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会場:東京・ソフマップ秋葉原 アミューズメント館 8F イベントホール
【DS/PSP「スペースインベーダーエクストリーム」】
価格:各3,990円
最初に登場したスペシャルゲストは、お笑いコンビ「千原兄弟」の千原せいじさん。今年38歳になる千原さんは、稼動と同時に一大ブームを巻き起こした初代スペースインベーダーをリアルタイムで体験した世代。会場を見て「アレやなぁ。(観客席は)世代的に見ると……リアルタイムではなさそうやなぁ」と一言。まずは、テーブル筐体の存在すら知らない人が多い来場者向けに、まずは初代スペースインベーダーが世に出た当時の状況から話がスタートした。 「一番インベーダーが凄かったのは、昭和50年代中盤……4~6年とかの100円玉が、市場にめっちゃ多いと思うの。それはインベーダーのせいなの……ホンマやで!? 銀行から100円玉減ってんから! (半信半疑の客席に)ホンマやって! 『何いうてんねん』みたいな顔せんと、マジやねんて! 100円玉が無くなって……無くなることはないか(笑)。インベーダーがあったから、今のゲームがあるわけでしょ。パイオニアですよ! 野茂英雄なんですよ」と、当時のブームを熱く語る。さらには“不良の巣窟”と呼ばれたゲームセンター黎明期ならではの少々アブナイ話もいくつか飛び出し、千原さんと同い年の筆者などは「そうそう、そんなこともあった!」など、あるあるネタっぽい感じで当時の記憶が鮮明に呼び覚まされていく。 有名なインベーダーの攻略テクニック「名古屋撃ち」も、当時は(言葉の)意味もわからずやっていたという千原さん。「インベーダーは色々なことを教えてくれた」といい「いかに(当時が)アナログだったか。インベーダーの色あるやろ? 今はめっちゃ色あるやん。あれな(昔は)テーブルゲームのガラスの部分にテープ(セロファン)貼っててん。色つけられへんから。それがたった30年前。凄いスピードで進化しているよね。初めて買うたパソコン、ポケットコンピュータの『PC-1500』で(データ記録が)カセットテープやった。めちゃめちゃ時間かかんねんから! そんな時代」と、感慨深げに当時を振り返る。
「作っていた当時、社内は盛り上がっていたんですか?」という司会者の問いに、西角さんは「あれはね、私が勝手に作ったやつ。今のゲームは、だいたいアレでしょ。営業の人が『こういうのが欲しい』と。(それに対して当時は)ひとりで独断で作った。いい時代ですよね(笑) できたやつを営業に見せたら『とりあえず売ってやる』と、そういうシステム。でも、それまでのゲームはみんな『いいゲームだ』といってくれたのに、インベーダーのときだけ『ちょっとまってくれ』といわれたんですよ。『これはあかん』、『売れない』って」とコメント。 アミューズメントショーに出展するも、営業同様、業者の反応もあまり良くなかったという。理由は、敵の攻撃をかわしながら、自機を動かしつつ敵をやっつけるというゲーム内容が「難しかった」から。当時のシューティングゲームの普遍的な概念は、縁日の射的のように、決められた時間の中でいくつ的に当てて何点取るかが主流。一方のインベーダーには、その流れとはまったく異質の要素が詰め込まれており、その点が年配の営業や偉い人たちに敬遠されたのだという。社内の若い人や仲間内は面白がってプレイしてくれたといい、このあたりは今も昔もなんら変わらないと西角さんはいう。 「正直、インベーダーって全世界、オフィシャルでどれくらい出回ったんですか?」という千原さんの質問に、西角さんは「(国内で)30万、っていってましたよね? ヨーロッパでもそれくらい出てるかもしれない。(100万枚くらい? という声に)ワールドワイドでは、それくらいいくかもしれない」と、今では到底達成しえない脅威的な数字がこともなげに語られる。ビデオゲーム全体のアイコンといっても過言ではないおなじみのキャラクタのヒントは、子供の頃に観た映画「宇宙戦争」に登場した火星人=タコから得たもので、タコだから他のキャラクタも海の生き物、すなわちイカ、カニと、イメージを発展させていったという。