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THQジャパン代表取締役社長 塩谷クリストファ真人氏インタビュー
「今年は勝負をする年」、強力なラインナップで日本展開を目指す

8月収録

会場:THQジャパン本社

 今年、海外ゲームファンにとって注目度を増してきた海外メーカーがTHQジャパンである。THQといえば、「レミーのおいしいレストラン」や「ウォーリー」(日本未発売)といったPIXAR(ディズニー)タイトル、それから日本のユークスが開発しているプロレスゲーム「WWE」シリーズの発売元として知られているが、まだ日本では欧米市場ほどの存在感は示せていないのが現状だ。

 しかし、E3 2008では、上記のタイトルに加えて、有力デベロッパーによる新規IPや有力な続編が次々にお目見えした。新規IPでは「Darksiders:Wrath of War」、「Red Faction:Guerrilla」、「de blob(邦題:「ブロブ:カラフルなきぼう」)、「WWE Legends of WrestleMania」、続編モノとしては「Saint Row2」、「Warhammer40,000:Dawn of War II」、「UFC 2009 Undisputed」などが挙げられる。オリジナルブランドの強化を目指すTHQの戦略がようやく形になりつつあるのだ。

 THQジャパンは、そうした流れの中で2006年3月に誕生したばかりの比較的新しい日本法人だ。THQグループ戦略をどのように日本のビジネスに結びつけていくつもりなのか。今回は、THQジャパン代表取締役社長 塩谷クリストファ真人氏と、マーケティングマネージャーの森田卓宏氏に、THQジャパンの事業戦略について話を伺った。

 なお、インタビュー中に登場するすべてのタイトルは、あくまで米THQの話であり、日本市場への展開が確定したわけではないことにご注意いただきたい。発売の有無、および発売時期は改めてTHQジャパンからの正式発表をお待ちいただきたい。各タイトルの概要についてはE3現地レポートを参照いただきたい。

【THQ E3 2008ラインナップ】
【de blob(邦題:「ブロブ:カラフルなきぼう」】
【Warhammer40,000:Dawn of War II】
【Saint Row2】
【Darksiders:Wrath of War】
【WWE Legends of WrestleMania】
【UFC 2009 Undisputed】
【Red Faction:Guerrilla】
米THQがE3 2008で発表したラインナップの一部。これがすべて日本展開されると決定したわけではない点をご注意いただきたいが、「セインツロウ2」を筆頭に、例年以上に有力なラインナップが期待できそうだ


■ THQジャパンのビジネスについて

THQジャパン代表取締役社長 塩谷クリストファ真人氏(左)、同マーケティングマネージャーの森田卓宏氏(右)
大きな手応えを感じていると語る塩谷氏。塩谷氏の海外ゲームとの関わりはかなり古く、以前はTake Two Interactive Japan Officeの代表を務めていた
GAME Watch編集部: THQは、今期、来期と非常にラインナップが揃っていますよね。THQジャパンとして、こうしたTHQグループのラインナップをふまえて、どのようにビジネスを展開していこうと考えていますか。

塩谷クリストファ真人氏: すべて日本で展開していくというわけではなく、グローバルラインナップの中から厳選して販売していく形です。これは、2年前にTHQジャパンを設立したときからですが、グローバルのプライオリティやライセンサーの国内展開も考慮して発売タイトルを選んでいます。1月からは特にそのあたりを整理して、THQジャパンとグローバルで話し合いをしています。バランス的には他社のIPよりは弊社のIPをベースにしたタイトルがメインになっています。

編: 7月のE3でTHQさんを取材して印象的だったのは自社のIPが激増していることです。これまでは、WWEやPIXARのタイトルを中心に、どちらかというと固定的な印象を持っていましたが、一気に新規のタイトルが増えて、メディアから見ても、面白いメーカーになってきたという印象があります。

塩谷氏: 2010年以降も継続する可能性のある長期契約などを含めて、日本では成功していないものもありますけれどもグローバルでは長期的なフランチャイズがあります。2010年までラインナップを揃える必要があるということは3年ほど前から認識しておりまして、社内開発による自社IPのラインナップを充実させています。

編: 欧米ではActivisionやEAを中心に、メーカーの離合集散が激しいですが、THQはグローバル市場において、どのような位置づけにあるメーカーだと思いますか。

