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株式会社カプコンが初めて自社で開発・運営するPC用オンラインゲームとして登場した、「モンスターハンター フロンティア オンライン(MHF)」。7月にサービスを開始してから約半年が経過し、ゲームとして成熟を見せてくるとともに、これまでの「モンスターハンター」シリーズとは違った色を見せ始めている。
そんな「MHF」について、今回はカプコン開発統括本部オンライン開発部 運営プロデューサーの杉浦一徳氏を訪ね、βテストから正式サービスにかけての苦労話や、先日発表された「シーズン2.0」の方向性、さらにその後の展望について伺った。
■ 同社初のオンラインタイトルは、トラブルで始まりつつも数字は上々 ――「MHF」が始まって半年ほど経ちました。まずは今のお気持ちを聞かせてください。
これまでアップデートを行なうと、「こんな変更よりこちらがよかった」という要望が非常に多かったのですが、12月はお客様からそこそこご満足いただける評価を久しぶりにいただけたと感じています。これをバネに、「シーズン2.0」とそれ以降もやっていけたらいいなと思っています。この半年、お金をいただいているのに変ですけれど、修行をして、それなりに経験値も積んで、ようやく少しは結果を出せてきたのかなと思います。 ――これまでの数字としては、先日ハンター人口が50万人を突破したという発表がありました。ID的には50万を突破しているのですか? 杉浦氏 : ほぼ同数です。お客様がそんなに複数のキャラクタを作るわけではないので、そんなに差はありません。ただIDを管理しているのは株式会社ダレットで、僕たちがIDの数を発表するというのも変なので、キャラクタの数を発表させていただきました。非常に、順調に、いいペースで来ているのではないかと思います。競合他社さんの現状のスピードを考えると、それなりにいい数字がこの短期間で出たんじゃないかとは思っています。 ――今の数字は、当初の見通しからしても満足のいく数字ということですか。 杉浦氏 : 難しいですね。まだまだオンラインゲームを知らない人も多いですから。例えば「モンスターハンターポータブル 2nd (MHP2)」が150万本売れたこともあって、「(MHFで)150万人のアカウントがないのは何でだ」と怒る人もいますし、逆に「オンラインゲームとして考えればすごいよ」と褒めてくれる人もいます。バラバラの反応ですね。 ――PCもコンシューマも扱う弊誌から見ると、「MHP2」は150万というすごい数が出ていますけれども、PS2の「モンスターハンター」シリーズでは100万本売れたタイトルはないわけです。さらに日本はPCがそんなに強くないという中で、この50万という数字は、私は立派な数字だと思っています。 杉浦氏 : そうですね。特にパッケージも販売させていただいて、それも好調でした。販売店さんにも、競合他社さんのPCソフトに比べてどうですかと聞くと、3倍から4倍売れているとか。数字的な実績でいくと、悪くないなと純粋に思っていましたし、それだけ期待してくれた人が多かったんだなという意味でもありがたいと思っています。 ――本作の開発体制について、ユーザーにもわかる形で、ちょっと教えていただけませんか。 杉浦氏 : 開発チームは、「企画」、「グラフィックス」、「プログラム」、「ネットワーク」、「システム」という当たり前かもしれませんが、そのような構成になっています。運営チームのほうは、「WEB」、「品質管理」、「運用」、「カスタマー」の他に、配信クエストや期間限定イベントの企画するような運営プランナーもいます。そういう体制が開発部に全部一括収納されている状態です。 運営チームの数メートル先で開発チームが動いているので、開発されている途中のものを見ながら議論したり、何か緊急事態が起きてもすぐに開発と運営がミーティングを始められるような形です。縦割りでガチガチにやっているというよりは、「MHF」に絡んでいる人たちが1つの箱に入っているような形です。その環境を作ってくれた小野(開発統括本部 オンライン開発部部長の小野義徳氏)には本当にありがたいなと思います。逆に、これだけトラブルが起きていた中で、この体制じゃなかったらもっとまずかったかなと思うので、本当にこれでやってこられてよかったなと感ています。 ――なるほど。もしかしたらユーザーさんは「MHF」が東京の開発室だけで作られているということも知らないのかもしれませんね。
杉浦氏 : 東京で作っているから、大阪の「モンスターハンターポータブル 2nd G (MHP2G)」のチームや「モンスターハンター3 (MH3)」のチームと全然連絡を取っていないということはなく、情報共有や話し合いはなされています。たまたま場所が東京だったというだけで、そこは変に考えなくてもいいのかなと。さっき言った、数メートル先でやりあうことを考えると、東京に開発がいて助かったなというところがあります。オンラインゲームにはオンラインゲームのいい環境があって、なおかつ他の「モンスターハンター」シリーズとの情報共有もあって。確かに離れてはいますが、そこは東京と大阪のインフラを整えていまして、電話会議なり何なりで、基本的にそんなに困ったことはありません。
■ 予想を超えたサーバー満員状態! 予備の機材で動かす運営の賭け ――ゲームのサービスが始まって今に至るまでの話を順に伺っていきたいと思います。まず当初のサーバーの問題について、先ほど申し訳ないとおっしゃっていましたけれども、当時を振り返ってどう思われますか? 杉浦氏 : 最初に言ったとおり、本当に申し訳ないです。ユーザーの数は同時接続数で7万人くらいを想定していたんですよ。オンラインゲームの現状を考えると、7万の同時接続数をまかなえる機材をそろえるだけでも、社内では「そんなにいらないだろう」という意見もありました。そんな中でやってみて、「え、これで足りないの?」とわかった時点で、頭の中は真っ白ですよね。 誤解しないで欲しいのですが、機材も全然ケチっていません。国が使うような数億円規模の大規模サーバーを除けば、商業ベースで使うものの中では最高級のサーバーをそろえたんですよ。そのために、追加の機材をなかなか入手できませんでした。「海外にしか在庫がない、2カ月かかる」といわれて愕然としたこともありました。サーバーを1つから3つに分けるときにも、あのタイミングで1、2日でけりをつけなくてはいけなかったので、色々なところに無理を言ってお願いしてかき集めました。当時はそういう理由で予備の機材でサーバーを組みましたから、構成も3つのサーバーで全部同じにはできなかったんです。本当に安定して動くのかとか、検証が十分じゃないけれど大丈夫なのかとか、色々な博打がありました。 嬉しかったのは、その後はそんなにサーバーが落ちてないんです。ハードディスクが壊れて、1度か2度、ランドが1つつぶれるということはあったのですが、サーバー1が全部落ちましたとかいう、他のオンラインゲームであるようなサーバーダウンは一度もないんですよ。ああいう賭けに出て、これほどの安定性を持てたというのは助かりましたね。僕らからすると、ギリギリで救われました。 ――やはり大変なことがあったようですね。オープンβテストから正式サービスが始まる際も、普通のオンラインゲームだと正式サービスが始まると有料になるので、ユーザーがドンと減ります。ところが「MHF」は、正式サービスが始まってもユーザーが減らないどころか、増えていたんですよね。サーバーが満員でログインできないときもありました。あれは予想されていましたか? 杉浦氏 : 正直言って、予想していなかったです。あそこでぐっと伸びたのは、怪我の功名というべきか、うちが最初のオープンβでこけてパンクしたというところから、「え、そんなすごいゲームだったら1回やってみようか」というところもあったのかなと。その頃はまだサーバーをありものでかき集めていた頃だったので、本当に無理できなかったんですよ。運営チームは、「サーバーの上限を増やしてくれ」と言って、開発は「無理だ」と言う。そのしのぎあいの中で、ユーザーさんからは毎日「ログインできない」と怒られて。7月の上旬は本当に針のむしろでしたね。 ――ちなみに今はサーバー構成は統一されたものに? 杉浦氏 : もちろんです。その後は発注したサーバーを一度きちんと構成させて、きちんと検証して、きちんと安定して動くことを確認してから、実はメンテナンスの間に、こっそりと入れ替えていまして、今は全部同じ構成になっています。 ――トラブルがなかったどころか、サーバーが切り替わったことにすら全く気づきませんでした。 杉浦氏 : 時々、定期メンテナンスが1時間ほど延長していたことがあったと思いますが、実はこういうことをしていたこともあります。なるべくお客様に心配をかけないよう、スムーズに取り替えようということで、ささっと取り替えました。今は全く問題ないと思います。
