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【東京ゲームショウ2007レポート】

経済産業省/CESA、「コ・フェスタ フォーラム in TGS 2007」を開催
新しいオンラインサービスモデルとメディアミックスの展望

9月21日 開催

会場:ホテルニューオータニ幕張

 「東京ゲームショウ2007」2日目の9月21日、経済産業省およびCESAが主催するコンテンツ業界関係者向けのカンファレンス「コ・フェスタ フォーラム in TGS2007」が開催された。「コ・フェスタ」とは正式名称を「JAPAN国際コンテンツフェスティバル」といい、映画、アニメ、ゲーム、漫画、放送、音楽など日本が得意とするコンテンツ業界の各種イベントが連携する世界最大規模のコンテンツフェスティバル。今回の「TGS2007」もその一環であり、10月28日の「東京国際映画祭」まで継続する。

 今回開かれたカンファレンスは、この「コ・フェスタ」の枠組みから、ゲームの世界展開およびクロスメディア展開をテーマにコンテンツ業界の第一人者達が参集。流通プラットフォーム、クリエイター、プロデューサーといった立場から業界の現状と展望を語るものとなった。


■ オンラインコミュニティを重要視するMicrosoft Game Studios
   新作「Halo 3」はUGC文化を意識した各種機能を強く打ち出すものに

 カンファレンス最初のセッションは「インターナショナルセッション」として、Microsoft Game Studiosを構成する主要なデベロッパーのキーパーソンたちが登壇した。

・コミュニティのパワーに強い期待を抱くMicrosoft Game Studios

第一の講演者として登壇したフィル・スペンサー氏。Microsoft Game Studiosを統括する
 最初に公演を行なったのはMicrosoft Game Studiosのパブリッシュ部門ゼネラルマネージャーを務めるフィル・スペンサー氏。同氏はマイクロソフトの開発チームとともに「Project Gotham Racing 3」の開発を担当したほか、「Forza Mortorsport」、「Fable」、「Rise of Nations」、「Dungeon Siege 2」など多くのビッグタイトルに携わった人物。

 スペンサー氏は、Microsoftのファーストパーティゲーム部門を指揮する立場から、Xbox 360とWindowsを軸に展開する同社のゲームコミュニティに対する積極的な姿勢を披露。日本のコンテンツ事業者に対しても、ユーザーコミュニティをビジネスの機会として捉え、それをつくり育てていくことが今後のマーケットに対応する上で非常に重要だという認識を示した。

 その背景には、ゲームのオンライン化が進んだ結果、ユーザーが「ゲームそのものを超えた価値を期待」しているという現状認識がある。スペンサー氏は「Forza Mortor Sport 2」を例にとり、「日本で先行発売した結果、日本のユーザーの手により多種多様なカスタムカーがゲーム内マーケットで流通したことが他地域での期待感を刺激し、北米・欧州でのセールスに大きく貢献した」と、日本のゲームコミュニティが起こした現象を高く評価。

 スペンサー氏は「ゲームコミュニティをゲームの外でもつないでいくために」として、Xbox 360で始まった「LIVE」サービスを基点に、Windows版やモバイル機器への対応、Windows LIVE Messengerとの統合や、LIVEマーケットプレースでHD映像コンテンツの流通を開始するなど、現在の主要な取り組みを紹介。コミュニティを育てるためにはゲームの外部からのアプローチも重要だという、プラットフォームホルダーらしい姿勢を披露した。

日本コミュニティが多大な影響を及ぼした「Forza 2」を例にとり説明するスペンサー氏。その現象は「驚くべきものだった」と評価した

・シリーズ累計販売本数2,000万本を記録する「AoE」。その経験は「Halo Wars」へ生かされる

「AoE」シリーズの生みの親とも言えるシェリー氏のEnsamble Studiosは、現在「Halo Wars」の開発に取り組んでいる
 続いて登壇したのはEnsemble Studiosのシニアゲームデザイナー、ブルース・シェリー氏。古くはシド・マイヤー氏とともに「Civilization」の製作に参加し、その後「Age of Empires」シリーズのゲームデザインを担当した人物だ。同氏は「Age of Empires III: アジアの覇王」のプロダクションを完了したばかりで、セッションの半分は同作品のデモンストレーションに当てられた。その中でシェリー氏が強調したのは、この「Age of Empires」シリーズが世界的に成功した理由の分析。

