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Taipei Game Show 2008現地レポート

SCE Asiaプレジデント安田哲彦氏特別インタビュー
目標は1,000億。さらに尖鋭、混沌化するアジアビジネスの今後を占う

1月24日~28日開催

会場:台北世界貿易中心

入場料:大人200台湾ドル(約700円)
子供100台湾ドル(約350円)


 SCEのアジア部門SCE Asiaは、今年のTaipei Game Showで、過去最大規模の出展を果たした。出展単位としては、一昨年のSCEH(HongKong)のTaipei Branchから、SCET(Taiwan)へ昇格し、すでに報じた通り、初日は経済部長を来賓として招き、盛大にオープニングセレモニーを開催した。

 アジア限定のPS2の新カラー「朱宝紅」や、台湾政府との共同プロジェクト「台湾クリエイター育成プログラム」を発表するなど、展開7年目にして台湾独自のカラーを打ち出すことに成功した。台湾は政府の強力なバックアップもあり、SCE Asia内でのビジネス単位としては、もっとも綺麗に回っている印象を受ける。

 今回もまた、SCE Asiaを強烈なリーダーシップで舵取りを行なうSCE Asiaプレジデント安田哲彦氏に単独インタビューに応じていただいた。弊誌としては2007年7月のChinaJoy以来となるが、台湾で取材を行なうのは2年ぶりとなる。

 今回は、安田氏に加え、その片腕として采配をふるっているSCE Asiaの各部門の責任者にも同席いただいた。アジア全土の流通やマーケティングを担当するアジア営業統括部部長川内史郎氏、今回の「台湾クリエイター育成プログラム」や韓国のMegaTVとの提携などアジア独自の企画の立案を担当している企画開発部部長金澤克彦氏、そしてSCET総経理を務める本間和彦氏の計4名である。

 業界トップではありえないほどに過激な発言を連発するいわゆる“安田節”は、ますます勢いを増していたが、今回はすかさず3名の部門責任者が同じタイミングで止めに入り、この奇妙な連帯感がSCE Asiaの強さであり、SCE社内で“安田組”と言われる理由が少しわかった気がした。


■ SCE Taiwan設立の経緯と「台湾クリエイター育成プログラム」の趣旨

中央がSCE Asiaプレジデント安田哲彦氏、右がアジア営業統括部部長川内史郎氏、左が企画開発部部長川内史郎氏
SCET総経理の本間和彦氏。本間氏からは台湾の状況を聞かせていただいた
「台湾クリエイター育成プログラム」に対してコメントする安田氏。台湾のゲーム業界就職希望者を甘やかすつもりは一切ないようだ
記者発表会で「台湾クリエイター育成プログラム」の概要を説明した金澤氏
編集部: まずは台湾市場についてお伺いさせてください。ついに2007年12月、SCEH(HongKong)から独立してSCET(Taiwan)となりましたが、設立の狙いを教えてください。

安田哲彦氏: 最初に台湾でビジネスやり始めたときにはコピーだらけの焼け野原状態で、まともな店が1店も無いような状態から始まりました。本間さんが苦節7年間耕してようやく普通のビジネスがやっとできるようになったわけです。

 PS2のコピーはまだ残っていますが、だいぶ少ない状況になってきています。売り上げ的にも昔と比べしっかり右肩上がりに増えてきて、社員も増えた。そこでしっかりとした支店という形にして、本間さんに責任者をやっていただいて、もっと拡大していただこうという普通の考え方から誕生しました。

編: SCETの当面の目標とは何でしょうか。

安田氏: PS3の普及です。元々PS3は性能的には素晴らしいのです。価格の問題やいろいろな問題があるにしても、まだ一般的に知られていないような大きなパワーを秘めた商品なので、これを広めながら同時にネットのことも視野にいれながらやっていきたい。

 ただ、我々が持ってきたものを単に売るのではなく、台湾とコラボレーションができればいいなと思っています。ただモノを売るだけだとあまり楽しくないし、お互いに臨場感が無いのです。お店とお話をするのもそうだし、代理店とお話しするのもそうだし、ユーザーさんとお話しするのもそうなのです。それからソフトを作りたいという人と会話をしていくことができればと思っています。

編: 現在、会社の規模はどのような状態になっていますか?

安田氏: すでに20数名の人員がおります。ただ、良い大学を出て、定時に出社して、パソコンとにらめっこしていれば済むような仕事ではないのは確かです。みんなちゃんとした仕事をしながら手を汚しながらやらなければダメな会社になってしまいます。そういう意味で、随時入れ替わりながら、残っていく人は増えてきてます。非常に優秀な人が増えてきています。

編: 7年間耕してみて、台湾市場の独自性とは何だと考えていますか?

安田氏: それはやっぱり製造業で1位を極めたことですよね。実際、中国本土で我々の商品を作っているのは台湾系の会社なのですが、その次に来るものというのを台湾政府も模索されていて、それがデジタルコンテンツだというのです。デジタルコンテンツとは聞こえはいいのですが、あまりに漠然としすぎているので、それを絞り込んで具体的に何をすべきかというところまで現在詰めているところです。

編: その1つが今回発表された「台湾クリエイター育成プログラム」ということになるのでしょうか?

