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Taipei Game Show 2008現地レポート

台湾最大手Softworldグループ台北本社訪問レポート
PC/Xbox 360相互接続を実現する次世代MMORPG「Xenjo Online」を見た

1月24日~28日開催

会場:台北世界貿易中心

入場料:大人200台湾ドル(約700円)
子供100台湾ドル(約350円)


 「仙境伝説(ラグナロクオンライン)」、「魔獣世界(World of Warcraft)」の大ヒットにより、台湾トップシェアの座を不動のものとしたSoftworld。ここ数年においても開発子会社Chinese Gamerの「黄易群侠伝 Online(日本名「ハルカ」)」や、パブリッシング子会社GameFlierの「完美世界」のヒットなどにより、2番手のGamaniaとの差を拡げつつある。

左から順にSoftworld「Xenjo online」ディレクター王宣策氏、Game flierマーケティング部部長謝明娟氏、Game flier社 「Web三国」プロデューサー羅志達氏
Softworldグループの状況について説明する謝明娟氏。謝氏とは「仙境伝説」のマーケティング担当以来、毎年取材に協力していただいている
 2007年度の売り上げ比率で見ると、Softworld単体で約45億台湾ドル(約157億円)に対し、Gamaniaが約30億台湾ドル(約105億円)で約1.5倍だが、Softworldの数字にはChinese Gamer、Gameflier、Gamefirstという子会社の売り上げが含まれていない。Softworldは子会社の売り上げを非公開としているため、正確なデータは不明だが、連結では倍以上の差が付いていると見られる。

 Softworldの強みはいくつかあるが、ひとつは「セキュリティロックシステム」が挙げられる。これはSoftworldが特許を持つユーザーサービスのひとつで、ユーザーがゲームにログインする前に、指定の電話番号に指定の電話からコールすることで、アカウントにかけられたセキュリティロックが解除されるという仕組みだ。

 この背景には、現在、台湾を含むアジア圏でアカウントハックが深刻な問題になっていることが挙げられる。「セキュリティロックシステム」の導入により、自分のアカウントを自分だけがログインできる環境を作り出すことができ、第三者によるアカウントハックを防ぐことができる。実際、2007年4月の導入以降は、アカウントハックの被害はゼロだという。現在は対応タイトルが限定的で、Softworldの展開地域のひとつである香港ではまだ未導入であるなど、全ユーザーを網羅するにまでは至っていないが、「セキュリティロックシステム」がユーザーにとってパブリッシャーに対する信頼に繋がっているのは間違いない。

 もうひとつはGamaniaが近年カジュアルゲームが中心になってきたのに対し、SoftworldはMMORPGが依然として強いことだ。MMORPGはカジュアルゲームと比較して、ゲームの奥行きが深く、寿命も長い。寿命が長ければ、売り上げも安定し、長いスパンでのアップデート計画やプロモーションを仕掛けやすいというメリットもある。もちろん、必ずしも単純にMMORPGがカジュアルゲームより秀れているとは言えないが、台湾に限っては、依然としてMMORPG王国という印象が強く、それがSoftworldにとって追い風になっているように映る。

 今回は、Softworldの台北本社に赴き、同社が今年のフラッグシップとして全力を注いで開発が進められている次世代MMORPG「飄●(しんにょうに貌)之旅(ひょうばくのたび、Xenjo)」(以下、「Xenjo Online」)を取材してきた。

 「Xenjo Online」は1月2日に公式サイトをオープンしたばかりのタイトルで、1月末に台湾メディアへの発表会を予定しているというほやほやの新作だ。まとまった情報の公開は、弊誌取材が初となる。ぜひ注目していただきたい。


■ 台湾初のPC/Xbox 360相互接続を実現するMMORPG「Xenjo Online」

Taipei Game Showの開催に合わせて高雄から出張してきたという「Xenjo online」ディレクター王宣策氏。ブースでの出展はなかったが、BtoBコーナーでバイヤーに向けて商談を行なったという
「Xenjo Online」のゲームジャンルは武侠ではなく、いわゆるファンタジー世界を扱った仙侠となる。ゲーム画面も幻想的な風景が広がる
 「Xenjo Online」は、Softworldの本社がある高雄に設立された自社開発部隊“高雄研發部”が開発している次期主力MMORPG。70人規模の開発体制と、1億台湾ドル(約3.5億円)以上の開発費を投じて2年以上の歳月をかけて開発が進められている。

