|
22日に掲載したPart.1に引き続き、「SEGA AGES 2500シリーズ」プロデューサー奥成洋輔氏のインタビュー記事をお届けする。当然といえば当然だが、奥成氏は昔から「SEGA AGES 2500シリーズ」の仕事ばかりやっていたわけではない。社員なのだから、折りに触れて他の仕事がわりあてられることも多々ある。一時期は、別件で顔を合わせたときなどに「(仕事を抱えすぎていて)大丈夫ですか?」とこちらが勝手に心配したことさえある。
ここでは、そんな奥成氏が近年関わっているプロジェクトのなかから、Wii「ゴースト・スカッド」と「バーチャルコンソール」について質問してみた。「ゴースト・スカッド」はもちろん、後者などは「SEGA AGES 2500シリーズ」のファンにとっても興味深い話が含まれている。気になる人は、ぜひとも目をとおしていただきたい。
■ ここでもサービス精神を発揮!? ~Wii「ゴースト・スカッド」
奥成洋輔氏(以下:奥成) 「ゴースト・スカッド」は実際は途中までの関わりだったのですが、アーケード移植部分の方向性と、家庭用の追加要素のアイディアの練りこみをやりました。基本的には開発を行なったポリゴンマジック(株式会社:ゲーム開発会社)さんがアイデアを膨らませるような形で。トレーニングモード、4人用、一部で反響が高かった忍者&パラダイスモードとかですね。
「ゴースト・スカッド」は、アーケード移植部分の方向性と、家庭用の追加要素を全部考えろ、と。基本的にはポリゴンマジック(株式会社:ゲーム開発会社)さんがやってた部分なんですけど。トレーニングモード、4人用、忍者とパラダイスは、ボクのほうで作りました。 ―― 忍者とパラダイスモードは、反響が凄かったですねぇ。 奥成 最初に新コスチュームを追加しようと考えたときに……向こう(ポリゴンマジック)もボクのこと知ってたからか「セガキャラで何かやりませんか?」みたいな話があって。 ちょうど「ダイナマイト刑事」が終わったあとだったんで、刑事の(3D)モデル渡して「コレ使ってみる? ブルーノとシンディが撃ったら面白いかな」という話をしていたのですが、楽屋落ちになるようなものなら無理にセガのゲームにすることもないだろうと考え直して。 ポリゴンマジックさんは(会社が)秋葉原にあるんですね。ポリゴンマジックさんといえば秋葉原、秋葉原といえばメイドということで。「コスチュームでメイド服を着るっていうのはどうでしょう」という提案を貰ったのですが「でも着るなら敵でしょう」っていう話になった。 元々「ゴースト・スカッド」はテロリストの暑苦しい男たちしか出てこないゲームなので、もちろんそれが良いんですけど、たくさんのお客さんにも触って欲しいなぁと思ったときに……たとえば女性キャラは「HELP!」っていってる人しか出てこない。紹介写真に、サングラスかけた怖い人以外を撮りたいというのがあって(笑)。 じゃあいっそ敵は女性にしよう、メイド服みたいな流行を追わずにシンプルな水着にしよう、ただし下品なものにしないでね、って。 忍者は「アメリカ人がきっと喜ぶから、忍者だよ忍者!」って全員一致で。忍者だとマスクをしているし「モデルをたくさん作らなくても、色違いで使いまわしがきくんじゃないか」と最初は思ってたんですけど、デザイナーがノリノリで、忍者のみ4種類と言ってたのに、最初に出てきたのが忍者じゃなくて「足軽」。 「足軽だと“足軽モード”になるから、忍者の出番を増やして」とお願いしたらその後も忍者以外のキャラクターがどんどん増えていきまして(笑)。「小物もあまり増やせないかな」と言ってたのですが、1つの日本人形のリアクションが12種類も用意されていたりとか(笑)。 ―― ポリゴンマジックさんの“いい暴走”? 奥成 水着のデザインも20種類くらい案が上がってきて選んでくれというので「ここまでしますか!?」って。「でも、全部はダメなんでしょ? 時間がないですから」とか話をしてたのに、最終的には随分入りましたね(笑)。