安田氏: そうですね。日本から台湾に先生を呼んで台湾の学生にゲームを勉強してもらう。でも、1時間講義を受けたら、ちゃんと大学としての単位の中に入れてもらえるくらいのところまでやらないと、真剣にはやってもらえませんよね。そこまで視野に入れながら進めています。

編: 専門学校に近い形でしょうか。

安田氏: 専門学校といっても、日本でもそうですが、専門知識が増えたからといって必ずしもゲームが作れるようになるわけではない。色々な経験をして、漫画も読み、コンパで遊んでみたり、音楽を聴いてみたり、人間として楽しいということをわからないとゲームなんて作れないわけですから。最終的にそういう人材の育成を目指したいなと思っています。

 提供だけしてそれでゲームが作れるなんて勘違いさせてはいけません。トータルとして面白いものを探せる人ですよね。昨日もテレビ番組でやっていたのですが、24、5歳くらいのデザイナーさんなんだけれども、自分で色々なものを見ながら感じて、色々な提案をすると。そういうものをみんなから表彰されたりという。そういう人が何人も出てくるといいですね。

編: それはSCEさんが台湾で7年間ビジネスをやってきて、台湾にはゲームクリエイターになるためのキャリアパスがまったくないという認識に至ったからこそ、こういう動きを行なったのでしょうか。

安田氏: 日本のソフトメーカーさんは昔から、ゲームを作りたいからアメリカに渡って、親から人からお金を借りて学びにいって、自分のリスクで勉強してそれを持って帰ってきて、またソフトを作って出すときも自分でお金を借りて。作って出したら当たったと。全部がそうじゃないにしても、数百人に1人くらいそういう人が出てきて今日本にある会社の前身になったと思うのです。

 大事なのはもうちょっと総合的な部分で、自分のリスクでやることです。その点に関しては、台湾は環境的に「ゲーム作るぞ」というと、「俺投資するぞ」という人がいっぱい集まるような国なのです。何もしなければ当然前に進まない。そういう状況に終止符を打ちたいですよね。

編: 企業家よりはゲームそのものを作る人がいないということですね。

安田氏: 金儲けの材料としてそういう計画を利用されてそれで終わっちゃう。昨年、台湾産のゲーム第1号として「Railfan台湾新幹線」を発売しましたが、台湾の方とお話しすると、まず聞かれるのは何万枚売れましたか、いくら制作費かかりましたか、どのくらい儲かりましたかという具合で、商売のことしか考えていないんですね。

 「Railfan台湾新幹線」を自分で遊んでみて、これをこういう風にしたら面白いんじゃないのとか、こういう情報が入っていると面白いなとか、そういうような話が出てくるようにならないとダメですよね。どこに作らしていくら儲かった儲からなかったという話になると、ゲームを作ることとは随分遠い話になってしまう。ただ、以前に比べるとだいぶ国としてもバックアップ体制ができてきたし、純粋に商品を作るという意味での人材も何人か出てきています。

編: SCEさんが、このプロジェクトで考えている、成功のタイミングというのはいつですか?

安田氏: 皆さんもそうだと思うのですが、一人前に頑張られている方というのは誰かに言われてなっているわけでも何でもなくて、自分で努力してきて今日までなってきていますよね。それと同じで彼らもそうならなければならない。しかし、今はやってみたいのだけどどうしていいのかまったくわからない状態です。だから我々としてこういう方法も1つとしてありますよということです。だから今回提供するものがすべてじゃなくて、他社さんから対抗馬が出てきても良いと思うのです。そんな方法じゃだめだからこんな方法があるんじゃないのというのが1番盛り上がりますよね。

 SCEの利益は考えていません。授業料まで政府が全部出してくれますなんてスキームも考えていません。親が全部丸抱えにして、良い子が育つとは思えないのです。学校のお金から洋服代から飯代から遊び代から全部出してくれる親がいて、裕福な家庭に育ったから良い子が育つとは限らないわけです。アルバイトしながらでも自分がやりたいことを一生懸命やる子が育っていくわけなので。そのきっかけくらいにはなってくれたら良いなと思っています。

編: このプロジェクトは何カ年計画なのでしょうか。

安田氏: 1年やって、続けられればもう1年やって、3年、5年と続いていけばいいと思っています。

金澤克彦氏: 本当にやってみながら目標自体を変えていくことになると思うのです。ただ、本当にやる意味だけはあると信じています。


■ アジア限定カラーの新型PS2「朱宝紅」誕生秘話

アジア限定カラーの新型PS2「朱宝紅」。旧正月直前の2月4日に発売される
ファッションショーを模して新色ハードを披露。極めてアジア的だが、翌日の新聞各紙はこぞってこのニュースを取り上げ、狙い通りの効果があったようだ
今回の赤PS2について、かなり無茶をして実現にこぎ着けたという川内氏。それなりの達成感を感じているようだ
編: 今回PS2の新色を発表しました。新色というと当然PS3かPSPだと思ってしまいますが、それが新型PS2で、なおかつアジア限定カラーというのは、ちょっとしたサプライズでしたね。

安田氏: アジアはPS2がまだまだ人気があって、そろそろ買い替え時期なんですね。もちろんPS3がほしいという人もいるのだけど、もちろんまだPS2でいい、という方もいますから。

編: 台湾ユーザーのハード所有比率を教えてください。

安田氏: PSPがもっとも多いです。その中でもPS2を持っている方も多い。ただ、PS2はどうしてもPS3やPSPに埋もれがちですので、今回こういう発表をしました。新型PS2で、新しいカラーバリエーションが出てまた注目を集められれば、1部の方には喜んでいただけるかなと。この手を打ったら100%効果があるという手ではなくて、10%のダメージでも10回叩けばガラスが割れるような、そんな形のビジネスです(笑)。

本間和彦氏: PS2の過去のヒット作はいまだに売れていて、ゲーム専門店にもそういうお客さんが来ています。

川内史郎氏: 赤のモデルはアジアだけです。アジアの旧正月に向けて赤のモデルを是非出したいなと。我々が決定を下したのが結構遅くて、設計担当に怒られつつ無理やり発売にこぎ着けました。今のところ日本を含む他の地域で発売する予定はありません。

 コストができるだけ上がらないように、そして新しいアダプタが中に内蔵された新型に是非新色を持ってきたいなと。ずっと何年も前から赤というイメージは持っていたのですが、ようやくPS2というのがアジア向けの需要がかなりクローズアップされてきて、今回実現した形です。

編: 実際、PS2は韓国や台湾ではまだまだ現行機ですよね。アジアにおけるPS2のウェイトはどの程度と考えて良いのでしょうか。

安田氏: その質問に答えるのは難しい(笑)。そこまで正確な数字は持っていませんが、実感としてPSPとあまり変わらないくらいなのかなと考えています。

編: それは相当大きくないですか?

