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ガンホーは、今年もブース出展を見送り、対外的な活動はTGSフォーラムのオンラインゲームセッションへの参加のみに留まった。オンラインゲームセッションでは、新たなビジネスモデルの提案と、グローバル展開に向けての課題、そしてガンホーの取り組みと、わずか30分の持ち時間では話しきれないほどの情報が詰め込まれていた。 そこで今回は、TGSフォーラムで未消化の部分を解消する目的で、セッションの講師を務めたガンホー代表取締役社長森下一喜氏へのインタビューを行なった。話題の中心は、久々に進捗状況が語られた「北斗の拳 ONLINE」と「グランディア ゼロ」という2本の自社開発タイトルと、今年7月に正式発表したコンシューマビジネスの進捗状況について。余話として、プロデュース制の導入や開発本部の引っ越し、キーボードやヘッドセットは不要とする森下氏独自のコンシューマゲーム論などを聞くことができたのが収穫だった。
■ TGSフォーラムの発言の真意と「グランディア ゼロ」のタイトル変更の意味
森下一喜氏: あくまであれはトレンドレポートであって、必ずしも決別というわけではないです。現在、オンラインゲームといえばアイテム課金ではないかというデファクトスタンダードとなっています。それが果たして正しいことなのか、私の中で結論が出ているわけではありません。また、断言することも難しいと思っています。 編: 中でも「ユーザーが否というのであれば我々は新しいビジネスモデルを考えていかなければならないだろう」という発言は印象的でしたが、次とは何だと考えていますか? 森下氏: まず、基本無料にすることでお客さんを多く獲得していこうということはプロモーションとしてしやすいでしょう。その上で、基本無料で遊べる部分と、そのゲームに対してコンテンツの対価としてお客さんに払ってもらえるところを切り分けるということをしなければならないなと考えています。 その切り分け方はいろいろあって、まだこうすると決めているわけではないので、1つのフラッシュアイデアになってしまいますが、例えばMMOは街の中で面白いと。クエストをやったりストーリーが楽しめる。でもフィールドに出るとそれは別の部分として課金をさせていただくとか。最近では部分課金ということも始まっているし、アイテムではなくて、ゲームとしての機能やインターフェイスを部分的に販売していくということも1つのやり方だと思います。それが受け入れられるかは別問題ですが、考えていかなければならないなと。 編: 「グランディアオンライン」が、「グランディア ゼロ」と名前が変わりました。延期に伴うさまざまな変化をふまえてのことだと見ましたが、その点いかがですか? 森下氏: 「ゼロ」という名前がついていることには色々な意味がありますが、もともと「グランディア ゼロ」は原点回帰をコンセプトにしてきていて、1に立ち戻ってその話に繋がるストーリーになっています。当時遊んだお客さんや、当時のストーリーに感動したり、人間賛歌的なところであったり、そうした原点回帰を目指そうとしてゼロになっています。 編: 以前は外伝的であったり、並列的でといった発言をしていましたが、ナンバリングタイトルに格上げされたということですよね。 森下氏: 「グランディア」の始まりであるというゼロという意味では、ジャスティンとかが活躍していた当時の国にさかのぼって、冒険者という言葉が全盛だった頃のお話になっています。「グランディア」の時代は冒険者という言葉が廃れてきて、その中で少年が冒険を通じて冒険者魂に触れて成長していく。その前のお話になります。ナンバリングタイトルにしたもう1つの理由として、もうオンラインという言葉はつけたくなかったから(笑)。 編: わかる気がしますね。 森下氏: 私の独断で勝手に決めました。現場からは「どうするんですか、ロゴとかWebアドレスとかもう取りましたよ!」と怒られましたが(笑)。ただ、2002年の頃、インタビューでは、「これからオンラインの時代になっていきますか?」と聞かれたとき、私は「そんなことはない」と言っていました。 コンシューマでスタンドアローンで面白いものはあるし、オンラインRPGやMMORPGという言葉もあまり使いたくないということもあって。一般の人からすれば「Massively Multiplayer Online Roll Playing Game」なんて知らんわけです。