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セガが過去にリリースしてきた名作タイトルをPS2で再現する「SEGA AGES 2500シリーズ」。これまでも多くのオールドゲームファンの琴線をくすぐってきた本シリーズだが、現時点で発表されているタイトルは「ファンタシースターI・II・III・IV」改め「ファンタシースター コンプリートレクション(3月27日発売予定)」と「ファンタジーゾーンII DX(今春発売予定)」の2本となっている。今回のインタビューでもこれら2タイトルついて若干触れられているが、オールドゲームファンたる我々にとってもっとも気になるのは「SEGA AGES 2500シリーズ」の今後だ。
従来であれば今春以降のラインナップが発表される頃合なのだが、とんと音沙汰がない。個人的にも気になっていたため、ここは「ギャラクシーフォースII スペシャル エクステンデッド エディション」以来、久しぶりとなる恒例(?)のプロデューサーインタビューを敢行することと相成った。奥成洋輔氏にご登場いただき、本シリーズの現状と今後について、タップリと語っていただいた。
■ 「SEGA AGES 2500シリーズ」の現状
―― こちらも実は手探りというか、言いにくい、聞きにくい話が多いような気がしなくもないんですけど……。ぶっちゃけさせていただくと、今回のインタビューはPS2「SEGA AGES 2500シリーズ」の今後についてお話をうかがいたいと思います。ちまたでは、今発表されている2本(「ファンタシースター コンプリートコレクション」と「ファンタジーゾーンII」)で、一応の区切りというか。実質“打ち止め”なのか? みたいな噂がありますが……。 奥成 (シリーズが)終わる前に終了宣言をするって、「MSX・FAN」じゃないんですから(笑)。 ―― 要は、今の時期に発表されている2タイトル“以降”はどうなの? っていうことを気にしているユーザーさんが少なくないんですね。個人的にも気になっているんですが……。 奥成 とりあえず「SEGA AGES 2500シリーズ」という「廉価版の価格帯でセガの名作を今の人に提供する」というコンセプト自体は、「やれるところまでできたかな?」というところがあります。 それは、私が参加する前である、2003年から始まっているこのシリーズが「セガの名作を、2,500円で」というルールのもとで、ずっと試行錯誤を続けていて。私はその途中から、ある程度の実績をもらったうえで、さらに続けてきた中でできることは、ある程度完成したのかな、ということころがあるんですね。 今は「じゃ、次はどうしよう?」となったとき、現在のラインナップ以上に「ユーザーさんに喜んでもらえるタイトル」というのが浮かばなくて、いったん止まっているところがあります。それは同時に、アンケートハガキの移植希望にあがる上位タイトルのうち、実現可能なものは、だいたいやり終えたかな、ということなんです。 もちろん、たとえば、ある版権ものタイトルはファンの方ばかりでなく社内でも希望は高いんですけど、セガ単独では解決できないタイトルなどは残念ながら進展できなかったり。あとは「シェンムー」のように、SEGA AGESのプロジェクトの規模ではどうやっても移植できない規模のタイトルとかは難しいわけです。「これならなんとか行けるんじゃないか」というものを手がけていった中では、だいたいフォローできたんじゃないかと思っているんです。 一方で「SEGA AGES 2500シリーズ」では単独で出しにくかったものでも、Wii「バーチャルコンソール」なら出せるというものもでてきた。たとえば「ハイブリッドフロント」とかがそうですね。そういったタイトルを提供できる環境がでてきた。 ―― それって「パッケージ商売的に限界がきた」ということですか? 奥成 決してそういうわけではありません。たとえば今回の「バーチャロン」は非常に好評です。ああいった作りこみやボリュームは、パッケージ販売じゃないとできない部分でしょう。やはり2007年の時点で「バーチャロンが好きだ」というたくさんの人にマッチしていたのはPS2だと思いますし。 「バーチャロン」ひとつとっても、パッケージじゃないと実現しないタイトルというものはあるはずですが、ただし2,500円で提供するという形のなかで、ユーザーさんが望んでいるタイトルというのは、ある程度やり尽くした感があるということです。 でも、「ここでシリーズ終了です」という宣言をするつもりはなくて「これは『SEGA AGES 2500シリーズ』にあうんじゃないか」ということがあれば作っていきたい。