|
会場:幕張メッセ 台湾は、運営ノウハウは日本を上回るものの、ゲーム開発力が十分ではないため、台湾産タイトルは、日本市場へ先行展開し、日本風のカルチャライズを施した上で、改めて台湾やアジア各地で展開するというケースが多い。すなわち、日本先行展開が一種の箔付けとなっているわけだが、この点「ハルカ」は、台湾で開発され、そして同地で大人気を博し、その勢いで日本進出を果たすという王道的スタイルでの展開となる。こうした展開は、実は台湾産タイトルでは初のケースであり、それだけに同作の日本での反応が気になるところだ。 今回は、東京ゲームショウに合わせて来日したChinese Gamer総経理呂學森氏と、海外事業を担当する国際事務部経理の鄭雪環氏のおふたりに、「ハルカ」の魅力と今後の開発計画、そして日本展開に対する抱負を伺った。 ちなみに呂氏とは、2005年副総経理時代に、台湾の本社でインタビューを行なっており、今回で2回目。前回は、海外産タイトルに押され気味な中での地場デベロッパーとしての生みの苦しみのようなものが感じられたが、今回は名実共に人気のタイトルをひっさげての凱旋渡日とあって、全身から自信が漲っていたのが印象的だった。
■ 台湾で大ヒットを記録した「黄易群侠伝 Online」の誕生秘話
呂氏: 逆に質問ですが、どうして驚きましたか。 編: 台湾では、ここ数年、「ラグナロクオンライン」や「World of Warcraft」、「メイプルストーリー」といった海外産タイトルが上位ランクを占めていたのに、突如として台湾産のタイトルがトップランクに位置づけたことがその理由です。 呂氏: なるほど。以前、2005年に中村さんが台湾に来たときにChinese Gamerで人気だったゲームは「金庸群侠伝 Online」でしたが、その後ずっと良いゲームに恵まれませんでした。「黄易群侠伝 Online」を作る前に企画としては、以前に作ったゲームの経験を活かしたゲームを作るだけではユーザーは納得しないと考えました。そこで弊社の技術力で、美しいグラフィックスとシナリオに注力することにしました。 編: 開発をスタートさせたのはいつでしょうか。 呂氏: 2005年の1月くらいから開発がスタートしました。2006年8月から正式サービスをスタートしました。 編: 台湾での正式サービス開始から1年が経過したことになりますが、これまでに獲得した会員数と同時接続者数を教えてください。 呂氏: 「黄易Online」の会員登録は200万人で、同時接続者数の最大は20万人です。 編: 現在は? 呂氏: 現在は12万人ほどです。 編: 客単価はいかがですか。 呂氏: 個々には申し上げられませんが、全体の売り上げは1億台湾ドル(約35億円)です。 編: 呂さんの中で、これほどの大成功を収める確信はあったのでしょうか。 呂氏: ある程度の自信はありました。というのも、クローズドβテストの時や、社員たちでテストを行なった際にものすごく高い評価を得ていたからです。ただ、同時接続は良くて10万人くらいだろうと考えていましたが、結果は倍の数字が出たので驚きましたね。 編: 台湾でウケた理由は何だと思いますか? 呂氏: ユーザーの声をよく取り入れました。ユーザーにとって非常にフレンドリーな設計になっていると思います。 編: それはたとえばどういった機能でしょう? 呂氏: PDAのシステムです。初心者向けのチュートリアルをすべてPDAに集約し、いつでもゲームに関する情報が参照できるようにしました。それから、マップを開いた時に、特定の地点をクリックすると、その場所にキャラクタが直接移動することができます。それもユーザーの反応で変更しました。また、あまり時間の無いユーザーに対してAIシステムを取り入れました。 編: AIシステムとは何でしょう。 呂氏: 自分と同じようなレベル帯のモンスターを自動で倒すようなシステムです。傷つけば自分で回復剤を飲んで、再び狩りを続けます。自動的にモンスターを狩り続けるシステムです。 編: いわゆるBOTに近いものですか。 呂氏: BOTとは少し違います。AIシステムを使っても回りのゲームバランスを崩すことはありません。オンラインゲームでBOTを使うとしばしばバランスが崩れてしまいます。AIシステムはそうしたバランスを壊すことはありません。 編: AIシステムを使うことで、どういった行動が可能になるのですか? 呂氏: AIシステムは簡単に言えば自動狩りに特化したシステムです。やれることはモンスターを狩るだけですね。こうしたシステムが無ければずっとゲームをし続けてしまうユーザーが出てきてしまいます。ゲームばかりして、仕事や勉強が手につかないようでは困ります。そこで弊社では、サラリーマンや学生などがあまり時間をかけなくてもレベルが上げられるようにAIシステムを導入しました。
■ 武侠とSFをミックスさせた“ウォン・イー(黄易)”とは何者なのか?
