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Game Developers Conference 2008現地レポート

Microsoft基調講演
MicrosoftはXbox LIVE上にゲーム民主国家を建国する

2月18~22日 開催(現地時間)

会場:サンフランシスコ Moscone Convention Center

■ 2007年、Xbox 360は勝たなかったが負けなかった

John Schappert氏 (Corporate Vice President, LIVE, Software and Services, Microsoft)
 プラットフォームホルダーで今年のGDC 2008基調講演を唯一行なったのがMicrosoftであった。今回は任天堂もソニー・コンピュータエンタテインメント (SCE) もGDCで基調講演を行なわない。特にSCEは昨年のGDC 2007で、PS3上でのSNS「Home」や、次世代ゲームの形「Game 3.0」をアピールし、新しいコンセプトを多数発表。あれから1年、どのようなアップデートがあったのかという報告が期待されていただけに肩すかしを食らった格好だ。なお、Game 3.0もHomeも、1年経った今でも実動はしていない。

 さて、これまでこうしたゲーム関連の表舞台で壇上に立ってきたPeter Moore氏が、昨年、Microsoftを去ったため、今回のGDC基調講演ではJohn Schappert氏 (Corporate Vice President, LIVE, Software and Services, Microsoft) が進行役を務めた。Schappert氏は、まだ登壇回数もそれほど多くないため、Xbox 360の顔としてなじみが薄い感は否めない。

 まず、Schappert氏が報告したのは2007年のゲーム業界の総収入高が180億ドルを超えたということだ。これは米国において、音楽ソフト業界の収入を超えており、2007年はソフト業界というくくりではライバルともいえた音楽業界を逆転した記念すべき年だとした。

 ここでMicrosoftは、いつもならば自社のデータを持ってくるはずなのだが、2007年の年末商戦では本拠地の北米でも任天堂のWiiに惜敗したため、やや自重(自嘲?)気味に「ゲーム業界全体のデータ」を持ってきたのが感慨深い。

 ただ、せっかくプラットフォームホルダとして唯一基調講演を行なったメーカーとしては自社アピールもしたい。そこで2007年度100万本超セールスを記録したXbox 360タイトルをピックアップして紹介した。

 タイトルとしては「Halo 3」、「BIOSHOCK」、「MADDEN NFL 08」、「Assasin's Creed」、「MAS EFFECT」、「Call of Duty 4」、「Guitar Hero II」が挙げられ、特に「MADDEN NFL 08」は「マルチプラットフォームタイトルでありながら、ここ10年で初めてソニープレイステーションファミリーよりも多く売れたことを強調したい」とコメントした。

ベストセールスを記録したタイトルを紹介

 また、「優秀なゲームはすべてXbox 360向けに登場している!」というやや変則的なデータをもSchappert氏は示してきた。

 Metacritic.comのゲームレビュー採点で100点満点の高得点を記録したゲームはダントツにXbox 360が多いというのだ。80点以上はPS3の2倍、90点以上の最良作になるとWiiの3倍になるという。

ゲームレビュー高得点タイトルはみんなXbox 360ソフトだ

 「この中にはWiiやPS3にも発売されているマルチプラットフォームタイトルも含まれる」とSchappert氏。さらにマルチプラットフォーム版でもXbox 360版の方が評価が高いのは「先に発売され、出来がよいからだ」という。たしかに切り口としてはずるいプレゼンではあったが、程度の高い開発環境が早急に整備されたため、マルチプラットフォームタイトルの初期開発をXbox 360ベースで行なったスタジオが多いのは事実で、これが評価結果として表れている……とSchappert氏は言いたいわけだ。

 「Xbox 360ならば開発ツールがすばらしく、Xbox LIVEのネットワークもすばらしい。同じタイトルでも開発環境がよくて、ゲームプレイでできることもライバルより多い」(Schappert氏)  そしてXbox LIVEは、Xbox 360のゲームプレイのおもしろさを支える根幹であるとし、その証拠として、Xbox LIVE上に報告されるゲームプレイ実績の総数が10億を超えたこと、2億5,000万ドルがXbox LIVE上で取引されたことも報告された。

成長するXbox LIVE


■ アマチュア製作のXNAゲーム達の投稿/配給システム
  「Xbox LIVE Community Games」が始動!