 台湾では極めて大規模なプロジェクトだが、決定的に新しいのはシェーダー世代のMMORPGを開発するにあたり、ゲームエンジンを一から自社開発したところだ。Xenjoエンジン(仮称)は、DirectX 9ベースでシェーダーモデル2.0世代のグラフィックスを実現する。PCゲームグラフィックスはDirectX 10/シェーダーモデル4.0世代まで進化しているが、MMORPG向けのゲームエンジンとしては、ワールドワイドで見てもリッチな環境といえる。また、自社エンジンを完成させたことにより、今後Softworldグループの自社開発タイトルが一層促進される可能性が高い。

 ゲームエンジンの自社開発に付随して、PC版に加え、Xbox 360版の発売も計画している。まずはPC版のリリースが先となる見込みだが、すでにXbox 360での技術的な検証はほぼ終了しており、ゲームパッドに標準対応したアクション性の高いMMORPGとなる見込みだ。Xbox 360版の落としどころについては現在Microsoftと調整中ということだが、PCとXbox 360との相互接続を実現し、さらに基本プレイ無料のアイテム課金制での展開を予定。これらが実現すれば、コンシューマゲームのオンラインゲーム展開において世界初の“快挙”となる。

 グラフィックスは、自社パブリッシュタイトルの「World of Warcraft」や「完美世界」あたりを意識した、ファンタジーテイストが濃厚に感じられる台湾最高水準の3Dグラフィックスを実現している。モンスターのアニメーションやキャラクタのモーション、シャドウイングやライティングなども凝っており、草木はそよぎ、空を見上げると光が溢れブルーミングを起こす。まさにシェーダー世代のグラフィックスだ。

 また、ライティングやシャドウイングの効果を活かすために昼夜の概念を取り入れ、リアル時間2時間でゲーム内の1日が経過する。フィールドに関しては、ゾーニングが発生するが、ローディングは最小限に留めるほか、独自のサーバーシステムにより、1ゾーン当たりのキャパシティはスケーラブルに変更可能だという。

 Xbox 360のグラフィックスについては、現状では不透明だが、Xbox 360版の開発に際し、あらためてXbox 360グラフィックスへの最適化を施し、さらに美しくなる見込み。PC版からXbox 360版への変化は、「ファイナルファンタジー XI」や「マビノギ」などが参考になりそうだ。

【Xenjo Online】
「Xenjo Online」の開発中のスクリーンショット。台湾では珍しい仙侠モノということで、一種独特のデザインになっている。強いて言えば、韓国風MMORPGに近いが、フィールドの色遣いやオブジェクトデザイン、モンスターデザインに独自の味わいがある

【街】
「Xenjo Online」のゲーム世界は、仙人たちが暮らす天界、魔神たちが暮らす地界、そして人々が暮らす人界の3つにわかれている。これは人界の街の風景だ


■ 凡人が仙人を目指していくユニークなゲームデザイン

人が仙人になるまでのステップのリスト。元嬰で空中浮遊が可能となり、分神で瞬間移動が可能になる。「ドラゴンボール」のような設定である
巨大なボスモンスターとのバトルも「Xenjo Online」の大きな特徴となる。このモンスターは空中を飛び跳ね、荒々しく攻撃を仕掛けてくる。真下に居るキャラクタと比べるとその大きさがわかるだろう
 さて、「Xenjo Online」の原作は、2003年にインターネット小説として誕生し、翌2004年に書籍版が登場するなど、アジア圏で高い人気を集めている同名の小説となっている。原作を持つMMORPGとしては、子会社Chinese Gamerの「黄易群侠伝 Online」があるが、「黄易」が実在世界の過去や未来をモチーフにしているのに対し、「Xenjo」は仙侠(ファンタジー)小説にカテゴライズされ、仙人に連れられて赴く天界や地界での冒険が主な主題となる。