安田氏: 大きいですよ。ただ、それはあくまで保有率で、稼働率がどうなっているのか図りにくい。今度調べてみようかなと思っています。ただ、間違いなく後1年とか2年経ってPS3の値段が落ち着いてきたときに、PS2のお客さんは据え置き型ということでPS3に移ると思うのです。

 ただ、今の価格というのは、まだアジアの皆さんが簡単に買える価格ではない。日本とまだ所得差があるので、アジアではもうちょっと皆さんがお金をためないとだめなのかなという気がしています。ただ、PS3は10月から1月というのは、それまでのペースに比べると3倍くらいの売れ行きになってきています。

編: つまり新型が出たタイミングですね。

安田氏: タイミング的にはそうですが、新型ばかりが売れてるわけではなく、旧型がバタバタバタと売れ始めたという現象もあるのです。台湾でも60GBの在庫が先にすべてなくなりました。

本間氏: 香港は80Gを出していて、台湾は60GBと20GBを出しているのですが、60GBからの商品の切り替えは結構難しいなと思ったのです。しかし、フタをあけてみると、40GBがお店に並ぶ前に60GBが全部出てしまったのです。

安田氏: ちょうど40GBを出しますよと言ったあたりで、売れ行きがぜんぜん変わってきてしまった。これは我々としては嬉しいのだけど、お家の事情からするとちょっと苦しいなというのが実感です。相変わらずマイナスが出ますからね。

編: PS2の赤は、アジア限定カラーですが、限定色を出すほどSCE Asiaの力がSCE社内で強まってきたと見ていいのでしょうか?

安田氏: ランチェスターの法則でいうと、気にしなくて良い5%と比べると気にしなくてはいけない6%にはなってきている、という言い方は可能ですね(笑)。影響が無いのではなく影響はあるというところまではもう少し時間が必要なのね。少なくとも11%以上のシェアを社内で取るというのは手を伸ばせば届くなというところまでは来ています。

編: 以前から10%を目標にしたいとおっしゃっていました。

安田氏: 今はそのちょっと手前くらいです。2、3年内に11%の社内シェアを取るくらいまではいきたいですよね。

編: 社内シェアが11%を超えると何が変わりますか?

安田氏: 当然ながら影響力が出ます。今は例えば川内さんのほうで話が出ましたが、1つのモデルを限定モデルで作ろうというのは大変な苦労が必要なのですが、比較的スムーズにできやすくなると思います。


■ SCE Asiaが元気な理由は、安田体制にあり

SCE Asiaは全スタッフが元気が良く、とにかく仕事が早い。安田氏持ち前の陽性の性格とリーダシップが強く作用しているように感じられる
SCETブースは、コンパニオンにしっかり教育を施している。現時点で「Little Big Planet」をしっかり説明できるコンパニオンは日欧米でもなかなかいない
編: 2007年のSCEさんのビジネスは、残念ながら停滞感が感じられた年になりました。ただ、アジアばかりは、利益率、売上高云々は別にして、非常に元気だなという印象を受けました。この温度差はどのあたりから出てきているのでしょうか。

安田氏: ゴルフでも、グリーン見ながら振るとダフるじゃない? 球をよーく見て打つとダフんないんですよ。我々SCE Asiaは議論8割行動2割ではなくて、議論2割行動8割なのです。だけど、グリーンを見ながら乗っけようなんて議論ばかりしてて、グリーン見て振ったらチョロでしたという違いではないでしょうか。

 私たちは決めるのに時間かけないですよ。皆さんで一定の時間議論してもらって、本間さん、川内さん、金沢さんから出てきたことについてその場で決めます。それで、お任せします。うだうだパソコンの前に座ってうじうじしている暇は無くて、とにかく早くやる。で、思い切ってやってみると意外と案ずるより産むが安しで。うまくいくと皆さん元気になるじゃないですか。自信もつくし。私は東京がダメとかアメリカやヨーロッパがダメといっているわけではなくて、我々のやり方というのは即断即決して決めたことを何が何でもやっていくと。失敗しても怒らない。だけどさぼってたら怒る。この繰り返しですよ。

編: 安田さんから見て、SCE全体の評価とアジアの評価を教えてください。

安田氏: 私は1番最初からやっていて、ローギアから入ってセカンドギア、サードギアと順々にやってきていますので、今SCEが苦しいと思うことって私にとっては当たり前みたいなところがあるのです。ただ、苦しい苦しいって言わないでやっているだけです。ご存知のようにSCEはどんどん若い人に入れ替わってきています。そうすると最初にローギア状態で、不安がいっぱいで時間も足りないしお金もないみたいな時を経験している人が少ないんですよね。SCE Asiaではやりたいことがあればまずやってもらう。やりながらマイナーチェンジをして、できるだけ早くターゲットを達成するという、その繰り返しです。他の部署がどうかわからないのですが。私のやりかたはそういう感じです。

川内氏: 安田の話は聞こえは良いかもしれませんが、要するにやらないととんでもない目にあうんですね(笑)。「ここでこういう話をしています」、「こう思うよ」とか、「こうなったらいいのに」という議論が社内にもある中で、「だったら、何でやらないんだ」となるわけです。「いやできないんです」じゃ済まない。「だったら、どうやったらできるんだ」という話になるんです。