あとは、作っている途中でも「SEGA AGES 2500シリーズ」向きという判断があれば考える、変えるといったことがあるかもしれませんし。 「SEGA AGES2500シリーズ」ではありませんが、今回のPS2「ナイツ」が、新しい方向性のひとつといえるかもしれませんね。あれは「SEGA AGES 2500シリーズ」ではできないことをやっています。それは何かというと、開発規模はもちろんですが、たとえば、「SEGA AGES 絵本付き限定版」といった時点で、2,500円じゃなくなってしまいますよね(笑)。そんなことをしたらお店に怒られてしまいます。 そういうところも含めて、お客さんにできるだけ喜んでもらおうと考えた結果、PS2「ナイツ」は、「SEGA AGES」ではできないことをやってみた1本と言えますね。「SEGA AGES 2500シリーズ」にあったものであれば、それでやりますし。そうじゃなければ、そうでない形でも売れる、ということですね。 ―― PS2「ナイツ」は、「SEGA AGES 2500シリーズ」の発展形と考えてよろしいのでしょうか? 奥成 私個人のことだけで言うならそうですね。元々、今回のPS2「ナイツ」を作ろうと思ったのは、実は「SEGA AGES 2500シリーズ」のアンケートに限らず、「セガに『ナイツ』を移植してほしい」という希望が、ずっとあったからです。「バーチャロン」もそうですね。しかし11年間、それを実現させることは、本当に色々なことから難しかった。 でも「今ならできる」という自信みたいなものができたところから、作ることができた。これは「SEGA AGES 2500シリーズ」での経験なしには実現できなかったものです。 ―― 枠組み的には「SEGA AGES 2500シリーズ」の2,500円、そこに一番“ひっかかる”部分がでてきた? 奥成 開発規模は最初から変わりませんが、それでも「値段以上の価値を出そう」とスタッフが試行錯誤したなかで、現在は特にいいところまでいけたと思ってます。おかげさまでユーザーさんの反響の中には「もう少し高くてもいいんじゃないですか?」というような(笑)、普通はありえない声をいただけたりとか。こっちの財布のことなんて、お客さんは関係ないわけですからね。安ければいいというのが普通の感情なんですけど、そのなかで「安すぎる」という言葉が目立って聞こえてくる状況が嬉しく感じる事はありますね(笑)。 ただ、ユーザーさんを驚かせるようなアイデアにも限界がありますし、規模が大きければ実現できるというものもあるわけです。 ―― そういう意味では「SEGA AGES 2500シリーズ」に2500という数字がついていなかったら……シリーズブランドという系統立ての意味では、PS2「ナイツ」が入っていても、別におかしくはないですよね。 奥成 コンセプトは同じですからね。セガの名作を今のお客さんに提供したいっていうシンプルなコンセプト。先ほどの試行錯誤とか、以前のインタビューでも言い続けてきたことなんですけど「どういう移植を行なうのが、お客さんに喜んでもらえるか」っていうことを、ずっと「SEGA AGES 2500シリーズ」は考えてきていて。 「リメイクだけじゃなくてオリジナル版もちゃんとやりたい」とか「リメイクするくらいならオリジナル版だけでいい」、「やっぱりリメイクがなくては」と「お客さんがやって欲しい方向性」を探りながらプロジェクトを立てているシリーズだとは思うんです。そのなかで、結果的にオリジナル版への期待が高かったタイミングで、かつ「セガ自身がやるんだったら」というところで私が参加したんですね。 ―― 色々な意味で、敷居を低くしてあげるという作業も必要になってくるでしょうし。 奥成 「SEGA AGES 2500シリーズ」には、「初めてこのゲームをやってみた」というお客さんも結構いらっしゃって、そういう人たちの意見も吸い上げているんですが、すでに知っている人と、知らない人、両方の満足度を上げるのは難しいところではあって。うまく両立できるもの、できないものがある。 リメイクものもいくつか増やしてきましたけど「もっとリメイクするべきだろう」という声は当然あって、「『ギャラクシーフォース』をフルポリゴンで!」という声もあるんですね。そういうなかで「こうやったら面白いんじゃない?」というアイデア、みんながアッと驚くようなものが、まだ新たなタイトルの中で見つけられないんですね。 ―― 「移植ゲームのありよう」みたいなものが、数年前くらいから突然ふって沸いたように各社さんから提示されてきたイメージがあります。