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会場:Porte de Versailles Exhibition Center
「Starcraft II」は、1998年に発売されたRTSゲーム「Starcraft」の最新作だ。昨年のWWI2007で発表され、現在、韓国のプロゲーマー等の意見を取り入れながら慎重に開発が進められている。登場種族は前作から変わらず3種類だが、フル3D化や様々な新ユニットの追加がされ、見た目の印象は大幅に異なる。 WWI2008での出展は、先日韓国で行なわれた「『Starcraft II』 Zerg種族の公開及び試演会」に続き、2度目となる。WWI2008バージョンではこれまで公開されてきたバージョンとは異なり、経済面での変化が特徴的なバージョンだった。採集ユニットによる資源採集量が減少し、経済的な面での変更が顕著に出てシビアなバランスになっていた。とりわけ序盤の戦い方は劇的に変化している。 役者はほぼ出そろった感のある本作だが、今後はこうした細かいバランス周りの調整の段階に入ってきたと考えてよい。e-Sportsを強く意識している本作だけにBlizardのバランス調整には高い期待感を持っている。
種族に関しては、残る未知の種族Terranを重点的にプレイしてきた。Terranは前作では堅実な戦略が特徴的な種族であったが、今回も防御を中心にしたテックツリーと長射程ユニットがポイントになりそうだ。早速プレイしてみた感想と各ユニットの特徴に触れていきたい。
■ 資源確保はよりシビアに。資源採集の変化はゲーム展開にどう響くのか?!
少々マニアックになるが具体的に説明すると、前作のように、生産ユニット制限値を増加してくれる「Supply Depot」は、前作では「資源採集ユニットSCVの8番目を生産した直後」に建設するのがセオリーだったが、現バージョンでは資源の回収が追いつかず、「9番目の生産直後」まで待たなければならない。かなり遅い初動展開になっている。 これは何が影響しているかというと、単純に資源採集ユニットの時間当たりの採集量が低下しているのだ。前作では1機1回あたりミネラル3、WWI2008バージョンでは5で、1回当たりの採集量は増えているが、資源を採集するまでの時間が長くなっている。 初期資源採集用ユニットは、「Starcraft」の4機に対して、「Starcraft II」では6機と、2機増えているが、時間当たりの獲得量が少なくなったことにより、ゲーム全体の戦略は大きく変化している。前作に比べると、現バージョンでは明らかに序盤の展開が遅くなった印象を受ける。 その一方で、もう1つの資源であるガスは、スタート地点に2カ所のガス採集エリアが配置されるようになった。このため、序盤から2カ所同時によるガス採集が可能になっている。 ただ、ご存じのように「Starcraft」ではガスの採掘量には限界がある。ガス残量がなくなったからといって、採集が不可能になるわけではないが、採集できる量が1回につき6から2に落ちることになる。このガス残量は、前作では5,000ぐらいが普通だったが、現バージョンでは一気に1,000にされた。そのかわり、ガス採集建物にはガス再充填の機能が追加されていた。ガスの残量が0になると再充填することによって、ガス残量を400に増やすことができる。 こうしたリソース収集まわりのルール変更のため、「Starcraft II」では、ガス確保のために、プレイ中にガスの残存も計算しながら、こまめに再充電していくという、丁寧なケアが要求されるようになっている。言い換えれば、資源のコントロールがより難しくなっている。この点が、マルチプレイにどのような結果になるか気になるところだ。 現時点で言えそうなのは、「Starcraft II」では、前作より早い第2、第3の基地建設が求められるだけでなく、敵勢力の基地破壊がより効率的な作戦になることを示している。前作は妨害を受けても、1つの基地で資源を採集することは比較的容易だったが、今作ではそうはいかない。現バージョンで2つの資源のいずれかが断たれると即座に、中・後盤ユニットの生産に大きく支障を来たすことになるだろう。
これらのバランス調整により「SC2」は単純なユニットのぶつかり合いより、資源採集妨害工作などの戦略がより重要となった。前回のイベントのときに比べると戦略の組み方も大分変化したものになっており、WWI2008バージョンのバランも選択肢の1つにすぎないのかもしれないが、本タイトルの奥深さを実感する事になった。次期e-Sports看板タイトルの呼び声も高いだけに細かいバランス調整が今後も重ねられていく事だろう。
■ 「Starcraft II」の“Terran”は、なんと「Medic」が不在! 序盤をどう切り抜けるかがポイント