ここで千原さんが「先生、こんなんキャラクタ(の権利)きちんと押さえてます!? メチャクチャ儲かりますよ!! 会社(タイトー)買えますよ! 今からでも遅ないから、民事で裁判起こしたらよろし!」と、関西芸人らしいツッコミで会場の笑いを誘う。 ゲームファンなら誰もが口ずさめるインベーダーサウンドも、西角さんの発想。実際に音源を作ったのは別の人だが、そのイメージを社内にあったギターを実際に演奏して音階で伝えたという。ご本人はこのエピソードを忘れていたそうだが、音源を作った人から後々きいて「そんなこともあったかなぁ、と思いましたね」とポツリ。「音(テンポ)が早くなるのも、キャラクタが少なくなって処理が速くなるから」と、ここでも意外というか驚きのエピソードがポンポン飛び出してくる。 初代インベーダーの制作期間は、約1年。最初の半年はインベーダーの開発に必要な「開発装置」の制作に費やされ、残り半分でビルト&スクラップを繰り返しながらプログラミング。まともに開発が進行したのは残りの3カ月くらいだったという。「スペースインベーダー」というタイトルは、社内のトップダウンで発売2週間前に決定されたもの。それまでは西角さんお気に入りの「スペースモンスター」でいくはずだったという。当時ピンクレディーがヒットさせた歌謡曲「モンスター」にあやかり「意味がわかりやすいから」と決めたせっかくのネーミングをひっくり返されたことに西角さんは「(モンスターなら)倍売れた!」と、今でも納得がいっていない様子。すかさず「それは偉い人が正解!(笑) インベーダーのほうがええて!」とつっこむ千原さん。我々エンドユーザーには「スペースインベーダー」という語感が強烈に植えつけられているせいもあるだろうが、このあたりは“生みの親”である西角さんならではのエピソードといえる。 「最近のゲームは、ハードウェアが凄くてグラフィックがきれいだけど、ゲーム性、面白さがなかなか出てこない。種類が多くなっているんで……。みなさん色だとか、そういうのだけにとらわれず、本当に面白いゲームを選んで欲しいなと思います」とコメントを残しつつステージをあとにした西角さん。「なんかこう、もっと凄いオーラのある人かと思ってたけど、ただのオッサンでしたね!(笑)」と、ここでも千原さんは笑いをとることを忘れない。
バブル期のディスコを想起させる派手でゴージャスなグラフィックスや演出、シューティングを超えたリズムアクション的な操作感覚とテンポは、まさに新世代のインベーダー。一方で青木プロデューサーは「インベーダーとして、ここだけは変えてはいけない」要素として、左右に限定された自機の移動とキャラクタデザインをあげた。逆説的には、この二大要素こそが青木プロデューサーの考える「インベーダーの核(コア)」なのだろう。 スクリーンを使ったデモプレイでは、上下画面で縦長にプレイするDS版、PSP版それぞれの特徴が説明された。基本的なゲーム内容はどちらも一緒だが、DS版はWi-Fiを介したオンラインマルチプレイに対応している。タイミングを見計らってUFOを撃墜しお邪魔インベーダーを送り込むという、シューティングとパズルアクション的な要素がミックスされた独特のプレイ感覚。同じ色のインベーダーをセットで倒し、有利な展開へと導いていく流れを青木プロデューサーは「役を作っていく」と表現したが、そうした戦略性が、うわべだけ対戦要素を整えた凡百のゲームにはない、実に本作らしいフックになっている。
一方のPSP版は、オンラインプレイはできないがADHOC通信対戦に対応。さらには、グラフィックスやサウンドなどがDS版よりもリッチになっているという。本体スペックの違いもあるが、横長のワイド画面でプレイするぶん、ボス戦などで切迫感などのフィーリングが多少異なるケースもある。ファンは、両機種版をそろえて細かい違いを楽しんでみてはいかがだろうか。
(C)TAITO CORP.1986,2007
□タイトーのホームページ (2008年2月21日) [Reported by 豊臣和孝]
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