 格好良く言うと安田が言ったようなことなのですが、現場の我々からすると死に物狂いでドロドロになりながら地を這ってでもターゲットを達成するしかないのです。アジアは逆にそれが良い動きになってきている。実際、2007年の間は停滞感はずっとなかったですね。

 もちろん、メディアに書かれることでSCE社内が意気消沈してしまったりだとか、逆に意気が上がったりすることはあるのですが、SCE Asiaはずーっと通して皆ががーっと動いていて、意気消沈している暇は無かったです。みんながターゲットに向けてどうやったら達成できるのということを考えていかないと、会社としても安田に対してレポートできない。だから「失敗しました」で終わりというのは無いのです。理由がどうあれ、中でどうがんばっても結果が出てこなければやってないのと等しいと。それは文化として根付きましたね。

安田氏: 一生懸命やってもね、結果が出なければやらなかったとおんなじなんです。だからそれは標語みたいに言っています。私がどんだけ馬鹿なのかは皆さんよくご存知だから、周りの優秀な皆さんに支えて貰わなければならないのですよ(笑)。

編: 1年振り返ってみて、SCE Asiaで良かった部分、失敗したなという部分があれば教えてください。

安田氏: 先ほど川内も言いましたが、日本のマスコミ各社の記事というのは気になりましたね。本当に販売台数知ってるのかな。ちゃんとお店でじっと見ていて、販売台数を調べてるのかなと思いました。大手ゲームメーカーさんのハードが8割で、弊社が2割くらいの書かれ方をしていますよね。ところが売り上げ的に見てもうちの方が依然として大きいのです。そういう記事を読んでソフトメーカーさんがこぞって片方だけの情報で記事を作り始める。非常に罪だと思いますよね。

 我々がダントツを走っていたときは、各ソフトメーカーさんは、ソフトを他社さんの方で作るときは「マルチプラットフォームでございます」と言っていました。今回はPS3は「なんでマルチプラットフォームじゃねえのかよ」って言いたくなるぐらいに偏ってる。確かにナンバーワンで走っているときに、うちの態度も反省しなければならないことはたくさんあったのではないかと思いますが、それにしても極端だと痛感しています。今日も台北ゲームショウにお越し頂いていたいくつかのソフトメーカーさんにはお声がけをして、実態を見てくださいと。こんな感じでやっていますと。一緒にやってくださいよということを、コツコツやっています。

編: PS3に関してですが、7月に安田さんにインタビューさせていただいた時に、「まだ高い、3万9,800円くらいが妥当ではないか」という話をされましたが、まったくそのとおりのシナリオになりました。それだけではなく新型が出て、1月に入って60Gの生産終了とバタバタと動きがありましたが、こうした一連の動きを、SCE Asiaとしてはどのように捉えていますか?

安田氏: 色々反応される方はいるのだけど、1つ1つが決定的なものは無かったと思います。ただ、価格はものすごく重要なのだけれども、それだけということになると寂しいじゃないですか。それに代わるサービスというものがないといけませんよね。たとえば、ゲームショウでモノを触っていただく機会を作るだとか、ゲーム大会を開催してみるだとか、色々なインセンティブをつけて販売させていただくだとか、よく説明をさせていただく、そういうのもやはりサービスの1つです。

編: アジアでもやはり新型PS3からが本格展開スタートという認識でいいのですか?

安田氏: 今のところはそれで結構です(笑)。

編: 実際には新型PS3が発売されてからのアジアの反応はいかがでしょうか。

安田氏: 先ほど申し上げたとおり、10月以降からは2倍3倍の売り上げが出せるようになってきたということくらいしか事実的にはありません。それを今後分析していかなければなりませんよね。ただ、単純に予定していたものよりも3倍売れるとなると、製造のほうはとても苦労します。最近思うのは、欲しいなと思ってから毎月毎月お金をキープして貯めてから買って頂いているという感じがやたらと伝わってくるのです。ありがたいなと思いますね。

川内氏: 実はモノがないのですよ。本間君などからは欲しい欲しいといって来てくれているのですが。

安田氏: そんな状況を迎えているので、分析するところまで時間的にないのです。とにかくブツをどうにか生産管理と交渉してなんとか運ぶ。それをアジアで売る。その連続なので、今のところゆとりがないのです。PSPもそうなのです。PSPも棚にある日にちが1日もない。入ったらすぐ出てしまう。それで全部完売状態です。

編: 昨年の時点では、PS3に関しては限られたバジェットの中から、1台売るごとにちょっと持ち出しになるので、少しずつ売っていくという守りの姿勢でやらざるを得ないとおっしゃっていました。そうした状況は今年に入ってから変わったのでしょうか?

安田氏: それはやっぱりちょっと後ろ向きな考え方だったので、PS2とPSPを予定より多く売るという方法を取りました。そのためには日本で川内さんには数の掛け合いをして増やしてもらうということを1年中やってもらいました。要するに年度の初めの前に、来年度のフォアキャストを出して、デバイスを買って製造するわけではないですか。それを一気に1割2割増やすというのは大変なことなので。それを一生懸命東京のほうでかけあってくれて、供給してもらって、それが全部売れているという状態です。その分だけ少し利益ができて、PS3もその分赤字にならないように売れています。

編: SCE Asia単体では、最終的にトントンになればという考え方ですか?