という感じで散々いじってからオリジナル版を作ったAM2研に怒られるかとドキドキもしていたんですが、突き抜けたのが良かったのか喜んでもらえました。 ―― 水着で銃構えてたりしますし。 奥成 水着で銃を持っているのは、テレ東の「木曜洋画劇場」あたりでたまにやる劇場未公開の、「ブロンド美女・大爆発!」みたいなコピーがタイトルの後に付いているような映画がイメージです(笑)。なんで水着のお姉さんが銃もってるんだ? という垢抜けていて非現実的なノリが出せたかなぁって。 ただしナイフでの格闘戦はインパクトが強くなってしまって「ナイフを何かに替えよう」という話になりまして、ボクは絶対「バナナ」しかないと主張していました。「モンティ・パイソン」に「バナナを持った暴漢から身を守るための護身術」っていう有名なスケッチがあって、そこからきてるんですけど。 一方ポリゴンマジックさんは「バナナは爆弾で! 手榴弾はバナナしかない!」と強く主張するので、「じゃぁ間をとって両方バナナにしましょう」と。爆発するバナナと攻撃用バナナの誕生です。 ―― もう、精神的に「つけたさなきゃいけない」みたいな脅迫概念があるのでは。 奥成 プラスアルファの部分は、反響があったので嬉しかったですね。ぜひ4人で遊んでみてください。任天堂さんの「Wiiザッパー」との相性もとても良いのではないかと自負しています。 移植自体も、AM2研の全面的な協力が得られたので、非常にスムーズでした。今のところ、アーケード版との違和感みたいな話も出てないようでほっとしています。 アーケード版は主に海外に出荷されていましたから、初めて触った人の方が多いかもしれません。カードによる継続システムだったため、家庭用になくてはならないやり込み要素が最初から備わっていたのは(移植するうえで)救われました。
「久々にガンシューティングが遊べる!」という意味でも(良かった)。「バーチャコップ」の精密射撃とは違って、「ゴースト・スカッド」は3点バーストでの爽快感をポイントに作られているバランスは初心者にもお勧めだと思います。忍者や水着をきっかけに買ったら、メインも十分楽しめるという形になれば幸せです。
■ バーチャルコンソールのメガドライブタイトルは好調な売れ行き
奥成 おかげさまで。みんな本当に「ソニック」が好きなんだなあって(笑)。 ―― 飛び抜けて売れるのは「ソニック」? 奥成 トータルでいったら、やっぱり「ソニック」です。Wiiを買う人は、やはり最初は「マリオ」でしょうけど、海外では、一緒に「ソニック」も買ってくれているんだと思います。 ―― 「マリオ」タイトルの次くらいに売れているんでしょうか。 奥成 そこまではわかりませんが、我々のタイトルでは「ソニック」は安定しています。やっぱり愛されているんだなぁと実感できますね。
日本では「ぷよぷよ」が人気です。「SEGA AGES 2500シリーズ」でも「ぷよぷよ通」は、ずっと人気があるんですよ。
奥成 というよりも、(新旧)両方やられているんですよ。見た目が違ってるのも楽しいし。WiiやDSの「ぷよぷよ!」を遊んでいただいた後に、「昔のぷよぷよもあったよね」っていう、懐かしい感じの「ぷよぷよ」として受け取られているんでしょうか。ちょっと遊ぶのに、バーチャルコンソールでチャンネル化されるのが結構向いているんですよね。 ―― タイトル選定にコンセプトはあるのでしょうか? 奥成 コンセプトというほどではないんですけど、できるだけ世界中で同じものを提供したいとは思っています。これは我々だけが変にこだわり持っちゃってるのかもしれませんけど。日本でも、イギリスでも、アメリカでも、同じゲームを遊んで貰いたいんです。需要があるかどうかは別として……。 ―― バーチャルコンソールの選定タイトルは「SEGA AGES 2500シリーズ」とはまた別のプライオリティみたいなものがあるのでしょうか? 奥成 海外まで含みますので、選択基準は当然異なりますが、SEGA AGESで出せなかったゲームをVCで出せたというのはありますね。