――その後はサーバーがとにかく安定しているので、これ以上私からお伺いすることはありません(笑)。
■ これまでのアップデートの狙いと反省点
杉浦氏 : 「ヒプノック」は、開発的にもお客様的にも、そこそこよかったと思っています。でも「ヴォルガノス」は最初の段階では反応がイマイチでした。モンスターだけでお客様が判断されることはなく、モンスターから手に入る武器・防具が強いのかとか、面白いスキルを持っているのかとか、デザインがいいのかとかが重要なので。開発が設定した数字が少し遠慮気味だったようで、お客様からすると、それを倒す苦労に見合った報酬があるのかというところで、自ずとしてそんなに戦わなくていいと思われたようです。1回記念にやろうという人はいるんですが、たくさんやるという人は正直少なくて。後でお話ししますが、第3の新モンスターの時には、もう少しそこを考慮してやらないとだめだよ、という形でやっているところです。 あと「ヒプノック」は、すごくパーティ戦に特化した内容で、睡眠攻撃をお互いに起こしたりと面白い要素を持っていました。「ヴォルガノス」に関しては、独特の動き方とか。きょろきょろしたりする可愛さとか、それなりに特徴はあるのかなという気はしていて、歴代のほかのモンスターに比べても、印象的に影の薄いモンスターではないと思います。バランスの部分を中心に、リファインアップデートで修正させていただいた後には、それなりに遊んでいただいています。 ――個人的な感想なのですが、最初に「ヴォルガノス」を実装する前にこちらで体験させていただいた時、すごく強かったんですね。「これは入ったら大変なことになるぞ」とその日を楽しみにログインしたら、やっぱりみんなやられてゾロゾロと出てきていて、「これはいい絵だな」と思ったりもしました(笑)。今回のもそうですが、「ヴォルガノス」は強いですね。 杉浦氏 : これは私の個人的な意見なのですが、1回で倒せるというのは、ゲームとしてどうなのかな、と思うことはあります。負けて、癖や特徴を読んだり、研究して初めて倒せるというのもありだと思っています。「1発で倒せないからつまらない」というクレームが来ても、あまり僕たちは気にしていないんです。「1カ月ずっとやって倒せなかった」と言われれば、それはまずいだろうと思うのですけれど。 お客様同士で情報交換するための「Q&A掲示板」も用意しています。今日も掲示板を見たら、「ヴォルガノスの弱点は何かわかりますか?」といったスレッドが立ってて、「おそらく氷だよ」と返事があったりとか。ああいうコミュニケーションがあって、ようやく「氷の武器を作ろう」とか「持って行こう」とか言って、倒せると「ああ倒せた、教えてくれた人ありがとう」と、そういうのがオンラインゲームのコミュニケーションの楽しみなので、ぜひそういう形になって欲しいですね。 ――では次の話に。プレーヤーの目標になるであろう古龍について、最初は小出しにされていましたが、今はまとめて出されるような傾向になっています。これはどういう方針の変更があったのでしょうか? 杉浦氏 : 「MHF」は元々、「モンスターハンター2(MH2)」を移植したものなので、元々のものがあるハンターランク(HR)50までは充実しているのですが、50以降のコンテンツが不足していました。最初の段階で小出しにしていたのは、古龍を狩る前にやれることはある程度あるので、もう少しそっちで楽しんでもらおうという方針があったからです。 ある程度段階を踏んで、ちょっとずつシフトするという流れは昔から想定していて、今もその通りにやっています。ですので期間限定配信クエストで導入されたクエストは、ある程度の月が経ったら必ず定番クエストのほうに組み込まれます。クエストのライフサイクルみたいな形でやっているので、これからも最終的にはそうなっていくと思います。いつかはHR41やHR71からの古龍クエストも常駐化したいとか。その時に、全部常駐化したら何も残らないじゃん、ということにならないように、新しい期間限定クエストを作っていくという感じです。 ――なるほど。では次に、先日のリファインアップデートについて伺います。一番大きなところは、エクストラコースの拡張かなと思っています。以前エクストラコースを導入されたときに、小アイテムボックスが使えるといったサービスがあったのですが、私はそれで終わりなのだろうと思っていて、今回大きく拡張されたのには驚きました。これは今後もどんどん追加していくということでしょうか? 杉浦氏 : モンスターの亜種を追加するなどの方が開発的には大変で、エクストラコースにはあまり力を使っていないんですよ。ただ、今回はお客様からすごくうけがいい。僕たちとしては誤算でびっくりしました。エクストラコースに関しては、前回実は入れる段階で、理想としていたのが10だとすると、4くらいしか実装できなかったんです。だから今回は、元々予定していて間に合わなかった分が、後出しで組み込まれたと。あと1か2くらいは残っていまして、そこからはあまり増えないとは思います。 例えば、エクストラコースの人だけ受けられるエクストラクエストみたいなものも、最終的には入れようかと思っています。基本的なポリシーとしては、ハンターライフコースで十分遊べるようにしたいので、あるモンスターが出るクエストはハンターライフコースでは絶対受けられないといった形にはしません。痒いところに手が届くサービスということで、エクストラコースを提供します。 ――エクストラクエストという方向は面白いですよね。例えば貴重な素材を取りにいくためのクエストみたいなものがあると便利かなと。 杉浦氏 : そうですね。そのあたりのバランスは今考えているところで、すぐにというわけではないのですが。今回でエクストラコースの完成度はある程度確定かなと思っているので、今の内容から2倍、3倍と何かが入ることはないと思います。 ――ほかに12月のリファインアップデートの内容で、何か運営側からこれというものはありますか? 杉浦氏 : ぜひ「ヴォルガノス亜種」と「ヒプノック繁殖期」は一度遊んで欲しいですね。あとは今回、メゼポルタ広場をリファインしてデザインを変えました。使いやすいかどうかは置いておいて、デザインが変わるとムードが変わるんですよね。あの配置変更は2008年1月30日実装予定の「シーズン2.0」のための布石なので、簡単には想像できないと思うのですが、ここは何だろう、何のためにあるんだろうと、「シーズン2.0」のアップデートまでの間、色々と想像してもらえたら嬉しいですね。 ――これは単なる興味なのですが、広場にちょっとデザインを追加したりできるようなら、クリスマスツリーや門松が立ったりはしないんでしょうか?