Chris Satchell氏 (General Manager and Chief XNA Architect, Microsoft)
 続いてXNAを統括するChris Satchell氏 (General Manager and Chief XNA Architect, Microsoft) が登壇し、話題はXNAについて移る。

 XNAはMicrosoftが提唱する開発フレームワークで、WindowsとXbox 360 (将来はモバイル機器、詳細は後述) 上で共通動作することが可能なゲームを開発できるもの。現在の最新バージョンは「XNA Game Studio 2.0 (XNAGS)」となる。

 「XNAGS」は、現在までに80万件のダウンロードが行なわれ、全世界の約400校の大学でゲーム開発のプラットフォームとして採用されている。2007年には「XNAGS」を活用したゲーム開発コンテスト「DREAM BUILD PLAY」を開催。4カ月の会期で、約200作品の応募があり、そのうち優秀作4タイトルはXbox LIVE Arcadeでの配信も決定した。「XNAGS」は運がよければメジャーデビューもできる“夢”のアマチュアゲーム開発プラットフォームとしてアマチュア開発コミュニティを中心に盛り上がりを見せ始めているのだ。

「XNAGS」は運がよければメジャーデビューもできる“夢”のアマチュアゲーム開発プラットフォーム

 Microsoftは、これからもこうしたXNAゲーム開発コンテストを行なうとしているが、優秀作以外は日の目を見ることがないのか? ということになる。たしかに個人的なやりとりはできるだろうが、ゲームは開発者の立場からすれば1人でも多くの人に遊んでもらいたいものだ。Microsoftの審査員の目にはとまらなくても、ある特定のタイプの人間にはとてもおもしろい作品があるかもしれない。

 XNAベースで開発されたゲームの配布に関わる問題点は、これまでも幾度となく指摘されてきた。この問題に対するMicrosoftの回答が「Xbox LIVE Community Games」だ。

 これは簡単に言えばXNAで開発したゲームを、特にコンテストに入選していなくても、他のXbox LIVEユーザーにプレイしてもらえる (かもしれない) 環境を提供するものだ。

 仕組みはXbox LIVE環境下においてシステマティックに行なわれる。プロセスとしては実にシンプルで、基調講演では、「四段階ステップで行われる」として各ステップについて解説が行なわれた。

アマチュアゲーム配布の仕組み「Xbox LIVE Community Games」 ゲーム配給の民主化

● ステップ1 ~CREATE (開発する)

 ゲームをXNAベースで開発する行為自体に変わりはない。ただし、クリエイターアカウントを作ってXNAコミュニティにおけるクリエイターとしての存在を明確にする必要がある。

 このアカウントはちょうどゲーマータグと同じで、どんなゲームを作ってきてどんな評価を得てきているかが、他のユーザーから参照されるようになる。

● ステップ2 ~SUBMIT (ゲームを送る)

 ゲームがどんなタイプのものなのか、残虐性やゲームタイプなどを自己評価してXNAコミュニティに送信する。

● ステップ3 ~PEER REVIEW (評価をうける)

 内容が適正なものかどうかの評価をXNAコミュニティから受ける。自己申告されているゲーム表現評価についても必要があればコミュニティから補正を受けることになる。

● ステップ4 ~PLAY (プレイする)

 評価をパスしたものは、1,000万人のXbox LIVE一般ユーザーが参照可能なマーケットプレイスへとアップロードされる。

 細かな調整は行なわれる可能性はあるが、このような仕組みでXNAアマチュアゲームの配布が行なわれることになるようだ。

「Xbox LIVE Community Games」の一例
「Xbox LIVE Community Games」のゲーム7タイトルの体験版を2月下旬より提供予定

 このXbox LIVE Community Gamesプロジェクトの正式開始は2008年内とアナウンスされ、ベータテストは春から開始される。日本での展開は不明だが、「XNAGS」は日本版も提供されているので、ほぼ同時進行でサービスが開始されるのではないかと思われる。


■ ついにXNAがモバイル機器へ
  ZUNEが携帯XNAゲーム機へと進化する

 Satchell氏は、さらに、XNAで開発したゲームがMicrosoftのミュージックプレーヤー「ZUNE」上で動作するデモを公開した。

 これは、ZUNE上で動作する「.NET」の仕組みの実装のめどが立ったと言うことでもある。なお、残念ながら、この「XNAGS」のZUNE上への展開の具体的なスケジュールやロードマップについては、今回の基調講演で正式アナウンスはなされなかった。

 デモでは、2Dタイプの縦スクロールシューティングゲームを、ZUNE側に収録されたユーザーのお気に入りの音楽を演奏しつつ、プレイできる様子を披露。

 Satchell氏によれば、「ZUNEにはWi-Fiベースのネットワーク機能が実装されているので、ネットワーク対戦ゲームを開発することも可能だ」とのこと。もちろんZUNEとXbox 360とではマシンスペックが違うので、高度なゲームは無理だろうが、2Dベースのパズルゲームであれば、将来的にXbox 360とZUNEとで相互対戦なども行なえるようになるのかもしれない。

