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会場:サンフランシスコ Moscone Convention Center
さて、これまでこうしたゲーム関連の表舞台で壇上に立ってきたPeter Moore氏が、昨年、Microsoftを去ったため、今回のGDC基調講演ではJohn Schappert氏 (Corporate Vice President, LIVE, Software and Services, Microsoft) が進行役を務めた。Schappert氏は、まだ登壇回数もそれほど多くないため、Xbox 360の顔としてなじみが薄い感は否めない。 まず、Schappert氏が報告したのは2007年のゲーム業界の総収入高が180億ドルを超えたということだ。これは米国において、音楽ソフト業界の収入を超えており、2007年はソフト業界というくくりではライバルともいえた音楽業界を逆転した記念すべき年だとした。 ここでMicrosoftは、いつもならば自社のデータを持ってくるはずなのだが、2007年の年末商戦では本拠地の北米でも任天堂のWiiに惜敗したため、やや自重(自嘲?)気味に「ゲーム業界全体のデータ」を持ってきたのが感慨深い。 ただ、せっかくプラットフォームホルダとして唯一基調講演を行なったメーカーとしては自社アピールもしたい。そこで2007年度100万本超セールスを記録したXbox 360タイトルをピックアップして紹介した。
タイトルとしては「Halo 3」、「BIOSHOCK」、「MADDEN NFL 08」、「Assasin's Creed」、「MAS EFFECT」、「Call of Duty 4」、「Guitar Hero II」が挙げられ、特に「MADDEN NFL 08」は「マルチプラットフォームタイトルでありながら、ここ10年で初めてソニープレイステーションファミリーよりも多く売れたことを強調したい」とコメントした。
また、「優秀なゲームはすべてXbox 360向けに登場している!」というやや変則的なデータをもSchappert氏は示してきた。
Metacritic.comのゲームレビュー採点で100点満点の高得点を記録したゲームはダントツにXbox 360が多いというのだ。80点以上はPS3の2倍、90点以上の最良作になるとWiiの3倍になるという。
「この中にはWiiやPS3にも発売されているマルチプラットフォームタイトルも含まれる」とSchappert氏。さらにマルチプラットフォーム版でもXbox 360版の方が評価が高いのは「先に発売され、出来がよいからだ」という。たしかに切り口としてはずるいプレゼンではあったが、程度の高い開発環境が早急に整備されたため、マルチプラットフォームタイトルの初期開発をXbox 360ベースで行なったスタジオが多いのは事実で、これが評価結果として表れている……とSchappert氏は言いたいわけだ。
「Xbox 360ならば開発ツールがすばらしく、Xbox LIVEのネットワークもすばらしい。同じタイトルでも開発環境がよくて、ゲームプレイでできることもライバルより多い」(Schappert氏)
そしてXbox LIVEは、Xbox 360のゲームプレイのおもしろさを支える根幹であるとし、その証拠として、Xbox LIVE上に報告されるゲームプレイ実績の総数が10億を超えたこと、2億5,000万ドルがXbox LIVE上で取引されたことも報告された。
■ アマチュア製作のXNAゲーム達の投稿/配給システム
XNAはMicrosoftが提唱する開発フレームワークで、WindowsとXbox 360 (将来はモバイル機器、詳細は後述) 上で共通動作することが可能なゲームを開発できるもの。現在の最新バージョンは「XNA Game Studio 2.0 (XNAGS)」となる。
「XNAGS」は、現在までに80万件のダウンロードが行なわれ、全世界の約400校の大学でゲーム開発のプラットフォームとして採用されている。2007年には「XNAGS」を活用したゲーム開発コンテスト「DREAM BUILD PLAY」を開催。4カ月の会期で、約200作品の応募があり、そのうち優秀作4タイトルはXbox LIVE Arcadeでの配信も決定した。「XNAGS」は運がよければメジャーデビューもできる“夢”のアマチュアゲーム開発プラットフォームとしてアマチュア開発コミュニティを中心に盛り上がりを見せ始めているのだ。
Microsoftは、これからもこうしたXNAゲーム開発コンテストを行なうとしているが、優秀作以外は日の目を見ることがないのか? ということになる。たしかに個人的なやりとりはできるだろうが、ゲームは開発者の立場からすれば1人でも多くの人に遊んでもらいたいものだ。Microsoftの審査員の目にはとまらなくても、ある特定のタイプの人間にはとてもおもしろい作品があるかもしれない。 XNAベースで開発されたゲームの配布に関わる問題点は、これまでも幾度となく指摘されてきた。この問題に対するMicrosoftの回答が「Xbox LIVE Community Games」だ。 これは簡単に言えばXNAで開発したゲームを、特にコンテストに入選していなくても、他のXbox LIVEユーザーにプレイしてもらえる (かもしれない) 環境を提供するものだ。
仕組みはXbox LIVE環境下においてシステマティックに行なわれる。プロセスとしては実にシンプルで、基調講演では、「四段階ステップで行われる」として各ステップについて解説が行なわれた。
