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「10人のプロフェッショナルが語る劇的3時間SHOW」で
岩谷 徹氏、高橋慶太氏がトーク

10月4日 開催

会場:スパイラルホール(青山)

岩谷 徹氏
 「第1回JAPAN国際コンテンツフェスティバル(CoFesta)」のイベントの一環として、10人のコンテンツプロフェッショナルが語る「劇的3時間SHOW」が10月1日~10月10日の日程で青山・スパイラルホールにて開催中だ。

 10月4日には、東京工芸大学芸術学部教授の岩谷 徹氏が3時間の講演を行なった。旧ナムコ、バンダイナムコゲームスでプロデューサーを務めてきた氏の講演は休憩をはさんだ2部構成となっており、第1部の内容はDiGRA基調講演「日本のゲーム産業史」で語ったこととベースは同じ。同じ部分は割愛するが、資料を含め、さらに丁寧に語られた。

 まず、岩谷氏の生い立ちから話はスタート。ナムコ入社までは「結構遊んでしまった」という氏は、そこから得られたものとして「無駄な時間」を過ごしたと思っても、必ず何かが蓄積されている、悪さをすることは工夫の塊で、この工夫は結局、後のゲーム作りに活かされてほっとしたという。

 多数のゲームをプロデュースしてきた岩谷氏ならではの視点だなと思ったのは、「プランニングのポイント」について。「『顧客、製品、段取り』が見えてくるのがよい企画書。プランナーは『発想力』とともに素材の『妙な』掛け合わせをよしとする気分が重要」と述べた。

 プランナーの重要な仕事となる“アイデア出し(ブレインストーミング)”は、「2時間もやると、『もう(アイデアが)出ない』となりますが、そんなことはない。目線を変えたり概念を変えることでどんどん出てくるはずなんです。あきらめないこと」が大切だという。

 さらに「“発想する力”は無からは生じない。生まれてから現在までに入っている頭の中の情報を組み合わせているに過ぎない。その情報の『妙な』組み合わせをよしとする気分……ほかの参加者も「それはへんだよ、おかしいよ」と言わないことで、面白いアイディアが出てくる」と補足した。これは、当時自由な社風でゲームを生み出してきたナムコという環境も影響していると思うが、アイデア出しの段階、とくに初期はこういった判断を加えない自由な発想が重要ということだろう。

 ほかにも、外から見えにくい「プロデューサーの役割」についても言及。「直接モノをつくるのではなく、モノを作る仕組みを作る役割」だという。さらに、「お客には商品の『価値』を感じさせ、経営者には『儲け』の『価値』を示し、クリエイターには『魂』を揺さぶる『価値』を供与するのが役割とも述べた。

 また、プロデューサーに必要な能力としては、「問題を把握し分析する直感力、問題解決策の構想力、人を動かす説得力と人間的魅力、対立する利害関係をまとめる交渉力や折衝力、相手の気持ちを察する人間性」としながら、「これを全部持ち合わせている人はいないだろうから、頭に入れておいていただければ」と難しさを強調していた。

 岩谷氏は最後に「『勇気・使命感・エネルギー』この3つがあれば必ず成功する」という自身の言葉に加え、バンダイナムコゲームスの吉沢秀行氏、仲舘賢氏、吉積 信氏、KONAMIの小島秀夫監督、Q Entertainmentの水口哲也氏、任天堂の宮本 茂氏、セガの鈴木 裕氏らの言葉を引用し、「そのまま鵜呑みにするのではなく、皆さんがそれぞれ考えてください」と材料を提示して、第1部を締めくくった。


■ 2人のギャップが面白さを浮き彫りにしたトークショー

高橋慶太氏
 第2部は、「塊魂」のプロデュースを手がけた株式会社バンダイナムコゲームスの高橋慶太氏を迎え、トークショーとなった。ただし、結論を出すというよりは、お互いの意見を開陳し、投げ合うといった内容で、どちらかというと高橋氏の考え方が岩谷氏とのギャップによって浮き彫りにされたような1時間だった。

 「塊魂」の開発経緯に関しては、2005年のGDCレポートにあるとおりの内容だったが、印象的だったのは「実際に作ってみたんですが、『塊魂』は思ったよりもそれほどおもしろくなかった。それがあれだけ受け入れられてびっくりした」という発言。GDC2005のレポートにもあるが、高橋氏は「運動会の大玉ころがしの方が面白いじゃないですか? 現実では実現できない、ゲームでしか表現できないことを追求したい」という。

 「WiiやDSのようにコントローラを変えるのもずるいと思う。ゲームの歴史が始まってまだそんなに経っていないのに、従来のコントローラでやれることはまだたくさんあるはずなんです。だからといって、今までの据え置き機だけがいいというわけじゃないですけど」と、これまた負けん気(?)のようなものを感じる発言も多かった。

 「これからどんなことをしていきたい?」と岩谷氏に水を向けられた高橋氏は、「青臭いことをいうなら、『世界が平和になってほしい』と本当に思ってるんですよね。ゲームは今、時代に逆行してるんじゃないかと思うんですよ。暴力や人間の本能を否定するわけじゃないですが、ゲームがそればかりというのは幅が狭いですよね。なんか恥ずかしいですね」という。

 そんな高橋氏に、岩谷氏は「僕も恥ずかしいとずいぶん思っていて、暴力表現だとか、撃って気持ちいいという本能的な部分だけを刺激してパッケージにしているのは疑問に思っている。インタラクティブなメディアだから、自分の行動に反応してくれるだけで楽しいし、今はそこに安住してしまっている。そこに資本が投下されている。でもそれがいやなんでしょ?」と問いかける。「それを全否定できないんですけれど」と高橋氏。そんな、ちょっと考えさせられる、文章にすると非常に難しいな、と思わせるトークが続いた。

「のびのびBOY」のムービーも上映された
 それが氏の次回作になる「のびのびBOY」にどうやってつながるのかは、皆目公開されることはなかったが、個人的には、まだまだ目が離せないクリエイターの1人だな、と認識を新たにさせられた1時間だった。

□「劇的3時間SHOW」のオフィシャルホームページ
http://www.geki3.jp/
□関連情報
【9月29日】DiGRA基調講演「日本のゲーム産業史」特別レポート
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070929/cedec_05.htm
【2005年3月13日】ナムコの高橋慶太氏がPS2「塊魂」について講演
テーマは「世界平和」? 独特のビジョンを展開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050313/gdc_kd.htm

(2007年10月5日)

[Reported by 佐伯憲司]



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