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【連載第22回】大人による大人のための洋ゲー連載
■Game Dudeの「大人のための海外ゲームレポート」■
MLBゲームの決定版がプレイステーション 3に登場!!
Road to the Showで華麗な選手人生を演じよう!
MLB '08 The Show |
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'08シーズン開幕から1カ月あまりが経過し、年々日本人選手が活躍する機会が広がっているメジャーリーグベースボール(MLB)。彼らの活躍をお茶の間で応援する習慣はすっかり定着しているが、翻って我らゲーム業界に目を向けてみると、「MLB」はゲームの素材として依然としてニッチの域を脱していない。そんな中、数少ない日本のMLBゲームファンに福音となりそうなタイトルが登場した。それが今回紹介する「MLB '08: The Show(以下MLB 08)」だ。
フィラデルフィア・フィリーズのRyan Howardをカバーに採用した「MLB 08」は、PS3版を主軸に、様々なゲームモードを実装し、究極のMLBゲームとしての進化を着実に進めている。より強化されたオンラインモードや、MLB選手としての成功を目指すRoad to the Showモード、テレビ中継をみているような演出の細かさなど、野球ゲームファンであれば要注目の一本だ。
【お断り】 |
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当連載でご紹介したゲームは日本国内で流通しているハードウェアでは動作を保証するものではありません。編集部では海外版ハードウェア・ソフトウェアを輸入して紹介しています
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■ 名作ドライビングゲーム「MSR」から8年、懐かしいタッグが実現!
米国のスポーツゲーム市場を巡る戦いは、Electronic Arts(EA)が展開するEA SportsとTake-Two Interactiveが展開する2K Sportsとの熾烈な争いになっていることは、海外ゲームファンの読者であればご存じだろう。両社が市場シェアだけではなくプロスポーツリーグの独占契約も血眼になって争奪戦を繰り広げたのも記憶に新しい。
MLBの独占契約は2005年に2K Sportsが獲得しており、この契約によってEAはMLB物の野球ゲームを作ることができなくなり、同社は「MVP Baseball」フランチャイズを事実上中止している。ただ、この独占契約の対象となるのはサードパーティーのみで、ファーストパーティーであるSCEやマイクロソフトは含まれない。
今回ご紹介する「MLB」シリーズは1999年からプレイステーションプラットフォームで展開してきたフランチャイズで、前述の権利争いのゴタゴタもあり、現在市場で出回っているMLBゲームの中で最も長くシリーズを重ねているタイトルとして認知されている。
開発はSCEAの開発スタジオだった989 Studios(MMORPGとして一世を風靡した「EverQuest」の開発を行なったことで名高い)が担当している。なお、現在は他のスタジオと整理統合されSCE Studio San Diegoとして活動しており、「MLB 06」から現在の体制で活躍中だ。
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各球場の再現度は高い |
様々なカメラ視点で試合展開を楽しめる |
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日本人選手も、もちろん登場する |
演出面も強化が図られている |
■ オンラインまわりの機能が特に充実!2008年度版の見所は?
