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G-Star 2008現地レポート

「カバティーナストーリー」開発チーム長イム・テヒョン氏インタビュー
「メイプルストーリー」を“卒業”した人向けのMMORPG

11月13日~16日開催(現地時間)

会場:韓国国際展示場(KINTEX)

入場料:5,000ウォン(前売り3,000ウォン)
子供3,000ウォン(前売り2,000ウォン)


 本稿ではNexonレポート内でお伝えしたように、G-Starで発表されたNexonの新作4タイトルの開発チーム長のインタビューを4本連続でお伝えしたい。

 トップバッターを飾るのは、「メイプルストーリー」の開発元Wizetスタジオの最新作「カバティーナストーリー」の開発チーム長イム・テヒョン氏。「メイプルストーリー」は韓国でも非常に高い人気を誇る同社のフラッグシップタイトルであり、その続編的新作だけに韓国のゲームファンや国内外の業界関係者から高い注目を集めていた。

 今回は初出ながら、Nexonブースでプレイアブル出展を果たし、奥行きのあるフィールドでのバトルや、画面の奥から攻撃してくるユニークなボス戦などをプレイすることができた。インタビューでは、ブースでの試遊や発表会ではわからなかった部分を中心に話を伺ってみた。


■ 「メイプルストーリー」より高年齢層を狙った3D横スクロールアクション

インタビューに応じていただいた「カバティーナストーリー」の開発チーム長イム・テヒョン氏
非常に質感の高い3Dグラフィックスを2Dの世界に落とし込んだ「カバティーナストーリー」
編集部: まず始めに「カバティーナストーリー」の企画コンセプトと開発経緯を教えてください。

イム・テヒョン氏: 「メイプルストーリー」の次回作をどのように作ろうかという研究開発から誕生したのが本作になります。

編: 「メイプルストーリー 2」ではなく、「カバティーナストーリー」になったのはなぜですか?

イム氏: よく誤解されるのですが、「カバティーナストーリー」は「メイプルストーリー 2」ではないです。Wizetスタジオは横スクロールアクションを看板にしていますので、その強みを活かしたものというところで今回は3Dに発展させました。「カバティーナストーリー」の「カバティーナ」という言葉自体に意味はないのですが、ストーリーをつけることで関連性を持たせました。

編: 続編にしたほうが、「メイプルストーリー」のユーザーにとってはわかりやすいのかなと思いました。今回あえて別の名前にした理由を教えてください。

イム氏: 「メイプルストーリー」には独特のキャラクタがありますし、世界観があると思います。「カバティーナストーリー」はまったくそれらが異なります。むしろ共通するのは横スクロールアクションという部分だけです。そこで、あえて「メイプル」という言葉を捨てることにしました。

編: 「カバティーナストーリー」の「カバティーナ」とはどのような意味を込めているのですか?

イム氏: 元々ゲームとは関係ない「Cavatina」というオペラ用語があります。語感を強めるためにCをKに変えています。名前を決める際に独特でインプレッシブな候補としてあがりました。言葉自体に深い意味はないです。

編: 「メイプルストーリー」には2Dグラフィックスの良さがありましたが、今回あえて3Dグラフィックスを採用した理由は何ですか?

イム氏: キャラクタのアクション性のためです。3Dの背景に2Dのキャラクタを乗せることは試してみたのですが、アクションの多様性を実現をするためには3Dが不可欠ではないかと考えました。

編: 「メイプルストーリー」は横スクロールアクションという点でライバルタイトルということになるわけですが、同じチームの作品としてどのように棲み分けを行なっていくつもりですか。

イム氏: 見た感じは横スクロールですので同じような雰囲気ですが、ターゲットとなるユーザー年齢層は「メイプルストーリー」よりも高く設定しています。カジュアル路線よりは、ダンジョンやパーティープレイといったやや高度なエンターテインメントを導入することで差別化を狙うつもりです。

編: 想定されるユーザー年齢層を教えてください。

イム氏: 基本的には中学生から高校生の男子をターゲットにしています。広く見れば20代をターゲットにしたいです。日本では「メイプルストーリー」自体年齢層が高く、同じくらいになるのではないかと思います。

編: 「カバティーナストーリー」の世界観はどういったものでしょうか。

イム氏: ファンタジーの世界観です。「メイラン」という女神がいて、彼女から様々な指示を受けます。世界の時間を奪われているという設定で、時間を奪っている悪党をやっつけるというものが主題になります。

