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会場:表参道ヒルズ
タイトーの新ブランド戦略の旗頭として掲げられたのは、今年生誕30周年を迎える同社の看板タイトル「スペースインベーダー」。会場内のBGMに'78年のヒット曲「かもめが翔んだ日」、「勝手にシンドバッド」を流したり、'78年当時、インベーダーゲームを遊びたいのに親にしかられて帰路についていた少年が、2007年に親となり、当時の仲間や子供たちと一緒にアミューズメント施設で楽しく過ごす様子を劇団員による寸劇を上演するなど、実に凝った構成で来場したプレスや関係者を驚かせた。
発表会の冒頭、代表取締役の和田洋一氏は「今、寸劇がございましたけど、私もまったく同じ年代でございまして……ちょうど『インベーダー』が出た時は学生で、稼いでも稼いでもバイト代が全部『インベーダー』に消えていったという経験をしております。その私が今『インベーダー』の会社の社長をやっている。しかし、本日は昔話の場ではございません。これからのタイトーを、皆様がたにご紹介するため、お集まりいただきました」とコメント。新戦略に関する発表は、アミューズメント施設運営に関する新たな取り組みからスタートした。
■ アミューズメント施設運営 ~店舗ブランドを「タイトーステーション」に統一
「お客様への安全、安心をブランドの柱とし、お客様が夢中になっていただける店舗として、弊社の品質基準をクリアした店舗から、店名・看板・制服を順次変更する」という。後述するフランチャイズ展開にもかかわってくる事柄だが、これらは単なるブランドの刷新ではなく、サービスなども含めたブランドとしての品質や信用にも一定水準を設定・維持するという明確な意思表示だ。 直営店舗については、4月広範より全店舗に「ハッピーボタン」と呼ばれるマシンを導入するという。「ハッピーボタン」は、店舗を訪れた客が「楽しかった」、「満足した」と感じたならボタンを押すというもの。植田氏によれば「この『ハッピーボタン』は、お客様とタイトーの架け橋として、新タイトーステーションのお客様に育てていただこうという想いと、ブランドの生まれ変わり、看板変更などの参考にさせていただこうと考えている」という。 ボタンを押すと、インベーダーのミサイル発射音が鳴る。筆者としては「同じ人がイタズラ半分で何度も連打しないだろうか」と心配になったが、恐らくは「何度も押される=いい店」、「一度も押されなかった=その店のサービスは最低」と端的に決め付けるための装置ではないだろう。うまく機能しFIXを繰り返していけば、さらなるサービス向上へとつながっていくかもしれない。
このほか、スペースインベーダー30周年をモチーフにしたクレーンゲーム、記念限定メダル作成マシンなど筐体数種類が4月後半から投入される。プライズマシンの筐体内には、後述する店舗オリジナルグッズが設置されるという。
■ アミューズメントプライズ
ここで金山氏が強調したのは「ゲーム施設にお越しいただけなければ入手できない、自社開発、自社企画にこだわった」オリジナル製品の拡充。まず最初に紹介されたのは「未確認飛行物体 UFO-ONE 室内専用赤外線コントロール」。15才以上が対象で、ボタンを押すとプロペラが回転しフワッとホバリング。リモコンにボタンはひとつだけで、うまくボタンをオン・オフしてホバリングを続けて遊ぶ。前後左右の動きは屋内にあるエアコンなどの風流次第という、一風変わったラジコンだ。 続いて披露されたのは「THEウソ発見器」、「ラブテスター(Licensed by Nintendo)」、「テルミンミン」。「THEウソ発見器」は、本体下側にふたつあるタッチ部分に指を置き、質問に答えて発汗による反応をセンサーで表示するというおなじみ(?)のグッズ。「ラブテスター」は、ふたりで手をつないだまま本体下側のタッチ部分に触れ相性を診断するというもの。「テルミンミン」は、旧ソ連の物理学者で、音楽家、発明会でもあるレフ・セルゲイ・エヴィチ・テルミン氏が'19年に開発したシンセサイザーの始祖といわれる楽器「テルミン」をモチーフにしたグッズ。アンテナに手を近づけて音程を調節しつつ演奏する。
いずれのグッズも「タイトーステーション」でしか手に入らないオリジナルプライズアイテム。なお、スペースインベーダーについては「自社製品にとどまらず積極的にランセンシーを行なっていく(金山氏)」としている。
■ コンシューマ ~Wii「スペースンベーダー ゲットイーブン ~逆襲のスペースインベーダー~」
プレーヤーはヌンチャクでUFOを操作し、リモコンで300体のインベーダーに攻撃を指示。人類が生み出した科学兵器や要塞都市を次々と侵略していく。各ステージは3つのエリアで構成され、武装都市、湾岸都市、密林地帯など、さまざまなバリエーションが用意される。ステージの最終エリアには、人類の英知が結集された超絶科学兵器がたちはだかる。
これまでのシリーズでは画面下から飛来するUFOを迎撃していたが、侵略する側の視点に立つと、プレイスタイルは必然的に「見下ろす」形になるのが面白い。上空から地表めがけて攻撃を指示する背徳感は、いかほどのものか。Wiiリモコンでインベーダーを投げつけたり、スペシャルアタックでまとめて壊したりと、破壊の限りが尽くせそう。2008年発売予定。
