★PCゲームレビュー★
幅広いレンジのPCで楽しめる「Crysis」改訂版
シングル/マルチを刷新してお手頃価格で登場!!
「Crysis Warhead」 |
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2007年11月にリリースされた「Crysis」は、その当時、頭ひとつ飛び抜けたハイクオリティグラフィックスでPCゲームの底力を再確認させたという点でエポックメイキングな力作だった。グラフィックスだけでなくゲーム性もハイエンドな内容を備えた同作だったが、弱点もあり、例えばシングルプレーヤーキャンペーンのボリューム不足、マルチプレーヤーゲームが複雑すぎる点などは発売直後からよく指摘されてきた課題だった。
しかし、「Crysis」は、それを差し引いても代替の効かないほどの良作であり、続編を待ち望む声が大きかったのも事実だ。そして今回、その期待に応える形で、様々な改良を施された新作「Crysis Warhead」が登場した。本作の最大の特徴は、前作「Crysis」と同等のゲームボリュームと改善されたゲームモードを備えながら、お手頃感のある価格で提供されることだ。
なお、基本的なゲームシステムについては前作「Crysis」と同一なのでここでは繰り返さない。「Crysis」を未プレイという方は、まずはPCゲームレビュー「Crysis」を一読いただきたい。
■ 拡張パックにあらず。より幅広いユーザーに楽しんでもらうことを狙った改良型「Crysis」
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「最高」設定の壮絶グラフィックスは、DirectX 9でも楽しめるようになった
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エレクトロニック・アーツ・ジャパンから完全日本語版としてリリースされた本作「Crysis Warhead」は、製品の位置づけとしては“続編”と“拡張”の中間くらいに位置するスピンアウト作品だ。よくある拡張パックとは違って単体で動作し、前作と同程度のボリュームを持つ新シングルプレーヤーゲームと、本体から分離されたマルチプレーヤーゲーム「Crysis WARS」が同梱されている。
ゲームエンジンは「CryENGINE2」の改良版が使用されており、改良の主眼としてパフォーマンスアップと、動作可能PC範囲の拡大が試みられている。より広いレンジのPCで遊べるようになったというわけだが、大きな目玉はその価格。定価で4,179円と、一般的なスタンドアロンのゲームパッケージに比べて2,000~3,000円ほど安い価格に抑えられている。
本作における、開発元であるCrytekブダペストスタジオの狙いは明確だ。前作「Crysis」は、グラフィックスの凄さ、ゲームプレイの重厚さに比例する形で、ハードコアゲーマー向けのタイトルだという認識が強く、一般層へのアピールが弱かった。そこで、より多くのPCでプレイできる低価格パッケージを提供することで、沢山の潜在的ユーザーに「Crysis」の面白さを知ってもらおうというわけだ。
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「低」設定。映像クオリティは数段下がるがロースペックPCでも快適に動作する
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さて、本当に幅広いPCで動作するのだろうかと、筆者のゲーム用PCと、日頃作業用に使っている低電圧構成のPCで動作を確認してみた。
ゲーム用PCは3.2GHz駆動のCore2Duoに、Geforce 8800GTXを搭載する、前作のプレイにも使用したPCだ。こちらではグラフィックスオプション「高」設定で常時30fps以上のパフォーマンスでなかなか快適、「最高」設定では平均20fpsほどでややもたつくが、前作「Crysis」よりは1割~2割ほど良いフレームレートが出ていた。
さらに、前作ではDirectX 10専用フィーチャーとされていた各種映像効果がDirectX 9で利用できるようになっている点も素晴らしい改良点だ(パララックス・オクルージョンマッピング、サンシャフト効果、オブジェクトモーションブラー効果)。
もうひとつのPCは、2.0GHz駆動のPentium Dual Coreに、グラフィックカードとしてRadeon HD3450を搭載する、3Dゲーム用としてはいかにも貧弱なPCだ。CPUとグラフィックカードの価格を合わせて15,000円以下、システム全体でも5万円程度の低価格PCである。
