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「オブリビオン」広報Pete Hines氏インタビュー
シリーズで繰り返しアプローチし続ける“ファンタジー世界の創造と生活”というテーマ

9月20日~23日 開催予定(20、21日はビジネスデイ)

会場:幕張メッセ
入場料:当日1,200円、前売1,000円
    小学生以下無料



 株式会社スパイクは「The Elder Scrolls IV:オブリビオン」(以下、「オブリビオン」)のPS3版を9月27日に発売する。今回、東京ゲームショウに合わせて来日した開発元のBethesda SOFTWORKSの広報とマーケティングの責任者であるPete Hines氏に「オブリビオン」について話を伺った。

 「オブリビオン」は広大な世界を再現し、その中でプレーヤーは自分の生き方を見つけるというファンタジー世界の表現と、自由度が魅力のRPG「エルダースクロール」シリーズの最新作である。北米では2006年の3月に発売され、熱狂的なファンを生み出した。その優れたゲーム性は、海外のゲーム賞を次々と獲得し、日本のコアなファンは日本語版発売を待ち望んでいた。

 このタイトルを日本で展開したのが、今回通訳をしてくれた本作の日本語版プロデューサーを務めるスパイクのプロデュース部 海外グループマネージャーの高橋徹氏である。Hinesd氏はシリーズを通じてタイトルを手がけ、開発にも深く関わっている。「ファンタジー世界の創造と生活」というシリーズを通じてアプローチし続けるこのテーマにスタッフはどのような想いを込めているのだろうか。


■ 世界中から評価された「オブリビオン」の自由度と世界観に込められたスタッフの想い

Bethesda SOFTWORKS VP of Public Relations & MarketingのPete Hines氏。シリーズを通じて開発にも深く関わる。日本シュミレーションRPGがお気に入りだという
スパイク プロデュース部 海外グループマネージャーの高橋徹氏。「オブリビオン」日本語版発売を実現させた人物だ。今回、通訳をしていただいた
編: 最初に、「オブリビオン」は世界的なヒット作となりましたが、その手応えはどのようなものでしょうか。

Hines氏:  「オブリビオン」の制作には4年もの期間がかかっています。これだけの時間をかけて作ったゲームが世界で評価されたことはうれしく思っています。制作中はゲームの内容に関しては自信がありましたが、世の中に受け入れられるかどうかと言うのは、こちらがコントロールできない、わからない部分です。ただ、作っていく上で「良いゲームになった」という手応えは強く感じました。

編: 「オブリビオン」のコンセプト、そしてプレーヤーに感じてもらいたかったテーマはどのようなものですか。

Hines氏: 「オブリビオン」に限らず、「エルダースクロール」というシリーズを通して、「ファンタジー世界の創造と生活」というものを追求しています。プレーヤーゲームの世界観にどっぷりと浸ってもらって、遊んでもらいたいですね。没入感と共に、自由度も楽しんで欲しいです。

編: 「オブリビオン」は「エルダースクロール」シリーズの4作目に当たりますが、「オブリビオン」がシリーズを継承できたところ、革新的に変わったところはどこでしょうか。

Hines氏: 大きな世界を用意し、プレーヤーは自由に世界を動き、自分なりの冒険をしていく。プレーヤーは強制されることなく世界で好きなことができ、自分が取った行動に応じてキャラクタの特徴が明確になっていく。こういった要素は「オブリビオン」でも継承しています。

 新しいところはまずより美しくリアルに表現できるようになったグラフィックス。そしてなによりAIシステムです。以前のシリーズでのNPCはただプレーヤーを待って、決められた場所で立っているだけでしたが、「オブリビオン」ではそれぞれのNPCが生活のリズムを持ち、“生きて”います。

 そういった要素が実現したのは、やはりハードウェアの進化があってこその部分もあります。グラフィックスやAIの計算、フィジックスエンジンなどはハードの性能による所も大きいです。

編: なぜ「エルダースクロール」シリーズの開発者達はずっと“ファンタジー世界の冒険と生活”を追い求め続けるのでしょうか。

Hines氏: “ファンタジー世界の冒険と生活”はシリーズの中心となるコンセプトです。そして何よりも、開発者達が「得意としているところ」でもあります。そしてもうひとつ、他の誰もできないから、という自負も大きいです。