詰め合わせもの、一品もの、リメイクもの、色々な風潮がでてきた。そういう意味で“移植ものが目立ってきた”という感じが、しなくもないんですね。目立ってきたということは、チェックされる頻度、ハードルが上がっていく。単にコンバートして入れたからといって、お客さんが喜んでいるかといえば、それで失敗しているところもある。価格の問題など、ハードにあわせて出さなきゃいけないとか、色々と難しい要因が増えてきたのではないかと……。 奥成 商品バランスとして一番良い選択が何なのかはメーカーによっていろいろあるでしょう。他社さんでは、20本~30本のタイトルが入っていて、かつそこにプラスアルファの要素が加えられたものもありますし。 ―― 最近の流れとしては、単品ものが苦しくなってきたのかなと感じるのですが? 奥成 実は私の意見はまったく逆で、今はむしろ復権してると思っています。個人的には「何本入り」といったパッケージングされたソフトは、提供側として昔から抵抗があって。セガの場合ですと、たとえば、セガサターンの時代から「セガエイジス」は、「スペースハリアー」も「アウトラン」も単品で売ってるんです。一方で、プレイステーションの「ナムコミュージアム」は古いものから新しいものまでたくさん入っているんですよね。「パックマン」も入っていれば、「ドラゴンスピリット」とか「ワルキューレの伝説」とか、直前までPCエンジンで単品移植されていたものがまとめて入っている。 その豪華さの部分がユーザーとしてはすごく嬉しいんだけど、なかには「ワルキューレの伝説」だけが欲しい、なんて人もいて、「ナムコミュージアム」のVolいくつに入っているか知らない、わからないっていうのは、個人的にもったいないと思ってました(笑)。それよりは「スペースハリアー」の価値をわかる人が指名買いできたほうがいいんじゃないかと。ビジネス的な部分をのぞいても、そこに魅力を感じていましたが「SEGA AGES 2500シリーズ」も、基本的にはそういう方向性です。 もちろん「スペースハリアー」と背表紙に書ければ、その派生だったら(カップリングしても)いいだろうということで、私の参加した後では「スペースハリアーII」はスペハリばかりを一杯入れました。できるだけ系統だててまとまっていることが理想だと思っていたんですが、あれを発売した当時は「ナムコミュージアム」、「タイトーメモリーズ」、「カプコンクラシックコレクション」のようなオムニバス形式が主流でした。 しかしその中で、少し前になりますが「ファミコンミニ」が、そこに穴をあけていたと思うんですね。「ファミコンのソフトが2,000円は高い」という声もあったにも関わらず、商品として支持を得た。「商品1本を大切にする」部分、あれは素晴らしいなぁと思いました。「鬼が島」は上下巻別にせず1本で出したりしてることとかも。その方向性が、そのまま「バーチャルコンソール」には受け継がれていますね。任天堂さんが「1本の価値を大事にする」というところを再び意識させてくださった結果、やっと「(オールドゲーム個々の価値が)認知されるようになった」のかなぁ、と。 これからも、単品、パックもの、両方でてきて、どちらが優れている、なんて話は全く無意味ですし、どちらかが消えることもないと思います。うちも「メモリアルセレクション」みたいなものをやったりはするんですけど、個人的には単品ものができればベストで、パックにするなら、そこには何らかの理由が欲しいですね。 ―― アーケードの移植なら「システム基板」で揃えるとか? 奥成 基板が一緒っていうのは、マニアの線引きっていうか。もっというと「作りやすさ」の線引きであって。そこには、あまり意味はないんですよね。「SDI & カルテット」の場合は作っているチームが同じ。音楽を含めてスタッフが同じという“共通感”みたいなものを強引につけてみて。背表紙にもタイトルが両方入る(笑)みたいなところで組んでみたんですけど、苦しかったですね(笑)。 ―― セット物の面白いところは、自分が一番欲しいと思っているタイトル以外に改めて触れてみて「あれ、意外と面白いじゃん?」みたいなところがあると思うんですが。 奥成 それは理解していますが、タイトルへの価値観の違いですね。うちだと、たとえば「スペースハリアー」には「II」と「3D」という続編があるってことを、たぶん「スペースハリアーII」を買った人の何人かは知らない。「スペースハリアー」だ! といって買って「IIってなんだろう?」と遊んでみたら、アーケードと全然違う。「へぇ、こんなの出てたんだ」って。 