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会場:サンフランシスコ Moscone Convention Center 世界中からゲーム開発者が集うGame Developers Conference 2008初日と2日目はオーディオやプログラム、シリアスゲームなど様々な視点でゲームを分析し、知識の共有とそこからの発展を促す「チュートリアル」が開催される。本稿ではCasual Games Summitの初日の講演の模様伝えたい。
チュートリアルは1つのテーマを午前10時から午後6時まで2日間たっぷりと掘り下げる。初日は「カジュアルゲームの現在」としてカジュアルゲームの基礎を説明し、次の日に行なわれる「カジュアルゲームのこれから」に繋げていくという構成だった。このため、昨年と内容がかぶるものも多かったが、確実に起きている変化や、カジュアルゲームが取り巻く状況などを確認できた。ここから「未来」へどう繋がっていくのだろうか。
■ コンソール機への進出、広がるユーザー層、進化する演出……改めて問われるカジュアルゲームの革新と本質
ここで取り上げられる「カジュアルゲーム」とは、これまではPS2(PS3)やXbox360などで店頭販売されている3Dグラフィックスや長いストーリーを持つ大作ゲームとは違う1つのアイデアやコンセプトを押し出したタイトルを指す。転がってくる宝玉に同じ色の宝玉を当てて消していく「ZUMA」や、お客のオーダーに答えてテーブルに料理を運ぶ「Diner Dash」といったタイトルがヒットタイトルとして知られている。 360の購入時にバンドルされている「Hexic」など、最近ではPS3やXbox 360のダウンロードタイトルとしても人気を集めている。これまでCasual Games Summitでは携帯電話で楽しめるゲームは、「PCへのダウンロード販売」という形に限定していたためか話題に上ることはなかったが、Xbox 360の「Xbox Live Arcade」をはじめとしてこれまでPCのみで展開していたカジュアルゲームがハードの垣根を越えて広く販売されるようになった。 カジュアルゲームの基本的なコンセプトは「プレーヤーがすぐにゲーム性を把握することができるシンプルさ」、「ゲームそのものは奥が深く、遊びごたえがある」、「ハードに高レベルな3Dグラフィックス機能を要求しない」、「残虐さをテーマとしない」など様々なポイントがある。 これまでのCasual Games Summitでは登壇者の傾向からか米国でのダウンロード販売によるPC向けカジュアルゲームに話題をあえて限っていたが、昨今では効果的に3Dグラフィックスを活かした演出のゲームなども出てきている。また、「Wii Sports」などカジュアルゲームがもつ間口の広い楽しさを実現させるゲームも登場し、コアゲーマー向けのコンシューマとPC向けカジュアルゲームの“対立”という単純な構図ではなくなりつつある。 前回ではPS3やXbox 360については少しだけ触れられる程度だったが、今回はカジュアルゲームの有効なアピール・販売方法も取り上げられ、携帯電話もハードの性能上昇により、PCでプレイできたゲームがそのまま移植可能になり、有望な市場となっていることが紹介されるなど、カジュアルゲームを作っている業界全体に大きな変化の波が来ていることが語られた。 カジュアルゲームはユーザーが直感的に操作できるマウスが「カジュアルゲーム向けデバイス」として捉えられていたが、Wiiのセンサーやポインティングデバイスとしての手軽さがゲームの間口を広げている点や、「Guitar Hero」のギター型コントローラのように今までのコアゲームファン以外の層を開拓したゲームデバイスも紹介した。 カジュアルゲームの流行を後押ししているのが「ユーザー層の変化」である。米国でのカジュアルゲームは昨今では「母親をゲームの友達にする」ほどにゲームをプレイする“層”を広げるタイトルとなっている。一方で凝ったグラフィックスや音楽で強く世界観を主張したり、ストーリー性を入れるなどカジュアルゲームの枠を超える、コアゲーマーにもアピールできる作品も増えてきているという。 カジュアルゲームの1ジャンルの中で「スキルゲーム」というものが紹介された。これはオンラインで対戦できるポーカーといったゲームでユーザー自身が実際のお金をかけてプレイできるのが特徴だ。オンラインのギャンブル法に関係するため、プレイできる州とできない州がある。