編: だからこそシリーズで繰り返しアプローチし続けているのですか。

Hines氏: と、いうよりも、まず自分たちが楽しんで作りたいからですね。私達が追求しているテーマは、何よりもそれが面白いと私達自身が強く思っているからです。

編: 「生活と冒険」というところで、「オブリビオン」では主人公が“村を出た平凡な青年”ではなく、いきなり囚人として牢屋に入れられている所に驚きました。プレーヤーをファンタジー世界へ誘う手法として、牢屋の住人からスタートさせたのはなぜなのでしょうか。

Hines氏: 実は牢屋からスタートというのはシリーズを通しての“伝統”なんです。1作目の「アリーナ」と、「オブリビオン」はスタート地点は実は同じなのです。プレーヤーは囚人であり、突然開放されて外の世界に出ます。プレーヤー同様、ゲームの主人公も周りは未知の世界で、最初は自分を知っている人もいません。

 実は、なぜ囚人になってしまったかも、ゲームの中では語られません。自分が何者なのか、そしてこの世界で何をするのか、未知の世界に放り出されたプレーヤーは世界にアプローチすることでそれを探っていくことになります。もちろん、自分の好きな設定を想像し、それに沿ったキャラクタをゲーム内で演じ、行動の指針にすることも可能です。

編: 薄暗くて汚くて、ネズミやゴブリンがいる「下水道」がチュートリアルモードなのも、シリーズの伝統でしょうか。

Hines氏: 継続しているのは「牢屋の囚人である」という部分だけです。「オブリビオン」のスタートが薄暗くて狭い場所をスタート地点にしたのは、このチュートリアルが終わったときに急に広大な世界が広がるという驚きを感じて欲しかったからです。

 本作の操作性や戦闘など独自のルールを覚えてもらうには、一本道の狭い空間が必要でした。プレーヤーは牢屋から更に気持ちが沈み込む様なくらい下水道で冒険の基礎を学び、そして広大な空間に旅立っていくのです。下水道と広大な世界のコントラストは、プレーヤーに世界の美しさを一層強く感じさせてくれると思います。

編: 下水道を出たとき、本当に広い世界が広がっていて、その世界の作り込みに驚かされますが、どのくらいの制作スタッフが関わっているのでしょうか。

Hines氏: 制作チームは最も大きい時に75人いました。これは品質管理やサポートスタッフの人数を別にしてです。

編: これだけ広大なマップだと、スタッフが分業をして世界を構築していくことになると思いますが、世界観の統一などはどのようにしていったのでしょうか。

Hines氏: シリーズはいつもそうなんですが、世界を大きく作りすぎてしまうんですよね(笑)。アイデアも多く詰め込みすぎてしまって、どこかのタイミングで、「ここら辺にしておこう」とまとめの作業にはいる。その判断のタイミングが一番難しいですね。

 世界観の統一というよりも、どれだけアイデアを詰め込めるかをまず大事にしています。デザイナーやアーティストから、ゲームシステムのアイデアが出たとしても、どのタイミングでもチームで話し合い、それが良いアイデアだと判断したら盛り込んでいく。誰でも自由にゲームに対してアプローチをしていけるような体制作りを心がけています。

 企画書上や会議で良いアイデアだと思っていても、実際にゲームに入れてみるとイマイチだったりすることもあります。とにかく、ゲームで実際入れてみて、遊んでみて、納得いくまでプレイして修正することで、しっくり来るまで作り込んでいきます。


■ グラフィックスの進化、オンラインで「エルダースクロール」は変化を迎えるか?