半ばあきらめ加減でこのPCに「Crysis Warhead」をインストールし、グラフィックオプションを自動検出設定の「低」で動作させたところ、なんと平均60fps以上という超快適なパフォーマンスで動作した。なるほど、これはなかなかのものである。
また、「中」設定では平均30fpsほどで、まだ充分に快適なパフォーマンスだ。「最高」設定ではさすがに冗談みたいな紙芝居状態となったが、前作「Crysis」に比べてずっと、快適に動作可能な範囲が広がっていることは充分に確認でき、これなら多くのユーザーにお勧めできると感じた次第だ。
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より幅広い環境のPCでプレイ可能になった点は、コアゲーマー向けと思われやすかった本作にとって大きな前進といえる。グラフィックスの素晴らしさだけでなく、ゲーム性の良さも、多くのゲーマーに知ってもらいたいものだ |
■ 主人公はサイコ! 「Crysis」サイドストーリーを描くシングルプレーヤーキャンペーン
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本作の主人公、サイコ。ノーマッドとは別行動を取り、彼なりの戦いを展開していた |
お手頃価格で入手できる本作は、内容としては前作に匹敵するボリュームを備えている。前作「Crysis」のサイドストーリーを描くシングルプレーヤーキャンペーンと、細かな改良が施されテンポ良くプレイできるようになったマルチプレーヤーゲームがあり、良質なFPSとして一度はプレイしておきたい内容だ。
まずはシングルプレーヤーキャンペーンについてご紹介しよう。前作「Crysis」のサイドストーリーを描く本作の主人公は、前作の主人公“ノーマッド”の同僚である“サイコ”ことサイクス軍曹だ。
ノーマッドが北朝鮮の巡洋艦を破壊した現場から別行動を取ることになったサイコは、搭乗したVTOLが敵の奇襲を受け不時着。脱出後新たなミッションを受け、北朝鮮の重要貨物を追跡することになる。ノーマッドがエイリアンを相手に戦っている間、島の裏側ではサイコが孤軍奮闘していたのだ。
前作「Crysis」では、ストーリーが常時主観視点で進行し、主人公はほとんどしゃべらず、典型的一人称視点の演出が徹底されていたものだが、本作ではうって変わり、サイコのケレン味のあるキャラクタが沢山のカットシーンで演出される。前作では「俺たち死にまくってるじゃないすか」と名言を残したサイコだが、今作でもその特徴あるトークが健在だ。
ゲームの舞台としては、ノーマッドが戦っていた場所とは島の裏側に当たる地域での戦いを描く本作。時系列的には一致しており、前作での戦いにリンクした環境の変化が現れる。これがサイコの命を救う舞台装置にもなっており、前作をプレイしていれば「おお~」と感心してしまうことうけあいだ。
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爆発!爆発!爆発! ド派手なドンパチ主体で展開するサイコの戦闘。彼の性格を反映? |
ゲームシステム的には、サイコのナノスーツはノーマッドのものと同じで、前作と同じくナノスーツの4機能、「マキシマム・アーマー」、「マキシマム・ストレングス」、「マキシマム・スピード」、「クローク」を駆使してゲームを進めていくことになる。
また、全7ミッションで構成される各ステージは、前作よりもかなり高密度になっており、ゲーム展開のテンポが非常に改善されている。戦友オニールの救出劇、ナノスーツ部隊との共闘、宿敵リー将軍との対決……。全てが目まぐるしく展開して「次はどうなるの?!」と引き込まれる。戦闘バランスもひと味変わった。特に目立つのが、沢山の車両と大型武器が登場して、爆発シーンが増えたことだ。
多くのプレーヤーが絶対気に入りそうなのが、今回初登場となる、装甲車両に搭載された20mm機関砲。小屋なら数秒で全壊させる威力で、ジープやトラック相手なら1、2発で大爆発。ステージによっては雲霞のごとく次々に現われる車両を、かたっぱしから爆発させながら進撃するというハリウッド映画顔負けの展開も楽しめる。
新型の携帯武器である連装グレネードランチャーも見物だ。手榴弾なみの威力を持つ弾頭をドラムマガジンで6連発できるこの武器を使えば、敵の機関銃砲座を土嚢ごと吹っ飛ばし、ガスタンクを爆発させ、数秒で大混乱を演出できる。このあたり、サイコのビビッドな性格をゲーム性で表現しているかのようで、とても面白い。
