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Taipei Game Show 2008現地レポート

バンダイナムコ、人気シリーズ最新作「太鼓の達人11」を出展
テキスト、音声、楽曲まで一新した「亜洲版」でアジア本格展開を開始

1月22日~28日開催

会場:台北世界貿易中心

入場料:大人200台湾ドル(約700円)
子供100台湾ドル(約350円)


 Taipei Game Showで、小規模のスペースに長い行列が出来ている一角があった。バンダイナムコゲームスのブースだ。同社はこれまでSCEブースやMicrosoftブースに新作タイトルを出展する程度だったが、今年初めてブースを構えた。出し物は新作PS3タイトルやXbox 360タイトルではなく、同社の人気フランチャイズ「太鼓の達人」の最新作「太鼓の達人11」。しかも、単なる日本語版の参考出展ではなく、テキストから音声、楽曲に至るまですべて現地仕様にローカライズした「亜洲版(アジア版)」だった。

 出展されていたアーケード筐体は1台限りだったが、日本未発売の新製品のフルローカライズバージョンということもあり、カップルや親子を中心に長い行列ができていた。本稿では、ブースの出展内容と台湾のアーケード市場の最新動向をお伝えしていきたい。


■ ゲームセンターは禁止なのに、「太鼓の達人」は人気。そのからくりとは?

長い行列がたえなかったバンダイナムコゲームスブース。「太鼓之達人 亜洲版」は、今年のTaipei Game Showの目玉タイトルのひとつだ
試遊者は10代から20代が多く、意外と女性も多かった。バチの叩き方は、日本より若干派手で、元気がいい
今回取材に協力いただいたアーケード版「太鼓の達人」プロデューサーの藪下達久氏(右)と、アジア圏のバイヤーとのパイプ役を務める田永峯氏
 「太鼓之達人11 亜洲版」の紹介に入る前に、ざっと台湾のアーケード市場の状況について触れておきたい。

 まず、台北市では、市の法律により、いわゆるゲームセンターの営業が禁止されている。このため、台北市街では、アミューズメントスポットは一切無く、当然のことながら日本を中心とした海外のアーケードゲームも見ることができない。

 もちろん、アジアビジネスの常識として、並行輸入品があるにはあるが、10年以上前の筐体をだましだまし使っているような状態で、まったくの泡沫市場に過ぎない。これが中国なら古びたビルの中位階に、最新のアーケード筐体がズラリと並んだピカピカのゲーセンがあったりして度肝を抜かせてくれるが、台北市ではよほど取り締まりが徹底しているのか、強力な並行業者がいないのか、その辺のニュアンスは不明ながら、ゲームセンターと呼べるような店舗は存在しない。

 それではなぜ、「太鼓之達人11 亜洲版」に行列ができうるのかというと、当然現地で遊ばれており、人気があるからである。ここが台湾のユニークなところだが、ゲームセンターの営業を禁止しているのは台湾の中心地の台北市だけで、それ以外の台北エリア、そして台中、台南では、営業が認められている。台湾におけるアーケードのメッカは、台南の高尾市で、ここを中心にアーケードゲームが遊ばれているのが現状だ。

 バンダイナムコゲームスは、台湾へのアーケードゲームの展開は行なっていないのだが、そこはなんといってもアジアであり、台中、台南に存在する「太鼓の達人」はすべて並行輸入品となる。同社が確認しているだけでも200~300台の並行品がアジア地域に入っているという。曲目は当然日本語ばかりだが、現地での人気は高く、さらに中華電信が台湾で携帯電話向けに提供している「太鼓の達人 流行月租」が10万ダウンロードを誇る人気タイトルとなっていることから、同社ではアジアに市場性があると判断し、「亜洲版」誕生の運びとなったわけだ。

 バンダイナムコゲームスとしても、アーケード版「太鼓の達人」シリーズとしても、アジア展開は今回が初めてとなる。折しも中国では、2007年頃から、アーケード市場が開放に向かいつつある。このことも多少追い風になったと見られるが、セガに続く、大手アーケードメーカーの参入は、アジア圏のアーケードゲームファンにとっては嬉しいニュースだろう。

【バンダイナムコゲームスブース】
ブースには、日本から輸送したプライズを展示。残念ながら台湾での販売予定はないというが、丸い目に口というシンプルなイラストは、台湾好みのデザインであり、発売されれば人気が出そうだ

【携帯版「太鼓之達人 流行月租」】
台湾で流通する「太鼓の達人」フランチャイズには携帯版がある。配信しているのは台湾大手の中華電信。2007年にリリースされ、これまでに10万ダウンロードを記録する人気コンテンツとなっている。月額利用料は70元(約245円)で、月に1回のペースで新曲が配信されている