杉浦氏 : うちの「Q&A掲示板」を見ていただけていると気づくかもしれませんが、「広場が重い」と書かれていることがあるんですよ。広場は100人集まれるので、負荷が結構かかるんですよ。今は本当にギリギリのところで調整をかけています。できないわけではなくて、何とかもうちょっと負荷をかけない形でうまくやる方法はないのかと色々と試しています。クリスマスや正月は間に合わないですけれども、来年は何かやりたいねと、開発チームのみんなと話し合っているので、やれたらいいですね。
■ 「シーズン2.0」はメインビジュアルにも注目! ――では過去を振り返るのはこのくらいにして、「シーズン2.0」についてお伺いしたいと思います。
――これが新モンスターですか。意外と派手ですね? 前にシルエットが出ていたときには、すごく落ち着いた、倒すと生肉が出てきそうなイメージでしたけれども。 杉浦氏 : 前回のは、そのまま見せちゃうとばれちゃうので、かなり暗い場所にわざと置いていました。このメインビジュアルはティザーサイトでも公開されます。モンスター以外にも、(メインビジュアルに登場しているハンターを指差して)こういう怪しい装備が気になるのかなと。見た目、何かに似ているなと思います? ――ええと……レイア装備の色違い、ですよね? 杉浦氏 : に見えますよね。ここは1月くらいにならないと情報を出せないと思うのですが、これを見て期待を膨らませてもらいたいです。今回はひとまずモンスターのお話ということで。今回登場する場所は樹海で、樹海の奥にいた新しい飛竜という形になっています。名前は「エスピナス」といいます。 ――「棘竜(いばらりゅう)」という名前がすごいですね。 杉浦氏 : この棘が特徴的ですね。通常状態と怒り状態で外見の変化はあるのですが、パラメータ的な変化もあるので、ぜひみなさんにも実際挑んで、体験していただきたいです。武器・防具についても、今はこれだけしかお見せできないのですが、武器は11種全種揃えたいなと思っています。防具に関しても、剣士用とガンナー用のものは用意しようと思っていまして、剣士用に関しては、ちょっとスタイリッシュなデザインで、格好いい形で仕上がっています。 ――武器のデザインはかなり派手ですね。 杉浦氏 : 棘竜の棘の部分を特徴的に使っていると思います。それぞれの武器の使い手の皆さんに、ぜひ作ってもらいたいですね。 ――「エスピナス」は古龍ではなく、通常の飛竜種なのですか? 杉浦氏 : 飛竜種です。HR31からとHR100からの2つに、受けられるクエストは分けようと思っています。 ――ちなみに私は今HR63なので、HR31なら戦えますね。 杉浦氏 : それと、お客様でもうHR99に到達しているような人たちが、100になって新しく受けられる「エスピナス」のクエストもあります。「エスピナス」は幅広いお客様に楽しんで欲しいので、HR100以上でないと会えないという形にはならないということですね。 ――今回は割と正統派のデザインですね。「ヒプノック」や「ヴォルガノス」は変わり種でしたけれど。 杉浦氏 : 鳥竜種、魚竜種ときて、人気の飛竜種が出ていないのはちょっとな、というのがありまして。今回は飛竜種にスポットを当てました。 ――では、「シーズン2.0」の全体としての狙いは何でしょうか? やはりHR100以上でもっと深く遊ぶということが第1ですか? 杉浦氏 : アップデートはいろんな方向にかけています。例えば、今は春を実装目標として、「新米猟団」というシステムを用意しています。新人の方々が入れる猟団ということで、猟団長はカプコンになります。 ――つまりオフィシャル猟団ですか? 杉浦氏 : そうですね。別にカプコンの人間が中に入るというわけではなくて、キャラクタを作ってメゼポルタ広場に降りると、新米猟団に入りますか、入りませんかと聞かれるという仕組みです。そこには30人なら30人という枠があって、元々入っていた先輩や、初心者同士でコミュニケーションをとって、ある程度のHRまでいくと卒業、という形です。 初心者や、HR10台という駆け出しの方のサポートも、「シーズン2.0」期間に、よりリファインしようと企画していますし、さっき言った「エスピナス」をHR100以降だけでなくてHR31からでもやることで、HR31くらいの方にも「エスピナス」をどうぞ倒して、武器や防具をゲットしてくださいというのもあります。HR100以降に関しても、「エスピナス」以外にもコンテンツは色々と用意しています。基本的には全てに対してそれなりにアップデートをかけて、待遇の悪いHR帯がないようにしようと気をつけています。 ただ、新しく入れるHR100以上に関しては当然力を入れています。今まで「MH2」を移植していたのですが、HR100以降は武器や防具の生産システムも、概念的なところで全部オリジナルになる予定です。「シーズン2.0」をもって「MHF」のオリジナルの色に染まってきたところがあるので、それを何とかして「シーズン3.0」までに完成形に持っていって、「MHF」のオリジナル性を高めていきたいと考えています。
※ 「シーズン2.0」で実装される「エスピナス」については、別途紹介記事を掲載しているので、そちらも合わせてご覧いただきたい。
■ 大人数向けコンテンツも検討。大規模アップデートは半年に1度のペースで ――では「シーズン2.0」の話はこのくらいということにして、その先のお話や、プレーヤーとして気になっているところなどもあわせながら伺いたいと思います。まず現状を見て、特にどこか手を加えなければいけないなと思っているところはありますか? 杉浦氏 : 大規模に参加できるものは何か必要なのではないかと思っています。 ――5人以上で参加できるもの、ということですか? 杉浦氏 : そうです。クエストを5人以上で行くというのは現段階では無理なのでそれは考えていないのですが、たくさんの人たちが一斉に参加するという、イベント的なものをシステム化して組み込みたいと思っています。 ――それは今のゲームシステムからすると、ちょっと想像できませんね。 杉浦氏 : もうネタはあるんですが、言ってしまうとばれてしまうので言いにくいんですけれども……。1つの猟団だけだとつまらないので、複数の猟団同士で競い合ったりとか、そこで何か得られるものがあったりとか。猟団に順位をつけるのがメインではありませんが、何か競争的なシステムがあって、もうちょっと何か多人数で遊べるシステムをゲームの中に導入できたらなと思っています。今導入しているのは、「公式狩猟大会」のタイムアタックだったり、魚の大きさを競い合ったりという個人戦なので、その団体戦みたいなものを考えていただければ。 ――他には何か考えていらっしゃいますか? 杉浦氏 : そうですね……「シーズン3.0」に向けて、色々とモンスターの企画を練ったりとか、新しいコンテンツを練ったりとかといったところです。 ――先程からさらりと「シーズン3.0」とおっしゃっていますけれども、今後のスケジュールみたいなものは固まってきているんでしょうか? 杉浦氏 : 大体、目安として半年ごとにアップデートしていくと考えていただけるといいんじゃないかと思います。 ――それはメジャーアップデートとなる「2.0」、「3.0」という形でですか? 杉浦氏 : そうですね。2008年内はそういう形で動いていきたいと思っています。ただその予定だったものが、今回も1月に遅れてしまいましたので、ちょっとだけ自信がないんですけどね。1カ月か2カ月遅れたらごめんなさいという感じなんですけれども、現状はそのつもりで動いています。 ――「シーズン1.5」もありましたが、次もそういう形ですか?