前作に比べてずっと火薬の量が増え、ド派手なドンパチに系統した本作は、まさにゲームファンの多くが求める路線に合致したものだろう。単体のシングルプレーヤーゲームとして見てもかなりの良作といえるので、是非多くのプレーヤーに遊んでもらいたい。
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北朝鮮の貨物を追い、戦い続けるサイコ。級友の空軍パイロットであるオニールの協力をうけつつ、北朝鮮のリー将軍と対決していく |
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世界が突然凍結してしまった。前作終盤の状況が、本作では中盤から展開していく。乗り物を使ったダイナミックなゲーム展開、目まぐるしく展開するストーリーは見物だ |
■ 「パワーストラグル」ってこんなに面白かったのか!! テンポ良く改良されたマルチプレーヤーゲーム
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「Crysis WARS」として分離されたマルチプレーヤーモード。ユーザーサーバーに接続してプレイする。接続はもちろん完全無料だ |
本作でのマルチプレーヤーゲームは「Crysis WARS」となってゲーム本編から分離された。インストールディスクも別になっているので、マルチプレイだけをプレイしたい人なら「Crysis WARS」だけをインストールすればいい。
本作のマルチプレーヤーゲームでは、前作から継承された「パワーストラグル」ルール、「インスタントアクション」ルールに加え、新たに「チームインスタントアクション」ルールが導入されたほか、シングルプレーヤーゲームと同様の新武器の導入や、各部のマイナーチェンジによりひと味違う内容に変化している。
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新しく導入された「チームインスタントアクション」。今まで無かったのが不思議なくらい、スピーディに楽しめる |
新たに導入された「チームインスタントアクション」は、要するにチームデスマッチだ。アメリカ軍、北朝鮮軍に分かれた2チームは、マップ上に配置された各種の武器を拾いつつ敵の撃破数を競う。何も考えずに楽しめるゲームモードであり、なぜ前作に無かったのかが不思議なほどだ。
上記ゲームモードが導入されたおかげで、Free for Allのデスマッチゲームである「インスタントアクション」の重要性は相対的に低下しており、国内を含む世界のゲームーサーバーでは「チームストラグル」と「チームインスタントアクション」の各マップを巡回させている感じになっている。
今作でもメインのルールとなる「チームストラグル」は、様々なマイナーチェンジにより前作よりもテンポよく、集中してプレイできる内容になった。特にナノスーツの「マキシマム・スピード」モードのエネルギー消費量が少なくなり、より高速に前線に展開できるようになったのが大きい。特定のマップでは「マキシマム・スピード」を無制限に使え、ものすごいテンポでゲームが進行する。
「チームストラグル」のルールを簡単に説明しておくと、マップ上に点在する各種設備を占領して、最終的に敵本拠を核攻撃で破壊するというチーム戦だ。設備には「バンカー」、「エネルギーサイト」、「兵器工場」、「試作工場」の4種がある。
構造としては、「バンカー」で出撃地点を確保し、「兵器工場」で戦車や装甲車を繰り出して、「エネルギーサイト」でチームのエイリアンエネルギーを溜め、エネルギーが溜まったら、最終的に「試作工場」で大量破壊兵器を作り、敵本拠地に核弾頭を打ち込んで勝利という流れになる。最終勝利条件を満たすまで、各種施設を巡って激しいシーソーゲームが展開するのだ。
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試作工場の防衛! 地面にクレイモア地雷を設置し、敵の親友を手ぐすね引いて待ちかまえる |
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連装型グレネードランチャーは防衛に無類の強さを発揮。自爆に注意! |
ややルールが複雑で、ゲーム展開の勘所を掴むにはある程度の経験が必要になる本ルールだが、本作でプレーヤーの展開スピードが向上したおかげで、テンポ良く楽しくプレイできるようになった。ルールがよくわからないままでも、例えば「試作工場を絶対死守する!」と目標を決めてプレイすればいい。勝った負けたを繰り返すうちに色々な戦術が取れることがわかって、面白さの幅がグングン広がっていく。
