|
「FF XI」の魅力として欠かせない存在なのが、ストーリー性の高い“ミッション”だ。サンドリア王国、バストゥーク共和国、ウィンダス連邦という三勢力のいわゆる三国ミッションから始まり、これまでの拡張ディスクでもそれぞれに奥深い物語が綴られてきた。その「FF XI」独自の成功の方程式は、「アルタナの神兵」にも受け継がれている。だが、「アルタナの神兵」のミッションはこれまでと少し違った特徴を持っている。それは“ミッションとクエストの融合”だ。 “アルタナの神兵ミッション”は、水晶大戦時代のサンドリア王国、バストゥーク共和国、ウィンダス連邦でそれぞれに展開される“三国連続クエスト”と連動している。これまでミッションとクエストは似て非なるものとして別々に楽しむコンテンツだったが、「アルタナの神兵」では、特定のクエストをこなさなければ、ミッションが進まず、ミッションを進めなければ、新たなクエストが発生しない。ミッションとクエスト両方が合わさって「アルタナの神兵」のストーリーというわけだ。
今回は、ミッションのプロローグシーンと、その後に始まる三国でそれぞれスタートする連続クエストの序盤シーンを紹介していきたい。「アルタナの神兵」では冒険者がそれぞれ1つの国に所属することになるが、この三国連続クエストは所属国に関係なく楽しめる。既に所属している国のストーリーは楽しんだという方も、他国のクエストにぜひチャレンジ頂きたい。
気がつくとそこは見慣れない風景。薄暗く、空は妖霧のような紫色に覆われ、大地はなく、眼下は見渡す限り橙色に染まっている。そこかしこに岩が浮いていて、冒険者はそのひとつ、どこか禍々しさを感じさせる建物がある場所にいた。見上げるとそこには大きな穴があり、穴の中だけは青く光を放っている。 ……ここはいったいどこだろうかと立ちつくしていると、耳慣れない金属質の声らしき音が聞こえてきた。
「……忙しくって 遠くから聞こえてくるのか、途切れ途切れで何を話しているのかははっきりとしない。その女性口調の声は、「アータもそう思うっていうの?」と問いかけたりもする。独り言ではなく何かと会話しているかのようだ。 だが、その姿は見えず。次第に声がはっきりと聞こえてくるようになったと思うと、宙に丸い光が浮かび上がった。それはみるみる間に大きくなり、強い衝撃を発して冒険者の体を外へとはじき飛ばした。空中に投げ出された冒険者は落下し、水に落ちるように消えていった……。 謎に満ちたこのシーンは、「アルタナの神兵」のはじまりを告げる冒頭の出来事だ。最初にジュノ周辺に出現した「禁断の口」を調べると、この不思議な世界で起こる出来事に遭遇する。冒険者の姿が消えたあとに現われた謎の声の主の名は、この時点だとRegal Felineとされている。訳すと、「猫の王」だ。 猫の王と表現される彼女は、長く大きくてとんがっている耳、先が白い尻尾、大きな眼、頭には小さな王冠のようなモノを乗せていて、背にはマントを纏っている。外観も非常に個性的だが、彼女の声は金属質に聞こえていたという。それともそう表現するほかない独特の声質なのだろうか。一言に言えば獣人という言葉になるが、獣人という言葉以上にかなり特殊な存在だろう。 気になるのはこの謎の世界が禍々しさを感じさせるところ。妖霧に包まれているような天候のせいもあるかもしれないが、草木も枯れかけているかのようで荒廃している印象を受ける。禁断の口もその外観はおぞましい。だがそれらに対して、彼女自身は敵意を感じさせるような風貌ではない。かわいらしく、女性らしいセクシーさを感じさせる仕草など、邪悪な存在とは思えない。愚痴をこぼすほど忙しく動き回っているようだ。
倒れている冒険者を発見したジュノの部隊は、この時代の人々が口にしている「渦星、現るとき……」という異端の予言の、禁断の口との関連を気にかけている。そして、禁断の口が出現した時期と、獣人の勢力が急に増した時期が重なっていることもまたひっかかるようだ。
この一連の流れの中で冒険者は、気づかぬうちに「純白の羽根」というだいじなものを手に入れていた。白銀色の煌きを放つ羽根で、不思議な力を感じるという。なお、この部隊とのやり取りの後、冒険者は過去世界での冒険を開始することとなる。その模様は本連載の第1回で扱っているので、そちらをご覧頂きたい。