杉浦氏 : 「シーズン2.5」もありますよ。そこでも何か新しいコンテンツを足していけたらなと思っているので、これはこれで、まだはっきりは言えないのですが、「エスピナス」のホニャララが出たらいいなとか、そういうところは考えています。
■ 武器バランスは今後も少しずつ調整。猟団は合併などの新システムも検討中 ――では、私がプレイして気になっているところを1つずつ伺っていきたいと思います。まず武器のバランスですが、双剣の乱舞のバランスを調整されたりしています。ただ他の武器については、そんなにいじられていません。このあたりはどうお考えですか? 杉浦氏 : 12月のリファインアップデートが終わってから、大剣のバランスをもう少し上方修正してくれないかという要望が一番来ています 。あとは双剣が相変わらず強いので、弱くしてくれという意見も来ています。ただ、武器のバランス調整は大変難しいのです。武器の強い弱いは永遠のテーマかなと思っているところがあるので……目下のところ、何か根本的なところで改善できないかという議論を続けています。 武器のバランスの話が出てくると、“武器縛り”の話に繋がります。ここでお客様同士の摩擦が生まれないように、募集文で「武器指定あり」とか「好きな武器で戦おう」というコメントを用意させていただきました。あとはモンスターの弱体化に関しても、モンスターが強ければ強いほど武器縛りが出てきて効率主義に陥りやすいので、モンスターの弱体化の理由のひとつとして、武器縛りをもう少し緩和する狙いもあります。ただその分「元々強かった双剣とかだともっと簡単に狩れるじゃないか」という指摘もあるのですが、そちらよりは好きな武器でモンスターを倒すところに、今回は重きをおいてやっています。 ――細かいところだと、ランスのステップが1回から3回になったり、ガンランスに龍属性がついたりしていますね。 杉浦氏 : 今回であれば、太刀の味方ヒット時に転倒がひるみになったりとか。ちょっとしたものは少しずつ変えてはいます。これからもそういうのはあると思うんですが、双剣などの抜本的なところに関しては、まだまだ時間がかかるのかなと思っています。やったとしても、抜本的に変えるのはかなりの検証が必要かなと思っているので、時間はかかると思いますね。 ――剣士系の武器を使っていて一番気になるのは、いわゆる「ハイパーアーマー」(攻撃を受けたときにのけぞらない状態)の有無です。双剣は、鬼人化していると全くのけぞらず、それゆえに他の人が何をしても大丈夫という動きができることが強みだと思います。対して私がよく使うランスにはハイパーアーマーがありません。前で盾を構えていると、後ろからクエストメンバーに斬られてのけぞっている間に、モンスターの攻撃を受けてしまうこともあります。武器縛りがなくても、ちょっと無理でしょうという状況もあって、自分から遠慮してしまいます。こういうところの調整はやはり相当難しいのでしょうか。 杉浦氏 : 武器の件については、全て何も考えていないわけではないんです。ただ、何を優先するかの段階で、今回であれば新モンスターを入れたりとか、新しくコンテンツを増やしたりというところの優先順位を上げている分、そちらに手が回っていないというのは認めざるを得ないところです。申し訳ないですが、時間をいただきながら、ちょっとずつ直しています。 ――続いて武器の種類についてお伺いします。良し悪しは置いておいて、HR50までに比べて、そこからHR99までの武器はそんなに強くなっていません。ここはやはり何か考えがあってのことでしょうか? 杉浦氏 : ひたすら能力が上がっていくと、必ずそれによるインフレは起きてしまいますので、そこへの若干の数値調整がかけられているのは否定できないです。ただ、オンラインゲームはそのときそのときの最適化も必要と考えています。私としては、HR100が入ったときに、それがどう働くかというのが大事だと思いますので、HR100が入ったときに今のバランスがもしいいバランスになるのであればこのまま落ち着くでしょうし、逆にそれによってかなり悪いバランスになるのであれば改善しなければならない。ちょうど今、過渡期だと思っていて、HR100以上を見て判断はしたいと思っています。決して、うちに考えがあるから直しませんというのではなくて、お客様の意見も集めて、最終的に判断したいなと思っています。 ――では次のお話を。「大闘技場」というのが…… 杉浦氏 : ははは。 ――もう既に笑っていらっしゃいますが。正直、あまり面白くないですよね。 杉浦氏 : うちでも話題に挙がっています。ただ、ほかにまだまだやるべきことがあるので優先順位を下げています、すみません。 ――今のところ、具体的にどうにかしようという話はない状態ですか? 杉浦氏 : したいのですけれども、他のコンテンツを開発している合間にやれるようなものではないです。やるのであれば、本当に「大闘技場」をアップデートの目玉にさせてくださいというくらいじゃないと、ちょっと厳しい気はしています。 ――プレーヤー同士の対戦というのは、「モンスターハンター」のコンセプトとしてしたくないんだと思います。その上で、殴りあうわけではない対戦要素があると面白いんじゃないかなと思っています。 杉浦氏 : お客様から一番言われているのは、「モンスターとモンスターを戦わせてくれ」というものですね。ただそこがやっぱり悩みどころで、今の段階では保留しています。申し訳ございません。 ――ではそれとは違う要素というのは考えられていますか? 例えば私がやってみたいのは、「打上げタル爆弾」を横に向けて撃ち合うとかですね。システム的にないのでやりようがないのですけれども。 杉浦氏 : どうしてもメインコンテンツの開発を優先しているので、そういう部分までには手が回っていないというのが本音ですね。 ――でも「モンスターハンター」は変な遊びがあるじゃないですか。酒を10回飲むと酔っ払って寝るとか、腕相撲ができたりとか。そういうお遊び的なものは? 杉浦氏 : 遊び心を持つのは大事だと思ってはいますが、それはきちんと他のものができた上での話です。「シーズン2.0」でHR100以降は新しい生産システムがあったりですとか、HR100以降のクエストや新規コンテンツにも知恵を絞っているところです。そこでお遊び的な企画はまだまだ先かなというところはあるので、後でまたこういう機会があったら、盛り上がって企画を練りましょう(笑)。 ――では次の話題に。猟団の存続条件について、以前は4人のアクティブなプレーヤーがログインすると、翌月まで存続するとなっていました。これが厳しいんじゃないかなという話をしようと思っていたら、昨日のアップデートで手が入っているんですね。 杉浦氏 : はい、これで当分いきます、ということで許してください。 ――実は私の仲間内の猟団があるんですけれども、最初は十数人いたのに、今は4、5人なんですよ。実は先月で消えるんじゃないかと思ったんですが、何とか残ったというところです。ただオンラインゲームとして考えると、古くは「Ultima Online」で誰かが1人残って家を管理するみたいな人がいるわけです。猟団はこのゲームにおける家のようなものだと思います。特に、みんなが一時期とはいえポイントを集めて猟団レベルを上げていったものが、人数が4人を切った時点でなくなってしまうというのは、ちょっと悲しいなと思うのです。例えば、猟団長1人でも猟団を保持できるようにするという話はないのでしょうか? 杉浦氏 : 少数猟団を否定するわけではないのですが、現状の「MHF」における猟団の考え方は、なるべく多人数で作って欲しいというものになっています。もし、リアルの友人知人だけで猟団を作ろうとしたら、3人、4人という可能性もあると思います。その場合は、少数猟団として今後猟団を経営していくという覚悟を最初の段階でお持ちいただきたいなと思います。もしリアルの仲間内で遊びたいと決めたのであれば、その段階で規模が小さい猟団になることは予想がつくことですし、維持条件についてもシビアなものになるであろうと。逆に知った仲間同士で遊べるわけですから、コミュニケーションや人間関係でのトラブルはそう簡単には起きないでしょう。 逆に大規模猟団になれば、リアルの友達ということはまずないので、ゲームで知り合ったお友達でしょう。コミュニケーションや人間関係のトラブルが起きる可能性は高いでしょうし、それを収拾するという方法もチャットひとつという、なかなかシビアな世界です。ただメリットとしては、猟団を拡張していけて、それによる恩恵を受けられる、という形で猟団という「組織」の経営する苦労に見合ったものを提供していくポリシーです。これは最初の開発設計の段階でポリシーとして作ったものだったので、急遽コロッと変えてしまうことも、システム的にできないのかと言われるとできるんですけれども、たくさん矛盾が出るんです。今の段階では、まだそこまではやれないので、様子を見させてください。 ただ、人が減って小規模になった猟団を助ける策は練っています。例えば小規模な猟団同士が合併して中規模になるみたいな形ですね。あと猟団と猟団を連結して、もっと賑わい感を出すとか。これは我々の今の考え方にも合致しています。そのための企画は、既にスタートしています。猟団と猟団を連結するようなチャットとか、猟団を合併するようなシステムというのは、早ければ3月なり、「シーズン2.5」なりのところで、そういうものを何か実装できたら、もっとお客様に喜んでいただけるのではと思っています。 ――チャットチャンネル的には「同盟」みたいなものですか。 杉浦氏 : そうですね、そういう感じに持っていけたらいいなと思っています。担当者からはOKが取れていますが、スケジュールや優先順位の問題があるので。「シーズン2.0」は新しいコンテンツがメインになるので、そういうものは次のリファインにやりましょうかと相談しています。 ――わかりました。では少し話の方向を変えまして、私の知り合いの話をさせていただきます。2通りのユーザーがいまして、まず1つは、親子でやっているユーザーさん。40歳くらいのお父さんと、10歳ぐらいのお子さんですね。お父さんは元々ゲーム好きだったとはいえ、特別ゲームがうまいわけではなく、お子さんのほうは10歳くらいなので、「MHF」はちょっと難しい。モンスターの弱点を判断して攻撃するというところまでは考えられないと。彼らは彼らで楽しんでいるのですが、そういうライトなユーザー、アクションがあまり得意でないユーザーに対して、「MHF」の中で何かアプローチの仕方を考えていることはありますか? 杉浦氏 : まず12月のアップデートで、HR30以下の一部の武器防具の強化費用を下げたりしているのも、その一環ではあります。武器・防具の制作期間を早めてもらって、強い武器・防具を作っていただければ、その分モンスターと戦うときに有利になるはずです。 また「シーズン2.0」では、初めてのお客様用に、4人で受けられるボスモンスターで、より能力的に低いものを入れようと考えています。一番上が「イャンクック」で、「ドスランポス」、「ドスゲネポス」、「ドスイーオス」とか。これは本当にむちゃくちゃ弱く作ってあるので、1人で初心者がやっても頑張れば倒せるかなというくらい。ただHRがいくつ以下、といった制限をつけているので、1人がHR50台で1人が新人というような場合はできないんですけどね。 ――ではその全く反対、いわゆる“廃人ゲーマー”ですね。彼らはあっという間にHRを上げて、物凄い勢いでコンテンツを消費していくんですが、やっぱり彼らは間が持たない。HRだけの話をすれば、1カ月どころか1週間でHR50からHR99まで行ってしまいます。ちょっとHRが上がるのが早すぎるのではないでしょうか? 私もこれだけしかプレイしていなくてもうHR63? と感じています。 杉浦氏 : HR以外の指標が必要なのかなとは考えていて、開発内でも導入しませんかという話が出ています。現在でも称号は導入されていますが、あの称号が揃っていると腕がいいとかではなくて、やりこんでいるかどうかなので。HR以外のプレーヤースキルや経験者としてのものさしは必要じゃないかと思っています。 今からHR1から99までを上がりにくくするということは考えていません。クエストもそのHRに合わせて実装していますので、そこが狂ってしまいます。ただ、将来的に何らかの形でプレーヤースキルや長くやっていることへの恩恵や指標というのは出そうということです。「MHF」には職業のようなものはありませんが、それに近いものが武器の選択です。