今の視点で見たらアーケードに比べるとしょぼい移植ではあるんですけど、そういうものも含めて「スペースハリアー」を好きな人が、それについて楽しんだり語れるところが面白い。さらにマニアックになると、「ギャラクシーフォース」の移植バージョンでの違いとか。これはもう本当に狭義の部分なんですが「ギャラクシーフォース」が欲しい人には、一番うれしいソフトになっただろうなって。そういうのがあってもいいんじゃない? と。……うーん、やはり狭いなあ(笑)。マイナーすぎてしまって、満足度が高くても、基本的には「セガの名作をみんなに知って欲しい」と明言しているコンセプトからは外れてしまったかもしれませんね。 だからたぶん、2007年のラインナップ作成時なら「ギャラクシーフォース」はやってなかったんですよ。作った側として商品としての満足度は高いんですが、商売的には厳しいですね。
逆にいうと、ここ1年くらいのタイトルは狙ったとおりのところに落ちてきています。たとえば「モンスターワールド」は、「ガンスターヒーローズ」の反響から。「バーチャロン」に関しても、これまで「Model 2の移植は追加要素が少ない」といわれていた部分と「アーケードと寸分たがわぬものが欲しい」という部分への回答ですね。あれは本当に、そこまでの経験を積んだスタッフでなければできないクオリティに仕上がったんじゃないかと。「SEGA AGES 2500シリーズ」の方向性っていうのは、自分たちがやりたいことと同時に、お客さんの反響で「何が一番よろこんでもらえるか」から発展してきたところがあります。
■ 熱心なファンが支える「SEGA AGES 2500シリーズ」
奥成 「パンツァードラグーン」を移植したときも「ツヴァイはいつですか?」とか「ドラゴンフォース」を出したときに「IIは?」っていうリクエストが、当然出てくるんですよね。「初めてやってみたら結構面白くて、しかもコレの続編があるっていうじゃないですか。それもやってみたいですよ」というのは、当然の流れなんで。 ―― そういう意味では「広げた風呂敷はいつ畳むんだ?」っていう話にもなると思うんですよね。プラットフォーム的な能力の限界もあると思うし、じゃぁ本当に「オラタン」ができるのかっていわれたら、たぶん相当キツイのは容易に想像がつくんですけど……。 奥成 ある意味、風呂敷は畳まないんですよ、最後まで。というのは、風呂敷を畳むというのは「セガの移植プロジェクトがなくなったとき」と考えてください。 ―― 移植もののタイトルを続けていくっていうコンセプト自体、他のメーカーさんにそれほど“骨”というか、ずっとやり続けるみたいな意思が見えにくい、というんでしょうか。セガの場合「SEGA AGES 2500シリーズ」があるから、逆に言うと「続けてくれるのでは?」という期待感というか。ここまで続けてくると、非常に堅牢なものができあがっているのではないかと思います。 奥成 そういう意味だと残念ながら「いったん、ちょっとお休み」という意味で今がクライマックスかもしれません。この「SEGA AGES 2500シリーズ」は、ディースリー・パブリッシャーさんと一緒に立ち上げたブランドで、タイトルには「Vol.??」という数字がついている。1があれば2があって、それは続けていく意思なんですよね。その強い意志でもって続けてきたものが、かれこれ4~5年。続きを期待するのは当然なんですけど、欲しい作品且つ、現状でできる作品はだいたい行き渡ったかなっていう……。 ―― たぶん、そういうところに目が行っている人が、次のタイトルに期待している。 奥成 「バーチャロン」を出したときも「これはXbox 360で出して欲しかった。オンライン対戦もできるし」といわれる。それはある意味正しいと思うんです。ただ、「SEGA AGES 2500シリーズ」はPS2なんですよっていう。そこはやっぱり、PS2のお客さんに向けて進めているわけですから。 ―― 何年か続けていれば新しいハードも出て、もっとやりやすい環境があるかもしれない。次は「どこに舵を切るのか」が難しいというか。どれに肩入れするってわけじゃないにしても、逆にいえば「選べるようになったんだから、選んでしまえばいい」のかもしれないですね。「こういうタイトルは、こういうハードに向いているから」という作り方を選択するとか「こっちだと1作目しか移植できないけど、こっちは2~3作目がいける」とか。受け手にとっても面白いのではないかと思うのですが……。 奥成 たとえば、PSPで(SEGA AGESシリーズが)これまで出なかったというのも「SEGA AGES 2500シリーズ」がPS2向けだからなんです。