安田氏: いいえ。商売ですからプラスを出さなくてはならない。アジアが非常に厳しいのは、為替が非常に動きやすいところなので、今日は儲かったけど同じ金額で売ったら明日は損してしまうなんてことがあります。今東京で川内さんの右腕でやってくれている人をソニーの財務部からちょっと拉致しまして(笑)、1円為替が動くだけで随分違ってきますので、彼に金庫番として日々追ってもらって私の部屋に行ったり来たりしてもらっている状況です。


■ PS3のメディアプレーヤーとしてのアジアでの反応について

「Blu-RayだけでなくDVDも綺麗」という安田氏
川内氏は、台湾での状況変化を見据え「これからじわじわ効いてくる」と予測
本間氏は、台湾ならではのコミュニティサービスについて言及。台湾初のソフトウェアコンテンツが生まれる日が楽しみだ
編: 話は変わりますが、CESで次世代DVD戦争の帰趨が決定的になりました。アジアではBlu-Rayの反応はいかがですか?

安田氏: 今後影響はあると思うのですが、すぐには動かないと思うのです。ああいう発表があったから、いきなりBlu-Rayを見る人が増えて、PS3がいきなり売れるようになりましたということにはならないと思うのです。

 日本だって、どこのお店にいってもBlu-Rayのコーナーなんてどこですかって聞かなければわからないようなディスプレイしかないじゃないですか。ところがこれからは段々参入してくるメーカーが増えるということは、確実にコーナーが広がるわけだし、売り上げも上がる。アジアでもそうした状況が出てくるでしょうね。ショップの皆さんも日本にはよく行っていますから。アジアでも順次増やしていくのではないでしょうか。

川内氏: 今回もBlu-Rayのコーナーがありますが、これはCESの発表を受けてのものではなく、無くてもやっていました。ただ、じわじわと今後効いてくると思います。今でも1番安いBlu-Rayプレーヤーだと思いますし、プレーヤーとして買って頂いても損は無い。進化していけるPS3というのをもっとこれからも打ち出して良いかなと思っています。

 ただ、PS3をゲームベースのハードとしてやっていくというのは当面我々の使命でもあるし、ゲームを遊んでいただけるゲーマーさんをつけていく。さらに底力をつけていきつつ、Blu-Rayのファンクションを押し出していければなと思いますね。

編: Blu-Rayの再生機能はPS3のウリの1つですし、映像再生に関してアジアはきわめて関心の高い地域だと捉えています。Blu-Rayが再生できるという効果が、アジアにどの程度の影響をもたらしているのでしょうか。現状では軽微と捉えていいのでしょうか。

安田氏: うーん、やはりテレビが変わらないとね。PS3だろうがBlu-Rayだろうが真の実力は発揮できませんからね。

本間氏: 台湾の場合はローカルブランドでフルHDに対応した安い液晶テレビがいっぱいあるんですよね。BenQ、CHIMEI、など4つくらいある。今家庭にはそうしたテレビが入り始めていて、実はこれから非常に可能性があります。

川内氏: 映像的にもゲーム的にも文化として今は過渡期だと思うのです。地上波デジタルが台湾でも始まりますし、徐々に消費者が投資していく金額が増えていますけれども、それが徐々に落ち着いたところで次のステップがあるのかなと思います。

安田氏: 私も自宅でフルHDのテレビを買ってPS3を繋いでいますが、やっぱり綺麗ですよね(笑)。DVDでも綺麗。今まで持ってたDVDも飛ばしながら見てるんだけど結構綺麗ですよ。何回も見る好きな映画ってあるじゃないですか。すると細かいところまで見えるのですよ。動いている人だけではなく、背景を見てみたりという気になりますよね。

編: PS3は出た当初2年先を行っているようなハードウェアで、日本でPS3と周囲の環境がようやくマッチしてきたという印象を受けます。アジアでもそういった部分が徐々に出始めてきたと?

安田氏: 若干遅れ気味ながらもそういう風になっていくのではないでしょうか。全部が同時進行というのはなかなか行きづらいところはありますけれども。テレビがどんどん切り替わると同時により良いものと考えれば、思い切って一緒に買っちゃおうとかっていう動きも出てくると思いますね。

編: 韓国では、PS3で、Mega TVとの提携によるオンデマンド映像配信サービスを開始しましたが、あれは非常に面白いサービスだと思いました。台湾や香港ではどのようにお考えですか。

安田氏: 香港でもシンガポールでも、台湾でも同じことを考えています。どこが早く実現するかというのは若干時間がずれるとは思うのですが、今1番早いのは香港でしょうか。次がシンガポール、台湾もそれと同じくらいのタイミングに行なわれていく感じではないでしょうか。

編: どの程度の効果を見込んでいるのでしょうか。

安田氏: これも100%の効果をもたらすものではなくて、本当に10%の積み重ねだと思うのです。例えばメガTVが10%だとしたら、ゲームソフトが10%で、尚且つ他のサービスやショップが10%であったりと。これつながってきて気がつけばナンバーワンになっていましたという感じではないでしょうか。だから色々なことをやってみます。

編: 今後もSCE Asiaでは映像配信に力を入れていきたいと。

本間氏: 映像配信のみならず、PS3はネットワークレディのマシンですので、できることを色々試していきたいなと。コミュニティーサービスなどもやっていきたいですね。

安田氏: 皆さんは俺にいつも色々提案してくれるんだけど、「それって面白いの?」としか私は聞かないんです。「面白いですよ」って言ってくれればじゃあ大丈夫だね。「うーん」って言われたらやめた方がいいんじゃないと。それくらいのレベルなんですよ。私は皆さんのノウハウにはついていけない。ただ、感じとしてどこを押さえるかといえば、俺みたいなおじさんでも面白いと思うようなものなら大丈夫、俺みたいなおじさんだったらこんなもの面倒くさいやというならダメです。

編: 安田さんのおっしゃる面白さとは何でしょう。

安田氏: のめり込むか、繰り返し見るか、毎日見るか、そういうことです。最初「BlackBerry」(編注:NTTドコモのスマートフォン)を買ってもらって喜んで見ていたのだけど、動きが鈍いから最近はもう電源入れてません。

金澤氏: もうやめたんですか? この間じゃないですか。

安田氏: だって、面倒くさいんだもん。変な広告ばっかり入ってきちゃって消すのに時間かかっちゃって。

川内氏: ショックですよね。今の発言は(笑)。

安田氏: この前久しぶりに引っ張り出してやってみようとしたらつかない。バッテリーがない。

金澤氏: 充電しないとだめなんじゃないんですか?