編: 「メイプルストーリー」からどのようにシステムが進化しているのでしょうか。

イム氏: ゲームシステムが複雑になったわけではありません。システムがユーザーに有機的になじめるように、「メイプルストーリー」よりシステムが洗練されている部分はあります。「メイプルストーリー」はモンスターを倒して、楽しくおしゃべりをするという雰囲気ですが、「カバティーナストーリー」は友人同士で助け合あったり一緒にプレイしている雰囲気をより強く楽しむことができます。年齢層が多少上のユーザーに戦闘とはまた異なる楽しさを見つけてもらえるのではないかと思います。

編: 今回はフィールドに奥行きがありますが、フィールドの戦い方も「メイプルストーリー」とはかなり変わってきそうですね。

イム氏: 後ろに行ったり前に行ったりするということは、単純な動作ではあるのですが、そこから非常にバリエーションに富んだ戦い方が可能になります。戦い方といっても幅がありますので一口に言うことは難しいですが、たとえば、ユーザー同士の対決もできるようにしようと考えていますが、相手が前に行くか後ろに行くかということを予測しながら横スクロールの中でかけひきできるようなことを考えています。

編: 会場で見た限りでは、「カバティーナストーリー」はかなり完成度が高いように見えました。実感としてどの程度完成したと認識していますか。

イム氏: オンラインゲームですので何%というお話はできませんが、今月末にCBTを計画していますので、開発としてはかなり進捗しています。チャプター1.5くらいまでの内容をCBTで公開し、OBTでチャプター3くらいまでを公開できるように目標にしています。現在はチャプター2前後の開発が行なわれています。


■ 「アラド戦記」に高い評価、アイテム課金の商材は、「メイプル」と同様の品揃えに

イム氏は、ニュアンスとして「メイプル」を超えるゲームを作るのは難しいから「カバティーナ」という別のゲームを作ったと語っている。そのロジックは非常に明快だ
Wizetスタジオの元開発者たちが開発した「テンビ」。見ての通り「メイプル」の延長線上にあるゲームデザインとなっている。イム氏の評価はあまり高くない
編: 「メイプルストーリー」が出た頃に比べると横スクロールアクションは非常に増えました。その頃に比べると現在のオンラインゲーム市場をどのように見ていますか。

イム氏: ユーザーさんたちは懐かしさを感じると思います。モニターを見ているときは平面的です。リアルな3Dグラフィックスが発達したとはいえ、2Dの画面は非常に見やすいです。昔のゲームの懐かしさが見えてくることもあります。「メイプルストーリー」で培ったノウハウを活かして横スクロールタイトルを作り続けていきたいです。

編: Wizetスタジオの「メイプルストーリー」の元クリエイターたちが作った「Tenvi」というオンラインゲームがあります。こちらもまた「メイプルストーリー」からの派生作品ということになりますが、元同僚の作品をどのように見ていますか?

イム氏: それは微妙な質問ですね(笑)。

編: 日本の場合はネクソンがサービスしていますから、微妙も何も直接比較対象となります。クリエイターとして純粋にどのように評価していますか?

イム氏: それもそうですね。事実良くできていると思います。私も週末を使ってあっという間に20レベルまで遊んでしまいました。既存の「メイプルストーリー」と同じターゲット層ですが、今やっている「メイプルストーリー」をやめてまで始めようというところまではいきませんでした。中身は非常に充実しています。

編: 日本では横スクロールアクションとしては、「アラド戦記」が人気です。韓国でも高い人気を誇っていますが、どのように見ていますか?

イム氏: 「アラド戦記」は、実際にプレイしてベンチマーキングしてみたりしましたが、「アラド戦記」はオーバーアクションが受けていると思います。アーケードゲームの要素も入っていて、その懐かしさもあると思います。ゲームとして非常に面白く、参考にしている点も多いです。ただし、そのまま真似るわけにはいかないので工夫して長所を取り入れています。

編: Wizetスタジオでは、今後「メイプルストーリー」と「カバティーナストーリー」の2本のラインを同時並行して進めていくことになると考えて良いですか?

