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会場:ソウル市グランドハイアットホテル
Nintendo of Koreaは2006年7月に任天堂の100%資本の元、韓国に設立された子会社。現在、携帯ゲーム機「ニンテンドーDS Lite」を展開している。その後、1年を経て同社の最新据え置き型ゲーム機「Wii」を展開することになった。韓国市場でのWiiは4月26日発売で、価格は22万ウォン(約22,500円)。韓国国内専用のリージョンが設けられ、ローンチタイトルとして「はじめてのWii」、「Wii Sports」など8タイトルが展開される。 本カンファレンスの目玉は任天堂代表取締役社長の岩田聡氏が登壇し、任天堂の歴史から韓国市場についての分析まで幅広く語ったことだ。オンラインゲームの分野で世界市場を席巻している韓国市場について、PCプラットフォームを中心とした市場が、若年層に偏向した特殊なユーザー層を形成していると韓国市場を分析し、同社のコンソール機の投入で中高年を含む全年齢に広げていきたいと抱負を述べた。
イベントではWiiのCMモデルとして採用された俳優のウォン・ビン氏が登場し、岩田氏と「Wii Sports」のテニス対決などのイベントも行なわれた。本稿では「ニンテンドー Wii 韓国ローンチカンファレンス」の模様と「Wii」韓国語版の詳細をお伝えしたい。
■ 韓国ローンチタイトルは8本。すべて韓国語で、韓国リージョンを設定
ローンチタイトルとなる8タイトルは、任天堂「はじめてのWii」、「Wii Sports」、ユービーアイソフト「ラビッツパーティー リターンズ」、カプコン「宝島Z バルバロスの秘宝」、バンダイナムコゲームズ「みんなで遊ぼう! ナムコカーニバル」、EA「FIFA 08」、コナミ「Elebits」、Ntreeve「スイングゴルフ パンヤ 2ndショット」が展開される。いずれも韓国語に完全にローカライズされた状態で提供される。 今後発売予定のタイトルとして、「スーパーマリオギャラクシー」、「Wiiでやわらかあたま塾」、「マリオ&ソニック AT 北京オリンピックTM」、「ギターヒーロー3 レジェンド オブ ロック」などが紹介された。いずれもローカライズ作業はほぼ完成しており、じきに展開されるという。さらに去年の12月に日本で発売された「Wii Fit」も2008年内にリリースされるとのことだ。 オンラインサービスについては、ローンチ時の段階ではWiiチャンネルのみでスタートし、バーチャルコンソールとWiiウェアについては実装を見送る。Wiiチャンネルのサービスは似顔絵チャンネルと写真チャンネル、ショッピングチャンネルの3項目。現在日本では、ニュース、お天気、インターネット、みんなで投票、Miiコンテスト、みんなのニンテンドー、テレビの友と、多くのチャンネルが提供されているが、これらの韓国配信予定は明らかにされなかった。ショッピングチャンネルの機能は標準搭載されているため、今後、ダウンロード配信していく可能性は高いと言えるだろう。 なお、今回の任天堂の展開方式は、アジア市場では前代未聞の出来事だ。そのことを理解するためには、韓国のコンシューマゲーム事情を知っておく必要がある。韓国では2006年2月にMicrosoftからXbox 360が発売され、2007年7月にSCEKからプレイステーション 3が正式発売された。そして2008年4月26日の「Wii」発売によって韓国市場ではようやく3つの次世代機が揃うこととなる。 韓国展開の傾向としては、Xbox 360やプレイステーション 3が該当するケースだが、ゲームソフトは正規版でありながら日本語版や英語版のままリリースされることが多い。もちろん、ハード側のリージョンも特に設定されていない。これは、他国展開から韓国展開までのタイムラグを小さくする狙いと、世界各国から持ち込まれる輸入版もプレイできるようにするという狙いがある。アジアならではの暫定的措置だ。しかし、Nintendo of Koreaの場合、展開当初より、すべてのリリースタイトルとプラットフォームを完全韓国語化していく方針を明言している。 今回注目されるのは、韓国語版「Wii」は、リージョンが韓国に固定され、韓国語版以外のバージョンは読み込むことができないことだ。この決定自体は、むしろ正常であり、韓国のコンシューマゲームビジネスが、他のアジア地域と比較して、一足早く次のステップに進んだことを意味する。その改革の“痛み”として、実質的にWiiが備える後方互換性の恩恵を受けられなくないことになった。つまり、Nintendo of Korea設立以前に総販代理店経由で展開されていた「ゲームキューブ」はリージョンが日本のまま展開されているため、韓国語版「Wii」で「ゲームキューブ」のタイトルは遊べないのだ。 韓国のゲーマーには残念な知らせだが、あくまで完璧なローカライズを通じて展開するための決断とのことで、逆に他のリージョンを読み込むことができるとしても結果的に韓国市場へ悪影響があるための処置だという。