RPG、シューティング、アクションといったカッチリしたカテゴライズの中できちっとしていけばいいなと昔からいっていました。このタイミングでオンラインとかは関係なく、「グランディア」というブランドの中心にしていきたいなということがありました。 編: 「グランディア ゼロ」を「グランディア」ブランドの中心に据えると? 森下氏: こだわりのポイントはいくつかはあるんです。1番のこだわりは戦闘です。いわゆるクリックゲームにならないように戦闘することの楽しみは大きいですからね。RPGでたくさんやることといえば、フィールドでの戦闘ですよね。大きな要素ですので、その部分が単なるクリックゲームにならないように今回の部分ではアクションコマンドを用いたバトル方式を取り入れていて、通常の攻撃とは別に、IPゲージというのを用意しています。 「グランディア」は元々自分のアイコンがあって、敵のアイコンがあって、時間が経過する中で敵と戦闘を行ないます。例えば自分が攻撃する番で、実際に攻撃を行なう時に若干のウェイトが発生します。それで武器を振りかぶるといったことを表現しています。元々「グランディア」にはキャンセルの概念があって、敵の攻撃からもう逃げられないというときに、仲間がキャンセルをいれると敵の攻撃がキャンセルされます。より戦略性やアクション的な手に汗握る戦いをどう表現するかというところが「グランディア」のウリなので、そこをどうオンラインに向けて改良していこうかと考えているところです。 元々RPGのターン制のようなゲーム、正確に言えば「RO」だってターン制ですが、そういう単純にターン制ではなく、リアルタイム制を持たせたアクションバトルということを表現するために、「グランディア」らしさをより意識しています。例えば食事のシーンとか、パーティーで冒険に行く際に途中でテントを張って材料を入れて食べるんですが、魔法とかでHPを単に回復させるだけではなく、テントで休むことによって疲労の度合いを回復させることができるわけです。そういったシステムをいっぱい詰め込んでいます。 編: 今回「グランディア ゼロ」として新情報が披露されましたが、キャラクタの描き方が秀逸だと思いました。低ポリゴンですが、非常に質感が高いですよね。 森下氏: でしょ(笑)。これはガンホー独自のグラフィックスエンジンで作っているんです。 編: 以前堀さんが公開した「Rondo-Framework」でしょうか。 森下氏: 「Rondo-Framework」の中にあるグラフィックスエンジンの部分です。基本的にスライドで見せたキャラクタがこのまま動いているイメージです。キャラクタは2Dにも見えますけど、3Dで描いています。とにかくこだわったのがロースペック対応。今、自分が使っている4年前のノートパソコンで動かすということを目標にしてやっています。 編: 今回のフォーラムでも、ガンホーの低スペックへのこだわりは印象的でしたが、その理由を教えてください。 森下氏: むしろ逆に、なんでみんなしないのかなと思ってます(笑)。PS3という全ユーザーが同じスペックのハードウェアを持っていれば、それに合わせた最高のグラフィックスが提供できます。だけどオンラインゲームはエンドユーザーのスペックが千差万別です。しかも、グラフィックスはゲームの本質ではないと思っています。 ただ、今このご時勢で、いかにも見劣りのするグラフィックスではユーザーの期待を外してしまう可能性がある。ですから、ハイスペックで作ったものを、いかにロースペックで落とし込むかということに注力しました。「ラグナロクオンライン」が動けば「グランディア ゼロ」が動くというところまでやりたいと、そうすることで多くのお客さんに遊んでもらいたいよねと。今後のオンラインゲーム市場では、そこまで落とす努力が必要なのではないかと考えています。 編: 「RO」が動けば、「グランディア」も動くというのは非常にわかりやすいですね。 森下氏: 「グランディア ゼロ」のグラフィックスは、綺麗にしようと思えばいくらでも綺麗にできます。例えば「RO」のサービス開始から5年が経っています。5年も経てば周辺環境はぜんぜん変わってくるわけです。ハードウェアのスペックが上がっていってもっともっと色々な表現方法が出てきています。それを見越したスケーラビリティを考えてフレームワークを作っているので、PS3並のグラフィックスにしようと思えばできますし、「グランディア ゼロ」自体を進化させていくこともできるわけです。 編: それは例えば正式サービス後にグラフィックスをアップデートしていくという発想ですか。 森下氏: その対応は簡単です。