イム氏: まだ「カバティーナストーリー」は作っている段階ですので、今後の展開はまだわからない点が多いです。しかし、「メイプルストーリー」、「カバティーナストーリー」とストーリーシリーズとして横スクロールを活かしたタイトルを開発していきたいです。

編: 「カバティーナストーリー」のビジネスモデルはどうなりますか。

イム氏: 基本的に「メイプルストーリー」と同じアイテム課金です。

編: 課金方式について新しい取り組みをする考えはありませんか。

イム氏: ありません。

編: 商材については、「メイプルストーリー」と同じような品揃えになるのでしょうか。

イム氏: そうです。課金モデル自体は揺らぎませんし、アバターやアイテムなど似たようなラインナップにはなると思います。ゲーム対して直接影響を与える機能的なアイテムは若干変化するかもしれませんが、基本的には同じです。

編: 「メイプルストーリー」には無い「カバティーナストーリー」の魅力とは何だと考えていますか。

イム氏: この人形(テンイ)を投げるのですね。プレイしてみないと説明が難しいのですが、このぬいぐるみのキャラクタは敵のモンスターではありません。マップ中に歩いているのですがこれを掴んで敵にぶつけたりします。これがなんともいえず面白いのです。前後左右に移動もできますので戦略性も増しています。

編: キャラクタを投げるというのは、「スーパーマリオ」シリーズに“ノコノコ”というカメのキャラクタがいますが、これを踏みつけて掴んで投げるようなイメージに近いのでしょうか。

イム氏: 似ていますね。これは敵ではなくなんとなくそのあたりに歩いているようなキャラクタなのです。

編: 若干かわいそうな気がしますね。

イム氏: 不思議とかわいそうという感じはしないですね(笑)。他のゲームには無い面白さがあります。


■ ボスとの新しい戦い方や大規模PvPなどを計画

イム氏が持っている人形がテンイ。この妙な生物をぶん投げるところに独特のおかしみがあるという
「カバティーナストーリー」のイメージイラスト。「メイプル」とは明らかにテイストの異なるイメージとなっている。若干「アラド戦記」の影響も感じられるだろうか
編: 来年正式サービス開始とのことですが、現在のデモバージョンからどのような機能や仕様を追加する予定ですか。

イム氏: 現在のバージョンはただプレイができる程度のものですが、正式サービスの時にはチャプターがいくつも盛り込まれて、ボスと戦うことができるほか、コミュニティ機能が充実します。MMORPGなのでオークションやギルドシステムが導入される予定です。

編: 正式サービスまでの開発で手一杯だと思いますが、今後余裕ができれば導入してみたいと思うものは何かありますか。

イム氏: 色々な企画のアイデア段階なのですが、みんなでやってみたいなと話しているのはボスモンスターの背中に馬乗りになって攻撃するようなことです。また、大規模なPvPをやってみたいなとも思います。どこまでできるかはわかりませんが色々と試してみたいです。

編: 日本展開についてはどのような展望を持っていますか。

イム氏: 展開したいのですが、具体的な計画はまったくありません。機会があれば是非考えたいです。それ以外の地域についても今のところ予定はありません。

編: 話が早いかもしれませんが、ストーリーシリーズの次はどういったものを考えていますか。

イム氏: どうなるかはわからないです。「カバティーナストーリー」が成功すれば続けて色々と開発が行なわれるのではないでしょうか。

編: 少し意地悪な質問ですが、「カバティーナストーリー」が失敗してしまうと次回作は期待できないでしょうか。

イム氏: できないかもしれないですね(笑)。ですから成功させなくてはいけません。

編: 「カバティーナストーリー」とは別に、「メイプルストーリー 2」の開発もスタートしているのですか?

イム氏: 実際に内部的に「メイプルストーリー 2」の開発チームは作られてはいるのですが、お話できる内容はありません。ある程度温まった段階でお話できると思います。発表されるタイミングもまだわからないです。

編: 日本のユーザーに一言お願いします。

イム氏: 韓国市場向けのスローガンとして「『メイプルストーリー』を卒業したら『カバティーナストーリー』へどうぞ」というものがあります。日本のユーザーさんにも同じことをお伝えしたいです。

編: ありがとうございました。

□G-Star 2008のホームページ
http://www.gstar.or.kr/
□Nexonのホームページ
http://www.nexon.com/
□ネクソンジャパンのホームページ
http://www.nexon.co.jp/
□関連情報
【2008年11月14日】Nexon、「G-Star 2008 Nexon Media Conference」を開催
“ストーリー”シリーズの新作「カバティーナストーリー」や「カートライダー」のエアレース版「エアライダー」など、新作5タイトルを発表
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081114/gstar08_nex.htm
【2008年11月13日】韓国最大規模のゲームショウ「G-Star 2008」が開催
業界再編後初のショウ、自社開発からパブリッシングへの流れが顕著
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081113/gstar08_01.htm

(2008年11月16日)

[Reported by 中村聖司]



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