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会場:韓国国際展示場(KINTEX)
入場料:4,000ウォン(前売り2,000ウォン) ここ数年、韓国のアーケードゲーム業界は大きな変化を迎えている。ネットカフェの台頭によるシェアの減退、射幸性ゲーム機(商品券を排出する液晶型の大型スロットマシン)のブームに影響を受けた一時的な好景気など激しい波があった。しかし、射幸性ゲーム機は2005年のに一斉に取り締まられ、射幸性ゲーム機も作っていたアーケードゲームメーカーは大打撃を受けた。 G-Starでもそんな韓国アーケードゲーム業界をの状況がはっきりと再現されていた。2005年は会場の半分という広大なスペースに何台もの射幸性ゲーム機が出展されたが、2006年には一気に縮小し、数社が狭いスペースでゲームを出展したのみであった。 今年のG-Star 2008でもアーケードゲームコーナーの出展メーカーは数社であり、メインとなるゲームは韓国のアーケードゲームメーカーKOMUSEの製品のみと小規模だった。しかしユニークな視点によるゲームや、韓国アーケードゲームメーカーの模索を見ることができた。本稿では会場で見ることができた韓国アーケードゲームメーカーの取り組みを紹介したい。
■ 「STAR BALL」やロボットサッカー、などユニークな作品が光る韓国アーケードゲーム。ジェットコースターシムも登場!
今回、ゲームタイトルを出展していたのはKOMUSEという韓国のアーケードゲームメーカーで、「ストリートファイター IV」の韓国でのオリジナル筐体などを作ったり、自社製品を積極的に展開しているメーカーだという。ドラムゲームの「DRUM STATION LIVE」や、リモコンロボットを使ったサッカーゲーム「marubot」といったゲームコンセプトと筐体が直結したゲームを得意としているという。 KOMUSEのタイトルはどれも会場で人気で、特に人気を集めていたのが最近のヒット作という「STAR BALL」である。タッチパネル型のモニタを使っているのが特徴で、プレーヤーはこのパネルに表示されるターゲットに向かってプラスチック製のボールをぶつける。ガンシューティングのアプローチを取り入れたボール投げゲームだ。 「STAR BALL」には多彩なモードが用意されていて、多彩な状況で画面にボールを投げつける。その題材がとてもユニークだ。街に逃げた囚人をボールで撃退したり、田んぼに飛んでくる雀にボールを当てたり、街を練り歩く不良にぶつけたりもする。 電車の中でコートをはだけ裸を見せつける変質者にボールを当てるシチュエーションもあって、その題材の過激さに驚かされた。プレイしている人はすごく楽しそうで、興奮のあまり手が滑って後ろにボールを飛ばしてしまい慌てて拾う女の子もいた。ボールをぶつけられるキャラクタのリアクションもコミカルで、人気が納得できる楽しいゲームだ。 この他、KOMUSEの新製品として、ピザの自動販売機があった。冷凍のピザが自販機内にあって、購入すると解凍・調理されてほかほかのピザが食べられる。現在はプロトタイプとのことで、調理器を使って販売していたが非常に好評で長蛇の列が絶えなかった。 アーケードゲームコーナーで大きな存在感を放っていたのが、会場の外側に設置されていたいくつかの大型筐体である。カプセル型の乗り物だが、シリンダーで上下左右に激しく動く。見ているだけで「何が起きているのだろう」と興味を引かれる。 実は、これらは厳密にはゲームではなく、映像に合わせて筐体が動く“乗り物”なのである。その動きはかなり激しく、筐体が動く姿を見た来場者はワクワクした表情で列に並んでいた。このコンセプトのマシンはAL SYSTEMとSIMULINEという2社が出していた。 AL SYSTEMは3Dのグラフィックスを作る会社で、今回、「TASIO」というプロトタイプを出展した。筐体の中に入り、3D眼鏡をかけた状態で座席に座る。座席にはバーがあり、ジェットコースターのように体を固定する。このプロトタイプで見ることができたのも、ジェットコースターをテーマにした映像だった。 ジェットコースターは坂を上り、一気に下り、右に左に激しく曲がる。