塩谷氏: 「ファインディング・ニモ」をはじめとする一連のディズニー/PIXAR映画のゲーム版販売元ということで、キッズ/ファミリー系ジャンルに強いメーカーというのがひとつ。後はレスリングです。競合タイトルが減る中、「WWE」シリーズの新作投入を続けているTHQのタイトルが存在感を増しています。

 実際に日本では2月の半ばに発売しましたが、2008年度版はすべてのプラットフォームを合わせて世界で600万本以上販売しています。そういう意味では欧米でTHQといった時にすぐに「WWE」を思い浮かべるのは比較的コアゲーマーで、ディズニー/PIXARを思い浮かべるのはキッズ層ということになります。

編: 今後は新規IPを拡充して、より多くのラインナップで世界展開するということですか。

塩谷氏: 新規IPの先駆けとなる「Juiced」というレーシングゲームは、正直なところ欧米ではかなりの期待はずれでした。日本では1作目はあまりインパクトを残せず、2作目に関しては「ドリフトナイツ」というタイトル変更とともにローカライズの方向性やマーケティング手法を変えたことで、1作目よりはかなり売ることができました。

 同じ時期に開発していた「セインツ・ロウ」に関しては予想通りの結果を残すことができまして、2作目に関してはかなり早い段階から開発を続けていきました。「セインツ・ロウ」に関しては、「Grand Theft Auto」という数字の上でも内容の上でも良い競合タイトルがありますが、ポスト「GTA」という位置づけのタイトルの中では間違いなく「セインツ・ロウ」が評価されています。ナンバーワンになれるかどうかはこれから大きな試練があると思うのですが、少なくともこのジャンルの中ではリーディングポジションの一角を担える存在になっていると思います。「GTA」は4で方向性が変わりましたが、「セインツ・ロウ」は「GTA3」の方向性を追求しているところがおもしろいのではないかと思います。

編: 自社開発タイトルに関して、THQグループとしてジャンルやゲーム性などについて何かポリシーはあるのでしょうか?

塩谷氏: ジャンル・ゲーム性・プラットフォームなど諸々ありますけれども、自社IPの中でもこの1年半の間、かなりWiiに力をいれてきていました。「ブロブ」もその中の1つですし、日本では発売の予定はありませんが、「デッドリー・クリーチャー」というサソリなどの危険な動物のアクションアドベンチャーを新しいIPとして立ち上げようとしています。

 キッズやファミリーのセグメントに関してはWii単独でのタイトルを導入しようという試みは今年から始まっています。ある意味ライセンスに依存していたものを任天堂プラットフォームとWiiに絞って自社IPで開発していこうということが1つです。

 コアなゲームについては相変わらずマルチで展開していきますが、PS3とXbox 360の2プラットフォームというパターンで仕掛けていこうと考えています。合理性を考えると良い判断だと思います。PCに関しては去年・今年はもっとも少なかった年です。かつてのようにXbox 360があるからついでにPCもということはなくなってきています。

編: PC版をリリースしない理由とは何でしょうか。

塩谷氏: 北米のPC市場の冷え込みです。昨年投入したタイトルも、PS3、PS2、Xbox 360、PCとあって、その中で外れたタイトルも、PC版の外し方が非常に激しかった。それはIPの良し悪しとは別のところで特にPCゲームユーザー離れが大きいのではないかと考えています。THQは北米主導型の会社なので、北米市場でうまくいかないという場合は、他で展開するのは難しい。

編: 当然日本でもPC版はやらないと?

塩谷氏: グローバルでPC向けが出てこないとそもそも展開できないですし、進行中のものに関してはTHQジャパンでは発売はしませんが、国内PCゲームメーカーにライセンスして販売していきます。

編: THQジャパンさんの日本でのビジネスの内訳はどのようなものになりますか?

塩谷氏: 流通に関してはXbox 360タイトルについてはマイクロソフトさんにお願いしています。これは今年始まったばかりです。それ以外のタイトルに関してはセガさんですね。自社流通は、実際にリサーチしたことがあるのですが、いろいろなハードルをクリアしなければならなかったということもあり、何よりも自社ラインナップが充実していないとビジネスとして成立させられないということがありました。EAさんの場合は自社タイトルが揃ってから自社流通を行なっています。

 セガさんに関してはTHQジャパンを立ち上げる前に5、6タイトルをライセンスして発売していただいた経緯があります。また、日本独自で海外タイトルを調達することもやっていきます。

編: それはTHQ以外のメーカーのタイトルもTHQジャパンで扱っていくということでしょうか?