なぜなら、最初に作ったときにすごく高スペック向けだったのです。でも、今回下げるという決断をしました。これに関しては抵抗もあって、ある程度高いPCスペックを想定して開発を進めていたので、下げるところについてはすごく大変でした。 といっても私自身が開発本部に入っているわけではなくて、週1回のペースでプロデューサーが進捗状況を持ってきて報告して、私が指示をするという方式にしています。今は文京区の湯島の方に開発本部を移してしまったから余計遠くなってしまっているけれども、ここまでのクオリティを低スペックでもプレイできるようにしたことはよく頑張ったなと思います。 編: 元々の予定だと、2006年中にサービス開始予定で、現在は2007年中ということになっています。1年間のサービス延期の理由は、低スペック対応ということですか。 森下氏: 1番の理由は、グラフィックスの部分で低スペック対応にしていくことですね。低スペックに落とし込むということにすごく抵抗はあったけど、結果として、新しいキャラクタの描き方に成功しました。それから、マルチデバイスやマルチユースのビジネスを展開することをふまえ、キャラクタひとりひとりのストーリー性を高めていきました。そういった部分が延期の理由になりますね。
■ マウスの直感操作でリアルタイムアクションを実現した「北斗の拳 ONLINE」
森下氏: 実機で見るともっといい感じだと思えるはずですよ。最初、プロデューサーとディレクターが説明しに来たときは、「ん?」と思いましたけど、実際にあがったものを見て「北斗の拳」らしさがよく表現されているなと思いました。 編: 劇画シェーダーを採用した理由を教えて下さい。 森下氏: 「北斗の拳」も低スペックPCにも対応させるためにローポリゴンで作らなければならないと。しかし「北斗の拳」はコミックです。いかにアニメーションっぽく、コミカルっぽく表現するためには、戦闘システムの変化とグラフィックスの向上が必要不可欠だろうと思いました。 でもグラフィックスを向上させると、今度はPCスペックが上がってしまうので、クオリティを上げないで、いかにそれっぽく見せられるか。今考えれば、凄いことを注文しましたが(笑)、それを彼らはここまでやってくれました。さらにマウスを使ってアクションを採用して、わかりやすい直感的に遊べる、これまでにないオンラインゲームになりました。 編: まず、そのバトルシステムについてですが、当初は三すくみのカードバトルで、バトルシステムとしてはアリだと思いましたが、それが「北斗」向きかというと微妙なところでした。これを思いっきり捨ててしまったのは英断だと思いますが、その理由は何ですか。やはり面白くなかったと? 森下氏: 一言で言えば、自分がやってみて面白くなかったのです(笑)。 編: 社長が「おもしろくない」といって作り直すというのも凄い話ですね。 森下氏: 今年からそういう体制になったんです。ガンホーはプロデュース制度という形で、社長室に新規事業チームとプロデュースチームを設置しました。社長室の直轄の部署としてプロデューサー部門があって、プロデューサーが開発本部でゲーム開発のプロデュースを行なうという仕組みになっています。 「グランディア ゼロ」に関しては私自身がエグゼクティブプロデューサーをしていて、プロデューサーは置かず、堀(取締役開発本部長)が直接現場を見ているという体制です。「北斗の拳 ONLINE」に関しては「サンダードーム」という開発スタジオで、プログラマーとグラフィッカーに5名くらいいます。 編: そういえば、「北斗の拳 ONLINE」に関して、森下さんにお話を伺うのは初めてですよね。今のバージョンはプレイしてみていかがですか。 森下氏: 良いゲームになっていますよ。負けると「悔しい!!」と思える。この前、会社でやっていたら、ウチのスタッフに倒されたんですが、「誰だよこれと」と見回したら、うちの役員がニヤニヤ笑ってて、本当に頭にきましたね(笑)。この負けて悔しいと思うことは重要だと思うんですよね。 編: レベル依存ではなく、アクション次第で戦いがどう転ぶかわからないから熱くなれるわけですよね。 森下氏: そうですね。パラメータが北斗神拳伝承者という力を極めていくこともあるし、そうでないものもある。レベル差で大きく差がつくのではなくて、一番大事なのはプレーヤースキルですね。 編: ということは、かなりプレーヤースキルに依存するゲームになっているわけですか? 森下氏: いえ、難しいコマンドを要求しません。そこは任天堂さんのWiiに似た考え方です。 