編: 1つ高橋さんに質問させていただきたいと思います。この「オブリビオン」をなぜ日本で紹介したいと思われたのでしょうか。

高橋氏:: 一言で言えば「良いゲームだから」です。実は僕がRPGを手がけるのは今回が初めてなんです。僕はこれまでシューティングやアクションゲームのローカライズをしていました。海外のRPGを日本で紹介するのはうまくいきづらいところがあり、僕自身もあまり好きなジャンルではなかったのです。

 「オブリビオン」は伊達に海外でこれだけ評価を得ていないな、と感じるタイトルでした。僕もこの作品の自由度を面白く感じました。RPGはどうしてもストーリーは一本道で作業が多くなるじゃないですか。それが僕には苦手なんですね。「オブリビオン」はその点で全く異なった作品だと感じたんです。

編: Hinesさんは日本のゲームはプレイなさるんでしょうか。

Hines氏: 「ポケモン」は今も私のDSの中に入ってますよ(笑)。最近はDSがお気に入りです。特に好きなのは、「ファイナルファンタジータクティクス」や「ファイアーエンブレム」などのシミュレーションRPGですね。このジャンルではアメリカでは面白いと感じたゲームはないです。日本のシミュレーションRPGが持つ、駆け引きやテイストが気に入っています。

編: PS3版の「オブリビオン」について質問させていただきます。PS3に移植するにあたり、変わった部分などはありますか。

Hines氏: 変わった部分は全くないです。ハードのアーキテクチャは違うところに苦労はいろいろありますが、ゲーム性など根幹部分は変わっていません。グラフィックスに関してもメモリの使用や、コンバートするためにレンタリングエンジンを変えたりなどチューニングはしましたが、新たに書き起こすといったことはしていません。

編: 360版、PS3版と「オブリビオン」は日本で展開することになりましたが、これに対しての感想をお聞かせください。

Hines氏: 「オブリビオン」を最初にリリースをしたのが今から18カ月前になります。Xbox 360版に続き、来週PS3版も日本で発売できるようになりました。これは興奮させられますね。次回作はもっと早く日本でも発売したいと思っています。

【PS3版スクリーンショット】
9月23日にスパイクより発売されるPS3版「オブリビオン」。ゲーム内容などは変わらないが、レンタリングエンジンなどグラフィックスは細かいところでチューニングされている

編: 日本では特にコアなプレーヤーに人気が高い「オブリビオン」ですが、欧米ではどういったユーザーに評価されていますか。

Hines氏: 欧米でもまずこの作品を気に入ってくれたのはコアゲーマーでした。そしてそこから更にユーザー層は広がっていきました。RPGを普段はやらない人、友達のプレイを見て手に取った人など、多くの人がプレイしてくれています。

 「オブリビオン」はレーティングで低年齢層のユーザーはプレイできませんが、ハードな雰囲気にもかかわらず、女性を含めた幅広いユーザーにプレイしてもらっています。好きなことができる、自由度が高い、「人や動物を殺さなくてもゲームが進む」というところを評価してくれるユーザーもいます。

編: 「オブリビオン」を今後、他の国に展開していく予定はあるのでしょうか。

Hines氏:  今回は日本版を出すことが我々の最終的な目的の1つでした。これで私達が考えていた他の国への展開、というのは完了したことになります。オフィシャルでは中国では展開していないはずですが、プレイしている人もいるようですね。

次回作についても何か秘めた想いを持っているというHines氏。「エルダースクロールV」はどのような作品になるのだろうか
編:  「オブリビオン」ではプレーヤーキャラクタとして人間だけでなく、エルフやトカゲ人間のような「カジート」、オークといった種族デモプレイ可能ですが、欧米のプレーヤーは非人間型種族のゲームプレイが好きなのではないかなという印象があります。

Hines氏:  カジートなど登場する種族はシリーズを通してのものです。ファンにとっては特別に思い入れのある種族もいると思います。様々な種族が入り交じる世界観も評価してもらってます。人間と違う種族でプレイできる要素は人気がありますね。もちろん、醜い種族が嫌いで、エルフなど美しいキャラクタを使いたい、という人もいます。

編: 今後、ハードウェアの性能が更に上がり、グラフィックスの表現能力が上がると、残虐表現や不気味な表現もよりリアルになってしまい、嫌悪感を抱いてしまうユーザーが増えるかもしれない、という心配があります。これに関してはどう思われますか?

Hines氏:  どんなゲームに限らず、昔のゲームでは上半身裸の女性キャラクタが出てきても騒がれませんでしたが、最近のリアルなグラフィックスでそんなキャラクタを出したら問題になってしまいます。どんなものも行き過ぎると問題になってくるとは思いますが、表現に関しては気をつけていけば問題はないと思います。

編:  初期の「ウィザードリー」や「ダンジョンマスター」など、プレーヤーの想像力を喚起するようなシンボル化した古い時代のグラフィックスのテイストを取り入れてみよう、というような考えはありますか?