ゲームをXNAベースで開発する行為自体に変わりはない。ただし、クリエイターアカウントを作ってXNAコミュニティにおけるクリエイターとしての存在を明確にする必要がある。
このアカウントはちょうどゲーマータグと同じで、どんなゲームを作ってきてどんな評価を得てきているかが、他のユーザーから参照されるようになる。
ゲームがどんなタイプのものなのか、残虐性やゲームタイプなどを自己評価してXNAコミュニティに送信する。
内容が適正なものかどうかの評価をXNAコミュニティから受ける。自己申告されているゲーム表現評価についても必要があればコミュニティから補正を受けることになる。
評価をパスしたものは、1,000万人のXbox LIVE一般ユーザーが参照可能なマーケットプレイスへとアップロードされる。
このXbox LIVE Community Gamesプロジェクトの正式開始は2008年内とアナウンスされ、ベータテストは春から開始される。日本での展開は不明だが、「XNAGS」は日本版も提供されているので、ほぼ同時進行でサービスが開始されるのではないかと思われる。
■ ついにXNAがモバイル機器へ Satchell氏は、さらに、XNAで開発したゲームがMicrosoftのミュージックプレーヤー「ZUNE」上で動作するデモを公開した。 これは、ZUNE上で動作する「.NET」の仕組みの実装のめどが立ったと言うことでもある。なお、残念ながら、この「XNAGS」のZUNE上への展開の具体的なスケジュールやロードマップについては、今回の基調講演で正式アナウンスはなされなかった。 デモでは、2Dタイプの縦スクロールシューティングゲームを、ZUNE側に収録されたユーザーのお気に入りの音楽を演奏しつつ、プレイできる様子を披露。
Satchell氏によれば、「ZUNEにはWi-Fiベースのネットワーク機能が実装されているので、ネットワーク対戦ゲームを開発することも可能だ」とのこと。もちろんZUNEとXbox 360とではマシンスペックが違うので、高度なゲームは無理だろうが、2Dベースのパズルゲームであれば、将来的にXbox 360とZUNEとで相互対戦なども行なえるようになるのかもしれない。
ここまでの仕組みは、まだPS3やWiiでは実現されておらず、Microsoftのゲームプラットフォームならではの特徴だといえる。
■ 新版「UE3」が登場。2008年内にXbox 360タイトルは1,000本以上に
EPIC GAMESのゲームエンジン「UE3」は、機能実装の不備、ライセンシー締結したゲームスタジオへのサポート不備など、いろいろと問題が指摘されたこともあったが、現在は各種問題も一段落してきており、いわゆる「良作」と称されるようなゲームタイトルがサードパーティからも登場し始めている。「BIOSHOCK」、「MassEffect」、「Lost Odyssey」、「Stranglehold」などがそうしたタイトルの代表格になる。
EPIC GAMESは、「UE3」のグラフィックス機能をさらに強化することを告知。EPIC GAMESのカリスマプログラマ Tim Sweeney氏 (CEO and Technical Director, Epic Games, Inc.) が登壇し、新「UE3」に実装された新しいテクノロジーを紹介した。
さらにEPIC GAMESは「Gears of War」の続編「Gears of War 2」を、こうした新技術を実装した新版「UE3」ベースで開発中であることを明らかにし、11月に発売することを公約した。
Schappert氏は、Xbox LIVE Community Gamesの効果もあり、2008年末までにXbox 360用のゲームタイトルが1,000本を超す見込みであることを公言。その中には大作タイトルの「GRAND THEFT AUTO IV」や、「NINJA GAIDEN II」、「Fable 2」が含まれることを報告し、今世代のゲーム機戦争において、まだまだ元気に戦っていける姿勢をアピールした。 今世代のゲーム機戦争では、Wiiが予想外の一人勝ちをしつつあり、MicrosoftはPS3を仮想敵として戦ってきたことが裏目に出てきている感がある。Microsoft自身は、北米でPS3を押さえたことを高く評価しているようだが、別の見方をするとPS3とXbox 360がつぶし合ってWiiにおいしいところを持っていかれたという風にも見える。
「仮想敵PS3」という姿勢を未だ崩した感じのないXbox 360戦略は、2008年にどう影響するのか。そして完成形へと近づくXNAプロジェクトが、Microsoftゲームプラットフォームをどう成長させていくのかが注目される。
□Game Developers Conference(英語)のホームページ http://www.gdconf.com/ □Game Developers Conference(日本語)のホームページ http://japan.gdconf.com/ □関連情報 【2007年3月】Game Developers Conference 2007 記事リンク集 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070308/gdclink.htm (2008年2月21日) [Reported by トライゼット西川善司]
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