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会場:Moscone Center
内容的には、「これからモバイルゲーム開発を始めようと考えている人向け」といったものが多かった。開発事例とその狙いを語ることで、モバイルゲーム開発の入り口を指して見せ、GDCの来場者にもっとモバイルゲームに興味を持ってもらおうという姿勢が感じられた。 もう1つ目に付いたのが、日本のモバイルゲーム市場に関する話題。先日行なわれた仏Gameloft CEOのGuillemot氏の基調講演では、日本はモバイルゲームの先進地域という捉え方で語られていたが、他のセッションでは「欧米とは全く異なる市場」として、半ば色物のように扱われていることもあった。コミュニティとゲームが密接に結びついたサービスというのは欧米ではまだ形が成立していないようで、ユニークな研究対象にはなりえても、直近にこの仕組みが欧米で浸透するとは思えない、といった空気も感じられた。コンシューマ市場も日本と欧米で色は違うが、ビジネスモデルからして考え方が違うモバイルゲーム市場は、現状ではさらに大きな差があるようだ。
ここからは、いくつかのセッションをピックアップして紹介していく。
■ Nokia端末向け「EARTH DEFENSE FORCE(地球防衛軍)」の中身と狙い
Nokia端末用「EARTH DEFENSE FORCE」(以下、EDF)は、日本では「地球防衛軍」として展開されているアクションゲームのモバイル版(直訳なのが逆に面白い)。D3パブリッシャーは北米で、Xbox 360用の「地球防衛軍3」を発売している。 まずは宮本氏が、今後のモバイルゲーム市場の見通しを示した。2006年のデータと2011年の予測値を示し、中国で急激な伸びを示すほか、米国もまだ成長を続けるとした。プラットフォームはJavaが伸びていくとしている。ゲーム内容ではマルチプレーヤーゲームが2006年の7%から、2011年には19%にまで伸びるだろうという予想を示した。
続いて日本のモバイルゲームの現状を紹介。日本では端末の高性能化が著しく、それが開発コストを押し上げていると指摘。また課金形態がキャリア主導に“制限されている”ことなど、Nokia側の視点でビジネスモデルに制限があると指摘した。またカジュアルなゲームは、SNSのユーザー獲得のために使われるなど、無料で提供される方向に進んでいることも挙げた。
SNAP Mobileとは、モバイルゲームにおけるネットワーク関連の仕組みを、プラットフォーム側で用意したもの。例えば、リアルタイムのチャット機能や、スコアランキング機能などが予め用意されており、ゲーム側はそれを組み込むことで、多機能なオンラインモバイルゲームを提供できる。またNokiaが各国に端末を提供していることもあり、グローバル展開するのにも適している。竹川氏は、「『EDF』を配信する上で理想的な環境」とSNAP Mobileを評価した。
「EDF」は、プレイステーション 2で発売された「地球防衛軍2」をベースにしているという。欧米では「地球防衛軍」、「地球防衛軍2」は発売されておらず、「日本で好評を得ている世界観を世界にも提供する」という狙いがあるという。
その中でゲームを作るにあたり、「多くの敵に向かっていくというところを重点的に再現した。FPSテイストながら、『地球防衛軍』ならではの面白さを損なわないようチューニングした」という竹川氏。アクション性を重視しながらも、2Dのアニメーションの枚数を極力抑えるよう設計されている。特に苦労したのが、「地球防衛軍」ならではの巨大怪獣の表現だそうで、遠いときには全身が見え、近づかれると足だけが見えるようになるという、段階的にな見せ方で対応している。 ゲーム面でも苦労が見え、難易度は3段階を用意。難しいモードでは相当厳しいバランスになっているが、敵を倒して獲得したポイントによって30種類の武器を入手でき、強い武器を持っていくことで攻略しやすくなる、というバランスになっている。 これらのゲームの開発は、日本で行なわれた。「地球防衛軍」の開発元であるサンドロットの監修も受けながら、3~4人程度の開発スタッフで約3カ月かけて開発したという。その後、SNAP Mobileの機能や各国対応などのため、海外でさらに半年の開発期間をかけているという。
SNAP Mobileの機能では、スコアランキング機能を利用している。ゲームは米国と欧州で3月から4月にかけて配信予定だが、「全世界でスコアアタックをやりたい」と語っていた。またアプリ自体も今回のものにとどまらず、「次はさらにネットワーク性を高め、3Dでも作りたい」と意欲を見せた。