PSPで1本出ても、それはシリーズ作品なのかといえば、やっぱり違いますよね。もしPSPで出すんだったら、少なくとも3~5本くらいはラインナップを揃えてコンスタントに出るような状態でなくてはいけないと思ってて。そういう意味で申し訳ないのは、シリーズの“コンスタント”な部分が、ボクが引き継いでから崩れてしまっていることですね。最初の1年目はなんとかなったんですけど、2年目からは……シリーズとしては非常にふがいない状態で。逆に、そこである程度お客さんがせばまっている部分があるかもしれない。 ―― 忠実移植、アレンジ、リメイクと、色々な路線を両立していくがゆえに長くなっているとか。あとは、前後に仕込んだタイトルのできあがりが集中したりとか。見ている限りでは、ある意味「仕方がない」って言える部分もあると思いますが……。 奥成 そういう部分を色々と推察しちゃってる部分で、もう「こっち側の人」になっちゃってますね(笑)。 ―― ネットで書き込んでいる人たちも、少なくとも“出す側の事情を汲み取ってしまっている”シリーズになっちゃったのかな、という。色んな事情も知ってて「でも欲しいよね」みたいな会話になってるのが、やっぱりセガユーザーだなぁと実感させられます。 奥成 そういうのは(遠慮なく)言っちゃっていいと思うんですよ。ボクが昔「MSX・FAN」っていう雑誌にいたとき、移植希望の上位は「ドラゴンクエスト」とか「ファイナルファンタジー」だったんですよね。「だって『ドラクエ』も『FF』も出てたんだから、続編をMSXで作ったら、きっとさらにイイはずだ!」と。希望は希望なんだから、言っていいと思うんですよ。実際実現することもある。 ―― そういう意味でも「次はどうなるか」を、みんなが気にしていると思います。 奥成 楽天的な考え方でいえば、こういうプロジェクトそのものが続いてきているので、SEGA AGES2500シリーズ以外でも、そのスタッフたちが仕事をしている限りは、必ず……近いものがあったりするんじゃない? というところで。 ―― たぶん、そこが一番心配されているところなんですよ。っていうか、逆に「心配されてること自体(ユーザーに)一番汲み取られちゃってる」ってことで、それもどうなんだろうっていうのはあるんですけど(一同笑)。ケータイでもない限り、コンソールマシンへの移植は、1社単位で見ると、できているようで意外とできていない。あと、セガの場合はハードホルダーだったのが大きいと思うんです。 奥成 「バーチャルコンソール」で、メーカーで検索できるようになってから「なんだ、このセガの数は!」って言われました。任天堂さんより数が多い(笑)。 ―― そういう“層の厚さ”みたいなものがセガの優位性でもあると思います。一方で、ユーザーの“ハードルの高さ”も、ちょっと違うなぁと感じるところはありますが。こういうプロジェクトは、オリジナルのリリースから時間が経過するほど作業が難しくなります。タイミング的な問題、技術の蓄積など……特殊な仕事になっちゃってるなぁ、と。 奥成 そこは目が肥えているんでしょうね。セガサターンの時代から「セガエイジス」っていうプロジェクトは、基本的に“ニッチ層”に対してのタイトルだったんです。実際サターン版と今の販売本数は極端には変わらない。古いゲームを愛好している固定層は、必ずいるんです。 違うところだと、ただ人気タイトルは違っていて、(オリジナル版から)10年くらいが一番みんなが喜んでくれるようですね。今回だと「バーチャロン」がそうですし、「ナイツ」に興味がいくのも、そういうことなんだと思うんですよね。 ―― ドリームキャストは、まだちょっと早い感じがあるのでしょうか。 奥成 「シェンムー」っていう話が出たりするのは、ドリキャスを持っていない人がやりたいってことなんでしょうね。 ―― ユーザーが過去のゲームに目を向けているのは、ゲームのジャンル的に「最近、こういうゲームないよね」っていう面白さに気付く層が増えているのかもしれません。シンプルだからつまらないかといえば、それは違うということも理解できている。逆に「OMG」をプレイして「『オラタン』はどうなの?」と興味がいくのも面白い。それぞれのタイトルに対して「それがマストだ」という人間が、他を受け入れられないのかといえば「いや、そんなことはないよね」というところに、なんとなくきたのかな? というのが、見ていて面白いですね。 奥成 シリーズっていうのは、広げていくところも、せばめていくところもありますからね。 ―― X-LINKで「バーチャロン」を対戦している人を見ると、面白いことになっているなぁって。昔の手習いをもう1回やり直している層も多いんですが、リアルタイムでやったことのない人も少なからずいて、凄く面白い。操作系にしても、昔の手習いの人は「ツインスティック」ありきという話になっているんですけど、「マーズ」をやっていた人はパッドでいいと。出て行った人がいれば、入ってくる人もいる。そういう意味でシンプルさが逆に評価されるというのは、若い世代の人が食いついてきてくれているのかな、と感じます。冷めた人が増えた一方で、決して「熱いユーザー」が減っているわけでもない。 奥成 「熱いユーザー」といえば、今作っている「ファンタジーゾーンII DX」で「システムE版の基板が手元になくて困っています。募集中!」と半分冗談で「ゲーマガ」さんのカコミ記事にコメントしたら、「お貸しします」というメールを頂きまして。さらにたまたま調べ物でweb検索して見つけたブログで、記事を読んだ人で「いつでも貸すから連絡ください!」って書いている人がいた。すぐにメールしました。(一同爆笑) おかげさまで今のROMにはすでにシステムE版が入ってます。こちらが何の見返りもないことに恐縮していると「『SEGA AGES 2500シリーズ』に協力できてうれしいです!」みたいな声をいただけたときは「あぁ、シリーズを続けてきてよかったなぁ」と思いました。同時にゲーマガさんにも「ありがとう!」。 ―― いい話だなー。 奥成 ……それでも「ギャラクシーフォースI」は出てこなかったんですけどね(笑) ネットの掲示板に「移植が決まったので、もう要らないやと思って結婚したときに捨てちゃった」とか書いてあったらしくて、みんなに「なんてことをするんだ!」と突っ込まれていたとか。もし捨てる前に知ってたら、誰かしらオファーを出したはず。惜しかった!!(笑) ―― 昔の基板ユーザーって、結婚を契機にコレクション処分しちゃう人が多かったですねぇ。ガレージにあった大型筐体とか、邪魔になっちゃったとか。 奥成 大型筐体に限らず、セガの古い基板は電池式のプロテクトがかかっていて、通電してないと寿命がくるんですよ。だから二重に厳しいんです。電池が切れたらアウトなんですよ。実はシステムE版も最初は開発スタッフの私物があったんですが、移植する段になって「あー、電池が切れてる!」ということになっていたんです。
■ 「FZII DX」、「PS」の開発状況は?
奥成 “春”を目指して開発しております。いわゆる「移植」部分は終わってるんですが。いわゆる「デラックス」な「ファンタジーゾーンII」は、いまだに喧喧諤諤で……。 ―― あまり情報が出てきていないので「どうなっているんだ!」とファンも気になっていると思います。 奥成 今度やろうとしていることは「ギャラクシーフォース」の「ネオクラシック」とは“真逆”なんですよね。「ギャラクシーフォース」は、今のハード性能にあわせたアレンジ。今回は、10~20年前のシステム基板にあわせた限られた機能を突き詰めていく。これがどう評価されるのかわかりませんが、ある意味、凄く贅沢。かなりのゲームファンでも「こんなゲーム、昔あったんだね。全然知らなかった」とスルーされるかもしれない。
ただ、開発しているエムツーさんは「System16じゃこんなことはできないだろう」といわれるようなところまでは突き詰めたい、と。理想は、System16基板で動いているところを、どこかで見せられたらいいなぁ。ちなみに移植部分だけなら今でもお見せできますが……ごらんになりますか?
―― それはもう是非!! (しばしプレイさせていただく) あー、懐かしい。でも贅沢だから連(射)付パッドが欲しくなっちゃいますね。 奥成 もちろん連射設定はできますよ。でも、マークIII版はFM音源ユニット付きで連射すると処理落ちするんですよね。次にお見せするのが、問題の苦労して入手したアーケード版です。何が違うかというと、難しくなってるだけなんですけど(一同笑)。 システムE基板のほうがハード性能が若干いいので、処理落ちしないんですよ。あと、体力制だったのが1発死にになって、さらにタイム制限もあって。後半になるほど処理落ちしないところが厳しくなって、体力制じゃないから出会い頭に敵に突っ込んで死んだり。うーん、実は褒められるところがあまりない(笑)。
―― マークIIIのパッドでプレイしていた当時を考えると、PS2のコントローラーでも贅沢なんだけど……でもやっぱりスティック欲しいなーと思います(涙)。あれ、ツインボムってこんなに高かったでしたっけ? うわ、ボスキャラ超懐かしい!!