 「Xenjo」のストーリーは、李強という平凡な男性が、ある事件をきっかけに失意のどん底に落とされ、仙人に連れられて仙術を学び、次第に仙人そのものに近づいていくというもの。このわらしべ長者的なサクセスストーリーは、アジア圏が好む天界だが、「Xenjo」がヒットした要因は、人気作家の小説は文章が難解なうえ、若者の間で活字離れが進み、二重の意味で敷居が高いなか、文章が平易で手に取りやすいインターネット小説ということがプラスに作用したという。日本で言う携帯小説に近い印象だ。

 「Xenjo Online」の目的は、小説と同様に仙人を目指すことだ。仙人への道は、「旋照」からスタートし、開光、融合と、13段階のプロセスを経て、「修神」あるいは「魔神」に到達する。このステップを上げていくためにはシナリオクエストと呼ばれる修行をクリアする必要がある。シナリオクエストは受けるたびに内容が変わり、1人でもパーティーでも、低レベルでも高レベルでもクリアは可能だという。なにやら“とんち”のようだが、仙人修行は同作の主題となる部分だけに、スケーラビリティの高いシステムを検討しているようだ。

 クラスを上げるメリットは「真元力」と呼ばれる新しい能力の獲得にある。「真元力」は、レベルアップやアイテムでは得られない特殊な技能となっており、具体的には空を飛んだり、空を高速で移動したり、瞬間移動できたり、範囲攻撃が可能になったりといったことが可能になるという。この真元力については現在企画中ということだが、最終段階の「修神」は天地の創造者を意味し、神同様の能力を得ることになるという。

 そのほか、「飛剣法宝」と呼ばれるそのものが成長する特別の武器や、仙石と呼ばれる武器にはめ込んで機能を強化するシステム、いわゆるジョブに相当する7つの門派、そして8つの属性システムなど、ゲームをおもしろくするシステムを数多く取り入れている。

 ビジネスモデルは、アイテム課金制を予定。装備品や薬、アバターなどバランスを壊さないものを取りそろえるという。台湾産MMORPGの楽しさは、アイテムモールの充実にあるが、「装備するとアイテムの上限が増えるブレスレット」など奇抜なものを企画しているという。

 PC版のサービススケジュールは、秋頃にβテストを実施し、2008年第4四半期にサービスインを予定。Xbox 360版は2009年以降となる見込み。パブリッシャー探しはこれからということだが、日本展開も予定している。待望の台湾大型タイトルだけに今後の展開に注目していきたいところだ。

【ボス戦】
豊かなアニメーションを見せるボスモンスターたち。デザインを見る限りでは、SF的なエッセンスも感じられる。仙術「真元力」の力を借りたプレーヤーキャラクタと、豊かな動きで圧倒する巨大なモンスターとのバトルは、「Xenjo Online」の見せ場のひとつだ


【Web三国】
「Web三国」は、マルチプラットフォーム/マルチランゲージ対応のブラウザゲーム。リアル時間ベースでゲームが進行し、1日数回コマンドを入力するだけで楽しめる。台湾では2007年11月から正式サービスをスタートし、会員数40万人、アクティブユーザー4万人。アイテム課金制で月額の客単価は125元(375円)と、モバイルゲーム感覚で楽しめるオンラインゲームだ。400マス×400マスの16万マスで構成された「三国志」世界で、村を育て、施設を建て、兵を養い、隣村を征服していく。個人紛争から、公会(ギルド)、連盟という3つのレイヤーでの戦いが用意され、三国時代の動乱を再現する。日本語版も提供されているので興味を覚えたユーザーは一度プレイしてみるといいだろう

□Softworldのホームページ
http://www.soft-world.com.tw/
□「Xenjo Online」のホームページ
http://xen.gameflier.com/
□「Web三国」のホームページ
http://www.websango.com/
□関連情報
【2008年1月25日】台湾台北市にてTaipei Game Show 2008が開幕
コンシューマゲーム色の強いショウに。台湾産タイトルは低調傾向
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080125/tgs_01.htm
【2006年2月19日】Softworldグループ取材レポート
「World of Warcraft」が大ヒット、Xbox 360にも参入
http://watch.impress.co.jp/docs/20060219/tgs_soft.htm

(2008年1月27日)

[Reported by 中村聖司]



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