編: そういうところに落とし穴があると。

安田氏: 大事です。例えば電池がすぐ切れちゃうのは言語道断とかね。しょっちゅう遊びたいのにバッテリー5個も6個もなければ出張にいけないというのではいやですよね。そういうところは大事だと思いますよね。


■ ゲームソフト事業に関するSCE Asiaの取り組み

アジア版のタイトルは、欧米と同時発売を実現するために日本のQA(品質管理チェック)を通さない。これは極めて大胆で、アジアならではの判断だ
編: 本業であるゲームソフトウェアの方ですが、ワールドワイド全体の問題ですが、PS3は遊べるソフトがまだ少ないです。これについてはどのように考えていますか?

川内氏: 2007年にアジアでやったのは、欧米系のタイトルのアジアでの同時発売でした。例えば北米のタイトルであれば、北米でQAが終わったものは、その時点でアジアもマスターアップと。そうしなければアジアでは同時発売できないわけです。同時発売しないと平行品が入ってくる。平行品を入れないようにすると同時発売をするしかない。そうすると北米とQAも同時になります。

編: すると日本のQAをはさまない?

川内氏: はい。はさみません。

編: それは大胆な決断ですね。

川内氏: 割と大胆だと思います。マスターのトランスファーもディスクに焼いたら時間がかかってしまいますので、データのトランスファーでやって、アジア向けのマスターディスクを焼くのは日本でやるのですが、それもできるようにしました。

安田氏: カラーバリエーションの問題も同じです。5色日本で出て、アジアが4色しか出さないと、残りの1色が平行でガンガン入ってくる。平行輸入は徹底的になくしたいなということと、コピー侵害品を徹底的になくしたいというのは10数年継続してやってきていることなのです。やっぱりアジアというのは、我々のテリトリーなので、他地域の販売会社がモノを流すというのは嬉しくないじゃないですか。だから、いまだに私は中古ソフトは反対なんです。

編: 昨年11月に、韓国でゲームショップを見てきましたが、ここも中古品の問題が深刻な地域ですよね。

安田氏: 国トータルの問題っていっぱいあるわけではないですか。日本も先進国なのに、大事な文化であるソフトというものをプライオリティの後ろの方にしているのってやはりまだまだなのかなって感じることがあります。もうちょっと真剣に考えて欲しいですよね。そのくせアニメやゲームを輸出したりって話をしているわけではないですか。クリエイターさんが一生懸命作ったソフトがコピーされたらどうするのかということを国は何も考えていないんですよね。わかってないんです。

編: その韓国は本当に深刻だと思いました。はっきり言ってしまうとあらゆるゲームショップが中古品の売り上げを納税しないことによって利益を得るスキームが完成してしまってますよね。

安田氏: 我々がそこに乗っかっているわけでもなんでもありませんが、SCEKとしてはそういう問題よりも、まずは会社を1から立て直すということに専念してきています。今期は良い実績で終わりそうなので、来期の目標はかなり上げます。バジェットベースで結果的には今期の倍くらいの数字が出せるのではないかと思います。

編: 韓国の中古問題なのですが、税金を払わないことによって、高値で買い取ってちょっと色をつけて売ると。中古だけで完結する仕組みが出来上がってしまっている。プラットフォーマーさんもそうですが、サードパーティーさんにとっては深刻な問題ですよね。この問題をどう解決するのでしょうか。

安田氏: それをソフトメーカーさんに聞いてみたいなと思うくらいですよ。我々もソフトを作っていますけれども、もうPSが発売されて10数年経つわけではないですか。最初から私は言っているのに、解決していることは1つもないような気がします。

 日本でも解決しないことを我々が海外でいったい何ができるのかという話です。PS3以外の自社のプラットフォームも他社のプラットフォームもハードは全部中古でやられちゃっています。海外ではコピーだらけじゃないですか。だから一時の我々のPS2と同じ状況ですよ。だから販売店さんも儲からない。じゃあ何で儲けているのといえばハードでもソフトでも儲けてなくて、改造で儲けている。我々がPS2をやり始めたときに陥った状況に今なっている。それを何とか我々長年かかって解決に近づけてきたのに、他社さんはまた同じ状況になっちゃっている。非常に良くないですよね。

本間氏: 結局、小売店さんが思い切って初回の枚数積めなくなりますよね。皆怖いもので、最初少なめ。で、コピーが出たらもうリピートをかけない。こういう状況が蔓延しています。

安田氏: そういう状況がわかっていても、そういう法律だから仕方がないんです。だからゲーム業界が疲弊してもいいんですかと。困るんだったら法律変えてくださいというアプローチしかないんですよね。

編: PS3に関してはコピーがありませんよね。これはSCE Asiaさんの長年の蓄積が活かされた部分はあるのでしょうか。

安田氏: そうですね。やはり嬉しいですよね。今の状況は。

川内氏: 初めてですよね。まだ、というだけかもしれません。できれば今の状況を長く作っていきたいですが、やはり破りたいという人が世の中にはたくさんいて、それに命を懸けているひともいるくらいで。

安田氏: そんなことならうちにきて働けばいいのに(笑)。

川内氏: NASAが昔ハッカーを雇ったみたいにね。

金澤氏: ただ1人いなくなるとまたそういう人が出てきて、破りたいという人が出てきて。破られないようには我々もやるのですが、やはりイタチゴッコですね。

編: 話を戻しますが、日本版に加え、欧米版を増やしているということは、日本に比べてスピードやボリュームに関しては上回っているのでしょうか?