あとは移植する上での難易度も関係します。バーチャルコンソールの開発はSEGA AGESでも多くを手掛けているエムツーさんなのですが、一度移植したタイトルの部分のほうが、問題が少ないですね。
PS2で違和感なく動かすにはひとつのエミュレーターを作って、それであとはソフトを入れ替えるだけというようにはいきません。今の「SEGA AGES 2500シリーズ」の操作感覚を維持するには、毎回エミュレーターをカスタマイズしなきゃいけない。何を放り込んでも動くというよりは、そのゲームで使わない機能は全部省くとか。そういうことをやってます。 ―― ソフトごとにビルドしているのに近いですね。 奥成 「ギャラクシーフォース」のときは、実はもっとも反響のなさそうなメガドライブ版が最後まで苦労していたりとか(笑)。なかなか処理落ちが取れなくて……ユーザーさんの予想もつかないようなところでハマってるんですけど。最後の残り1、2バージョンくらいで、今のスピードになった。 ―― いちタイトルあたりの作業は、バーチャルコンソールのほうが楽ですか? 奥成 ソフト単独という意味ではプラスアルファの部分がない分もちろんスムーズです。ただ、ソフト内に入れるマニュアルを作る作業には時間をかけています。作る側としては通常のソフトを作るのと同じですから。「ラングリッサーII」での19ページが最大かな。シミュレーションRPGは、説明を省くとわからないところがあるんで……。 その他欧州向けだと、5カ国語に翻訳したりとか、レーティングが国ごとにいくつもあるとかいう作業も通常のソフトと同じです。 ―― そういう「しんどい」部分も踏まえてタイトルを選定していく?
奥成 実のところ一番苦労しているのは品質面での配慮ですね。例えば今の高品位テレビで遊んでいただくと、そのままでは視覚的にきつい効果があったりするんです。RPGの魔法エフェクトとか。そこは違和感のないまま目に優しく直しているんですが、こういうのは地味に大変です。
―― クイズゲームは、さすがに問題の鮮度が……。 奥成 これがですね、意外に大丈夫なんですよ! '93年のデータなんですけど、十分楽しめます。20問中、1~2問くらいかなぁ。回答はわかるんですけど、たまに「クスッ」としてしまう。芸能人の結婚相手を回答させる問題とか(一同笑)。 ―― 芸能ネタは、辛いの多そうですねぇ。 奥成 それでもたまにですよ。逆にデバッグ中に「こ、これは!?」というのもあって。「伊勢名物の、餅を餡でくるんだお菓子の名前は?」というような問題が出て……今のソフトみたいじゃないかと(一同苦笑)。 あと、電源を入れっぱなしだとクイズの問題が重複しないっていう機能が、実はこっそりありまして。それがバーチャルコンソールの中断機能として非常に有意義だったりもしますね。個人的に一番のオススメです。 ―― メガドライブの家庭用オリジナル的なところがチラホラあったりして、それが楽しいですよね。 奥成 これは別にメガドライブに限らないんですけど、プレイステーションとサターンの時代に、一度アーケード版のほぼ完璧な移植ができるようになって……厳密には違うんですけど……でも、ほとんどそのままが当然っていう風潮が現在まで続いています。 でもバーチャルコンソールだと今度は翻って、家庭用オリジナルの追加ステージがあるとか、そういうところに面白みを感じられるというか。以前SEGA AGESで「スペースハリアーII」を出したときにも話しましたが、自分の原体験のソフトで遊びたい、「アーケード版じゃなくて、家庭用がやりたい」っていう人も絶対にいるはずだと。ゲーム的にはアーケード版のほうが面白いかもしれないけど「スペースハリアー」はマークIII版のほうが自分にとって懐かしいという人がいるなら彼らの気持ちもフォローしたいんです。それがある意味バーチャルコンソールでも実現されているんですよね。だからアーケード版の忠実移植が楽しめるようになっても、あえてバーチャルコンソールの家庭用版を選ぶ人が少なからずいるんだと思います。