Terranファンにとって非常に厳しい変更点は、優秀なヒーラーユニットである「Medic」が登場しないことだ。前作では自身のHPを削って一定時間攻撃速度を上げる「Stim Pack」を駆使する歩兵ユニット「Marine」と、治癒ユニット「Medic」のコラボレーションが多く用いられ、特に「Zerg」相手では序盤の立ち回りのセオリーだった。 しかし、「Starcraft II」では治癒能力を持ったユニットは、飛行ユニットの「Medivac Dropship」に移されている。生産基地も「Starport」に変わり、「Marine」と同一拠点で生産できなくなった。少なくとも序盤ではユニットの治癒が必要な戦略は使えなくなってしまった。 これに代わる序盤のユニットの組み合わせは「Marine」と、敵の移動速度を低下させる能力をもった「Marauder」のコンビだろう。「Marauder」が移動速度を低下させた敵を「Marine」の射撃で処理する。この組み合わせはヒットアンドアウェイでの細かいコントロールが不可欠で、よりテクニックが必要になった。 「Marauder」のように今回新たに登場したユニットは、どちらかと言えばクセのあるユニットが多い。この手のユニットは、単体では使用せず、何種類かのユニットと組み合わせて戦線に投入する形となる。 例えば、Terranの新ユニット「Thor」は、攻撃力は地上最強となっているが、その代わりに攻撃速度や移動速度が遅く、攻撃速度の速い敵に囲まれるとすぐ倒されてしまう。「Thor」が囲まれないように保護するために「Marine」などの小型ユニットとの組み合わせが必要となる。さらに「Zerg」の「Ultralisk」や「Protoss」の「Archon」といった他種族のこれに相当する強力なユニットは、同時に複数の敵を攻撃する能力を持っているが、「Thor」はそれを備えていない。 「Thor」は単なる愚鈍な使えないユニットなのかというとそうではなく、「Thor」を主軸に、前作「Vulture」に相当する「Jackal」と「Siege Tank」の組み合わせは凄まじく堅い守りを実現する。「Jackal」の移動速度は「Vulture」と同等なものの、攻撃能力が前作「Fire Bat」のようにエフェックトがあたるところ全体にダメージを与えるようになっているため、「Zergling」などの小型ユニットを一気に倒すことができる。さらに「Thor」は「Goliath」のように対空戦用の遠距離ミサイルを積んでおり、飛行ユニットに対しても柔軟に対応できた。どちらかというと防衛用のユニットと言えるのかもしれない。 「Siege Tank」の攻撃が効かない「Immortal」などが登場すると、「Marine」や段差などの地形に関係なく移動できる「Reaper」を投入することで対応できた。「Siege Tank」の対応策として登場したユニットにも戦場の状況さえ読み取ることができれば、対応できるわけだ。 ちなみに「Reaper」は、敵基地にも地形に関係なく侵入することができ、さらに移動速度も速いために、敵の資源採集ユニットの撃破を目的とした内政破壊行為に非常に相性の良いユニットだ。「Siege Tank」による防御体制を敷きながら、「Reaper」で相手の内政を破壊する。「Starcraft II」におけるTerranの基本セオリーは、このような感じになりそうだ。 前作では内政破壊作戦は、輸送ユニットを利用することで、3種族で行なうことができたが、今回Terranは機動性の高い「Reaper」を得たことで、よりやりやすくなったといっていいだろう。 しかし、単純にユニットの性能、組み合わせを見る限りでは未だ「Protoss」が強い感じだった。まず、ユニット単体の性能が明らかに高い。この点では「Terran」や「Zerg」は大きく見劣りする。しかし、「Starcraft」ではユニットの強さが全てではなく、状況によって対応する戦略、戦術が勝負のカギとなる。Blizzardはそのあたりでの可能性を広げるためのバランス調整を行なっているようだ。
Blizzardによると、「Starcraft II」のマルチプレイモードの開発はほぼ完成しており、シングルプレイのキャンペーンモードの開発に注力しているとの事だ。「Starcraft II」のメインストーリーも気になるところである。もっとも、今後、充実したキャンペーンモードとBattle.net 2.0の開発が進められることを考えると、発売まではまだしばらく掛かりそうな印象だ。更なる続報に期待したい。
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□Blizzard Entertainmentのホームページ (2008年7月3日) [Reported by Dong Soo “Luie” Han / 三浦尋一]
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