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会場:昭和女子大学
CEDEC 2008の3日目、最後の時間に開催されたセッション「ソウルキャリバーシリーズのキャラクターアニメーション」では、「ソウルキャリバーIV」のアニメーション開発において、PS3版に登場する「ダース・ベイダー」と、Xbox 360版に登場する「ヨーダ」をどのようにゲーム上で作り上げたかという話題が展開された。
講演者は、バンダイナムコゲームス コンテンツ制作本部 第1制作ディビジョン 第1制作ユニット アニメーション課の柴田裕介氏と矢口善久氏。柴田氏は「スター・ウォーズ」キャラクタのアニメーションをどう組み上げたかについて、矢口氏はその前段階となるアニメーションの技術的仕様などについて語った。
■ “ライトセーバーは重い”と再定義された「ダース・ベイダー」
当初は「現在のCG技術で『ダース・ベイダー』を映像化する」という方向で開発が進められた。基本の構えは剣道の中段構えにし、威圧感のある立ち姿になった。また早いうちにモーションキャプチャで動きを再現。いかにも「ダース・ベイダー」という動きはほどなく実現された。 しかし、格闘ゲームとして実装すると話が違った。1/3秒から1/4秒といった短時間で攻撃が発生する格闘ゲームに対して、再現された「ダース・ベイダー」の動きはゆっくりしすぎていた。実際のところ、そのゆっくりした動きこそが“劇場版らしさ”を感じさせるところもある。 また、そのモーションで早い動きにすると、非常に動作が軽く見えるという問題もあった。元々、武器であるライトセーバーは軽い(刀の部分に重さがない)というイメージで作っていたため、モーションキャプチャしたデータから素早い動きを作ると、非常に軽い動作になってしまった。 他にもまだ問題があった。1つの武器を両手に持って中段構えをとるキャラクタとして、既に「御剣」がいた。重心の上下移動が激しい「御剣」に対し、「ダース・ベイダー」は全身の動きが少なく、地味に見えた。その他のキャラクタも派手な動きをするのが特徴のゲームといってもいいだけに、影が薄く見えてしまった。 結局、モーションキャプチャによるデータはほとんど破棄し、大改造を加えることになった。キャラクタをパワータイプに定義し、構えも大きく半身になる形に変更。劇場版に近づけるよりも、派手でゲームらしい動きを実現することを重視した。特にライトセーバーで斬りつけた時に、軽く振りぬくのではなく、止めを入れた。本来軽いはずのライトセーバーに、ずっしりした重さを感じさせる表現を取り入れ、力強さを感じさせるようにしている。 結果的に、「最初に考えていたよりも、アグレッシブすぎるキャラクタになった」という。しかしそれでいて、背が高く威圧感のあるイメージは残っており、「ソウルキャリバー」なりの解釈をした「ダース・ベイダー」として表現されている。
このほか余談として、「スター・ウォーズ」において「ダース・ベイダー」がキックする場面がないという話題もあった。これは再現のしようがないので、「いっそのこと、キックボタンでをフォースを出してしまえばどうか」という話もあったそうだが、これは採用されず、独自にキックのモーションを作っている。また「ダース・ベイダー」のクリティカルフィニッシュでは、「デス・スターからビームを撃てばどうだろう」という話もあったそうだが、惑星を破壊するような兵器なので、当然ながら(残念ながら?)採用されていない。
■ シリーズの進化からは生まれ得なかった小型キャラクタ「ヨーダ」