筆者のお気に入りの戦法は、ショットガンとハンドグレネードだけを購入してから「マキシマム・スピード」で試作工場に突入し、「クローク」モードで様子を見てから室内にグレネードを投げ込んで接近戦で占拠するプレイだ。ハマれば一気に3人以上を排除して、大きな手柄を立てられる。そのまま防衛に入り、対人地雷クレイモアを各入り口に仕掛け、待ち伏せする。敵が学習しない場合、クレイモアだけで何人も倒せてしまい、とても楽しい。
前線で倒されてしまうと近場の「バンカー」からの再出撃となるのだが、前作ではプレーヤーの移動速度が遅かったため、そこから前線に移動するまでの間に戦闘が勃発する事が多く、ゲームのテンポを著しく削いでいた。その点は前述のように本作で大幅に改善されており、それが「パワーストラグル」の持つ面白さを一気に底上げしている。ついついハマってしまい、「このゲームルールはこんなに面白かったのか!」と感動することしきりだ。
さらに新武器の連装グレネードランチャーがいい味を出している。広い場所で命中させるのは難しいが、一定の爆発範囲が設定されており、至近弾なら敵を一撃で葬ることができるので、各種施設内の屋内戦闘では凶悪なほどの威力だ。購入のために必要な「プレステージポイント」は500と、一般武器の3倍ほどに設定されているが、その価値がある。
また新たに導入された手榴弾「ナノディストラプター」は、頭脳プレイで差を付けるゲーマー向けの装備だ。これに被弾したプレーヤーは、一定時間ナノスーツの機能が停止する。つまり強化人間からタダの人に戻るのであり、著しく不利な状況になるのだ。そこにタイミングよく追撃すればほぼ必勝である。
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「チームストラグル」。マップ上の各拠点を巡って戦略的にゲームが進行する。本作のメインルールだ |
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「チームストラグル」は前作に比べて圧倒的にテンポがよくなり、結果的に本来の面白さがぐぐっと引き出される結果になった。ルールを完全に理解しなくても、目的を限定すれば充分に戦えるし、チームの役に立てる。楽しくて思わず時間を忘れてしまうほどだ |
■ 充実した内容、面白いマルチプレイ、そしてお手頃価格。オトクすぎるパッケージ
このようにマルチプレーヤーゲームモードは様々なアップグレードが施され、前作に比べ大きく魅力を増した。新マップもいくつか投入され、総マップ数は21個となる。まあ、これについては多ければいいというものでもないが、各マップの完成度は高く、プレイの幅、深み、共に不満はない。
最近のPCゲーム、特に対戦型のFPSとしては「Counter-Strike」、「Team Fortress 2」が依然強い状況だが、「Crysis WARS」はその一角を占める実力を完全に備えたと感じる。
本稿の冒頭で紹介したように、Radeon HD3450程度のグラフィックカードでもかなり快適に動作するので、「サドンアタック」や「スペシャルフォース」などオンラインFPSをプレイしている多数のゲーマーにも是非プレイして欲しいところだ。本作の「パワーストラグル」は文句なく面白い!
総括すると、この内容、このパフォーマンスで、4,000円程度(小売店のディスカウントを考慮すれば3,000円台)というお手頃価格で購入できる本作は、非常に良心的だ。今期一番のお買い得なFPSと言って間違いないだろう。
【スクリーンショット】
(c)Crytek. All Rights Reserved. Crytek, Crysis, Crysis Warheead and CryENGINE and trademarks or registered trademarks of Crytek GmbH in the U.S., Germany and/or other countries.
□エレクトロニック・アーツのホームページ
http://www.eajapan.co.jp/
□「クライシス ウォーヘッド」の製品情報
http://www.eajapan.co.jp/ja-jp/games/pc/crysis/crysiswarhead/
□「Crysis Warhead」公式サイト(英語)
http://crysiswarhead.ea.com/
(2008年10月8日)
[Reported by 佐藤カフジ]
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