塩谷氏: THQの場合、組織的にグローバルの下にアジアパシフィックがあり、その下にTHQジャパンがあるわけです。ヨーロッパと北米の権利については片付いていて、アジアが見つからないという場合にアジアパシフィックやジャパンが主導して権利をとっていく場合もあります。今まではTHQがグローバルで発売するものから選んでいました。実際、欧米市場では他社から発売されるタイトルを国内ではTHQが発売するというプロジェクトが進行中です。

編: 逆に、THQさんのタイトルで、THQジャパンで発売しないタイトルについては、たとえばセガさんのような他社さんにライセンスすることもあるわけですか?

塩谷氏: もちろんあります。「ドローン トゥー ライフ」は北米で昨年発売したタイトルですが、THQジャパンとして発売スケジュールが非常に立て込む中、アガツマさんが興味を示していただいて、日本でTHQさんが出さないのであればということで出していただくことになりました。今後も自社で発売を見送っても他社さんが興味を示していただければライセンスすることがあると思います。

編: 次にローカライズについてですが、EAさんを筆頭に、かつて森田さんが所属していたアイドスさんも、ポートフォリオを充実させるために英語版のまま売ってしまうことがありましたが、この点THQさんはどのようになりますか。

塩谷氏: 家庭用ゲームに関しては英語版のまま出すことは考えられないです。フルローカライズとはいえませんが、ものによっては字幕をつけるといったやり方になると思います。我々も様々な洋ゲーメーカーと関わってきて、英語版でも行けるのではないかと思うこともあります。しかし、現状でいえば、ローカライズしないまま出すというのはマーケット的にユーザーさんの評価が厳しいんですね。たとえば、スポーツタイトルが充実しているのであれば、それでも買ってくださるユーザーさんもいるわけですが、そういったタイトルはなかなかTHQでは持っていないですからね。

森田氏: ローカライズの度合いはゲームによって全社的には期待が大きいだけに、なんでボイスをローカライズしないのだと言われることがあります。逆に日本の市場を考えたときにボイスは英語のままのほうが雰囲気が伝わるですとか、それが手を抜くということではなくそのままにしておくだけでローカライズはするスタンスです。実際EAさんもまったくローカライズに手をつけないことは少ないですよね。


■ 今は海外ゲームに良い風が吹いている!? 海外ゲーム今昔物語

「ずいぶん変わった」と話す森田氏。森田氏は、アイドスジャパン時代に、日本法人がクローズした経験を持っているため、実感がこもっている
編: おふたりとも海外ゲームメーカーに長くお勤めで、海外のタイトルを日本に持ってくるという地道なビジネスを長年に渡って行なっています。誰よりもよくご存じかと思いますが、海外ゲームは売り上げ的に低迷していた時期が長く続きました。しかし、ここ数年のスパンで見ますと、優に10万本を超える海外タイトルが日本でも生まれつつあります。そうした日本市場の変化、あるいは海外ゲームの日本での浸透具合をどのように見ていますか?

森田氏: 昔に比べるとずいぶん変わってきたなと思います。私がアイドス時代にXboxで「Deus Ex」を出して、非常に良いゲームでしたがぜんぜん売れなかった時代に比べますと、今では「Call of Duty 4」が海外で1,000万本販売しましたという話が、「海外の話でしょう」という縁遠い話で終わっていたのが「1,000万本も売れているのだ」という見方をユーザーさんがしてくれるようになったというのは大きく変わったと思うところです。

編: 海外ゲームを十数年やってきて、今が一番良い風が吹いているという認識で良いのでしょうか。

塩谷氏: 現在発表しているタイトルを見ても、4、5年前にこういったタイトルの話をさせていただいても、「良いゲームですね」という評価をいただいたにしても、「何万本いくのですか」というビジネスの話ができていたかというとそうではなかったと思います。もう少し早くそうなっていれば、会社をたたんだりするようなこともなかった(笑)。