呂氏: 元々香港の方で、ほとんどの小説がSFものです。主人公が自分の時代のシナリオではなく、過去に戻ったり未来にいったりするようなストーリーが多いです。これまで40作ほど著作があります。「黄易Online」の成功の要因として、クエストやストーリーに「黄易」の小説から同じものを採用して、ユーザーに小説の内容を楽しませたことが挙げられると思います。 編: 特定の小説をモチーフにしたのではなく、ウォン・イーの著作すべてをモチーフにしたのでしょうか。 呂氏: 3作品から内容をピックアップしていますが、11月からはもう1冊分増えることになります。2冊は現代から古代までいく内容で、1冊は現代から未来に行く内容です。11月から加わるシナリオは、現代、つまり2000年前後を舞台にした内容になっています。 編: 主人公はあくまで22世紀の未来人というわけですね。 呂氏: はい。 編: 台湾でのウォン・イーの人気はどれぐらいなのでしょうか。 鄭氏: 本自体はそれほど多くの人が読んではいないと思いますが、実写でドラマ化されており、それは非常に人気があります。「黄易」の小説の人気が高いのが香港です。今年11月に追加されるマップは香港にするつもりです。 編: これまでにどういった世界が実装されているのでしょうか。 呂氏: 中国古代の春秋戦国時代、唐朝、24世紀の未来の世界などです。「黄易」が考えた24世紀の世界は、いろいろな時代の人がいる世界です。メインストーリーとしては古代の人が凍り漬けにされて、未来に目がさめます。 編: 台湾のユーザーにはどの世界に人気がありますか。 呂氏: どの世界も人気があります。ユーザーは自由自在に古代や未来を行き来できます。 編: 時代を行き来するSFMMORPGというのは、ちょっと実際のプレイ風景が想像しにくいのですが、一般的な台湾ユーザーはどのような遊び方をしているのでしょうか。 呂氏: チームを組んで、チーム専用ミッションをクリアすることです。チーム専用ミッションの中ではAIシステムを使うことができないので、すべては自分で動かすことが必要です。 編: どの時代のミッションが人気でしょうか。 呂氏: どれも人気があります。なぜならチームミッションはレベルによって決まるのでレベルによってプレイする時代が変わるからです。古代はレベルが低めで、時代が進むごとに対象レベルが高くなります。 編: 時代が上がるにつれてミッションのレベルも上がっていくのでしょうか。 呂氏: そのとおりです。また、チームミッションを遂行したことによる報酬は良いものに設定されており、AIで狩れるような通常マップでは手に入れることができません。 編: このゲームにおける良い報酬とはどういったものなのでしょうか。 呂氏: 例えば強い装備を生産するための材料や、NPCに強い武器と交換してもらうためのアイテムなどがあります。普通のモンスターを狩っても出ないものや、滅多に出ないものもあります。つまり、チームミッションはユーザー間のコミュニケーションを増進するためのものなのです。 編: それでは、コアユーザーはチームミッションを繰り返しプレイするような遊び方が中心ですか。 鄭氏: いえ、チームミッションは1日1回限定なので、そうではありません。 編: このゲームは基本プレイ無料のアイテム課金を採用していますが、課金アイテムはどのようなものが用意されているのでしょうか。 呂氏: まずは乗り物です。車、バイク、戦車などの乗り物はすべて有料アイテムです。また、強い武器を作るための生産に必要なアイテムもモールアイテムとして売っています。または装備を修理するアイテムやキャラクタの見た目を変化するアイテムがありますね。能力は変わらず、見た目だけを変えるようなものです。やはりユーザーさんが遊んでみて、敵を倒して、強いアイテムを手に入れて欲しいからです。もしお金で買えてしまったら面白くありません。 編: 中でも人気のアイテムは何でしょうか。 呂氏: 「メモリーカード」です。「黄易Online」では武功ポイントをためて武功を学んでいきますが、武功ポイントは50,000ポイントまでしか貯めることができません。狩りの途中でそこまで達してしまうと一旦城に戻らなければなりません。メモリーカードは1枚で100,000ポイントを貯めておくことができます。長い時間を狩りしても、城に戻る時間を節約することができます。 編: 戦車やバイクや車といった乗り物は、時代をまたいで持っていくことはできるのでしょうか。 呂氏: 時代をまたいで使うことができます。ユーザーの能力には関係ないですし、ゲームバランスにも影響がありませんので。 編: しかし、古代中国にバイクが走るわけです(笑)。台湾や中国で、古代中国で乗り物を乗り回すことに違和感などの意見が寄せられないのですか? 鄭氏: 「黄易」の小説の設定の中に、未来のアイテムを古代に持っていく設定があるので、ユーザーに対してはそれほど影響ありません。 編: なるほど、元々小説にそういう描写があるわけですね。 呂氏: はい。車やバイクなどのアイテムは結構購入されるユーザーが多いです。