完成したゲームに登場する「ヨーダ」は、キャラクタの基本が他とは大きく異なる。直立状態でも上段攻撃が当たらず、しゃがみも用意されていない(しゃがむと中段攻撃まで当たらなくなるほどの高さになる)。また相手の投げも受けつけない。掴む位置や投げられている最中のモーションが、他のキャラクタと同じようにしても成立しないためである。 開発の第1段階では、攻撃モーションのクオリティが上がらない問題があった。これは全身のバランスの中で頭が大きく、手足が短いため、動きがパッとしないのだという。また武器であるライトセーバーの軌跡が、「ヨーダ」本人の動きに比べて目立ちすぎるというのも課題となった。 この解決のため、まず標準のキャラクタリグ(骨格データ)を使って、しっかりとしたモーションを作った。「ヨーダ」はその性質上から専用のキャラクタリグが用意されていたが、この状態で制作すると、特殊なキャラクタであるという概念が鮮明になり、しっかりしたモーションが付けにくくなってしまう。このため、標準のキャラクタリグで作ったモーションを、「ヨーダ」のキャラクタリグに持っていくという手法がとられた。 他の問題としては、一部のキャラクタのクリティカルフィニッシュが「ヨーダ」に対して実現できないというものがあった。例えば新キャラクタ「ヒルダ」のクリティカルフィニッシュでは、空中に投げ飛ばした相手に槍を投げて突き刺すのだが、ヨーダは背が低いため空を掴むんでしまう。さらに投げられるという概念がないため、投げられた後のデータがなく、キャラクタが表示されない。これは一連の動きを変更し、掴むモーションで「ヨーダ」のアップを映し、その後のモーションは別の攻撃に置き換えられている。 結果として、体全体を使った大きなモーションのものができあがった。原作同様に小さな体で飛び回るモーションを再現しており、特に自分から突っ込んでいくような動きが多くなっている。ちなみに「ヨーダ」が使うクリティカルフィニッシュの動きは、原作で「ヨーダ」がドロイドに対して攻撃を放ったワンシーンを再現しているという。
なお、「ソウルキャリバーIV」で「スター・ウォーズ」を使わせて欲しいという話をしたのは、バンダイナムコゲームス側から提案されたもの。開発にあたって、ルーカス・アーツのチェックも受けているが、当初から非常に好意的で、「『ソウルキャリバー』の一部となる『ダース・ベイダー』と『ヨーダ』を作って欲しい」と言われ、最終的にもモーションに関する大幅な修正はなかったという。
■ 技術面ではキャラクタリグを見直し、7種類に削減
構想は「ソウルキャリバーIII」の段階からあり、ではいつからやるかというところで、契機となったのがXbox 360用「アイドルマスター」の開発だった。ここでβ版を作成し、共通リグβ版として「春美」を制作した(昨年のCEDECで講演)。その後、開発中だった「鉄拳6」でも、スタッフに試験してもらいつつ実装を進め、いよいよ「ソウルキャリバーIV」に持ってくるということになった。 「ソウルキャリバー」シリーズでは当初、人体部は共通だが、武器ごとに別のリグを用意していた。しかし「ソウルキャリバーIV」は、レギュラーキャラクタで30種類、さらにユーザーがカスタマイズするクリエイションキャラクタで13種類というかなりの数になった。こうなると、管理や修正対応が煩雑になり、また複数キャラクタをまたぐアニメーション作成で非効率的になる。 そこで、「手に武器を持つことが基本」、「単階層構造の武器」、「装備している武器は2つ」というキャラクタを、全てデフォルトリグとして統合し、最終的に7種類のリグにまとめることに成功した。デフォルトリグにおいては、武器を手で扱うという前提のもとで複数のパラメータを調整することで、多数の武器に対応したモーションを作成できるようにしている。結果的に、大抵の操作がパラメータの組み合わせで実現でき、他のプロジェクトにも活用できそうなほどのカスタマイズ性の高さを持った。
今後は手以外に武器を備える場合や、保有する武器の数が増えた場合にも対応することを検討課題としているという。武器格闘ゲームに留まらず、汎用的に使える面白いシステムに成長するかもしれない。また来年のCEDECでも、何かしらの発表があることを期待したい。
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□CEDEC 2008のホームページ (2008年9月11日) [Reported by 石田賀津男]
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