森田氏: 僕も同じように良い風が吹いてきたと思います。グローバル全体のゲーム業界を見たときに本当に良い風なのかといえば、日本で大きな流れが変わってきている原因の1つにPS3やXbox 360といった、開発に費用がかかり日本だけでは回収できないプラットフォームが出てきているので、相対的に海外のタイトルが入りやすくなっているという状況があります。

 それから、敷居がどんどん高くなる一方で、敷居が低くても商売できるのだよといわんばかりの展開をされているメーカーもいらっしゃる。そういう意味で任天堂プラットフォームの市場に関して海外メーカーにとって非常に厳しい状況が続いていますし、今後もそれはある程度続くと思います。かつてPCをやっていた層がPS3やXbox 360に流れてきている。結果的に海外ゲームのインターフェイスであったり、ゲーム性や不親切さに関して、アレルギーのないユーザーが増えてきていることは確かです。海外系のグラフィックスであったりスピードであったりというところにある価値を見出すユーザーもあきらかに増えています。ユーザーが変わってきており、どちらが先かはわかりませんが、開発コストのかかるプラットフォームのシェアが上がってくることで結果的に海外メーカーにとって日本でジャンルを選べば勝負しやすい土壌ができてきていることは間違いないと思います。

編: THQジャパンとして特に力を入れているプラットフォームはあるのでしょうか。

森田氏: 非常に悩ましいところではあります。今期のタイトルではグローバルではキッズ・ファミリー向けにWiiにかなり力を入れています。一方で日本のWii市場ではファーストパーティーの任天堂さんの独占状態であります。必ずしもグローバルで力を入れているからといってそのまま日本で力を入れられない現状があります。それが現在一番悩ましいところです。「Juiced(ドリフトナイツ)」のようにグローバルで力を入れていたタイトルは、こけはじめると力を抜くのも早かった(笑)。日本に関しては、必ずしもグローバルの展開とはリンクしない形で結果が出せたりそれが難しかったりしています。

塩谷氏: タイトル バイ タイトルですね。「Juiced(ドリフトナイツ)」のゲーム性がどうだという意見もいただいています。しかし対ユーザーさんでどういったアプローチができるかは一番最初PS2、PS3、Xbox 360の動きのなかで、一番PS2の動きが良くて、釣られるようにPS3の動きがあった。Xbox 360はまったく動かなかった。多分ジャンルであったりタイトルによって力を入れなければならないプラットフォームには違いがある。たとえば、「ブロブ」をXbox 360で出しても誰しもが「何をやっているんだよ」と思うところだと思います。

 逆に今年のE3で出展させていただいた「Darksiders」や「Red Faction」がどのプラットフォームで出すかということに関しては、PS3やXbox 360のような次世代プラットフォームでグラフィックス的にクオリティの高いところで出すのが当然です。マーケット的に分化しているといいますか、ユーザーさんの志向や好みによって選ぶプラットフォームは変わってくるので、そうしたユーザーさんに訴求できるプラットフォームで考えていかなければいけない。どのプラットフォームで力を入れるかというよりは、このタイトルだったらどのプラットフォームでユーザーさんに紹介しようかという考え方です。

編: とすると、結果としては全方位戦略ということになるのでしょうか。

塩谷氏: そうなりますね。ほぼ2年前にTHQジャパンとしてはじめて「カーズ」を出して、この2年間ですでに変わっています。そのときに出ていなかった次世代プラットフォームがあり、かなり予想とは違う展開も多かったです。そうした意味で半年あるいは1年のスパンで軌道修正しながら、これからもやっていきたいです。今この時点でグローバルではこちらを向いているけれども日本ではそっちは向けないというところで日本で何をやるかというところで本社の理解と弊社での努力が必要だと考えています。

森田氏: どのプラットフォームが抜きに出て行くかというのは現状見えないと思います。逆にどこかに集中していってしまっていいのだろうかと思います。確実に日本でユーザーさんがいるだろうかというところを考えていかなければいけないです。

編: 今年のE3で出展されていたタイトルについて、日本での発売に関して正式アナウンスはまだですが、日本語版での発売を期待しても良いのでしょうか?