編: マウスを前に繰り出すことでパンチということですが、その他にどのようなアクションがあるのでしょうか。 森下氏: 現在はパンチ、キック、ガードの3つだけですが、これから様々なアクションが増えていく予定です。たとえばキックはハイキック、ローキックがあって、キーを押して出す技を切り替えます。素早く動かせばサッサッサッとパンチを繰り出せますし、まさに直感的な操作ですね。 編: いままでありそうでなかったマウスの使い方ですよね。 森下氏: インターフェイスとして、マウスというのは昔からあったけど、ゲームにうまく使えている事例は無かったですよね。でもPCならではのインターフェイスはマウスですから、これを最大限に活用しようと。マウスだけで簡単に遊べますと。 編: 三すくみのカードバトルもそれなりに作りこまれていた印象でしたが、あれは全ボツですか。 森下氏: うーん。あれはどこかで使えるところがあれば。後は企画次第ですね。 編: 気になるのはビジネスモデルです。アイテム課金が予定されていますが、どうもTGSフォーラムの講演を聞く限りでは、そうでもないのかなとも思えました。 森下氏: アイテム課金がダメと言っているわけではないんです。ゲームの性質によっても異なりますし。やぶからぼうにアイテム課金ではなくて、何かのポリシーが必要かなと思うのです。 編: つまり、ポリシーのあるアイテム課金になるわけですね。たとえば、「北斗の拳 ONLINE」の場合は、インフラ部分に面白さがありますよね。水や食料、ガソリンをどうするのだろうと。 森下氏: ちょっと変化があるみたい、とだけお話ししておきましょう(笑)。この辺はプロデューサーやディレクターに聞いてください。彼らが彼らなりに作りこんできた想いがあると思うので。
■ 現在開発中のニンテンドーDSタイトルにおける“ガンホーらしさ”とは何か?
森下氏: コンシューマの開発部門としてゲームアーツがありますので、ガンホー社内に必要なのはパブリッシングやセールスというところで、数人くらいです。 編: 現状見えているのはニンテンドーDS向けの4タイトルですが、開発の進捗はいかがですか。 森下氏: ゲームアーツという開発会社もグループ内にありますが、今後は外注も増やしていくつもりです。我々のラインがいっぱいであれば機動的に動かなければなりませんので、外注の開発会社さんともお付き合いをしていく方針です。何もかもが自社でなくてはいけない、子会社でなくてはいけないということはなく、そのときに必要なリソースを使えるかどうかが重要なポイントなわけです。理想的なのは自社内ですが、ゲームアーツとしても受託開発としての実績を高めていくためには、大手のメーカーさんから大作の受託をいただくことも実績に繋がっていきますので、完全なインハウスのスタジオにするつもりはありません。 編: 現在ニンテンドーDSの市場は、無数のタイトルがリリースされ、徐々に飽和状態になりつつありますが、この点についてはどのように考えていますか? 森下氏: オンラインゲームで培ってきた開発運営ノウハウと、今までのコンシューマで培ってきた20年余りの開発経験を合わせて、ガンホーグループとしてやるべきコンシューマ事業というのは次世代のコンシューマゲームだと思っています。マイクロソフトさんの講演でもありましたが、オンラインの機能をうまく活用させて、コンシューマというインターフェイスにおけるオンラインゲームをいかに作っていくかが一番ガンホーが目指していくものになります。 「ラグナロクオンラインDS(仮称)」に関しては、MMORPGではなく、擬似オンラインゲームとして作っていますが、イメージとしては「RO」に近いもので、実はそこに大きな特徴を持たせているものがあって、ここがゲームのキモになります。 編: それは機能ですか、サービスですか? 森下氏: 機能ですね。ゲームデザインのキモになっています。Wi-Fiをユーザーが利用して、イベントやネットカフェなどこれまでのコンシューマのニーズには無い、プロダクトプレイスメントを活用して、例えば「RO」のユーザーがDSを持ってネットカフェにいくことができるような要素を我々としてはつけていきたい。 オンラインゲームはMMORPGでなければならないとか、チャットができなければならないとか、ゲームタイトルに「オンライン」と付けるとか、もうそういう時代ではなくなってきていると考えています。よりオンラインゲームというものに我々は進んでいきたい。