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リプレイを使えば松坂選手のアップも簡単に拝める |
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好守備の瞬間も様々な角度からじっくり鑑賞可能
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「MLB 08」は前作までの基本的なゲームデザインを踏襲しつつ、主にPS3向けに多数の新しい要素を投入している。その中でも目立つのがRoad to the Showなどのキャリアモードにおけるキャリアアップとゴールの追加、バッティングシステム、リプレイの強化などのインゲームまわりと、オンライン機能が挙げられる。
Road to the Showは「MLB 08」でも特にオススメしたいゲームモードなので後ほど詳しく紹介するとして、プレイしてみて特に秀逸だと感じられるのは、リプレイ機能まわりだろう。PS3版に限りReplay Vaultと呼ばれる機能が追加されている。今までのスポーツゲームが持っていたリプレイと言えば、大半が直前の状況にのみ対応したリプレイだったが、「MLB O8」のReplay Vaultは、打者ごとの対決シーンや、見せ場など、その試合で展開されたシチュエーションごとにリプレイが項目分けがされ、鑑賞することが可能になった。
Replay Vaultの実装によって、リプレイシーンを一試合通してではなく、観たいシチュエーション単位で鑑賞・保存しておけるのは、なかなか有意義な試みで、なおかつダラダラと観なくてすむスマートさも兼ね備えている。ハードディスク標準装備により容量的な問題にあまり束縛されない、PS3ならではの贅沢な機能と言えるだろう。
登録選手のデータは米国の著名なスポーツカードメーカー「アッパーデック」とのタイアップにより同社のロゴ入りカード化されており、各選手のデータ把握がしやすい。プレーヤーが自作したキャラクタや一部選手はMLB登録の写真ではなく、ゲーム上のキャラクタで表示される。スポーツカードをゲームに取り入れたのは珍しいことではないが、MLBファンのツボをついたうまい要素だ。
オンラインは「SportsConnect」と呼ばれる独自のサービスが提供されており、プレーヤー同士のマッチングにとどまらず、最新ロスター(登録選手)の配信、ランキング、現在進んでいる実際のMLB各試合の最新情報、掲示板、投票などのコミュニティ機能など、1タイトルとしては過剰ではないかと思うほど、様々な機能が用意されている。これらはもちろん全て無料で利用することが可能だ。
現時点で確認した限りでは、オンラインプレーヤー人口が飛びぬけて大きい訳ではないが、対戦するには困らない程度のプレーヤーが毎日サーバ上で盛り上がっている。PLAYSTATION Networkのアカウントで登録されている国によって専用のロビーが用意されているため、もっとも人が集まるUS(米国)ロビーにアクセスするには、米国アカウントを作っておく必要がある。
登録選手のロスターは2008年シーズン開幕直前のデータとなっている。開幕以降はオンライン上で最新データが配信されるので、適宜更新すると良いだろう。デフォルトのデータではカブスに福留孝介選手は登録されていないが、最新のロスターをダウンロードすればきちんと反映される。本作ではMLB全チームと下部組織の各マイナーチームの一部が登録されており、マイナー球団のサポートでは、AAAからルーキーリーグまでをフォローする競合タイトル「MLB 2K8」には及ばない。
オンラインから適用されている選手の場合は、MLBに登録された選手の顔写真は適用されず、キャラクタデータからおこしたものになっているのがやや残念ではあるが、ロスターのアップデートは迅速で、シーズンを通して各チーム最新のラインナップでゲームを楽しむことができる。
イチロー、松井秀喜、松井稼頭央、松坂大輔といった各日本人選手達も、各選手ともに顔のつくりはなかなか似ている。特にイチローのバッティングフォームと松坂のピッチングフォームは本人のものがゲーム中でも再現されており、両選手のMLBでの著名度合いもわかり、日本人ゲーマーには嬉しい要素だ。
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マリナーズの城島選手。眉毛のあたりが似てる!? |
この角度からだと松井選手の雰囲気がよく出ている |
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イチロー選手ももちろん登場する |
松井稼頭央選手はいまひとつ特徴が似ていないか? |
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SportsConnectには様々な機能が用意されている |
MLBの最新ニュースも配信、奇しくも野茂選手が解雇された日だった |
