|
本サーバーの開設により、Gravityは、「RO」の韓国サービスにおいて、既存の月額22,000ウォン(約2,200円)の月額制と、基本料金無料+アイテム課金制のビジネスを平行して行なうことになった。長く運営されてきたタイトルのビジネスモデルの移行方法の試金石として動向が注目される。 同様のサービスは、すでに2007年1月より中国でスタートしており、韓国が初というわけではない。現在までに12か国(台湾、中国、フィリピン、ドイツ、タイ、インドネシア、マレーシア、シンガポール、ブラジル、ロシア、フランス、ベルギー)で実施されている。日本をのぞくアジアでは主流となっているアイテム課金1本化の流れがついに「本丸」の韓国にも迫った形だ。 「バフォメット」サーバーの主な特徴は、既存サーバーと比較して経験値とドロップ率が半減、倉庫が300個までの制限(韓国の月額制サーバーでは600個)、空間移動や倉庫利用等のカプラを利用したサービスや消費アイテムの価格が上昇しており、将来的にはドロップアイテムや一部アイテムの削除と追加が行なわれていくことになるという。 料金体系的にはすべての課金アイテムが2割程度値上がりしているものの、基本料金無料の効果は高く、サーバースタート直後から同時接続6,000人前後のユーザーでごったがえしていた。人気の狩り場や首都「プロンテラ」では、キャパシティオーバーの様相さえ呈していた。
一方で、提供されるマップやクエストなどのコンテンツは定額制サーバーと同じ状態で運営されており、月額料金に加えて課金アイテムをたくさん購入していたヘビーユーザーを中心に、「移住」への動きも感じ取れる。サーバー内の様子と合わせてご覧いただきたい。 ■ プレーヤーでごったがえすプロンテラ。「ハエの羽」などの消費アイテムの使用がシビアに
首都「プロンテラ」の街も非常に活況を呈しており、商人に転職したプレーヤーたちが早速露店で回復剤を売りはじめるなどにぎやかな印象だ。南西の広場では「アコライト」のプレーヤーにより続々と「ワープポータル」が開かれており、各狩場に向けて多くのプレーヤーが旅立っていた。 特に驚いたのが「初心者修練場」で、名前もほとんど「捨てキャラ」に近いキャラクタが雲霞のごとくポータルに吸い込まれていっていたのが印象的だった。最初は不正ユーザーがはびこっているのではないかと考えたが、街に出てみるとそうではないことに気づく。 いざプレイしてモンスターと戦ってみると、経験値50%、アイテムドロップ率50%というのは非常にシビアだ。街の近くにいる「ポリン」や「ルナティック」といった最弱クラスのモンスターを倒してもなかなかレベルが上がらない上に収集品のドロップも少なく、回復剤などの消費アイテムを買うだけの稼ぎがとても追いつかないのだ。 そのため、キャラクタを作っては消し、作っては消しということを繰り返して、「初心者修練場」でクエストを一通りこなした報酬として支給される「初心者用赤ポーション」300個などの消費アイテムを目当てに引っ切り無しにプレーヤーが訪れるという状況になっていた。 回復用のポーションを買い足すこともままならないため、ソロでの「暮らし」はかなり苦しい印象を受けた。筆者としては近接職で回復剤を大量に買い込んでショートカットを連打しながらポーションを多用するといった本作独特のプレイスタイルが気に入っていたが、「バフォメット」サーバーでは、“稼ぎ”の悪さからそういった荒っぽいスタイルは通用しない。本サーバーではパーティープレイの中でうまく補い合っていくスタイルを楽しんでいくことになるだろう。 筆者は既存の「RO」ユーザーの1人として総評するなら、獲得経験値が半減したことでコンテンツが倍になったというよりも、真新しさがない分、ゲームが冗長になったと感じる部分の方が多かった。 