我々は1つは「ラグナロク」や「グランディア」はシリーズタイトルとしてキラータイトル戦略をとっていき、もう1つはポートフォリオとしてガンホーとしてのコンシューマブランドを知ってもらうことを目的としています。今はキラータイトル戦略とポートフォリオ戦略でやっているけれども、やはりそこには必ずついて回るのはオンライン戦略というわけです。 編: 既存リソースの使い回しはしないのですか? 森下氏: できる部分でしています。さすがにドット打ちから始めると大変なので(笑)。そういう削減できるところは削減していますけど、大事なのはストーリーだから。ストーリーとゲームデザインのキモが重要なので、本当に楽しんでもらえると思っています。 編: そのストーリーとは、「ラグナロクオンライン」の人気のクエストやエピソードを深く掘り下げた内容ではなく、純粋に新しいシナリオですか? 森下氏: そうですね。「ラグナロクオンライン」になぜギルドや攻城戦があるのかといえばそういうバックグラウンドストーリーがあるからです。目標としては、感動させることです。オンラインゲームでストーリーを見せて感動させるということは無かったので、コンシューマとしていかにお客さんがストーリーを見せて感動させるかというのを重要視しています。 編: 「ラグナロクオンラインDS(仮称)」の1セッションの最大接続人数は何人を考えていますか。 森下氏: それは無い。そういう形のゲームにはなりません。アイテムトレーディングというわけでもありません。その辺はまだ言えません(笑)。 編: その他の3タイトルについてですが、現時点ではまだガンホーらしさが見えないですよね。極端な話、ガンホー以外のメーカーが出してもおかしくない。 森下氏: 確かにそうですね(笑)。Wi-Fiの機能で面白いものを作る、そこがオンラインらしさですが、そこを我々がどのようにしたらガンホーらしさを提供できるだろうかというのはまさに今考えているところです。この間、社内でワークショップがあって、「ガンホーらしさって何だろう」というテーマで話し合ったばかりです。 ガンホーらしいコンシューマって何だろうと考えたとき、やはりオンラインだろうと。ウチらしい企画発想で、新しいサプライズを作っていきたいねと。それが必ず毎回毎回あるわけではないかもしれないし、シンプルなものになるかもしれない。そこはこれからですね。 3タイトルに関しては、ポートフォリオ上はカジュアルなので、あくまでもカジュアルなユーザーをメインターゲットにしています。ゲームユーザーに向いている「ラグナロクオンラインDS(仮称)」とは異なります。DSにこだわっているわけではなくて、カジュアルなゲームユーザーで年齢層も含めてね。 編: 3タイトルについてガンホーらしさは盛り込んでいないのでしょうか。 森下氏: ガンホーらしいかどうかは別にして、「アクアゾーンDS」で新しくチャレンジしていることはあります。ヒントは、タッチパネルでコミュニケーションです。 編: なるほど。画面を見る限り、まさにDS版「アクアゾーン」という感じですね。グラフィックスはDSとしてはかなり頑張ってますね。 森下氏: ええ、これはかなりリアルなのです。元々PCで「アクアゾーン」をずっと作ってきているスタッフが、過去の経験や実績を活かして作っていますので、かなり綺麗です。タッチペンでコンコンとやることで、魚とコミュニケーションができます。魚とのコミュニケーションを利用した新しいゲームモードも用意しています。 編: ほうほう。タッチパネルで魚とコミュニケーションですか。 森下氏: マメにコンコンってやらないと親密度はとあがっていかないです。新しいゲームモードは、冒険チャレンジモードといって、本来は飼育鑑賞するものだったのですが、このモードではゲームとして楽しめます。基本的なコンセプトとしては、魚とコミュニケーションをとっていくことで、魚と遊んで、魚と仲良くなっていこうと。その上でいかに自分の思うとおりに魚が動いてくれるかを目指していきます。 もちろん、育成モードもあります。自分の水槽があって、育てていけばいくほど、飼える魚が増えていきます。アイテムとかも出てくるし、水槽も増えていきます。音楽も色々種類があってこだわっています。 編: ガンホーゲームズにも「家庭用ゲーム」の項目がありますが、ポータルとの連動は何か考えていますか? 森下氏: 直接連動するということは考えていませんが、ガンホーゲームズのカジュアルゲームを遊べるような形で体験版を公開するというプロモーションを検討しています。
■ ガンホーグループが目指す次世代のコンシューマゲームとは何か?