1つの武器を極めたらもう1つの武器へ、というところがあると思うので、我々もそういう風になってほしいなという、こちらのお願いもあります。もし1つの武器を極めるコアユーザーさんがいたら、当然飽きちゃうんですけれども、そこは今の段階ではごめんなさいと言うしかないです。まだ使ったことがない、ある意味食わず嫌いな武器があるのであれば試していただいて、「この武器面白いな」と感じてもらえれば、2つ目3つ目の武器を作ってもらう。他のゲームでいうところのジョブチェンジに近い形で、そういう楽しみ方をしてくれると嬉しいですね。 ――しかし、特に過去のシリーズをやっているプレーヤーというのは、どうしてもこのゲームの飽きが早くなってしまいます。そのあたりのユーザーに対して、アップデートで新モンスターを入れるといった訴求はあるかと思いますけれども、ほかに何か施策はあるのでしょうか? 杉浦氏 : 乱暴な意見を言うと、大抵のオンラインゲームで飽きはくると思うんですよ。ただ問題は、何に飽きを感じるか。例えば武器や防具を作ったり、モンスターを狩ることに飽きているんですと言われたら、その人はもう「MHF」を長く続けられない状態に至っているので、僕たちとしては本当に残念なんですけれど、その人たちを助けるアップデートは難しいと考えています。 サブコンテンツとして、1月に発表するコンテンツが変化球を求めているお客様に少しでもやりこみ要素になってくれればいいなと思ってはいます。でもそれはあくまで、モンスターを狩ったり、武器・防具を作るというものの次にあるサブコンテンツなので、そこの部分よりも、きちんとクオリティの高いモンスターや、武器・防具を出すべきだと考えています。
新しいモンスターがいないとか、新しいデザインの武器防具がないから最近モチベーションが下がってきたとかであれば、1月30日のアップデートをお待ちください。また、今までの「MHF」には全く無かった要素を追加して何か別のコンテンツを用意したときに、それが本当に「MHF」としていいのかという課題もあります。「攻城戦を用意しました」といっても、さすがにそれは「MHF」じゃないと思うので、新規コンテンツの開発は慎重にやっているところです。
■ イベントは誰でも参加できるオンラインを重視 ――では次を伺います。ゲームの中身は充実していますけれども、イベントやコミュニティの充実というところがちょっと弱いかなというのが気になっています。 杉浦氏 : イベント担当のスタッフには、「12月と1月はイベントのない日は作るな!」と言ってありまして、そこそこ多めのイベントを用意しております。例えば期間限定の配信クエストを、今の2倍の量で、お正月期間にやろうかなと思っています。これは実は12月のリファインの“裏アップデート”で、今の配信クエストをもっとたくさんできるように、配信クエストのところをバージョンアップしたんです。これが成功すれば、今後配信クエストを増やしていけると思います。少し負荷が怖いんですけどね。 あとはお正月クエスト。ここでは「羽子板ブレード」という大剣がもらえます。羽子板に和服を着た“ヴォルガノス子ちゃん”が付いていて、非常に可愛くて僕も欲しいなと思いました。ほかにも一定のクエストをクリアすると猟団ポイントがもらえるという、クエストで猟団ポイントゲットイベントみたいなものをやる予定です。1月30日のアップデートの前の1週間だけは、忙しいので勘弁してくださいと言われましたが、そこ以外はほぼ全部入っています。 それ以降も、バレンタインイベントやホワイトデーイベントも予定しています。バレンタインイベントで今考えているのは、キャラクタの性別で分けた男性限定クエストと女性限定クエストを用意するものです。女性限定クエストを受けてクリアすると、「男性向けプレゼント」アイテムが1個入手できます。これはレア3以下のアイテムという形で、男性キャラクタに提供できます。男性側のクエストは、クリアすると他人には渡せないレア4以上の「バレンタインチケット」がもらえます。「バレンタインチケット」と、女性からもらった「男性向けプレゼント」を合体させると、「バレンタイン記念武器」になるという仕掛けです。ですので、必ず男性キャラクタから女性キャラクタに「アイテムをください!」という状態になります。ホワイトデーはその逆ですね。
それ以外には、武器限定配信イベントとか。片手剣じゃないと受けられないクエストとかですね。それから、受けてクエストを出発するときに、防具が全部外れて全員裸とか。ユニークな配信クエストをプログラム的に色々検証しているので、その辺りがうまくいったら、今までとはちょっと違った「最強武器のために配信クエストをやるんだ」ではなくて、「ちょっと面白いからやろう」みたいな形でやってもらえるかなと思っています。今後そういうのもやっていきますし、季節柄に合わせたイベントというのも、どんどん入れていきたいなと思っています。
杉浦氏 : 僕たちはダレットというポータルサイトを持っています。ダレット自体が今、本格稼動するための準備中なので、あまり目立ったことはしていないんですけれども、年明けくらいから本格的に動くと思います。そのダレットに「ダレットブログ」という、SNS的な雰囲気のデザインや機能を持ったものがありまして、そこにきちんと「MHF」のコミュニティを作ろうという形で進めています。 あと結構悩んでいるのが、リアルイベントをどうしようかなということです。やらないよりはやったほうがいいと思っているのですが、やはり場所などを限定させてしまうじゃないですか。だからといって、東京、大阪、名古屋と政令都市全部でやろうとすると、通常業務のほうがおろそかになってしまうので、こういうイベント系の足場を固めてからでもいいのかなと考えています。今の段階では、「シーズン2.0」が始まるタイミング辺りで、リアルイベントをバンバンやりますということはないと思っていますが、いずれは何らかの形でやりたいとは思っています。今の段階では、ゲームの中のイベントを優先という形です。 ――オフラインイベントも決してネガティブなことはないと思います。最近は他社のオンラインゲームでも、積極的にオフラインイベントを開かれて、なかなか好評のようです。 杉浦氏 : 6月のブロガーミーティングのように、熱心なお客様を集めて意見を聞く場を作ることは全然問題ないと思っています。ただ、東京のブロガーさんを集めれば、当然大阪のブロガーさんからすれば「なんでうちには来ないの?」ということになります。 Face to Faceが、人間と人間の間に大事なこともあります。だからといって、東京限定というのはさびしいなと。僕らからすると、もうちょっとひねりたいですね。一番やりたいのは、自社のネットカフェの営業マンを1、2人育てて、公認店舗などを全国巡業させたいですね。