しかし、韓国ユーザーの多くは、有料サーバーより無料サーバーの方を選んだ。その理由は、やはり基本プレイ料金が無料であるという点と、経験値50%の状況下でも、後述する「傭兵システム」で初級・中級のレベル上げを短縮する道が残されていること、Webサイト等を通じゲーム内通貨のリアルマネートレード(RMT)で他のサーバーと変わらず売買が行なわれている点が上げられる。 この点について、5月30日20時30分現在の有料サーバーと無料のサーバーのユーザー比率を見てみると、成人専用のSaraサーバーが780人、Chaos+Odinサーバー315人、Loki+Baldurサーバー188人、Iris+Thorサーバー159人、Lydia+Fenrirサーバー185人で、有料5サーバー合わせて約1,600人に対し、「バフォメット」サーバーは約5,000人となっている。今年3月の時点では同時接続者が有料5サーバー合わせて約5,000人となっており、単純計算しても実に既存ユーザーの約7割が「バフォメット」サーバーに移行したことになる。
現在の「バフォメット」サーバーはこうした集客要素を清濁併呑しており、サーバーの不安定さや運営面で気がかりな点を残しつつも、韓国「RO」の集大成的な位置づけで既存ユーザー・新規ユーザー双方にメリットのある発展が可能だろう。
■ サーバーの安定化は至上命題。まさかのDupe発生も説明不足
特に5月25日早朝には「オープンしたサーバーに想定を超える多数のユーザーが訪れたために起きたサーバー負荷」が原因で、一定条件下でアイテムが無限増殖できたり消滅したりしてしまうというクリティカルなバグが発生した。 このバグの発生を境に、韓国大手のRMTサイトでは取引されるゲーム内通貨の相場が30%以上下落し、「バフォメット」サーバーに1,000万ゼニー以上の在庫を持つ販売会社も登場した。「プロンテラ」でも露店を開くユーザーが大幅に増加するなどサーバー内外から見て「バフォメット」サーバー内に存在する通貨とモノは確実に増えた印象だ。 この事態に際し、サーバーのロールバックを行なわず、個々のバグ利用を行なったユーザーのアカウントをブロックすることで事態の収拾を図った。25日中に行なわれたサーバーメンテナンスでDupeが可能な状態が是正され、以降不正を行なったユーザーのブロックを始めているが30日現在で完了の報告は公示されていない。 この件について、Gravityに問い合わせしたところ「バグが発生した当日にメンテナンスを行なってログ解析をした結果、多数のユーザーに影響の出るロールバックよりもアカウントブロックによる個別対処により解決できる問題だと判断した」とのことで、「運営側の手間が少ないながらも多くのユーザーに影響の出るロールバックより、運営側の手間はかかっても個別対処を行なうことで、正常にプレイしていたユーザーのデメリットを回避する方法を選択した」とのことだ。 Gravityの説明の通りDupeによるゲーム内経済への影響は軽微だったのかもしれない。実際RMTサイトでの取引状況を見る限りでは売買される取引の総量自体に大幅な変化は無い。変化があったのは、「バフォメット」サーバーのRMTのレートのみだ。現状では、この事態に対して、どれほどのゼニーがゲーム内に生まれ個別対処でどれほどのゼニーが回収できたのかはわからないままだ。
Gravityの看板タイトルとして、長年の開発運営経験があるにもかかわらず、まだこうした事態が起きてしまうという「RO」の潜在的な脆弱性もさることながら、不正の影響下に置かれたままだというユーザーの不安感や不公平感を払拭できないでいる。あらゆる目的のユーザーにとってモチベーション低下の要因となるため、トラブルへの明快な対処と説明が求められるところだ。
■ 人気課金アイテムは「ミミック」と「戦闘教範」。日本未実装の傭兵アイテムを試す!