森下氏: マルチプラットフォームです。Wii、PS3、Xbox 360の3つで、特定の1プラットフォームに決め打つつもりはありません。 編: ガンホーの考えるコンシューマ機向けのオンラインゲームはどういったものなりそうですか。 森下氏: 遊び方とインターフェイス、コミュニケーションです。たとえば、ユーザービリティとして、キーボードを別売りで買うなんてのはあり得ないと思うわけです。 編: つまり、新しいコミュニケーションの手段を確立させたいと? 森下氏: そう。コミュニケーションを取るために喋る必要もないと思ってます。たとえば、海外で英語が使えなくても、身振り手振りでなんとか伝えようとしますよね。それでもコミュニケーションを取ることができる。コンシューマ機はリビングでやるものだからこそ健全さを大事にしたいと思ってます。テキストチャットいらず、ボイスチャットいらずというのは1つの重要なファクターかなと思います。 編: Xbox 360では、ボイスチャットが標準サポートされていますが、ヘッドセットを買うのもおかしいと? 森下氏: そう、ボイスチャットにはそんなに興味はありません。 編: 別売り品を買わなければならないものは無しにしたいという発想は森下さんらしいですね。 森下氏: コミュニケーションで大事なのは、標準のインターフェイスを使って簡単にできることと、しなければならないという義務感にかられないこと。例えばRPGを遊んでいて、街の中に人がたくさんいると。その中で会話はしないけどガヤガヤと聞こえると安心感があると。ピンチの時にちょっとサポートしてくれたことに対して「ありがとう」、「ごめんね」と伝える。それでいいと思うんです。まだあくまでアイデアベースなので最終的にどうなるかはわかりませんが。 編: 仮にコンシューマ向けオンラインゲームを作るならそういったところにこだわりたいと? 森下氏: コントローラを使ってどう表現するかというところを考えています。キーボードやヘッドセットを買わなくてもコミュニケーションがとれるようにしたいですよね。 編: 最近のおもしろい動きのひとつとしては、「スカッとゴルフ パンヤ」のWii版、「エンジェルラブオンライン」のPS3の移植というPCオンラインからコンシューマへの移植というケースが増えてきました。 森下氏: いいんじゃないかと思います。面白ければ。 編: ガンホーさんも色々なPCオンラインを持っていますが、その辺りへの興味はないのでしょうか。例えば「RO」をPS3に移植するとか、それはガンホーの戦略としてアリなのでしょうか。 森下氏: アリだとは思います。ただ、PCの「RO」をそのまま移植することはないでしょうね。コンシューマにするなら多分作り変えるでしょう。 編: つまり、やるなら移植ではなく完全新規と? 森下氏: 新規ですね。実は前に一度考えたことがあるんです。でも全部変えなくてはいけないねということになって断念しました。「RO」でやるとすれば、今の「RO」のインターフェイスではコンシューマでは遊べないので、コンシューマ向けに改良するでしょうね。 編: 次世代機が提供するオンラインサービスに対してどのように思いますか。 森下氏: TGSフォーラムでWiiとXbox 360、PS3のネットワークユーザーの数をあえて出したのはヒントで、可能性がすごく高いということ。Wiiを使ってネットワークでバーチャルコンソールでダウンロードをするというのは普通の一般家庭で行なわれていることを目の当たりにすると、もう可能性のレベルではないですよね。 ソフトウェアの流通サービスがROMというものではなく、ダウンロードサービスになり、身近なものだと「まいにちいっしょ」などの状況を見ていると、非常に可能性は高いなと思います。あとPS3のネットワークへの接続率はすごく高いでしょう。PS3は普及台数がネックではあるけれども、ユーザーの60%がネットワークに繋いでいることを考えると、可能性としては大ではないかと思いますね。 ただ、コンシューマのオンラインではまだ課題はいくつかあって、まずはひとつは登録です。実は一番ネックな部分ですが、このユーザー登録をいかに簡略化して、デバイス自体から個人を特定できるようなレベルにまで落とし込まないと、PCのようにはいかないのではないかと思いますね。 編: 次世代機向けのオンラインゲームの展開時期はいつ頃を考えていますか。 森下氏: 本当に自分たちが面白いと思うかどうか。自分たちはそこを目指します。いずれ作ることは間違いないけれども、いつお目見えするかどうかは、我々が面白いと感じられるかどうかですよね。言ったからには確実に出すということではなくて、面白いと思えるものがあれば発表するということです。 編: まだコンシューマでやりたいことがカッチリしていないわけですか。 森下氏: それは決まっています。オンラインゲームです。現在企画を立てて、それを模索している段階です。ゲームアーツでも、コンシューマ事業部でもやっています。どこのセクションがやりなさいというレベルのものでもないですし。全社的な取り組みとして役員会では出しています。コンシューマでもパブリッシングの側面からも考える人はいるし、これはガンホーグループみんなのお題ですね。 編: ありがとうございました。
□ガンホー・オンライン・エンターテイメントのホームページ (2007年10月11日) [Reported by 中村聖司]
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