Windows上で動作中のXNAベースのシューティングゲーム 同一のゲームがZUNE上で動作。デモではZUNE側に収録された任意の音楽でプレイできることがアピールされた

「ゲームプラットフォームの民主化がなされた」とSatchell氏
 家庭用ゲーム機、Windows(PC)、携帯機器のすべてでXNAゲームが動作し、さらに、アマチュア開発者製作によるゲーム配布システムが確立することで、「ゲームプラットフォームの民主化がなされた」としている。

 ここまでの仕組みは、まだPS3やWiiでは実現されておらず、Microsoftのゲームプラットフォームならではの特徴だといえる。


■ 新版「UE3」が登場。2008年内にXbox 360タイトルは1,000本以上に

EPIC GAMESのカリスマプログラマ Tim Sweeney氏 (CEO and Technical Director, Epic Games, Inc.)
 講演後半には、Xbox 360、PC、そしてPS3にも対応するEPIC GAMESのミドルウェア/ゲームエンジン「Unreal Engine 3.0 (UE3)」と、新作ゲームタイトルの発表も行なわれた。

 EPIC GAMESのゲームエンジン「UE3」は、機能実装の不備、ライセンシー締結したゲームスタジオへのサポート不備など、いろいろと問題が指摘されたこともあったが、現在は各種問題も一段落してきており、いわゆる「良作」と称されるようなゲームタイトルがサードパーティからも登場し始めている。「BIOSHOCK」、「MassEffect」、「Lost Odyssey」、「Stranglehold」などがそうしたタイトルの代表格になる。

 EPIC GAMESは、「UE3」のグラフィックス機能をさらに強化することを告知。EPIC GAMESのカリスマプログラマ Tim Sweeney氏 (CEO and Technical Director, Epic Games, Inc.) が登壇し、新「UE3」に実装された新しいテクノロジーを紹介した。

ポストプロセス自己遮蔽 キャラクタライティングの進化 群衆シミュレーションの実装
流体物理シミュレーションの実装 シネマティックエディタの強化 軟体(柔体)物理シミュレーションの実装
事前計算破壊シミュレーションの実装

 さらにEPIC GAMESは「Gears of War」の続編「Gears of War 2」を、こうした新技術を実装した新版「UE3」ベースで開発中であることを明らかにし、11月に発売することを公約した。

新「UE3」ベースの「Gears of War 2」は2008年11月発売予定

 Schappert氏は、Xbox LIVE Community Gamesの効果もあり、2008年末までにXbox 360用のゲームタイトルが1,000本を超す見込みであることを公言。その中には大作タイトルの「GRAND THEFT AUTO IV」や、「NINJA GAIDEN II」、「Fable 2」が含まれることを報告し、今世代のゲーム機戦争において、まだまだ元気に戦っていける姿勢をアピールした。

 今世代のゲーム機戦争では、Wiiが予想外の一人勝ちをしつつあり、MicrosoftはPS3を仮想敵として戦ってきたことが裏目に出てきている感がある。Microsoft自身は、北米でPS3を押さえたことを高く評価しているようだが、別の見方をするとPS3とXbox 360がつぶし合ってWiiにおいしいところを持っていかれたという風にも見える。

 「仮想敵PS3」という姿勢を未だ崩した感じのないXbox 360戦略は、2008年にどう影響するのか。そして完成形へと近づくXNAプロジェクトが、Microsoftゲームプラットフォームをどう成長させていくのかが注目される。

Xbox 360タイトルは2008年内に1,000本を超える!? 「GRAND THEFT AUTO IV」もついに2008年4月に登場。追加エピソードはXbox 360版でのみXbox LIVE専用コンテンツとして提供される。PS3版も出る同作だが、ここで差別化を図る
テクモの板垣伴信氏 (Executive Producer) も登壇して「NINJA GAIDEN 2」をアピール。2008年6月に全世界ほほ同時発売を約束した
最新作「Fable 2」をひっさげてピーター・モリニュー氏が登壇。Xbox LIVEで配信される体験版でゲーム内通貨を稼いで本編に持ち越すことが可能。好きな時、好きな場所でフレンドと中途プレイが可能なのも特徴。発売日は未定
MicrosoftはXbox LIVE上にゲーム民主国家を建国する


□Game Developers Conference(英語)のホームページ
http://www.gdconf.com/
□Game Developers Conference(日本語)のホームページ
http://japan.gdconf.com/
□関連情報
【2007年3月】Game Developers Conference 2007 記事リンク集
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070308/gdclink.htm

(2008年2月21日)

[Reported by トライゼット西川善司]



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