日本には未実装の傭兵アイテムは、モンスターを傭兵として雇い、プレーヤーの代わりに敵と戦ってもらえることのできるアイテムだ。ホムンクルスのようにユーザーがマクロを組んだり自律して攻撃こそしないが、ユーザーがターゲットを指定してやることで敵を攻撃したり、主人のキャラクタや自身に対するアクティブモンスターからの攻撃に対して反撃を行なう。 傭兵アイテムは使用後30分経つか、主人となるキャラクタやペット自身が死んでしまうと消えてしまうが、「ミミック」の専用スキル「バッシュ」で、通常モンスターに対して1,000以上のダメージを出せるため、コアユーザーになるほど初期の頃からお供にしている傾向が強かった。 傭兵は「ディスガイズ」、「ミミック」、「アリス」の3種類が用意されており、価格は「ミミック」と「ディスガイズ」が5個で1,800ウォン(月額サーバーでは5個で1,500ウォン)で、「アリス」が2,400ウォン(同2,000ウォン)という価格設定だ。ハイエンドのユーザーたちはノービスの段階から傭兵アイテムを使いこなし、おもにアインブロックフィールドで「メタリン」を狩って1次転職レベルまで上げ、転職後「氷の洞窟」に行くというのがセオリーとなっていた。 「氷の洞窟」は入り口までワープポータルで移動することができるのが最大のメリットで、「氷の洞窟」1Fに数多く生息する「シロマ」をメインに、ひたすら「ミミック」に戦ってもらうという狩り方が主流となっていた。 モンスターとの戦闘の主体が傭兵の「ミミック」であり、装備やステータスなどキャラクタ自身については細かいことを気にする必要がないため、ステータスに関わらず様々な職業のキャラクタのレベルあげに使われていた。2次転職までにかかる時間は、経験値が50%でありながらも「戦闘教範」ありで「ミミック10匹(傭兵アイテム10個)程度が相場」と言われており、筆者自身が同様の狩り方を試した限りでもレベル10台だったキャラクタが数匹でレベル30台にあがるなどその効果を実感できた。
繰り返すが、傭兵アイテムは日本サービスには未導入の有料アイテムだ。今回、初めて体験してみて、根本的な疑問として「傭兵に殴ってもらってキャラクタを成長させて何が面白いのか?」という気がした。もちろん、傭兵アイテムを使った効率最優先プレイの一方で、低レベルのうちからパーティーを募ってコツコツと低級モンスターを狩っていくようなオーソドックスなプレイも広く支持されている。長年かけて重厚長大なコンテンツに成長した「RO」の世界で、プレーヤーが目的やプレイスタイルに応じた楽しみ方ができていることを実感できたのは収穫だった。
■ 果たしてビジネスモデルの混在は有効か? 経済のみのバランス調整に早くも「歪み」
消費アイテムなどのゲーム内通貨でNPCから購入可能なアイテムはポーション類を除くと一部が大幅に値上がりしている。スキルの触媒となる「ブルージェムストーン」は600ゼニーから2,500ゼニーへ、「ハエの羽」は60ゼニーから250ゼニーへととんでもなく値上がりしており、モンスターからのドロップ率半減を考慮すると従来のように気軽にこうしたアイテムを使用するのは難しい状況だ。 その一方で、ユーザーのしたたかさも見ることができた。カプラサービスの空間移動料金がプロンテラからモロクにいくだけで2,400ゼニーと倍に値上がりしており、こちらも旅に必須の機能を利用する際のハードルが高くなっているが、ユーザーの間でさっそく“抜け道”が考案され、幅広く利用されている。 具体的には、先述したゲーム開始初期の「初心者修練場」のクエスト過程において1回に5個「空間移動無料券」を獲得できる。カプラサービスの空間移動サービスを無料で利用できるアイテムが「初心者用ポーション」の副産物として大量量産されている。ユーザーは、これらを1枚数100ゼニーで市場に流し、ユーザーはこれを利用して空間移動を行なう。結果として高値に設定した正規のカプラサービスの値段では誰も利用しないという事態になっている。 初動ではトラブルもあった「バフォメット」サーバーだが、クリティカルなバグは一応解決し、その後は安定した運営を行なっている。現在の「バフォメット」サーバーの同時接続者数は5,000人前後で、3桁はおろか100人台が目立つ韓国サービスにおいては、ダントツの数字であり、Gravityのチャレンジはひとまず成功したと言えるだろう。今後は、セキュアで公平感のある環境でゲームを楽しめるというオンラインゲームの基本に立ち返り、クエストの報酬の見直やワールド全体を見渡したゲームバランスの調整など、“アイテム課金サーバー”としての新たなビジネススキームの構築に期待したい。
(C) 2002-2008 Gravity Co., Ltd. & Lee Myoungjin. All Rights Reserved.
□Gravityのホームページ(韓国語、日本語、英語) (2008年5月30日) [Reported by Dong Soo “Luie” Han / 三浦尋一]
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c)2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|