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会場:Marina Square Central Atrium
気になる日本勢の活躍は、日本個人戦代表のrepi選手が、韓国圧勝の下馬評を覆し、個人戦トーナメントで見事優勝を果たした。一方のチーム戦も、準々決勝で韓国と激闘の末に敗れたものの、その後は負けなしの下位グループトップの5位を記録。共に過去最高の結果を残した。 「ゲットアンプド」は、韓国、中国、台湾、タイといったアジア地域では、日本最大規模の成功を収めているカジュアルオンラインゲームだが、開発元の本拠地である日本では、サイバーステップとガンホーで、それぞれ1回ずつサービス休止を経ており、未だヒットと言えるレベルには至っていない。このため、日本のユーザー数も、他のアジア地域に比べて数十分の1から、数百分の1と言われるほど少ない。そのことから考えると、今回の成績は大金星といえるわけである。 日本選手の激闘の模様については別稿にて詳しくお伝えすることにして、本稿では「GetAmped World Festival 2008」全体の模様をお伝えしたい。
■ 東南アジアの雄AsiaSoft主催の「GetAmped World Festival 2008」
第2回大会では、その反省を活かし、また、この1年半の間にサービス展開地域も6地域から12地域に増えたことから、出場枠を1地域1枠に限定。日本、韓国、中国、台湾、タイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、ベトナム、香港、フィリピンの11地域から計44名が出場し、終日掛けて熱い戦いを繰り広げた。 会場となったのはシンガポールを代表するショッピングモールMarina Square。東西南北に延びるモールを接続する十字路の中央広場に特設会場が設置された。上部は吹き抜けとなっており、明るい光が差し込み、2階から観戦することもできる。選手にとっては強烈な陽光でモニタが見づらく、さらに360度の喧噪空間ということで、試合環境は必ずしも良いとは言い難いが、主催社のAsiaSoftにとっては、現地の買い物客や観光客にもアピールできる絶好の空間と言えるだろうか。正確な来場者数は不明だが、延べ1万人以上の観客が試合を観戦したものと見られる。 本大会のホストを務めたAsiaSoftは、タイのオンラインゲームパブリッシャーであり、タイのほか、マレーシア、シンガポール、ベトナムの4カ国で「ゲットアンプド」のサービスを行なっている。現在、東南アジアのオンラインゲーム市場は、同地域の経済発展に伴い、じわじわと伸びてきているが、その追い風を受けていまや東南アジア最大手のメーカーに成長している。設立は2001年で、「Starcraft」(Blizzard Entertainment)や「Counter-Strike」(Valve)といったパッケージ製品のパブリッシャーを経て、現在は「MapleStory」(NEXON)、「Sudden Attack」(GAMEHI)、「Cabal Online」(ESTsoft)、「Audition」(T3 Entertainment)といった韓国タイトルを中心に8タイトルを展開している。韓国HanbitSoftや、台湾Gamaniaに似た軌跡を歩みつつあるメーカーだ。 AsiaSoftは、「ASIASOFT GAMEFEST」を8月1日から3日の日程で開催しており、そのメインイベントが「GetAmped World Festival 2008」となる。プライベートイベントを3日連続で開催するのはなかなか凄いことだが、イベント進行に関してはお世辞にも良かったとはいえなかった。事情を聞いたところでは、この規模のイベントは初の試みということで、イベントを代行してくれる代理店もいないため、スタッフ自らが手探りで行なっているのが実状のようだった。 実際に大会前夜に、下見とマシンセッティングを兼ねて会場を訪れたところ、8月1日の競技種目だった「Richman Online」(Softstar)のポスターが全面に張り巡らされ、紙吹雪がまき散らされたままだった。スタッフはその後、ほとんど徹夜作業で、準備を整えたという。 ちなみに本戦のほうも、遅れに遅れた。世界大会と銘打つイベントで、これほど進行が遅れたケースはちょっと類を見ない。まずグループ予選A組の第1試合目から、選手達のカスタムハードウェア(マウス、キーボード、ゲームパッド)の調整で手間取り、1時間遅れでスタート。ベスト8を選出するグループ予選が終わった時点で、2時間以上遅れてしまっていたため、その後の準決勝、決勝がいきなり3セットマッチから1セットマッチに短縮されてしまった。敗北した地域が閉会式まで手持ちぶさたになるのを防ぐために企画されたフレンドシップマッチもすべて中止となった。それでもなおかつ終了は2時間以上遅くなった。 グループ予選こそ1セットマッチで済ませるべきだったように思われるし、イベントのハイライトである準決勝や決勝が1/3に短縮化されたのは非常に残念だ。どれひとつとっても、あってはならないレベルのミスのように思われたが、オンラインゲームパブリッシャーのプライベートイベントのトラブルは恒例行事のひとつであり、規模の割には手作り感たっぷりのアジアらしいイベントといった印象だった。
■ 満を持して臨んだ第2回大会。10代の選手が過半数を占める、若く勢いのある世界大会