(C)TAITO CORP.1978,2008
■ PC「スペースンベーダー世界大戦」、モバイル、コラボレート企画など
モバイルコンテンツでは、インベーダーをモチーフにしたカジュアルゲーム「みんなでインベーダー(キャッチャー、クリック、チェイン、バウンド)」やケータイのアイコンなどをインベーダー風にカスタマイズする「きせかえツール(スペースインベーダー、LOVEキラ)」を紹介。 また、携帯電話に手をかざして振るとギター、ベース、ドラムなどが鳴らせる楽器アプリ「直感バンド(直感ギター、直感ベース、直感ドラム)」の紹介では、ワッチミー! TVのイメージキャラクタを務める杉元聖子さんが登場し「直感バンド」イメージソング「ロックなKiss」を披露し、会場に元気な声を響かせていた。
コラボレート企画では、イタリアのデザインチーム「55DSL」が手がけたコラボレーションTシャツが4月中旬より55DSL直営店などから発売される予定。また、発表会の会場となった表参道ヒルズ西館B2F「Idea Frames Omotesando」と「Idea Seventh Sense(有楽町マルイ、新丸の内)」では、インベーダーをモチーフにしたメッセンジャーバッグ、ポーチ、ウォレット、フェルナンデス製ギター、ぬいぐるみなどが3月7日~14日までの期間限定で販売される。また、ニフティ株式会社提供のブログサービス「ココログ」にて、インベーダー30周年記念テンプレートが3月7日より配信される。
(C)TAITO CORP.1978,2008 ※ゲーム画面は開発中のものです。
【みんなでインベーダー】 iモードR版 … iメニュー → メニュー/検索 → ゲーム → ミニゲーム → インベーダーでGO! Yahoo!ケータイ版 … メニューリスト → ケータイゲーム → ゲームパック → インベーダーでGO! EZweb版 … au oneトップ → カテゴリ検索 → ゲーム → 総合 → インベーダー 【LOVEキラ】 iメニュー → メニュー/検索 → きせかえツール → イラスト → LOVEキラ 【直感バンド】 iメニュー → メニュー/検索 → 着信メロディ/カラオケ → JPOP → ぐるメロ♪うたあり ■ インベーダーはイノベーションの象徴 ~AM施設のフランチャイズ展開を開始~
「昨今さまざまなビデオゲームが発売されているが、その飛躍的な普及の起点こそインベーダー。機械的な動きではなく、ゲームにおける表現が豊かになり、世界観、キャラクタが導入され、以降ここからゲームが発展してきた。制作陣が意図したかどうかは別として、まったく新しいコンテンツを作る、そのイノベーション精神を引き継いでいきたい」と説明する。 和田氏は、インベーダーが爆発的にヒットした当時の“ビジネス展開の斬新さ”に着目する。爆発的にヒットしたことで、ゲームセンターにこない人たちの耳目にも触れ、さらなる広がりを見せていく。ゲームセンターだけでなく、喫茶店にも置かれたテーブル筐体、さらにはプレハブのなかにインベーダーだけを並べた「インベーダーハウス」などなど。「既成の概念にとらわれず、どんどん展開していった。当時の人の話をきいていると相当悪ノリしていたみたいで、料亭にもあったらしいですね。全然お金が入らなかったらしいですけど、あらゆるところに置いてあった。こういった自由な発想を引き継いでいきたい」とコメントする。 ヒットの過程にも、口コミやタモリ氏の深夜ラジオなどで頻繁に話題にのぼったことで非常な成功を収めた例など「プッシュ型ではなく、自動型で広がっていくマーケティング。そして、裏技などでさらに盛り上がっていく。今、CGM(Consumer Generated Media)など色々な単語があるけれど、実は30年前の日本において大変な成功事例があったということ。コンテンツの新しさだけでなく、ビジネス展開、マーケティングにしても斬新さの宝庫だったと思っている。我々としては、インベーダーは30年前のこけむしたゲームではなく、イノベーションの象徴。30周年を起点に、新しいタイトーを生み出していこうと、いくつかの仕込をした」という。 和田氏は、自由な発想のもと「あらゆるシーンにゲームを、あらゆる素材をゲームに」と標語をかかげる。ネットとゲームは時間を奪い合う、ゲームセンターの売上げをコンシューマゲームが削などの意見があるが、和田氏は「カニバら(くいあわ)ない」と言い切る。人には、朝起きて通勤、通学、会社、学校、帰宅など“生活のパターン”があるが「それぞれのシーンにおいて、どのコンテンツが選ばれるかということ。家でやることと外でやることで、僕はあまり関係ないと思う。ただ、外で何をやってもらうかというのは工夫しなければいけない。 我々がもっているビジネスラインはいくつかご紹介しましたが、家のなか、外、移動中、すべて押さえられる。素材もそう。ゲームは端末にしばられたアイデアしかなかなか出てこないが、いっそのこと“ゲームを広く捉えよう”と。いわゆるテレビゲームじゃなくても全然かまわない。ということで先ほどのUFOとかラブテスターだとか、ああいうおばかなものが出てくるんですけど、こういうことをやっていこうと。