川内史郎氏: いえ、やはり日本のほうが多いです。日本で数万売れても、アジアでは最低発注枚数に行かないだだろう思われるタイトルは落とさざるを得ない。北米版もまだ全部が来ているわけではなくて、ようやくスキームが出来上がって、ご了解いただいているサードパーティーさんだとか、我々がやっているファーストパーティーのものもある程度数が見込めるものをもっていきます。まだまだ日本よりたくさんあるよという状況ではありません。

安田氏: そんなにいっぱい出してくれても買いきれないというのもあるだろうし。やっぱり買っていただく人にもそんなに毎月10枚も買ってもらうわけではないですからね。数的に少ないといえば少ないのだけど、かといって多ければ良いというものでもない気がします。


■ アジアの元気印PSPの今後の展開について

PSPのダウンロードコピーは「どうしようもない」とバッサリ。政府の対応に対する不満を隠さなかった
台湾では、PS3の新型機に、PS2互換がなくなったことに対してクレームがこなかった。それはPS2ユーザーのほとんどがコピーユーザーだったからだという
編: PSPについてですが、ワールドワイドできわめて好調ですね。2007年のアジア市場ではいかがでしたか。

安田氏: 数が足りませんでした。あと50%商品があれば、あと50%商品が売れたような気がします。そのくらい足りませんでした。

本間氏: 台湾の場合では今までゲームをやらなかったような若い女性層が増えました。カラーバリエーションの影響だと思いますけど。ここ台湾はソニーブランドがすごく強くて携帯、デジカメと一緒にPSPをかばんに入れているという光景が見られて、非常に大人気でした。

編: 使い方としてはゲームマシンとして使われているのでしょうか。

安田氏: ゲームマシンとしても使っている方が多いと思いますが、最近は色々なことができるようになりましたが、いろいろな使い方をしている人が増えているんじゃないでしょうか。

編: 日本ではインターネットラジオやウェブブラウズやワンセグ、延期はされましたがSkypeと、一種のマルチメディア端末のようになりつつありますよね。

安田氏: 携帯というのも方法論としてはあるのだけど、PSPは携帯よりも画面がでかいから、これが持って歩ける最大値のような気がします。

川内史郎氏: PS3を売るために、PS2とPSPをもっと売りましょうということをやったわけですが、そういう意味でバジェット対比がPS2もPSPもおかげさまでかなり増えてきたということがあります。その中でPSPが夏以降ぐーっと数が上がってきたのですが、ハードの数が一気に上がったので逆にソフトの装着率が少し落ちたのです。ゲームだけで遊んでいただいているよりは、他の機能も使っていただいているということが見て取れると思うのです。

編: 台湾ではワンセグチューナーは発売しないのですか?

本間氏: 放送方式が違うので、まだ予定はしていないです。

金澤氏: デジタル地上波はあるのですが、日本のワンセグとは異なる規格です。そこをどうするのかは我々としても課題として持っています。

編: 日本でもPSPは人気が非常に高い反面、ソフトの装着率が低いハードウェアだということがよく言われます。その原因は本体が売れすぎたことだということが1番の要因なのでしょうか。

安田氏: アジアが品切れだから、他地域からの並行輸入品が増えてしまったのです。市場の品不足につけ込んで全世界から流れ込んでくる。そういう状況です。

編: 韓国ではニンテンドーDSがすごい人気でした。アジアの先行メーカーとしてどのように見ていますか?

安田氏: トータルでいってPSPの2.5倍くらい売れたんじゃないかな。うちだって1,000万台超えるわけだから。2,500万台くらいは売れているのではないかと見ています。ただ、最近の伸びとしては、PSPのほうが、上りの角度が大きいという気がしています。我々は違うニーズも含めて普及しているので絶対抜けるなと思います。こんなリードされちゃうと、1年じゃ抜けませんが、2、3年のうちにアジアで抜き返せる自信はありますね。

編: PSPに関してオンラインでのダウンロードコピーの問題がありますが、SCE Asiaとしての対策を教えてください。

安田氏: 今のところどうしようもない。法律がいつ作られたということを考えると5年ごとに見直さなければならないんじゃないのとは思います。だからマスコミの方々が、見直すべきなんじゃないかとどんどん書いてくれると、役人の方が考え直してくれるかも知れない。そういう機運は盛り上げていかないと。せっかくソフト立国日本なんて言っているのは気持ちよくていいんだけど、言っている間にやられちゃうよと思ってるんです。


■ SCE Asiaの2008年の事業戦略。中国とインドに対する取り組み

インド市場について熱っぽく語る安田氏。中国と同様、インドも開放待ちということになるようだ
編: SCE Asiaの2008年の事業戦略を教えてください。

安田氏: 毎年方針が変わっていくことではなくて、今までやってきたことをブラッシュアップしてやり続けていくことだと思います。ただ所帯も増えてきちゃっているので、所帯が増えるとほころびも増える。なるべく少数精鋭に気を使いながらやっていきたい。ネットワークのことを考えるとインフラも非常に大事なポイントで、インフラ作りも関係各国に訴えていきたいですよね。

 それから宣伝の仕方ももう1度練り直したい。去年もみんながんばって宣伝してくれていたのだけど、今年もいかに買いたいなと思える案内ができるかと。まだまだやっていないこと、色々なキャンペーン活動や、ネットを使った知名度を高めるための方法とか、知らないっていう人だってまだいると思うのです。

編: 2008年の韓国のバジェットはすべて倍になるとのお話でしたが。SCE Asia全体としてはどのぐらいになりますか?