個人戦かチーム戦かによって戦術は異なるが、基本的な立ち回りはすべて同じで、相手の攻撃を避けて、自分の攻撃をしっかり当てる、ただそれだけだ。もちろん、スタイルやアクセサリによって戦い方は変わってくるが、もっとも大事なのは、間合いの取り方、見切り、踏み込み方といった瞬間瞬間の判断で、プレーヤースキルが如実に表れるのが大きな特徴となっている。 こうしたことから、アジアでは低年齢層に人気が高く、特にもっとも大きい成功を収めた韓国では子供向けのゲームとして認知されている。代表選手は年齢に関わらず参加できるため、ある程度年齢が高めとなっているが、それでも13、14歳の子供の代表もおり、全体としては10代が圧倒的多数を占めている。日本勢に関してはRockyu選手が唯一の十代(19歳)で残る3人は20代とかなり年齢層は高めとなっているが、依然として子供に支持されているゲームであることは間違いないようだ。 既報のように、出発前日の7月31日には、サイバーステップ本社で日本代表選手の壮行会が開催され、同社スタッフとユーザーが入賞を祈願して選手達を送り出した。同社は、日本の運営元であると同時に、ゲームの開発元でもあるという微妙な立場にある。シンガポールに行ったら、本会場では露骨な応援はできないため、せめてもの心配りというわけだ。 サイバーステップとしても、第1回大会の敗北は、開発国として胸に期するものがあったようで、前大会終了後、日本国内でのオフラインイベントを増やし、ユーザーとの対話の機会、実力を試す機会を増やし、「最強の4人を選び抜いた」という。つまり、日本ではユーザー数が少ないため、熱意と実力を兼ね備えたユーザーに一種の英才教育を施すことで、韓国や中国といったユーザー数の多い地域に対抗しようという考えだ。 サイバーステップ代表取締役社長の佐藤類氏は、開会式の挨拶の中で、AsiaSoftをはじめとした各国のパブリッシャーに感謝の意を表しつつ、ブラジルの正式サービスがスタートし、今後、米国とオランダという欧米市場への進出の準備を進めていることを明らかにした。現在も、日々新しいコンテンツの開発が進められており、世界各国のユーザーに向けたサービスを提供していくことを約束した。また、後夜祭では、第3回大会を東京で開催することも正式アナウンスされた。運営7年目を迎えた国内でも指折りの長寿タイトルだが、昨年よりスタートした世界大会を軸に展開していくストラテジーは成功したといっても過言ではないだろう。
■ ハイレベルな試合を通じて「ゲットアンプド」の楽しさを実証
グループ予選から決勝まで可能な限り観戦したが、いわゆるe-Sportsの常連タイトルである「Starcraft」、「Age of Empires」といったリアルタイムストラテジーのように、プレーヤーの決断により、突如として均衡が崩れる瞬間をじっと見守るタイプでもなく、「Counter-Strike」を筆頭としたオンラインFPSのように、チームプレイの優美さを堪能する感じでもない。「ゲットアンプド」独特のおもしろさが堪能できた。 強いて言えば、プロレスのタッグマッチの華やかさと、総合格闘技の緊迫感を兼ね合わせたような感じだろうか。休んでいるヒマは一瞬たりとも無く、自らが得意とするテクニックの組み合わせを正確に繰り返していく。平素と変わらず平常心で戦い抜けた選手が勝つといったゲームだ。シンプルだけに奥が深く、見た目と内容が一致していて、観戦にも向いている。非常に大会向きのゲームだ。 特におもしろく観戦できたのは個人戦で、「GWF2008」の個人戦は1対1ではなく、4人ないし3人のデスマッチで行なわれる。その成績上位者が上位グループに進出するというレギュレーションになっている。この一風変わった試合形式が、試合の内容に妙味を与えていた。 具体的には「強者補正」、「有力地域補正」のような目に見えない力が働き、強者を楽に勝たせてくれない環境が生まれていた。たとえば、前回優勝の韓国、準優勝の中国、そして開発国として最善の環境でプレイできる立場にある日本などは、1on1の体勢に持ち込まれたら勝てないため、先に片付けておきたい相手となる。結果としてこれらの国は、暗黙の了解のうちに、他の地域の選手たちから一斉に集中攻撃を食らうことを覚悟しなければならない。 さらに強者を不利にする要素が、「敵から逃げるとイエローカード」という独自ルールだ。「ゲットアンプド」では、敵から逃げることは比較的容易に行なえるが、それでは試合がおもしろくならないため、相手が変身中など特定の条件を除いて、敵から逃げることを禁じている。敵から逃げた、あるいは積極的に戦わなかったと判定された場合、イエローカードとなり、1位か2位時に獲得できるポイントから減点されてしまう。 実際にrepi選手もそのルールの罠にハマり、グループ予選1試合目に、パブリッシャーが同じGamaniaということで半ば同盟状態となっている香港と台湾を相手に、集中攻撃を避けようとしたらイエローカードの判定を貰ってしまった。2人の敵と相手するためには、2人が同時に攻めてくる状況を避ける必要がある。避けることそのものを禁ずるのは、少々無理があり、第3回大会では実状に即したものになることを期待したい。 そうした環境下でも個人戦で見事勝ち抜いたrepi選手の奮闘は実に見事で、決勝で韓国を破り優勝したのは決して運や偶然ではなかったということがよくわかる。repi選手は、今後ディフェンディングチャンピオンとして「ゲットアンプド」のオンライン世界に君臨することになるが、王座は守れるだろうか。引き続き来年の東京大会での活躍にも期待したい。
□サイバーステップのホームページ (2008年8月4日) [Reported by 中村聖司]
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