―― 「ファンタシースター コンプリートコレクション」は、いつ頃の発売になりそうですか? 奥成 業界の“冬”までには出したいなぁと思っています。本作については、年明け以降に詳しいお話をさせていただければと思います。(この後、発売日が3月27日と正式に発表になった)
■ 新たなる方向性? PS2「ナイツ」
奥成 別に終了宣言したりとか、風呂敷を畳むつもりはないのですが、結果的には、次のタイトルが決まってませんという状況は変わりません。 でも、たとえば私が今手掛けている「ナイツ」がなぜPS2かといえば、「SEGA AGES 2500シリーズ」のお客さんからの声に応えたいからというのは間違いないですね。そういう意味では(プラットフォームは)一択なんですよね。 PS2「ナイツ」を作っているのはSEGA AGESの「ダイナマイト刑事」を手掛けたスタッフです。つまり内田のところなんですけど。「ダイナマイト刑事」の後、もう1本何か一緒にやろうという話になって、刑事の反響から「サターンのゲームがいいねぇ」、「サターンで一番人気があったゲームはなんだろう」、「一番人気のあったゲームは」といったとき移植されてないゲームで一番上にいたのが「ナイツ」なんですね。もちろん、その一方で「アンケートで上位タイトルはなんだろう」と見ると、やっぱり「ナイツ」。人気もあって支持もあるんだから「ナイツ」を作ったらいいんじゃないか。 ただ……どこかのインタビューで言ったかもしれないんですけど「ダイナマイト刑事」より前は、「ナイツ」は無理です、と言ってました。というのは、「ナイツ」(の移植)がどれだけ大変かわかっていたんで、まず忠実な移植は不可能だろうと。 今回はほぼ実現できたつもりですが、現状に至ってもPS2用のサターンエミュレーターなんてものは存在しません。サターンというハードは簡単にエミュレーターができるほど単純ではないんです。 たとえば「ダイナマイト刑事」はC言語で作られているのですが、これは割とコンバートしやすいんですよ。でも「ナイツ」はアセンブラで、サターン用にチューニングされたプログラムなんです。「SEGA AGES 2500シリーズ」のラインナップに「ナイツ」を入れない理由は、あの規模のタイトルは「シェンムー」ができないのと同じ。やりたいという気持ちはあっても、できなかった。 でも「ダイナマイト刑事」をやったあと、それを基準にスケールアップして、時間をかけて作ったらできるんじゃないか? っていうことが開発から上がってきたんですね。そこで中さんのところにいって「今度こそできそうなんで『ナイツ』を作らせてください」と許可を貰ってきました。早速ソースをもらってとにかくアセンブラの解析を続けていて、気が付いたら2年くらい経っていたというわけです(笑)。 ―― 今後は、こういった移植路線にすべてシフトしていくのでしょうか?