■ テキスト/音声をすべて中文化し、24曲のC-POPを収録した「亜洲版」

「太鼓之達人11 亜洲版」の筐体デザイン。筐体上部のポップはすべて中文化されている
「亜洲版」独自の収録曲は全32曲。うち24曲がC-POP。子供向けに童謡なども盛り込まれている。「亜洲版」では、既存の曲も加え、総収録曲数は日本語版をやや上回るという
ゲーム内テキストもすべて中文化。中国進出に備え、繁体字のみならず、簡体字バージョンも用意。システムボイスもすべて中文化しており、雰囲気を残すために、可愛い声の声優を充てたという
 バンダイナムコゲームスでは、「太鼓の達人」のアジア進出に際し、1年間かけてじっくりマーケットリサーチを行なったという。対象エリアを中国語を常用する中国、台湾、香港、シンガポールの4地域とし、流行曲を調べ、その上で現地の大手レコードメーカーと提携し、アジア圏で人気の高い24曲のC-POP(Chinese POP)を、CDクオリティで収録している。収録曲は、台湾アーティストの楽曲が多いが、アジア圏では、台湾の楽曲が他の地域でも人気になる傾向があるという。その他の収録曲は、契約の関係で一部の日本の楽曲がカットされるものの、大部分はそのまま収録され、総収録曲数は日本語版をやや上回る100曲以上となる

 ベースとした筐体は最新バージョンである「太鼓の達人11」。その特徴は、楽曲が新しく追加されるほか、女性でも握りやすいようにバチが細く軽量化された。また、荷物の置き場所を用意するために、中央のバチ置き場を撤廃し、2つの太鼓の真下にバチ袋を用意。目の届く位置に手荷物を置いて、太鼓が叩けるようになっている。ゲームプレイでは、子供向けの「かんたんこーす」で、両方の太鼓の入力を受け付け、保護者が手助けしやすく改良されている。「太鼓の達人11 亜洲版」でもこうした特徴はそのまま引き継がれている。

 日本では3月頃の出荷が予定され、アジアでは4~5月に、台湾を皮切りに、香港、中国、シンガポールといった地域へ順次展開していく予定としている。価格は日本で95万円前後で、アジアでも同水準となる見込み。並行輸入品は、輸送費等のプレミアムを付けて120~130万円程度で流通しており、価格的なメリットも多く。並行品に対して決定的な影響をもたらしそうだ。

 プレイ料金は20元(約70円)前後を想定。前後としているのは、台湾ではいったん現金でコインを購入し、コインをマシンに投入するトークン方式が採用されているため、店舗によって価格はばらつきが出るためだ。日本の200円に比べると約3分の1程度の設定となるが、物価水準から考えると妥当な設定といえる。

 日本では現在全国に5,000台が設置されており、アジアの潜在需要はその倍の1万台を見込んでいるという。「太鼓の達人11 亜洲版」の初期出荷については、アジア参入したてということもあり、受注は少数に留まる見込みで、口コミでの広がりを期待しているという。今後の展開については、現地法人と協力して営業活動を続け、その一方で、残るアジア地域である韓国展開に向けて準備を進めていくという。アジアとのビジネスはまさにこれからといった印象だ。

 なお、「亜洲版」はあくまでアジア限定バージョンであり、日本を含むその他地域での展開は予定していないというが、今年3月に開催されるAOUショウではアジアのバイヤーに向けて参考出展するということなので、興味のあるユーザーは見てみるといいだろう。

 ブースでは、若いカップルを中心に、いつ見に行っても長い行列が耐えない状態だった。バイヤーの飛び込みの商談もあるということで反応は予想以上に上々だったようだ。日本ではひところのブームは去り、やや落ち着いた状況になっているが、今回現地に視察に訪れていたアーケード版「太鼓の達人」プロデューサーの藪下達久氏は、台湾ユーザーのプレイを後ろで眺めながら、「日本でリリースされた直後の熱気を彷彿とさせてくれますね」と興奮気味に語ってくれた。アジアでふたたび「太鼓」ブームが訪れるのかどうか。今後の展開に期待したいところだ。

【太鼓之達人11 亜洲版】
「太鼓之達人11 亜洲版」は、「太鼓の達人11」をベースに、テキスト、音声と楽曲の一部をアジア化したバージョンとなる。中文がゲーム画面に違和感なくとけ込んでおり、アジア圏のユーザーに幅広く受け入れられそうだ

(C)2000-2008 NAMCO BANDAI Games Inc.

□バンダイナムコゲームスのホームページ
http://www.bandainamcogames.co.jp/
□「太鼓の達人」のホームページ
http://taiko.namco-ch.net/
□Taipei Game Showのホームページ
http://tgs.tca.org.tw/
□関連情報
【2008年1月25日】台湾台北市にてTaipei Game Show 2008が開幕
コンシューマゲーム色の強いショウに。台湾産タイトルは低調傾向
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080125/tgs_01.htm

(2008年1月26日)

[Reported by 中村聖司]



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