■ メジャーリーガーを目指せ!Road to the Show
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契約時には契約金の交渉も一応できる
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キャリアを積んで自分の能力をどんどん強化していこう
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「MLB 08」には7つものゲームモードが用意されている。クイックゲームやエキシビションなどのオーソドックスな試合を楽しむものから、1シーズンを通して遊べるフランチャイズやシーズンといったモードは、他のタイトルにもある定番なゲーム内容だが、本作で特に注目したいのは、前作から追加されたRoad to the Showモードだ。
Road to the Showモードを簡潔にまとめると、プレーヤー自身がメジャーリーガーになって選手としての高みを目指すという内容で、日本のゲームで言うとコナミ「実況パワフルプロ野球」シリーズのサクセスモードを想像してもらえればいいだろう。ただし、サクセスモードほどストーリー性がある訳ではない。
プレーヤーは最初に所属チームの選択とキャラクタメイキングを行なう。体の各パーツのカスタマイズはスポーツゲームにしてはかなり細部まで手を入れることが可能で、ゲームの中とは言え、自分の分身がメジャーリーグで活躍する姿を想像すると、自然と力を入れてメイキングを行なってしまうというもの。各ポジションに必要なスキルを適切に振ることも忘れずにしっかりと自分の分身を作り込みたい。
自らの分身を納得いくまで作り込んだら、いざゲーム開始。まずはスプリングシーズンが開幕する。4月のシーズン開幕までの1カ月間、メジャー球団で試合に出場することになるが、ここがまず最初の試練となる。投手は特に重要で、限られた登板チャンスでいかに実力を見せることができるか、キャラクタ能力とプレーヤーの巧さが問われる。
スプリングシーズンをしのいでチーム側から「お前は使える!!」と判断されると、1年契約でマイナーリーグから新たなスタートを切ることになる。1年目の新人選手であるプレーヤーが、いきなりメジャーからスタート、ということは何度かプレイしてみた感触ではほとんどなさそうだ。
マイナーリーグで良い成績を上げていれば、シーズン途中でメジャーへ格上げ登録もかなうかもしれないが、そこまでの道のりは非常に厳しい。まず与えられる出場機会が毎回ある訳ではない。投手は特に登板機会が絞られる。先発登板であれば、ピッチング内容次第で5回あたりまでは投げられるかもしれないが、中継ぎや抑えで登板する場合、1発ヘマをしたら即交代、ということもありえる。
この監督やゼネラルマネージャーに常に注視されているようなプレイスタイルは、他の野球ゲームではなかなか味わえない「MLB 08」独特の緊迫感をプレーヤーにもたらしてくれる。「うまく投げなきゃ!」という切羽詰った感じ、ピッチングミスで出塁させてしまった時の衝撃、本塁打を打たれたり自分がエラーをした時のやっちまった感は、チームの勝敗はおろか、自分の将来すら左右するため、毎試合がドキドキものの緊迫感を味わえる。
バッティング面でもバッティングコーチが重要な局面で出してくるサインを読んで的確な行動が取れるかなど、毎試合の様々な局面でゴールが設けられており、このゴールを達成するとポイントを得ることができる。得たポイントは試合終了後、トレーニングに使うことが可能で、バッティング・ピッチングのスキルや基礎体力のスキルを上げたり、新しい球種を学ぶことに使うことができるので、必要に応じてポイントを振っていきたい。
プレーヤーキャラクタは、的確にゴールを達成し続ければ必然的に成績が上がり、自分の能力をアップし、やがてメジャーリーガーへの切符をつかむことができるが、ダメならいつまでもマイナーから這い上がることができない。この実際と変わらない厳しさがゲームとしての面白さを大きく引き出している。特にキャラクタ能力以外にプレーヤーのウマさも問われるという、ゲームとして重要な点も押さえられており、上首尾でゲームを終えた際の満足度は非常に高い。「メジャーで活躍するまでやり続けてやろうじゃないか!」という気にさせてくれるゲームモードなのだ。
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コーチのサインが出たら指示に従った方が良い |
1球ごとが緊張の連続だ |
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出塁してもプレーヤーの判断が求められる |
イチローのバッティングフォームを自キャラで使うことも可能 |
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先発登板できる日を目指してひたすら投げ込むべし |
ストライクを取っただけでも達成感がある |
■ マネージャーモードで監督気分も味わえる!