そこでたくさんのお客様の意見を吸い上げられれば、それもありかなと思うんですけれども、営業マンをそこまで考えを伝えられるよう教育するとなると、それなりの時間も必要なので、今すぐはできないなと。僕から仕事がなくなれば、自分で巡業してきたいなと思っているくらいです。 ――では例えば、杉浦さんがブログを書くなんていうのはどうですか? 杉浦氏 : 僕が単純にブログを書いて、お客様が喜ぶなら書きます。でもブログが荒れてきたら「しっかり管理しろ」と怒られますし、削除したら「カプコン何やってるんだ」と言われると思うんですよ。その代わりに「運営レポート」を出して、もっと掘り下げた内容にしていきたいと思っています。 とにかくお客様とたくさんコミュニケーションを取りたいんですよね。単純に言えば、来たメールを全部読めばいいんですよ。土日に時間があるときはカスタマー宛のメールは1通1通読んでいます。基本的にはご意見・ご要望のメールの集計は、カスタマーサポートのメンバーがいつも全部やってくれています。でも結局、少数意見は少数意見として分けられてしまいます。そうなると大多数の意見を読んで、少数の意見は読みきれないということもあります。たくさん意見が来て、カスタマーサポートがそれをまとめ、要望数順に実行すればいいのかというと、そうでもない。これはどこの運営会社さんも、結論がでていないはずです。だけどやっぱり、ここに持論を展開していかないと将来やっていけないと思うので、早く結論を出したいと思っています。手ごたえは感じてきていますが、アップデート業務が多かったので、そこのフォローが最近おろそかかなと反省しています。次のアップデートまで約2カ月あるので、もうちょっと足元を見直せたらなと考えています。 ――それでは次の話題、新規獲得策についてお伺いします。ゲームとして個人的に遊んでいて一番楽しかったのは、HR5のときでした。モンスターが増えて、「ダイミョウザザミ」に一撃で踏み潰されて、何度も負けて……とやっているときが一番楽しかったんです。新規獲得策の1つとして、無料で遊べる範囲のHR制限を上げるなどのアイデアはありませんか? 杉浦氏 : 新規のお客様用に調整した「イャンクック」などを入れることは考えていまして、そのクエストを無料のお客様に開放したいと思っています。無料で体験したお客様から、「大きなモンスターを倒したい」という意見もいただいていますので、そこはやりたいと思っています。 ――サービス開始当初は、無料でも「イャンクック」を狩れましたが、途中でできなくなってしまいました。 杉浦氏 : あれは単純に重いバグを抱えていたからなんです。当時は重いバグが改善できなかったので、いったん切っちゃったんです。小野が当時「イャンクック」をやりたいと言っていた(インタビューなどで語っている)のは嘘ではないんです。言った責任は取らなきゃいけないとは思っていたのですが、あの時期は他のところもばたばたしていたので、今は諦めましょうということで、切らせてもらいましたが、約束を守りたいという部分もあって今回導入することにしました。 新規獲得策として僕らが重視しているのは話題性なんです。なるべく他社さんがやっていないプロモーションや提携をやりたいなと話しています。グリコ様やピザハット様のようなタイアップはそれなりに話題性があったと思います。僕らはなるべく他の会社の真似ではなくて、自分たちの手で切り開いていきたいと思っています。そこの提携メーカーさんが「オンラインゲームは凄いなあ、じゃあカプコンさん以外ともやろう」というのは、全然かまわないんですよ。ただ僕たちは「あれがうまくいっているみたいだから、うちもやろうぜ」というのはよろしくないと考えています。 そういう点で、タイアップ企画として大きな企画を今2、3個進めてはいます。その1つに、ウイルス対策ソフトとのタイアップがあります。うまく行かなかったときには大変なことになりますが、検証はいまきっちりとやっています。「MHF」でPCゲームを初めて遊ぶというユーザーさんも多いので、道義的なところからもちゃんと使いましょうと言っていきたいんです。一部のウイルス対策ソフトはオンラインゲームと相性が悪いので、オンラインゲームと相性のいいところと組みたいと考えていまして、来年の2月から3月にオンラインゲーム対応のウイルス対策ソフトを出すところがあったので、じゃあそことタイアップしましょうと話をしたりですね。結構、提携系は広がっています。 ただ「MHF」には、全武器・防具をコンプリートしようという人たちがいて、新規ユーザー向けに用意させていただいているゲームアイテムを自分たちが集めにくいといってすごく叱られました。 ――Core 2 Duoのタイアップとかですね。 杉浦氏 : そうですね。それ以外の企業様とのタイアップの際にも、「近くに店舗がない」というお客様がいました。ただ、それを言われてしまうと何もできなくなるので、今は申し訳ありませんというしかありません。今もこの方針は変わっていません。 あとはパッケージの話ですが、実はそこまで売り上げを狙ってはいません。店頭流通マージンとかを考えると、僕たちはダレットで決済してもらったほうが利益率が高いので、パッケージを出す理由がないんです。ではなぜパッケージをやるかというと、やはり店頭露出なんですね。某社さんで調子のいいオンラインゲームがあったときに、それが全くパッケージを出したことがなくて、量販店や家電、PCなどの業界団体にそのゲームを知っているかと聞くと、誰も知らないんですよ。でも、うちが名前を出すと、知ってるよといってもらえる。僕たちの場合はコンシューマで売れているということもありますが、「MHF」のパッケージがすごく売れたと聞いている、すごいんだね、と言ってくれるんですよ。 そこで次のステップとして、うちとタイアップしてこういうことやりませんかという話にも繋がりますし、店頭で力を入れてくれれば、PCソフトを買いに来たお客様や、PC売り場に来たお客様に、これ何だろうと手にとってもらえます。店頭や流通のマージンをプロモーション費と考えて、きちんとお客さんを取っていきたいという新規獲得の施策です。これからも、パッケージは適度に出していく予定です。 ――パッケージといえば、クリスマス限定パッケージを発売されますね。
杉浦氏 : 12月21日に発売されますので、ぜひご購入いただければと思います。デザイン関係も結構いいと思うので、僕たちからもオススメですね。パッケージの値段は以前のものより800円くらい上がっていますが、その代わりにプレイチケットを30日から60日に増やしていますので、前よりはお得にはなっています。よろしくお願いします。
■ 「MHF」は今後もPCオンラインゲームならではの面白さを追求する!