■ 小説の内容をそのままゲームに取り込んだユニークなゲームデザイン。日本オリジナル要素もあり
鄭氏: おかしいかもしれませんが、ユーザー全員で「黄易」の世界を楽しむことができますし、メインクエストもあるからそれぞれメインクエストをクリアしつつ次のフェーズにいっていますので問題ないかと思います。 編: なるほど、逆転の発想ですね。このゲームでは原作のストーリーをそのまま楽しめると考えていいのでしょうか。 呂氏: はい。小説を読むより簡単に内容を体験できます。 編: 節目節目ごとに小説のエピローグに相当するようなエンディングがあるのでしょうか? 呂氏: チームミッションにはエンディングはありますが、メインクエストにはエンディングはありません。クエストは小説の内容を参考にして作ったものも多いですのでエンディングもありますが、メインストーリーは節目なくずっと続いていきます。 編: 小説の主人公はゲームの中に登場しますか? 鄭氏: 登場します。小説の主人公は戦友やパートナーという位置づけです。 編: メインクエストの中で人気のあるものを教えてください。 呂氏: メインクエストもレベルによって設定されていますので、一定のレベルになったらそれをクリアして次のクエストにいきます。そのためどれが一番人気なのかは一概には言えません。 編: とはいえ、クエストごとにストーリーが異なるわけで、当然ストーリーには人気不人気があると思うんです。 呂氏: ストーリーよりも仕掛けの部分がこだわったクエストに人気があります。ミッションの中には色々な仕掛けがあります。ただ敵を倒すだけではありません。あるボタンを押して足場を組んだり、NPCとの会話でシナリオ内容を選んだりします。 編: さて、今回日本展開が決まりましたが、どのような期待を寄せていますか。 呂氏: 中国風武侠RPGとして、日本で大人気になることを期待しています。 編: ハルカというタイトルに対してどう思いますか。 鄭氏: 特殊なイメージです。神秘的な感じがします(笑)。どんなゲームになるだろうという気持ちがします。 編: 日本人が好まれそうな要素は何だと思っていますか。 呂氏: 1番はシナリオで、2番目に便利な機能です。オンラインゲームをプレイしている人に疲れを感じさせないように色々な機能を盛り込んでいます。便利なシステムと未来と過去に自由自在にいくシステムを見てもらいたいです。 編: 意地悪な質問ですが、日本では武侠の人気があまりありません。その点についてはいかがお考えでしょうか。 呂氏: 弊社としては一種の挑戦だと思います。 編: 日本のオリジナル要素はあるのでしょうか。 呂氏: 現在の予定では、日本風の有料アイテムを実装することなどです。 編: サムライなどの格好も登場するのでしょうか。 呂氏: そのとおりです。イメージから日本人に受け入れられるような調整をしていきます。 編: 今後の台湾での開発の流れや予定を教えてください。 呂氏: 「黄易Online」は今年の11月から追加バージョンを出します。香港のマップで現代のイメージでユーザーに新鮮さを提供します。その後はまだ決まっていません。 編: 基本方針としては40冊ある「黄易」の著作を1冊ずつ実装していくのでしょうか。 呂氏: その予定です。人気があるシナリオから実装していくつもりです。 編: 日本のユーザーに向けてメッセージをお願いします。 鄭氏: 「ハルカ」の内容を楽しみにしていてください。 呂氏: ハルカへようこそ。広大な「黄易」の世界を楽しんでください。 編: ありがとうございました。 (C) 2007 SeedC,Inc. / Chinesegamer International Corp.,2007. All Rights Reserved.
□SeedCのホームページ (2007年9月23日) [Reported by 中村聖司]
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|