第3ミッション「クラウド ダガー」では、ドイツ軍の88mm対空砲台を無力化した後、第3大隊に合流し、威力偵察を行なうことになる。ここでは対空砲台に爆弾をセットする方法を学ぶ。再び敵戦車が登場するが、バズーカ砲は使えないので、今度こそ砲塔によじ登ってグレネード弾を放り込むことになる。共に対象物に近づいて、アクションアイコンで実行だ。このように、次第にミッションが複雑になり、学習効果を持って設計されている点が本作の「思わずハマってしまう」点だ。また戦車の運転に悩まされたプレーヤーの中には、歩兵での移動に思わずありがたみ(?)を感じる人が出てくるかもしれない。

 対空砲台を無力化したら、ジープに搭乗して敵陣地の威力偵察だ。ここで「ジープ」モードでの操作となる。マーカーの指示に従って、とりあえず敵陣を突破していけばいい。敵兵が続々と登場するが、自動で攻撃してくれるので、運転に集中しよう。敵戦車も大量に登場するが、移動し続けていれば、攻撃が当たることは少ない。ただし運転に戸惑って立ち往生していると、思わぬ攻撃を受けることもある。本作ではカメラがしばしば建物の裏側にヌケることも手伝って、建物の角などで操作しづらくなることがある。画面をタップするなどして位置をずらし、視界を取り戻そう。

 第4ミッション「サイレント スカイ」ではベイカー中隊と共に、要塞化されたV2発射場の制圧に向かうことになる。ここではM1A1短機関銃と望遠付きガーランド狙撃銃を持ち替えながら、敵兵の狙撃と突撃を繰り返し、V2ロケットの発射場を破壊していく。途中、バズーカ砲で敵戦車を破壊したり、砲塔によじ登ってグレネード弾を投げ込む場面、時間制限の中で精密狙撃を行なうシーンなどもあり、これまでの総仕上げ的なミッションだ。筆者も、ここまでのミッションは比較的サクサクと進められたが、ここで少し詰まらされた。そのぶん、ミッションをクリアしたときの達成感は格別だろう。

 この後、第5ミッション「クローズアクト」を終了すると、ノルマンディーキャンペーンが終了し、実績「ノルマンディーメダル」が入手できる。また「サイレント スカイ」をクリアすると、次の「チュニジアキャンペーン」のロックが解除され、第1ミッション「アーバン デザート」がプレイ可能になる。北アフリカを舞台に、歩兵モードと戦車モードを切り替えながら進むミッションで、これまでとは違った雰囲気だ。「クローズアクト」で詰まったら、息抜きにプレイしてみるのもいいだろう。

【クロスコーナー】
ドイツ軍に占領された村を制圧する。協会内に戦車が突入してくるが、グレネード弾を放り込んで撃退できる。MG42の照準はバーチャル・パッドで行なう。連射を続けるとオーバーヒートになるので注意
【スモーク スティール】
シャーマン中戦車で敵陣に突入する。ハーフトラックに近づくと修理が受けられる。先に管制塔の建物を破壊して、装甲列車を止めなければミッションオーバーになるので気をつけよう
【クラウド ダガー】
88mm対空砲台を爆弾で破壊していく。操作にもたつくと爆風に巻き込まれるので、ゆっくり、確実に撤退しよう。その後はジープを運転して敵陣を威力偵察していく。1カ所に立ち止まらないように注意
【サイレント スカイ】
V2ロケットの発射場を制圧する。短機関銃と狙撃銃を切り替えて敵を掃討し、安全を確保しながら進もう。ピンチアウト時に誤って他のアイコンをタッチしてしまうことがあるので注意が必要だ



■ iPhone/iPod touchの可能性を感じさせるゲーム

体力が減っても、戦闘区域外に後退すれば自動的に回復する。流れ弾に当たらないように、しっかり後退しよう
ミッションをクリアすると、戦績に応じて名声値が獲得でき、場合によっては叙勲される
「実績」はメインメニューで確認できる。条件も表示されるので、積極的に狙ってみよう
 ノーマルで全ミッションをクリアした感想としては、かなりの大作感のあるゲームだ。正確なプレイ時間は計測していないが、約10時間はたっぷり遊べた。コンソール版の移植で同価格帯という、似たような位置づけのゲームに「Star Wars The Force Unleashed」があるが、これが比較的カジュアル指向なのに対して、本作はよりコアゲーマー寄りだ。バリバリのFPSフリークには物足りないかもしれないが、ユーザー層を広げたいという作り手側の意図は、かなり成功しているように思われる。