安田氏: 我々が考えるのは3年内に1,000億くらいは超えたいなと。言い換えると11%以上の売り上げを社内で持ちたいと考えているのです。すると大分影響力が出てくると思いますので。もっともっとアジアの皆さんに対するサービスが充実する。というと格好が付きますかね(笑)。

編: その他に何かアジアで独自のサービスを考えているのでしょうか。

安田氏: 今ね、テーマとして挙げている映像配信サービスは、まだ完璧に全部が全部やれているわけではないから。先ほどのメガTVのようなIPTVのサービスを普通にできることが第一、それからショップに対するサービス。「Home」もこれからやり始めるし。そういうサービスを充実させていきたいなと。

編: 新しい地域への展開はいかがですか。

安田氏: 関税の問題があります。我々がやりたくても関税があると、単純に30%関税があるところは高くなるわけですから。そういうものを見ながら別のところに展開していきます。

 インドの話が聞きたいってことはわかってます(笑)。現在、中国がものすごい勢いで伸びているんですが、インドも信じられない勢いで伸びている。今のところは徐々に情報を取りにいきつつ、情報交換をしていきましょうというスタンスです。インドにハリウッドじゃなくて、ボリウッドというのがあります。この前ディスコに行ったんですが、日本のディスコの最盛期みたいに500人くらいお金持ちそうな着飾った男女が並んでる。購買力もありますよね。

編: 目標はいつぐらいを展開時期に見据えていますか。

安田氏: まだ。ぜんぜんまだ。台湾を見てみると、たまたま色々なことでお国が理解を示してくれたのでうまくいきましたが、我々はそれで終わりではなく、台湾の次に中国を見ているわけではないですか。中国の開放を今は待っている状態です。インドはその先ですよね。これからの課題として研究は続けていきたいですよね。

編: 中国に対する感触はいかがですか?

安田氏: それはわかりません。いずれにしても合法的にやらないとダメです。最初は見合わないかもしれないけど合法的にやっていきます。10数年前からPSを売り始めてて、アジアでは何年か遅れてスタートしたわけです。その間に平行業者とコピー業者の天下になったわけです。それを正常な状態に戻すのに10年間かかったわけです。時間軸にしてそれくらいの時間がかかるわけです。

 アジアだって絶対うまくいくなんて思っていた人なんかいなかったわけです。そこをすこーし息を吸いながらちょっとずつシェアを伸ばしてこれたのは不可能を可能にしているだけで。これからもっともっと奥が深いわけです。今の段階でけつまずきたくはないです。

編: 安田さんがアジアで捉えているポジティブな話題は何かありますか?

安田氏: あんまりオフィシャルなレベルで言えるようなことはないのだけども、競争心というのは大きい国同士であって、中国とインドみたいなところで、どちらが早く新しい産業を開放するのかなということは興味がありますよね。

 ソフト産業はみんなを泣かす産業ではなくて、喜ばせる産業なのですよ。たとえば、ボリウッドの映画のパワーはすごい。レコードの枚数なんてものすごいですよ。シンガポールエアラインの映画のリストを見ると、インド映画がバンバン増えてきている。

編: インドで問題になっているのは関税の問題でしょうか。

安田氏: 関税の問題と、会社の中にはインドをアジアだと見ない人が一部にはいるので、そういうところとのお話し合いも必要だということです。

編: 2008年のPS3のアジア展開はどういった様相になるでしょうか。

安田氏: はじけるところまではいかないけれどもステディには売れると思います。目標どおりということになると思います。

編: 目標とはどれくらいでしょうか。

安田氏: アジアで去年売った分の倍くらいは売れると思います。いくらなのかは教えられません(笑)。

編: 販売モデルとしては日本と同様40GB1本に絞り込まれるのでしょうか?

安田氏: アジアでは並行品対策のために単純に1本に絞れないのです。ただ、売りやすい価格のものでないと売れないので、結果として40GB1本みたいな形にはなってくると思います。

編: そういえば、世界でSCE Asiaだけが20GB、40GB、60GB、80GBとすべてのモデルのPS3を扱っていますよね。

安田氏: それは私が忌み嫌う平行輸入の問題が一部にあります。ないものがあると入ってきますので入れざるを得ないのです。

川内氏: ただ、在庫として大きな容量のものというのはほとんどなくなっているので、現段階では40Gだけです。後はPS3の展開は、アジアだけではなくて全社的なものですので、今後もお求めやすい状態に、価格に限らず仕上げていきたいと思います。

編: 一部海外ではさらにPS3の値段が下がるのではないかとうわさされています。

安田氏: 常にいろんなうわさはありますので。現実的になったらご報告します。ただ、値段を下げるっていったって、これ以上儲からなくなったらたまんないですよ(笑)。

編: 最後にアジアのユーザーに向けてメッセージをお願いします。

安田氏: 我々はやれることを全部やっていきます。サービスにはいろいろなものがありますが、最新のネットワークの準備に限らず、細かなサービスをくまなくみんなでおさらいをしてみんなで足りるようにしていく。我々と我々が提供するサービスを楽しみにしていてください。新年快楽!

編: ありがとうございました。

□Sony Computer Entertainment Asiaのホームページ
http://asia.playstation.com/
□関連情報
【2006年2月19日】SSCE Asia統括兼アジア事業統括本部長安田哲彦氏インタビュー
PS3時代を迎え多様化するアジアビジネスの今後の展開を聞く
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060219/sceasia.htm
【2006年2月19日】SCE Asia本部長安田哲彦氏インタビュー
「PS3でゲームの流通はガラッと変わる」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060219/sceasia.htm
【2008年1月25日】台湾台北市にてTaipei Game Show 2008が開幕
コンシューマゲーム色の強いショウに。台湾産タイトルは低調傾向
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080125/tgs_01.htm

(2008年1月29日)

[Reported by 中村聖司]



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