というビジネス的には見逃せない要素ではあるがCasual Games Summitでは「こういうジャンルもある」という簡単な紹介のみにとどまっていた。来場者からも「ユーザーの不正行為にどう対処するか」といった質問にも、「真剣に対処している」といった簡単な受け答えのみだった。 他にも、今回はほとんど触れられていなかったがカジュアルゲームのジャンルとしてソーシャルネットワークやMMORPGも多くのユーザーを獲得しているようだ。最近は「Club Penguin」というミニゲームも楽しめるコミュニケーションツールが人気だという。この作品は基本プレイ無料のアバターなどのアイテム課金によって運営されている。 この他、NEXONの「メイプルストーリー」も人気とのことだが、初日にはこれらのタイトルを紹介する講師はいなかった。前回でも感じたことだが、Casual Games Summitという名前ではあるが、ダウンロードによるゲーム販売関係者のみが集まるという「狭い意味でのカジュアルゲーム関係者」という印象はやはりぬぐえなかった。 “The Promise of Casual Games”という題でKeynoteスピーチを行なったPlayFirstのPresident & CEO John Welch氏はここまで語られたカジュアルゲームの概要と変化を紹介してから、「昨今のゲームはより高価に、より難しくなりつつある。我々のゲームもコンシューマ機でプレイできる様になってはいるが、コントローラではどうやってプレイして良いかわからないユーザーもいる。本来誰もがゲームをプレイすることが好きなはずだが、コントローラがゲームをプレイしたい人の障壁になっているのではないか」と語った。 さらにWelch氏は作り手側、販売側の問題点も指摘する。20ドルでゲームをダウンロードするという固定的なゲームの販売体制はユーザーのニーズに一致しているのか、ゲームのクローンが出続ける作り手の創造性と、コピーを作り手に強要する販売側の問題、業界全体が常に「革新性」を求めなくてはならないとWelch氏は語る。Welch氏は「“カジュアル”はすでにゲームのカテゴリーではない。私達は“ゲームはみんなのためにある”という約束を常に果たしていきたい」という言葉で講演を終えた。 Welch氏のコントローラへの考え方は、インベーダーからファミコンへとゲームをプレイしていた筆者の「ゲームプレイ」とは全く違うとらえ方で驚かされた。DSのタッチペンによる操作方法や、Wiiなどが中高年のユーザーを獲得しているという一面はあり、改めてゲームとコントローラの関係に考えさせられた。 キーボードでドライブゲームやアクションゲームをプレイする韓国ユーザーを見るとどうしても「窮屈さ」を感じさせられたのだが、ここももう一度考えてみたいところだ。一方で「Xbox Live Arcade」のタイトルは使用するボタンを極力少なくすることでユーザーへアピールしている。カジュアルゲームに分類される「パックマン」など過去のタイトルはコントローラでプレイするのが一番しっくり来るし、今後インターフェイスがどうなっていくかは興味のあるところだ。
カジュアルゲームの中にもより美しいグラフィックスや独特のストーリー、音の演出など様々な進化が起きている。シンプルであり続け、みんなに楽しんでもらうためのゲームであることと、作り手のこだわりと、創造性を活かす部分というのは難しいところかもしれない。「万人のためのゲーム」という“約束”にゲーム開発者がどのような答えを出していくか、注目したい。
■ シンプルで、ユニークで、不条理で面白い。トップ開発者が紹介する注目の最新作 Casual Games Summit初日の最後には、Nick Fortugno氏とJoju GamesStudio ManagerのJuan Gril氏による「The Year in Casual Game Design」というタイトルで注目のタイトルが紹介された。非常にユニークな物が多かったので紹介していきたい。
各タイトルを見て感じさせられるのは作品からみなぎる独特の世界観と、クリエイターの強い個性である。日本のゲームもあり、どの作品もデモプレイを見ているだけで思わず触ってみたくなる魅力を持っていた。
□Game Developers Conference(英語)のホームページ (2008年2月19日) [Reported by 勝田哲也]
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