■ 「モバゲータウン」など、日本の「モバイルソーシャルエンターテイメント」を紹介
講演の中身は、日本で大成功を収めている、ゲームとコミュニティ、広告収益モデルの3本を柱としたサービスなどを紹介するもの。日本人にとって真新しい情報があったわけではないが、欧米では存在しないビジネスモデルとユーザー志向の話題だけに、来場者の反応が日本と欧米の違いを明確にするという意味で面白い内容になった。 Collier氏が最初に示したのは、「モバゲータウン」についてのデータ。会員数は700万人(2007年12月末時点では865万人と発表されている)、特に15~20歳の男性の約4割がユーザーであるというインパクトのある数字を提示した。これは運営元の株式会社ディー・エヌ・エーがデータとして示しているものだが、日本人でも驚くデータだけに、欧米の聴講者は到底信じられない様子で、「そんな馬鹿な」と言ってジョークではないかと受け取る人もいそうな雰囲気だった。 次に「モバゲータウン」のFlashゲームも紹介し、いくつか実演も交えられた。ゲーム自体は日本語だが、基本的にボタン1つで遊べるようなシンプルなものばかりなので、内容的には問題なく伝わった様子。ただ、「無料で提供するために作られた、極めてシンプルなゲーム」というもの自体が珍しいようで、シンプルな中にあるユニークな演出に対しては上々の反応。特に、マスコットキャラクタの「モバゆび」と、お笑い芸人のにしおかすみこのコラボレーションによるゲームは、そのインパクトでかなりの笑いを誘っていた。Collier氏は、これらのFlashアプリについて、「JavaやBREWほどリッチではないが、ユーザーに届けやすく、開発しやすく、配信コストも安い。バランスがいい」と利点を説明した。 次にコミュニティに関する説明が行なわれた。「モバゲータウン」のアバター機能を紹介し、アバターを楽しむことでユーザーがサイトを使い続け、コミュニティが形成されていくという仕組みを説明。またコミュニティの存在によって、ユーザーからのフィードバックが極めて早く、それに対するリアクションもすばやく行なえるという利点を説明した。 3つ目の要素となる広告モデルについても、「モバゲータウン」を例に説明。広告をクリックすることで、ユーザーには仮想通貨の「モバゴールド」を渡し、運営側は広告料を入手する。またゲームを売るのではなく、ゲームに広告を入れる(アドバタイジングゲーム)手法を取る場合、1,000ページビューごとに5ドルの広告料を取る、といった仕組みも合わせて紹介した。 さらに、「モバゲータウン」でのコカコーラのプロモーションについても紹介。これはアバターでプロモーションキャラクタを作りつつ、アドバタイジングゲームも展開するという全面展開によるもの。プロモーションを行なう場合、通常はコカ・コーラから広告代理店、次にキャリア、そして運営という広告料の流れになるが、ディー・エヌ・エーは仲介なしに直接やり取りする仕組みをとったことで、互いの収支の効率も高めているという。 Collier氏は、ミニゲームとコミュニティ、広告という3つの柱によって動く日本のサービスを、「携帯電話の楽しみの新しいジャンル」と評した。ビジネスモデルの話題になると、聴講者も真剣に聞き入っていた。ディー・エヌ・エーは、米国に子会社を設立して「モバゲータウン」のビジネスモデルで北米に進出することをすでに発表している。この動向も合わせて、北米のモバイルゲーム市場が今後どうなっていくのかが楽しみだ。
このほか、地図検索サービスのマピオンとのコラボレーションによる「ケータイ国盗り合戦」や、位置情報を使ったペット育成ゲーム「BitPets」、ユーザーが作成したアバターでディズニーキャラクタとの生活を楽しめる「Disney Wonder Days」など、新たな仕組みを取り入れたモバイルゲームも紹介された。
□Game Developers Conferece 2008のホームページ http://japan.gdconf.com/ □関連情報 【2月19日】仏GameloftのCEO、Guillemot氏がGDC Mobileで基調講演 日本の環境を世界のお手本に。リッチコンテンツが市場拡大の鍵 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080219/gl.htm (2008年2月21日) [Reported by 石田賀津男]
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