インベーダーのイノベーターとしての血を引き継ぐということで、できるだけ柔軟に考えよう、何を狙っているかをあえて抽象化して追いかけようと思っています」とコメントする。 前述のユーザー利用シーン「家のなか、外、移動中」の、どこをつかまえるか。これについて和田氏は「色々な端末や設備がでてきますと、実は“ながら”ができます。ひとつのことだけじゃなくて済むんですね。外なら外、移動中なら移動中で、本を読みながらケータイで音楽を聴いている人がいる。時間が限られているからコンテンツ市場が頭打ちというのはとんでもない話で、人間の処理能力ってもうちょっとありますから。自分が処理できるギリギリまで色々なコンテンツが同じ時間に共存しうる。それぞれのシーンごとに、どこまで広げられるかが我々のアイデアですし、挑戦なんだと思います」という。 ブランドを統一した「タイトーステーション」については、今までどおり、さらに質の高い遊びを提供 するという。「今からどんどん出店もしていきたい。みなさまがたに投票していただきたい、育てていただきたい」と導入されるハッピーボタンについては「サービスの基準をもうけて第三者に客観的に見てもらい、このお店ならお客さんに対するサービスが恥ずかしくない、というところから変えていく。お客様がたに叩いていただかないと、いつまでも看板が変えられないという可哀相な状態になりますので、どうか育ててあげていただきたい」と説明。 ここで和田氏は、刷新を機に「タイトーステーション」ブランドのフランチャイズ展開を行なうことを明らかにした。和田氏は「いわゆるゲームセンター業界は、閉じているんですね。遊びを提供できる空間は世の中にたくさんあるが、ゲームセンターをやるかどうかという選択は、なかなかしない。飲食店、コンビニ、薬屋などはやりやすいかもしれない。これがゲームセンターになると難しそうだ、初期コストもかかりそう、どのように市場を読んでいいかよくわからないなど、参入希望者に対しての障壁が高い」と現状を説明。和田氏は、これを開放していきたいという。 「私どもが初期段階でノウハウを提供し、オペレーションのいくつかについてもサポートさせていただく。こうすることで、今ゲーム業界ではない方々が参入してくる。そうすると、さらに新しいアイデアがでてくると思いますし、お客さんの層も広がる、新しい遊びがどんどん生まれると思います。他業界の方々に開放していくシステムとしてのフランチャイズ展開を考えている。ゲーム業界にまったくなじみのない方々にも説明させていただきたいと思いますし、それにより厚みがでてくれば、日本のどこにいっても遊びの空間があるということになる」と説明する。 「この手のことが始まるとネガティブに言われるものなんですけど」と前置きしつつ和田氏は「今もしコンビニエンスストアのシステムがなかったら、雑貨屋さんや酒屋さんが今のコンビニの数ほどあったかっていういと、恐らくないです。いくつか店が閉じられたかもしれない。そうしたら、皆様がちょっとタバコ、お酒、雑貨を買ったりというチャンスがもっと減っていたかもしれない。コンビニエンスストアというチェーン展開が可能なシステムが導入され、参加者が増えた結果、文字通りコンビニエントになった。“日本のあらゆるところに遊びの空間を作ろう”ということになると、やはり他業からの参入をうながすということが重要という観点で、フランチャイズ展開も我々が先手をきってやっていきたいと思っている」と和田氏はいう。 さらに和田氏は「ゲームセンターじゃなくたって、別にゲームができる場所は一杯あるはずなんです」という。展示されたプライズ筐体を例に「注意深くごらんいただきますと、みんな小さいでしょ? そんなに面積がなくても置けるサイズ。作り方を変えることで、もっと有効な面積が遊びに使えるんじゃないか。店を構えなくてもゲームセンターができるんじゃないか。リアルな場所、家の外に関してあらゆる遊びの場所を作っていこうというのが我々の目標。単に店舗を展開するだけじゃなく、遊びの空間を広げていくかが我々の目的。ただ、リアルな店舗と連動すると何が起こるか。まだ工夫の余地がある。これも相当なチャンスが秘められている」という。 ネットワークについては「ネットワーク環境が標準化すると、部屋にひとりでこもるというけど、逆に部屋にこもってネットにつながったほうが多人数との会話が成り立つ場合がある。家庭用ゲームはもちろん、それにとらわれずネットワーク環境をうまく使って、より世界を広げていくか。これも順次また発表させていただきたい」と展望を明らかにした。
最後に和田氏は、スペースイベーダーのオリジナルテーブル筐体(整備済み)が当たるコンテスト企画を、Yahoo!JAPAN上で4月1日に発表するとコメント。詳細については「考えている最中」と明らかにされなかったが、完全レストア済みのテーブル筐体が手に入る機会などそうそうあるものではなく、気になる人はタイトーの「スペースインベーダー30thアニバーサリー特設サイト」とあわせてこまめにチェックしておくといいだろう。
□タイトーのホームページ (2008年3月7日) [Reported by 豊臣和孝]
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