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制限時間内に的確な指示を出そう
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各種操作はメニュー化されているのでわかりやすい
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Road to the Show以外でオススメのゲームモードとしては、マネージャーモードを挙げておきたい。このモードは読んで字のごとく、球団監督となって試合を勝利に導くもので、選手視点でプレイではなく、あくまで監督視点で選手に指示を出していく点がユニークで、プレーヤー側にもうひとつの楽しみを与えてくれる。ちなみにシーズンを通してではなく、エキシビジョンと同じゲームモードで、1試合単独でのプレイとなる。
試合展開はスクリーンショットを見ていただくとわかりやすいが、制限時間内に選手へ指示を出すか決めて、攻撃時にはバッターに、守備時にはピッチャーにそれぞれ指示を与え、出塁している選手には盗塁の指示もできるので、状況に応じてプレーヤーの素早い判断が求められるところが、通常の試合展開とは異なり面白い。
他のライバルタイトルでも導入されているが、ピッチャーの調子が良くないな? と思った際には、マウンドに上がってピッチャーの調子を確認して続投させるか交代させるかを判断したり、交代要員をブルペンに出して肩を温めておく、といった実際の試合で展開されている要素もキチンとおさえているところが野球ファンにはたまらない。
ブルペンには複数人控えさせておけるので、ピッチャーを継投させて敵の攻撃を断つといった戦略も使うことができるだろう。視点もホームの球審のさらに後ろから球場全体を見渡せる視点が採用されており、左右に視点を変えることも可能になっているため、試合の進展を見つめる監督気分を手軽にゲーム上で味わえる。ちょっと普通の試合に飽きたら試してみて欲しいゲームモードだ。
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控えの投手はブルペンで肩を温めさせておこう |
マウンド上の様子もリアルに再現している |
■ MLBゲームを心ゆくまで楽しむには「MLB 08」を選択するべし
「MLB 08」は、現在遊べるMLBゲームの中では最高水準にあるタイトルで、プレイステーションプラットフォームでMLBゲームを買うならこのタイトル以外の選択肢は、「ない」と断言したい。PS3とネット接続という環境が揃っていれば、他の競合タイトルを購入する理由が(少なくとも現時点では)見当たらないからだ。
本作で特筆すべきことは、最近のスポーツゲームではわかりにくかった、前作からの「進化」と「改善」が、はっきりとプレーヤー側に理解ができることにある。1年間を通して遊び込むことが多い同ジャンルにおいて、非常に重要なポイントと言えるだろう。
前作より強化されたRoad to the Showモードは下部チームのマイナーリーグをサポートしたことで、更にドラマチックな体験をプレーヤーにもたらしてくれる。初めてのスプリングシーズンを何とかしのいで1年契約をもらった時の安堵感、中継ぎ投手として登板した際の一球の行方が自分の今後を左右する緊張感など、普通の野球ゲームではなかなか味わうことができない。本作ならではのゲームモードは高く評価をしたい。
Road to the Showモードをプレイすると、MLBで活躍している日本人選手達というよりこれは選手全員に言えることだが、いかにプレッシャーとストレスの中で実績を上げようと努力しているか、プロスポーツの厳しさをゲームで多少は垣間見ることができる。まだまだこれから練り込みが必要な部分はあるが、MLBフランチャイズの実質上のメインモードとして本作を単なる野球ゲーム以上のステージに進化・成長させている。
その他、スポーツゲーム定番のフランチャイズモードを遊び込むも良し、マネージャーモードで監督という立場から好きなチームを優勝に導くも良し、オンラインモードで世界中のプレーヤーと白熱した試合を楽しむのも良しと、ゲームモードの充実ぶりはMLBファン、野球ゲームファンを満足させるのに十分なボリュームを持っている。
唯一難点と感じたのは操作の不統一で、ゲーム本編とセーブ・ロード画面での決定ボタンが×だったり○だったりと、それぞれ異なる設定になっているためややこしい。ローディングもPS3版は一番最初にハードディスクへデータをインストールする割には長く感じられるのも残念だったが、どちらもプレーヤー自身が慣れれば克服できる問題なので、ゲーム全体から見ると瑣末なこととも言えるかもしれない。
PS3版、PSP版は北米のPLAYSTATION Storeにて体験版配布が行なわれているが、極めてオーソドックスなエキシビジョンでの試合が楽しめるだけで、これだけでは「MLB 08」が持つ魅力を感じ取るのは難しい。本作の真髄はあくまでゲーム全体のボリュームと完成度によるもので、一部分を抜き出した状態での評価は難しい。体験版はある程度、参考程度にとどめておいて、自分に向いているようなら製品版を買ってしまうことをオススメしたい。新バージョンが登場する来年の3月まで長く楽しめること間違いなしだ。
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「MLB 08」は野球ゲームとして体験してみたかった要素がほとんど盛り込まれた完成度の高い内容に仕上がっている。来年以降のバージョンで更に完成度が高まるかと思うと今から楽しみになってくる。プレイステーションプラットフォーム限定なのが残念だが、全ての野球ゲームファンに一度体験して欲しいゲームだ
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□「MLB '08 The Show」公式ホームページ(英語)
http://www.us.playstation.com/mlb08/
(2008年5月12日)
[Reported by Game Dude]
当連載でご紹介したゲームは日本国内で流通しているハードウェアでは動作を保証するものではありません。編集部では海外版ハードウェア・ソフトウェアを輸入して紹介しています
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