バーチャルコンソールは、そういう移植版の面白さを再発見するという部分もあるかもしれません。 ―― 先ほど(Part.1で)、バーチャルコンソールでアーケード版の移植もやぶさかではない、というお話がありましたが、現実的にいかがでしょう? 奥成 我々だけでどうなるものでもありませんが、もし現実的にやるとなっても、いろいろやるべきことは多いと思います。移植の難易度が上がるのはもちろんですが、キーコンフィグとか、クレジットとかどうするのって部分をどう調整するかも課題ですよね。アーケードとひとくくりに言っても、フォーマットが決まってないわけですし。そういうところを調整するだけでも、たぶん、色々あると思うんですけどね。 バーチャルコンソールは、今までなかなか手に入らなかったゲームが簡単に買えるところにも意義があるので、メガドライブに限らずやりたいものがあるのは確かです。でも、それよりも先にまず、GAME Watchさんには掘り起こしで「既に配信済みのこのゲーム、実は面白いからオススメ」とかやってくれたりすると嬉しいんですが(笑)。 Xbox 360のXbox LIVE アーケードもそうなんだと思うのですけど、やはり配信したタイミングが“一番の旬”で、そのあとは定番以外は限りなく埋もれていって、存在に気付いてもらえない。そこのところ、公式サイトなどを利用してなんとかしたいなとは思ってるですけど。
既に配信済みタイトルにも面白いゲームは色々あるので。ぜひ編集部オススメで紹介してくれたらうれしいなぁ。我々の方でもメガドライブで「ん~、このゲームは面白いタイトルなのに、あんまり反響なかったなぁ」ということがありますよ。
バーチャルコンソールは、有名タイトルに特に集中しがちなんで、そうではないタイトルも盛り上がってくれればいいのになと思います。もちろん日本で「エターナルチャンピオンズ」が盛り上がるとは思わないですけど(笑)。 ―― Wiiの画面でざっと見るとき、スクリーンショットとタイトルだけでは、どうしても伝えられる情報量に限界がある。 奥成 セガのバーチャルコンソールの公式サイトに動画を入れることになったのはそれが理由で、ファンは知っていても、大半の人はどんなゲームだか本当に何もわからないのがメガドライブです。そんなとき、サイトを見ればどんなゲームかはわかるようにしたい。
―― 話は横道にそれますが、Xbox LIVE アーケードのセガタイトルは、アメリカ(SEGA of America)で作られているんですよね? 奥成 そうです。 ―― 日本で手がける予定は?
奥成 今は、ちょっと……お話できるものはないですね。可能性がないわけではないですけど。まずは目の前のバーチャルコンソールを頑張ります。
■ 2008年はバーチャルコンソールに注目(?)
「アレもコレもまだ出てないし、今ペースダウンなんて冗談じゃないよ」というマニア諸氏の気持ちも、痛いほどよくわかる。だが、ビデオゲームが“文化”として一般に認知されていない現状でオールドゲームを後世に遺していくには「ビジネス」として一定の成果を上げ続ける必要がある。「認知されたらなんでも出せるようになるのか」と言われたら、それはまた返答に窮してしまうのだが、少なくとも“今”無理をしてセールスが見込めないパッケージをリリースされても、何もいいことはないように思える。
こうした点をふまえると、セガのバーチャルコンソール展開は、セールスが好調な点を差し引いても“明るい材料”のひとつ。パッケージ製品のような仕掛けは無理かもしれないが、そのぶん普段フォーカスされにくいタイトルが「日の目を見る可能性」は格段に増えている。奥成氏が抱えるプロジェクトは当面バーチャルコンソールが中心になるかもしれないが、何か大きな動きがあり次第、弊誌でも順次続報をお伝えしていく所存だ。
(C)SEGA 「ハイブリッド・フロント」
□セガのホームページ (2008年1月23日) [Reported by 豊臣和孝]
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|