杉浦氏 : 「MHF」に課せられている役目には、「モンスターハンター」のファンを増やすというのがあります。PCゲーマーには「モンスターハンター」の認知度が低いんです。「MHF」に土着してもらうことも大事ですが、「モンスターハンター」シリーズというものに関して、全体的にパイを広げていくということが重要なのです。例えば「MHF」をきっかけに、新作の「MHP2G」や「MH3」を買っていただくというのは、カプコンとしてありがたいことですし、我々もそうあるべきだと思っています。 位置づけとしてはなかなか難しいのですが、コンソールゲームとしてやるべきことと、オンラインゲームとしてやるべきことは、重要な部分が違ってくると思います。オンラインゲームとしての面白さや、よさを追求するという意味で、「MHF」の開発も頑張っています。だからこそ猟団がああいう形で拡張していったりとか、アップデートがこれまで月1のハイペースでやられてきたこともあります。僕らは「MHF」をオンラインゲーム特有の性質やビジネスモデルをうまく使って盛り上げていきます。 ――ユーザーの中には、「MHF」で初めて「モンスターハンター」に触れて、かつコンシューマ機を持っていないといった理由で、実質的に「MHF」しかやる気がない人もいると思います。そういうユーザーにとっては、「MH3」や「MHP2G」の存在があるがゆえに、「MHF」が今後どうなるのか不透明に見えてしまうところもあります。 杉浦氏 : カプコンはこれまでの「モンスターハンター」シリーズを遊んでいただいているお客様をすごく大事にしています。ただ戦略からすると、以前から「モンスターハンター」を遊んでいるお客様をどんどん「MHF」に入れていくのではなくて、オンラインゲーム、特に他社タイトルのお客様に、どんどん「MHF」に入っていただきたいと思っています。その上で、「モンスターハンター」シリーズを遊んでいるユーザーさんが、「MHF」に興味があるというのであればぜひ遊んで欲しいと思います。 以前アンケートをとったとき、「MHF」から始めたという人が4割もいました。最初の頃のユーザーの熱意や、同時接続数、アクティブユーザー数のすごさを考えると1割以下かと思ったくらいです。これからもオンラインゲーム的な要素を追加して、オンラインゲームのお客様からみて満足していただける「MHF」を作っていこうと思っているので、その人たちが残ってくれて、コミュニティとして築いていってくれれば嬉しいですね。ぶしつけなお願いを申し上げると、オンラインとコンソールの両方遊んでいただけると嬉しいです、というオチです(笑)。 ――方向としては、「モンスターハンター」シリーズというのは、プレイステーション2からWiiと動いているコンソール版、PSPで動いている携帯ゲーム機のシリーズ、そしてその横に「MHF」があるという3本柱に見えます。今後もこの3本柱のまま進んでいくのか、それともコンシューマの2本にコラボレーションなどでより近づく形を強めていくのか。これはどうお考えですか? 杉浦氏 : それは私がお答えできることではありません。おそらく稲船(開発統括本部長の稲船敬二氏)や小野が考えていると思います。読者さまとしては「ナルガクルガ」(「MHP2G」で初登場になるモンスター)が「MHF」に入るかとか、逆に「エスピナス」があっちに入るかとかが気になると思うのですが、「ナルガクルガ」が「MHF」に実装される予定も、「エスピナス」が「MHP2G」に入る予定も現状はありません。 ――では方針としては、「MHF」は、これからも「MHP2G」や「MH3」とは別の、独自の進化を遂げていくと。 杉浦氏 : 基本的にはそうです。一切交流がないとか、一切何も入らないという意味ではなくて、あくまでPCオンラインゲームのコンテンツとして「MHF」は成長していますので、そこは独自の進化を遂げていきます。 ――はい、今回はこのお答えを聞きたいがためにお伺いしました。いいお答えをいただきありがとうございます(笑)。では最後に、これから「シーズン2.0」も入るということで、ユーザーに向けて何か一言をお願いします。 杉浦氏 : オープンβではサーバーの不具合、途中では「nProtect(GameGuard)」でご迷惑をかけてしまいました。今までこういうインタビューのような機会が取れなかったので、公式にお詫びできなかった分、今回改めてお詫びしたいと思います。今後の運営レポートに書かれていることや、今回インタビューで話したことが、実際どこまで実現されるのか、お客様自身に見ていただいて、もしカプコンオンライン開発部および運営開発が有言実行という形できちんとやっているという際にはぜひ評価していただきたいです。そうじゃない時には、たくさんお叱りいただきたいと思っています。よくても悪くても、色々なご意見をお待ちしています。 「シーズン2.0」でそれなりに「MHF」は変わると思いますので、もし1回遊んで変化を感じられなかった人も、今はオンラインゲームとしてかなり違い感じられると思いますので、ぜひもう1度遊んでみてください。また他のオンラインゲームに飽きが来ている人たちは、1度遊んでみてください。パーティを作るために数時間かかったり、レベル上げるために膨大な時間がかかるとか、そういうオンラインゲームと「MHF」はかなり違うので、気軽にさくっと楽しめるゲームとして遊んでいただいてもいいと思います。ぜひそれらの部分を実際に体感していただいて、そこから「MHF」の独自性というものを感じてもらえたらなと思います。
――ありがとうございました。
□カプコンのホームページ (2007年12月26日) [Reported by 石田賀津男]
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