また、現在、韓国ゲームデベロッパー42社ともコンタクトをしており、新ソフトを続々と投入するという。日本でスタートしたばかりのWiiウェアについては詳細を明らかにしなかったのが残念だが、ぜひ韓国独自のコンテンツの投入に期待したいところだ。
■ 任天堂岩田聡社長「『ニンテンドーDS Lite』の普及が『Wii』の普及を保証するものではない」
さらに岩田氏は韓国市場について「PCオンラインゲームは世界一の国であるものの、ゲーム専用機器が爆発的に普及したことがなく、その市場規模も依然として小さい」とし、「ゲームユーザーは若者が中心で、中高年を含めた幅広い年代でゲームを楽しむ土壌ができていない」と分析した。岩田氏は「PCプラットフォームのオンラインゲームを中心に市場形成が進められたため、こうした特殊性を生んだ」と述べた。 同時にNintendo of Koreaが昨年1月に展開した韓国語版「ニンテンドーDS Lite」の現在の展開状況も報告された。現在までの韓国市場での販売台数は140万台を突破しており、現在までに52本のタイトルが韓国語版として正式発売されている。すでに52本ものタイトルがローカライズされていることに驚かされたが、こうした手法により「ニンテンドーDS Lite」の展開が確実に韓国ゲーム人口を拡大していると岩田氏も実感してるという。 任天堂は韓国ゲーム人口の拡大のための第2段階として、完璧なローカライズをもって「Wii」の展開に臨むが、あくまで「ニンテンドーDS Lite」の成功は「Wii」の成功を保証するものではないと締めくくった。
現実問題として、「ニンテンドーDS Lite」は韓国市場では海賊版の脅威にさらされ続けており、決定的な打開策は見つかっていない。いまでも韓国では海賊版を使用するためのハードウェアを装着したまま街でプレイするユーザーを頻繁に見かけることができる。これは韓国市場での本体の売れ行きの伸びに関わらず装着率が非常に低いことを如実に示しており、ユーザーが海賊版に触れにくい据え置き機の「Wii」の投入と同時に、これにリージョンの制限をかけることで市場展開への仕切りなおしをかける意味合いが大きいと思われる。
■ CMモデルにはウォン・ビン氏に決定! 岩田氏との「Wii Sports」勝負、結果は2-1で岩田氏の勝ち!
会場ではウォン・ビン氏主演のTVCMが流れ、本人も登場。ウォン・ビン氏が「Wii Sports」をプレイするTVCMはゲーム別に5つのバージョンがあり、当日より韓国の全放送局で流されるという。 さらにサプライズイベントとして、ウォン・ビン氏と岩田氏との「Wii Sports」のテニス対決が行なわれた。ウォンビンはCMの撮影で5つの「Wii Sports」ゲームをプレイしており、その中でもテニスが一番面白かったという。岩田氏との対決は2-1で岩田氏の勝利となった。
韓国はPCオンラインゲーム市場が非常に強い一方で、コンソール市場は極めて小さい。そんな中で、Nintendo of Koreaの韓国語版「ニンテンドーDS Lite」の展開によってコンソールユーザーが飛躍的に伸びていることは確かだ。順調に「ゲーム人口の拡大」を指向していくNintendo of Koreaの試みが、韓国語版「Wii」の展開で韓国市場にどういう影響を与えていくかが注目されるところだ。
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□Nintendo of Koreaのホームページ(韓国語) (2008年4月15日) [Reported by Dong Soo “Luie” Han / 三浦尋一 Photo by Che Jin Seung]
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