冒険者はある出来事をきっかけに少年騎士団の存在を知り、少年たちを気にかけている従騎士のアルテニアと出会う。アルテニアはいつも無謀な行動をとる少年たちを心配しているが、常に監視しているわけにもいかず、困っていたというわけだ。アルテニアの頼みを聞き、騎士団の仲間に入れてもらうため、冒険者は騎士団のある悪巧みのお手伝いをすることに……。 ちなみにエグセニミルは現代世界でサンドリア王国の英雄として名高い人物。水晶大戦の終戦後も北方のオーク帝国に対して長年侵攻を繰り広げ、凱旋後に国家間競技「コンフリクト」の再開をトリオン公に提言した人物でもある。この時代ではまだ幼く血気盛んな少年だが、ある事情からオークへの敵意が人並み外れて強い。 また、副団長のラーアルは現代ではサンドリア王立騎士団団長を勤めている。この時代では少年らしい活発さもあるが、エグセニミルと比べると冷静で判断力と統率力の片鱗を感じさせる一面もある。現代のラーアルは王立騎士団団長であると共に、邪竜を討ち滅ぼすドラゴンスレイヤーとしても知られている。エグセニミル、ラーアルともに現代では高名な人物のため、このように彼らにまつわる逸話が「アルタナの神兵」以前に登場してきた。それらの中にはかなり気になる内容もあるのだが……。今、ここでは伏せておくことにしよう。 なんとか冒険者を騎士団の一員として認めてもらえたその後、少年たちはアルテニアに内緒で、ある作戦を実行する。それによって少年たちは危機に陥ってしまうのだが……。冒険者はその窮地を救うため、オークと戦闘することになる。攻撃力が高く、カウンターを高頻度で発動するカウンタースタンスも駆使してくるので、ジョブによるがソロで挑むのは少々危険な相手。2~3人程度のパーティで挑めば基本的には安心だ。 ここで登場する獣人ゾッグボッグは、そもそも冒険者と少年騎士団、そしてアルテニアが知り合うきっかけになったオークであり、そして物語の重要な側面を匂わせる存在だ。人間の言葉が非常に巧く、悪党風で品性は無いものの知能の高さは感じさせる。
ゾッグボッグはこのとき初めて会ったはずの人物にある反応を示し、違和感を感じさせる“この時代”という表現をする。それはひとつの答えを想像させるのだが……。少年騎士団、そして冒険者と、幾度も出会うことになりそうなライバルであり、重要な謎を持つ存在だ。
ことの発端は北グスタベルグの入り口で起こる。バストゥークはもう目の前というところで倒れてしまった深手を負った男から、冒険者はある頼まれごとをする。それはバストゥークの商業区にいるエンゲルハルトという人物に、男が持っていた「獣毛の束」を渡して欲しいという簡単なものだ。男はそれだけ伝えると意識を失ってしまっため、詳しい事情がわからない。だが、ただごとではないだろう……。 冒険者は事情のわからぬまま、エンゲルハルトに“後任の者”と勘違いされてしまい“依頼主”が待つ場所へ行くよう指示される。目印の物を持ってきて間接的に“依頼”を受けるという、どこか秘密めいたやり取りできな臭さを感じる。指示された場所へ行くとそこには意外な人物が待っていた。 そこで依頼された内容は、ゲアルバン島にいるゴブリンから、「シフート」という品物を受け取ってくるというものだった。シフートとは、ある目的に使う楽器の総称だ。それは嫌な想像を呼び起こす。成り行きとはいえ冒険者が荷担してしまっているのは、恐ろしい陰謀なのだろうか……? 冒険者は依頼を終えた直後に、ある手紙を手に入れる。手紙には、脅迫じみた文面が書かれていた……。 次に伝えられた冒険者への依頼は、現代にも知られるガルカの長老ウェライと、その同居人であるグンパにかけられたある疑いの証拠を掴むというものだった。“現代”という、水晶大戦時代の人々からすれば未来に生きている冒険者にとって、その依頼の内容と事情は明らかに疑わしいものだ。だが、それを確認してもなお、事態は冒険者の予想とすれ違っていく。 その後事態は急転する。ある人物が大工房内で刺殺されるという事態が起きたためだ。一連の流れの中で、冒険者とも関わりのある人物であり、それに加えて密室で起こった凄惨な事件には謎が多かった。ここまでに積み重ねられた、ある方向性の想像が冒険者の頭に巡る。戦うべき敵は戦争という時代を巻き込む規模ではっきりとしているのに、人々の心は次々に起きる事件にかき乱されていた。 そんな中、冒険者が出会うのは現代に知られる英雄、フォルカーとザイドだ。2人とも現代の物語を楽しんだ人には馴染み深い。だがこの時代の2人はまだ若くミスリル銃士隊の一員。この時代の銃士隊隊長クララに事件の捜査を任されることになる。