奥成 お客さんの反響次第ですね。少なくとも「SEGA AGES 2500シリーズ」の「ドラゴンフォース」や「ダイナマイト刑事」は、良い反響をいただいているので。サターンのゲームを、記憶の美化を込みでやりたいという方向性は今後も出せたらいいなぁとは思います。「SEGA AGES 2500シリーズ」でできるかどうかは、わかりませんが。ただ、個人的には今の時代ではサターンのゲームを何も手を加えずにそのまま出すだけということはないかな、と思ってます。
■ PS2版「ナイツ」をプレイ! 奥成 あ、そうそう。「ナイツ」もごらんになります? ―― 否応なしに是非! ……これは移植グラフィックスのオリジナルモードですね。 奥成 320×224ドットのなかで、当時と同じモデルをできるだけ再現しました。サターンじゃないとできない表現は似せてやってますとかはありますけど。操作に関しては、デュアルショックは慣れれば結構マルコンライクな操作はできます。クイックな切り替えはデュアルショックのほうがやりやすいですね。スティックを押しっぱなしにしている“楽さ”は、マルコンかもしれませんが。 ―― コントローラーの違いは、もう同じ仕様のものを出すしかないですもんねぇ。またユーザーから要望が出ますね。PS2版「マルコン」出せって。 奥成 Wii版の操作も慣れですからこちらも頑張って慣れてください(笑)。せっかくだから、次はPS2用モードを……。 ―― モデルがキレイだ。関節に節目がないし、目が丸い……。 奥成 ムービーのモデルをベースに落とし込んでいるので、見た目の違和感はないはずです。解像度が縦横倍になってますし、モデルは全部作り直していますし。あとは、細かいところだと“奥行き”も遠くまで表示できるようになっていて見晴らしがよくなってる。クリッピングが遠くまであるんですよ。ナイツは右に進んでいくゲームなんで、ゲーム性にはあんまり関係ないんですけど。 あとは、ザコキャラであるサードレベルナイトメアンやナイトピアンが3Dモデルになってます。前はプリレンダのキャラクタをスプライト表示していたんですけど。 ―― 空気が澄んだ感じというか……色もキレイですねぇ。 奥成 でも、たぶん、こちらのモードを先にやると「サターン版のまんま!」ってみんな思うんですよね(笑)。 ―― 確かに“美化された記憶”だと、こっちなんでしょうね。 奥成 (プレイを見て)……あっ、またピアン巻き込みましたね!? ボクが一番心配しているのは、Wii版でパラループでピアンを巻き込むのになれたユーザーが、同じことをしてピアンを全滅させてしまわないかということです(笑)。……マニュアルには「パラループで巻き込まないで」と、ちょっと大きめに書いておきました。 ―― その心配はありますねぇ。Wii版をやっていると「むしろ巻き込め」ですから。 奥成 Wii版のほうが、視界が広くてスピードが速く、空を飛んでいる感じがパワーアップしているんです。こうしてサターン版をプレイすると、より強く感じるんじゃないですかね。 ―― そうですね。こっちのほうが窮屈な感じがします。感覚も凄くクイック。 奥成 基本コンセプトは同じなんですけどWii版は新しいゲームになっていることがわかるのではないでしょうか。 ―― 箱庭的というか、コレはコレでいいと改めて思います。逆に“違い”は両方やってみないとわからない。なんとなく覚えている人だと、Wii版をプレイしても「あぁ、ナイツってこうだったよね」で終わってしまうかもしれない。 奥成 ナイトメア面まで来ましたね。このギルウィング面は太陽の光源が追加されたりとか……地面も立体で作ってます。当時はスクロール面ですから。ただ、ゲームそのものはどちらも同じです。ですのでさっきプレイした「SEGASATURN DREAM」と、新モード「BRAND NEW DREAM」のスコアは、一緒に集計しているんです。どっちでクリアしてもオーケー。それくらい同じです。 ―― 比較して見られる、っていいですね。 奥成 「ダイナマイト刑事」のときからリメイクモードは「記憶の美化の補間モード」と呼んでました。逆にセガサターンモードは全く同じじゃなくて、ちゃんとリメイクしてあるんだよ? って知ってもらうためのモードと、よく言ってます(笑)。人に見せるときは、先にサターンからやってください。(笑)。
―― おー、確かにさっきの“窮屈な感じ”がだいぶ減りましたね。凄く見えやすい! そういえばマニュアルですが、今回は中さんが50ページくらい寄稿してたりとか?
奥成 SEGA AGESとは違うアプローチをしています。今回のマニュアルのコンセプトは“再現”。「ナイツ」は“ふりかえる”というよりは“あの出会いをもう一度”です。
■ 「SEGA AGES 2500シリーズ」が歩みを止めるわけではない 他タイトルに話が及んだため若干焦点がぼやけた感じになってしまったが、要点をかいつまんでいくと「SEGA AGES 2500シリーズ」から生まれた移植プロジェクトの芽は決して“無くなった”わけではないようだ。今回のPS2「ナイツ」のように、プロジェクトから派生した“親戚”のような復刻作品も生まれており、シリーズの今後についても逐一チェックしていく所存だ。
後編となる奥成プロデューサーインタビューPart.2では、氏が手がけているWii「バーチャルコンソール」など、別プロジェクトの話題を中心にお届けする。ぜひ楽しみにしていただきたい。
□セガのホームページ (2008年1月21日) [Reported by 豊臣和孝]
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