筐体は映像に合わせ稼働する。その動きはかなり激しい。さらに状況に合わせて風が吹き付け臨場感タップリだ。ただレールを走るだけ、という試作品ならではの淡泊な映像だったが、映像と動きが上手くリンクしていて、映像を筐体の動きが上手く増幅し、実際にジェットコースターに乗っているような感触が体験できた。 SIMULINEはすでに実際に稼働している「MINI RIDER」と、大型筐体である「XRIDER」の2つを出展していた。「MINI RIDER」は3つのアームにつり下げられたカプセル型の筐体で未来的なデザインなのに対して、「XRIDER」は非常に小さなシアターというデザインだ。ちなみに「MINI RIDER」は5分間で3,000ウォン(約210円)。 「XRIDER」はまだ試作品とのことだが、中には映画館の椅子を切り取ったようなシートがあって、4人で乗ることができる。前面に大きなパネルがあってこの映像に合わせてシートが稼働するという。 こちらも乗ることができた。同じように立体眼鏡をつけて映像を見るもので、映像は火山地帯や不毛の荒野を爆走する未来のレースゲームといったストーリーだが、なんと言っても「揺れ」がすごかった。右に左に、傾けて、跳ね上げて……動きが唐突で激しく体が引っ張られる。 映像と一応シンクロしているが、明らかにプレーヤーの体を激しく動かすのが目的、というバランスで、とにかく体が持って行かれないようにシートにしがみつくのに精一杯。かけている立体眼鏡は外れまくりで抑えるのに必死、という感じ。まさに“カクテルシェーカー”に放り込まれたように翻弄された。 「MINI RIDER」以外は試作品のためか頻繁にメンテナンスを行なっていたが、特に「XRIDER」に関しては納得である。こんな可動を繰り返していたらかなり機械にストレスが蓄積しそうである。日本だったら、なんらかの安全法にひっかかるんじゃないか、というくらいのかなり激しいチューニングだった。 これらジェットコースターシュミュレーターは特に「映画館向け」を意識しているという。そのときに上映している映画に合わせて映像を差し替え、映画と連動した要素でアピールしていきたいとのことだ。 映画館とアーケードゲーム、という組み合わせは韓国ならではの事情がある。韓国アーケードゲーム業界はオンラインゲームと、ネットカフェビジネスのため苦しく、またアーケードゲームを作る会社もそれほど大きくはない。ソウル市内にいくつかアミューズメントセンターはあるがテナント代も高騰している。また、実際は全く違うのだが世間からは射幸性ゲーム場と同一視されるような状況もあるという。 ここでアーケードメーカーが活路を見いだしたのが映画館だ。映画館のスペースの一角に筐体を置き、展開する。ジェットコースターシミュレーションはゲームではなく、筐体技術を応用したミニシアターと言うべきものだ。アミューズメントセンターと映画館の複合施設は日本にもあるが、韓国では映画館への進出の動きがよりはっきりしているという。 日本ではここ数年オンライン要素や、カード要素といったアーケードゲームが人気だが、筐体の大きさ、メンテナンス性といった点から海外展開が難しくなっている。中国のようにアミューズメントセンターを法律で規制している国もあり、アーケードゲームというジャンルは世界の視点でも厳しい状況に立たされているように思える。 アーケードゲームにはやはり独自の魅力があると思っている。はしゃぎながら画面にボールを投げつけたり、歓声を上げながら大型ボタンを連打したり、前に後ろにがくんがくん揺れる乗り物を模した筐体に乗ったりと、プレイしているユーザーがとても楽しそうなのだ。アーケードゲームはゲーム性そのものにシンプルだが強烈にユーザーを惹きつけのめり込ませる魅力がある。
今回の取材でも魅力的なコンセプトを持つゲームを見ることができ、改めてアーケードゲームの魅力を感じた。コンシューマやオンラインとは違うゲーム文化を継続し発展させていくためにも、アプローチを続けて欲しい。
□G-Star 2008のホームページ (2008年11月17日) [Reported by 勝田哲也]
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