 ゲームのストーリー展開は、ほとんど1本道だ。海外のFPS/3Dアクションゲームによく見られるスタイルで、常に目的地点がわかり、余計なことを考えさせずに、あの手、この手でプレーヤーを楽しませつつ、スピード感を保ったままゴールまで導いてくれる。ディズニーランドの「スターツアーズ」などの「ライド型アトラクション」風味だ。本作でも「歩兵」、「戦車」、「ジープ」の各モードを切り替えながら、さまざまな仕掛けを盛り込み、ステージを進ませていくデザイン手法は、バランスがとれていることもあって、思わず熱中してしまう。

 これをきちんと作り込み、ボリューム感も出すには、モバイルゲームといえども相応の大作指向になるが、これをきちんと作り込んでいる点が秀逸だ。「実績」システムに加えて、ノーマルで1周すると、隠し武器や隠し車両が入手できたり、命中部位によっては1撃で倒せたりと、遊び込み要素もある。

 逆に荒さが感じられる点としては、操作システムが斬新であるにも関わらず、カメラ抜けの問題などで、遊びにくさが残っている点だ。また、きちんとマーカーをたどり、チェックポイントを踏破することが求められるにも関わらず、移動に関する自由度がそこそこ高いので、さまざまなルートを試せてしまう。それはそれでいいのだが、場所によっては、いきなり即死したり、倒された理由がわかりにくいと感じられた点も残念だった。これらのゲーム進行上のストレスが改善されていたら、より楽しく遊べただろう。

 また、これは他のiPhone/iPod touchゲームにも言える点だが、本作は典型的な「両手で遊ぶ」プレイスタイルになっており、日本の携帯アプリ文化の「片手で操作する」スタイルと異なっている。そのためバッティングするのは、携帯アプリではなくPSPだ。本作を遊んで「これならPSPで出してくれた方が遊びやすい」と思うユーザーも、少なからずいるだろう。実際に筆者も操作に慣れないうちは、何度かそう感じた。また、PSP用ソフトならばまず用意されているであろう、アドホックモードでの通信対戦機能がないのも残念だ。

 しかしこれがPSPで発売されたとしても、筆者は買わなかった可能性が高い。第1は価格の問題で、この内容で1,200円という値付けは、ダウンロードモデルだからこそ実現できたものだ。第2はディスクの入れ替えが不要だという点。複数のゲームソフトを物理的に持ち運ぶことなく、遊びたいときにさっと取り出して遊べる気軽さが、やはりPSPやニンテンドーDSとは違う。そして第3に、操作に慣れてくると「バーチャル・パッド・コントロール」が心地よく感じられてくるのだ。本体を傾けてグレネードを投げるような操作も、最初は面倒に感じたが、次第に操作方法の切り替えによって生まれるゲームプレイのリズム感が面白いと感じられるようになった(それだけに、プレイのストレス要因は徹底的に省いて欲しかったところだが)。

 ともあれ、iPhone/iPod touchゲームの可能性を感じさせる良作だ。ユニークな操作性のゲームとしても、フル3Dグラフィックスのアクションゲームとしても、見るべき点が多い。価格分の価値は大いにあるだろう。

【チュニジア/アーバン デザート クロスコーナー】
敵陣を突破して砂漠の街を制圧する。戦車との連携による進撃、狙撃銃で機関銃の射手を狙撃、MG42での敵兵の掃討、爆弾の設置など、各要素が複合的に構成されている
【アルデンヌ/アイス ブレイク】
冬のアルデンヌ地方が舞台で、ドイツ軍の撤退を追撃する。MG42で掃討し、バズーカ砲で敵戦車を破壊した後は、戦車に乗り込んで村を進撃する。敵の装甲敵弾兵に注意しよう
【スクリーンショット】
カメラが壁の中にめり込む「壁抜け」の状態。建物の角などで比較的起こりやすいので、焦らずに移動して視界を取り戻そう 焦ってピンチアウトすると、画面が反応しなかったり、余計なアイコンをタッチしがちなので注意だ 理不尽な即死が続く場合は、フラグを立て損ねている場合がある。リスタートして、もう一度展開を確認しよう


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□ゲームロフトのホームページ
http://www.gameloftjapan.com/
□「ブラザーインアームズ: アワーオブヒーローズ」のページ
http://www.gameloftjapan.com/products/000344/index_iphone.html
□関連情報
【11月26日】ゲームロフト、「ブラザーインアームズ」シリーズの最新作を配信
iPhone/iPod Touch「ブラザーインアームズ:アワーオブヒーローズ」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081126/bia.htm

(2008年12月25日)

[Reported by 小野憲史]



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