バストゥークの物語で軸となるのは、やはり現代では英雄的な存在であるフォルカーとザイドだろう。両者とも、現代ではそれぞれの思いや葛藤を抱え、水晶大戦時代の影響が強く見て取れる人物だ。だが、このとき出会った彼らにはまだそうした姿は見えない。後の現代に伝えられている史実では、彼らは水晶大戦最大の英雄となっている。今後の展開が気になるところだ。
アジドマルジドは何かミスラ傭兵団に伝えたいことがあるようだ。駆けだしていったその後には、黒い羽根が落ちていた。羽根を拾いミスラ傭兵団のところへ行くと、ちょうどオルジリアから長い船旅を経た義勇兵たちがウィンダスに到着したところだった。 義勇兵を出迎えるのは、現代でカザムに住む元族長のロマー・ミーゴ。現代では静かに言葉を交わすのみの彼女だが、この時代ではコブラ傭兵団を率いる戦士で勇猛果敢だ。威勢のいいオルジリアの義勇兵たちとも意気投合する。現代での立ち振る舞いとの差は非常に大きい。彼女にはどんな物語が待っているのだろうか。 そんなミスラたちにアジドマルジドが伝えたのは、巨大なヤグードの姿。そして、カルゴナルゴ城砦に迫っている危機だった。その後、ひとりカルゴナルゴ城砦へ向かったというアジドマルジド、ペリィ・ヴァシャイ率いるアナコンダ傭兵団と、ロマー・ミーゴ率いるコブラ傭兵団。彼らの後を追うように、冒険者もカルゴナルゴ城砦へと向かっていく。 カルゴナルゴ城砦で登場するペリィ・ヴァシャイもまた、現代に登場する英雄だ。現代ウィンダスにおけるミスラ族長であり弓の名手、そして視力を失っていることで知られる。はっきりとした口調で、深淵な言葉を話す彼女の存在感は、他を圧倒するところがある。水晶大戦時代の彼女は視力を失っておらず、物静かながら言葉は既に強さに満ちている。威勢のいいペリィ・ヴァシャイとは団を率いるライバルであり良きパートナーのようだ。 ミスラ傭兵団がカルゴナルゴ城砦の守りについたその頃、アジドマルジド少年は危機を向かえていた。現代では冒険者からすると信じがたいほどの絶大な魔力を駆使する彼も、この時はまだ少年。冒険者が駆けつけるも、続けざまにヤグード教団と居合わせてしまう……。
ウィンダスの物語の魅力はなんといっても、水晶大戦時代のテイストがしっかりと感じられるところにある。戦闘前の緊張感、そして団員を奮い立たせるペリィ・ヴァシャイやロマー・ミーゴら魅力的なキャラクタたちの存在。スピード感のある戦闘シーン。“これぞ”というシーンが目白押しだ。
今回紹介している範囲では、タルタル族の魔道団があまり登場していないが、最もインパクトのあるタイミングで、大魔元帥「ロベルアクベル」が登場する。登場のタイミングだけでなく、彼は姿も非常に特徴的だ。顔は黒い包帯で覆われ両目は黄色い。勝利のために手段を選ばず、敵はおろか、味方からも恐れられている存在だという。謎の多い人物だが、現代においてその姿はない。すでに亡くなっているということだが、そこにもまた、知られざる物語があるのかもしれない。
ただそうした逸話は、ある種「アルタナの神兵」においてはネタバレになる可能性を持つ。なにしろ経緯は詳しくないものの結論が伝えられているからだ。もちろんそれを知っていてもなお楽しめるとは思うが、本連載ではそのあたりをぼかしている。その上で興味を持ったかたは、関連書籍等でまとめられているのでチェックしてみるのがいいだろう。 3国のクエストは、それぞれに全く異なるテイストを持っている。サンドリアは元気で活発な少年たちを中心にした冒険活劇。バストゥークはこれまでの背景を活かした、想像をかき立てられるサスペンス。ウィンダスは水晶大戦という戦争を前面に押し出している。スピード感や盛り上がりから、ウィンダスの物語はストレートで魅力がわかりやすくて秀逸だ。所属国に関係なく楽しめるので、ぜひプレイ頂きたい。
最後に、ウィンダスの大魔元帥「ロベルアクベル」がある人物と会話するシーンからひとつ取り上げよう。その人物は、「渦星、現るとき 暁の神兵、降り立ちて……か。くしくも詩をなぞるような…… さて、闇夜に夜明けをもたらす白き翼ははたして……。」と異端の予言の一遍を語る。冒険者が猫の王と遭遇したとき手に入れた純白の羽根。この異端の予言ははたして……。今後の展開ががぜん気になるところだ。
(C)2002-2008 SQUARE ENIX CO.,LTD All Rights Reserved.
□スクウェア・エニックスのホームページ (2008年4月23日) [Reported by 山村智美 / Pomm]
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|