Hines氏:  そういった気持ちはないですね。ノスタルジーなグラフィックスにも魅力はありますが、グラフィックスはリアルになるほど、より感情を引き立ててくれると思います。

編: 「オブリビオン」の次の作品、「エルダースクロールV」は現在制作されているのでしょうか。

Hines氏:  現在スタッフは核戦争後の世界を探索していく「Fallout3」にかかりきりになっていて、作業としては全く進めていません。ただもちろん、「作らなくてはならない」という意志は持っています。

編: Hinesさんの個人的な想いとして、「エルダースクロールV」はどうしていきたいか、というような構想はありますか。

Hines氏:  持っていますが、現在は言えません(笑)。

編: もう少しだけお聞きしたいですね。次回作も「ファンタジー世界での生活」というテーマは継続されるのでしょうか。

Hines氏:  もちろん「ファンタジー世界での生活と冒険」は「エルダースクロール」シリーズの根幹をなすものです。もちろんそのコンセプトは継続していきます。お答えできるのはここまでですね。

編: 「エルダースクロール」シリーズはこれまで1人用の作品でしたが、今後オンラインへのアプローチの構想はありますか。

Hines氏:  当然可能性はあると思います。MOタイプにするのか、多くの人と世界を共有するMMOになるかはわかりませんが、それでもシングルプレイはなくなることはありません。シングルプレイのゲームの醍醐味はプレーヤーを中心に世界が動く、全ての物語はプレーヤーが関係することで変化していく、これはシリーズを通じてのテーマでもあります。

 オンラインになった場合は、自分を中心に世界があるのではなく、その関係は逆になります。世界があって、自分がいる。ゲームの意味合いがまったく変わってきてしまいますね。

編:  「オブリビオン」の闘技場に入ってびっくりしたのですが、最初から対戦者を倒しすぐに階級が上がってしまい、「やはり主人公は他の人とは違い、特別に強い能力を持った人間なのかな」と、思いました。

Hines氏:  それはあなたが戦闘に強いキャラクタを作り、戦闘も得意だったからかもしれませんね。闘技場では、プロの戦士もいますが、最初に戦うのはプレーヤーと同じで、ほとんど戦闘の経験もない駆け出し戦士なのです。勝ち進むと、本物の剣闘士とも戦わなくてはいけなくなります。

高橋氏:: 僕はいきなり闘技場に行ったら倒されてしまいましたよ(笑)。

編: 日本にも「オブリビオン」とBethesda SOFTWORKSを応援する熱心なファンがいます。彼らにメッセージをお願いします。

Hines氏:  日本語版発売の前から、日本のファンは応援してくれていましたし、日本語化への強い要望を出してくれていました。本当に感謝しています。時間はかかりましたが、ようやく日本語版をみなさんに遊んでいただけるようになりました。遊んでいただいて、「待った価値があった」と思っていただければうれしいです。

編: ありがとうございました。

The Elder Scrolls(tm) IV: Oblivion(tm) (c)2007 Bethesda Softworks LLC, a ZeniMax Media company. The Elder Scrolls, Oblivion, Bethesda Game Studios, Bethesda Softworks, ZeniMax and related logos are registered trademarks or trademarks of ZeniMax Media Inc. in the U.S. and/or other countries. Published and distributed by Spike Co., Ltd. with Bethesda Softworks LLC.

□スパイクのホームページ
http://www.spike.co.jp/
□「The Elder Scrolls IV: オブリビオン」のページ
http://www.spike.co.jp/oblivion/
□関連情報
【9月3日】スパイク、PS3「The Elder Scrolls IV: オブリビオン」
初回特典はガイドブック「シロディール冒険のススメ」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070910/obli.htm
【9月3日】Xbox 360ゲームレビュー「The Elder Scrolls IV: オブリビオン」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070903/oblivion.htm
【6月6日】スパイク、Xbox 360「The Elder Scrolls IV: オブリビオン」
日本語版最新スクリーンショットを公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070606/obli.htm

(2007年9月23日)

[Reported by 勝田哲也]



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