塩谷氏: 時期がきたら発表いたします(笑)。当然、海外の方も発売スケジュールやどういうタイミングで進んでいくかということが流動的なところがあって、現時点ではXbox 360が前面に出されていますが、極端な話Xbox 360ではなくPS3で発売されることもなきにしもあらずなので、両方もありえるし、どちらかもありえます。時期をみてということになります。

森田氏: E3でお見せしたものの中で、厳選してタイトルを発表したいと思います。我々として日本のユーザーの興味をひけないタイトルは出せませんから(笑)。

編: THQジャパンとして一番期待しているタイトルは何でしょう?

塩谷氏: 発売時期が確定している「セインツ・ロウ2」に関しては、ようやく押せるタイトルだなという実感は持っています。われわれが日本法人を立ち上げてからすぐのタイミングで、我々が知らない間にXbox Liveで英語の体験版が出ていまして、その時点から日本のユーザーさんから高い期待をいただいていました。

編: 前作はどのくらい売れましたか。

塩谷氏: 3万本くらいでしょうか。当時レーティングZがついて、出せる出せないというレベルの話に終始してしまって、正直ちゃんとしたプロモーションができていませんでした。当時は前例がなくおっかなびっくりだったんですね。何をやったらよくて何がやったらNGか見えないままやっていたことがあり、難しい展開でした。うちにとってアンラッキーだったのは同時期に「Oblivion」がありました。「Oblivion」でのネットでの盛り上がりがあり、盛り上がってかき消された割にはよく売れたなという見方をしています。今回もカプコンさんの「GTA4」の後になりますので、「GTA4」を楽しんだユーザーさんからも評価がもらえるかなと。

 「ブロブ」に関しては、任天堂系の自社IPでちゃんとやっていこうというタイトルは、THQジャパンとして初めての試みなんです。過去の「カーズ」などの他社ライセンスIPをお借りして出しているタイトルではなく、完全に独自タイトルになります。「カーズ」はディズニーですし、「スポンジ・ボブ」でもそれなりに認知されているところで出せましたが、「ブロブ」に関しては、「ブロブとは何だ」というところから育てていかなければいけないという難しさがあります。ただ、手前味噌ながらTHQとしては、この「ブロブ」によって斬新なゲーム性をアピールできるのではないかと思っています。

 海外ではTHQというメーカーはしっかり認識されていますが、日本では「WWEをやっているところ」という見方がせいぜいです。ですので、「ブロブ」を通じてキッズタイトルを出せるメーカーなのだと認知してもらえればいいなと考えています。そうした意味でこのタイトルはTHQジャパン3年目で成功できるポテンシャルを持ちつつ、成功したら来年再来年とステップアップできるかなと考えています。

編: 目指すところは何万本ぐらいですか。

塩谷氏: 両方とも大きくいえば両手(編注:10万本)行けば涙が出るほどうれしいです。両手に手が出るところまで行ってもらって、次に期待してもらえることが理想です。昨年は洋ゲーメーカーにとっては豊作の年でした。扱い的にみんな下積みがあって来ているタイトルが多い中、THQは日本で本当に歴史が浅いので、ようやくそういうヒット作を出せるステージに上がれるかなというところです。


■ CEROのZ指定に対する取り組み、今後の目標について

塩谷氏によれば、Z指定(成人指定)の判断基準は変わってきていると言う
やっと自信を持って推せるタイトルが揃ってきたと笑顔で話す森田氏。ラインナップの充実は海外ゲームファンとしても嬉しいニュースだ
編: 海外ゲームの特徴として、Z指定のタイトルが多いことが挙げられると思います。この点についてTHQさんでポリシーは何かありますか。

森田氏: 弊社のラインナップの中でZ指定になりそうなのは、いまのところ「セインツ・ロウ2」だけです。「セインツ・ロウ2」は、そのゲーム性ありきのところがあるので、Zで行かざるを得ない。昨年でいえば、その可能性が高かったのは「コナン」でした。コナンを求めるユーザーにはZでなくても良いだろうと判断し、我々はCで出したのですが、狙いは外れてしまいました。

 「コナン」のゲームについては操作も簡単で面白いという評価ですが、バイオレンスの部分でマイナスの評価になってしまったんですね。ですから、CEROのレーティングに落として内容を変える努力をするというところでは消極的にならざるを得ないですね。ただ、弊社がZが多いかといえば多くないと思います。ラインナップ全体での比率でもZはそれほど多くはないと思います。

塩谷氏: この2年間の間でいろいろと判断基準が揺れていることがあります。私はかつて初代の「GTA」に関わって、同時のライセンシーがゲームショウに出展していろいろと大変な目にあいましたが、社会に与える影響など教育的観点からというものが根底にあるわけです。

 「セインツ・ロウ」を発売する際も、当時、セガさんにとって初めてのZタイトルで扱えるかどうかわからないという状態でした。現在は、全体的な流れとしてはむやみに蓋をするというスタンスが薄れてきた。これくらいのものならばという良い悪いの判断基準が固まってきたと感じます。

 先ほどの「コナン」は、結果的に自主規制をやりすぎた反省もあります。Z指定を受けずに、ある程度のリアリズムを追求するというスタンスをとった結果、ああいったゲームになってしまいました。「セインツ・ロウ2」に関してはZは免れないという大前提のもとどういう営業ができるかということをかんがえたいです。

森田氏: 誤解をされたくはないですが、所詮はゲームというスタンスです。「セインツ・ロウ」に関してもゲームだからこそ中で好き勝手ができるわけです。それがZ指定に繋がってしまう。誰でも彼でもやらせていいゲームではありませんし、規制はかけるべきだとは思いますが、ゲームとしてそこが面白い要素だとすれば、そこはある程度失わせない形が必要ではないかと考えています。

編: 今期の目標を聞かせてください。

塩谷氏: 個人的には記憶に残るタイトルを出したいと考えています。先ほど申し上げた「セインツ・ロウ2」は、両手というのは軽く超えてほしい。それを超えようとするために大赤字になるくらいにマーケティングにお金を使おうとすると失敗なのですが、どこかで勝負をしなければなりません。勝負するタイトルを絞っていく中で、あのタイトル売れたねというレベルには持っていきたい。

編: 今年が勝負の年になるのでしょうか。

塩谷氏: 日本であまり成功していないタイトルも含めて今年は出していきます。それがあまり芳しくなくても2年目に関してはやり方をかえて出そうと。昨年グローバルで失敗したタイトルで後続がないのなら今年はライセンスに力を入れる。結果的にグローバルでどんどん弾を仕込んでいる状態です。今年は勝負をする年だと決めたのはラインナップとして日本でやりたいと思うものが初年度に比べて増えたからです。それだけに1年目2年目とは違う結果を残す必要があります。

編: 日本のゲームファンに向けて一言お願いします。

森田氏: これまでは、ここまで自信を持ってお見せできるタイトルがありませんでしたが、THQジャパンの3年目の節目として、またTHQとしてもようやく力を入れられるラインナップがそろってきました。ようやく皆さんの印象に残るゲームを秋口から春にかけて出せるのではないかと考えています。ぜひ期待してください。

塩谷氏: THQというブランドよりも何よりも「セインツ・ロウ」であったり「ブロブ」であったりとタイトルそのものにも注目していただきたいですし、ファンの方にはシリーズ第2弾になるタイトルもあります。必ずしも万人受けするものばかりではありませんが、高いクオリティで楽しんでいただけると思います。ぜひ期待してください。

編: ありがとうございました。

□THQジャパンのホームページ
http://www.thqgame.jp/
□「ブロブ:カラフルなきぼう」のページ
http://gamesites.thqgame.jp/products/Blob/
□関連情報
【9月12日】THQジャパン、Wii「ブロブ:カラフルなきぼう」プレビュー
街を塗りつぶす楽しさを先行体験、作品の魅力を紹介
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080912/blob.htm
【8月21日】THQジャパン、Wii「ブロブ:カラフルなきぼう」イベント開催
芋洗坂係長さんが「大人から子供まで楽しめる」とアピール
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080821/blob.htm
【7月19日】E3 Media & Business Summit 2008 現地レポート
THQブースレポート~Wiiのかわいい系塗りまくりアクション「de blob」、
正義の悪魔Horsemanがゴッドオブウォーチックに大暴れする「Darksider」など
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080719/thq.htm

(2008年9月22日)

[Reported by 中村聖司]



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