 同シリーズは'97年の第一作から現在まで、累計で2,000万本以上を売り上げたという超ビッグタイトル。シェリー氏自身の認識では、同シリーズが世界的に評価された理由の要点は次のようなものだ。1つはゲームのクオリティが高いこと。これは当然のこととして、第2の理由は「広く太くアピールしたこと」。つまり、カジュアルゲーマーにもハードコアゲーマーにもアピールできるゲーム性、洋の東西や老若男女を問わない世界史という普遍的なテーマが、市場の非常に広い範囲にアピールする要因であったということだ。

シェリー氏は、「次のAoEが実現するなら、LIVE対応になるだろう」と展望を明かした
 シェリー氏はそれに付け加えて「ゲームの表現が明るく、受け入れやすいこと」を重要なポイントとして挙げた。これはゲーム業界では意外と見落とされがちな観点だろう。シリアスで暗いゲームは少なくないが、「AoE」シリーズが同じくダークな雰囲気を持つ作品になっていれば、アピール可能な層は狭くなっていたに違いない、というのが氏の認識だ。

 最後にシェリー氏は、Ensamble Studiosで現在開発が進行している注目作品「Halo Wars」での取り組みについて紹介。Xbox 360専用RTSとして2008年のリリースが予定される同作品だが、シェリー氏は「Xbox 360におけるこれまでのRTSは失敗に終わった」と、PC的な環境に最適化されたジャンルをコントローラーで操作することの難しさを指摘。そこで「Halo Wars」の開発にあたって、「Age of Mythology」をXboxコントローラ向けの操作スキームへと根本的に変更したテストをおこない、その結果キーボード+マウスよりも良い感触を得たのだという。その結果を経て「Halo Wars」の開発を決意した、というのが経緯であるようだ。

「Halo Wars」では、全く新しい操作スキームに挑戦しているという。その一環として「Age of Mythology」によるテストが行なわれたそうだ。シリーズの経験が大きな力につながっているようだが、果たして「Halo Wars」はXbox 360におけるRTS初の成功事例となるか

・「Halo 3」が取り組むUGCへの手厚いサポート。その一端を紹介

バーンズ氏はユーザーコミュニティ体験を源流とするクリエイター。その姿勢が「Halo 3」の製作に反映されている
 本セッションで最後に登場した公演者はBungie Studiosのプロダクションヘッドを務めるジョンティ・バーンズ氏。バーンズ氏は「Halo 3」のエグゼクティブプロデューサーとして製作を統括している。講演では、初代「Halo」以来育ち続けたユーザーコミュニティの一員としてBungieに入社した同氏自身の立場から、タイトルにコミュニティを支援する機能を搭載する重要性を語った。

 「Halo 3」はユーザーのソーシャルグループを作ることに主眼をおいて開発したのだという。そのために取り入れた第一の機能は、ゲームを協力してクリアする「パーティプレイ」。FPS作品としてこの要素を前面に押し出した作品は、筆者の知る限りでもこのタイトルが初めてだ。ゲームの開発にあたって今年5月に実施されたオープンβテストでは、82万人のプレーヤーが25カ国から参加し、1,200万時間のプレイデータが得られたという。Bungieではそのフィードバックをもとにゲーム性を洗練させてきたとのこと。

 またバーンズ氏はカスタムゲーム、つまりゲームのルールをユーザー自身が作りだせるという機能を紹介。「Halo 3」では、「Forge」と呼ばれるツールセットが同梱されており、マップを編集したり、本編とは全く異なるルールのゲームを作成できる。野球ゲームを作ることさえ可能だという。バーンズ氏は、それにより「開発者が想像もしなかったアイディアが出てくるだろう」と期待感を示しつつ、さらに同作品が持つ「Theater」機能を紹介。

 「Theater」は、前作「Halo2」で盛んな動きをみせたユーザー製作のゲームムービー(マシニマ)をヒントに実装したもので、プレーヤーはネットワークでプレイしたゲームセッションのリプレイを保存し、それをマルチユーザーで自由に再生、様々なカメラ位置で鑑賞することができる。会場ではバーンズ氏らが4人でプレイした「スカラベ」との戦いが多様な視点で映し出されるというデモが行なわれた。ビデオのように時間をとめることもできる。同氏はこの機能も含めて「コミュニティ体験を新しい体験を提供し、ゲームに対する関心を持ち続けていただけるようにしたい」と述べ、コミュニティへのアピールという、これからのゲームに求められる要素を明確にしてみせた。

バーンズ氏は「Halo 3」のソーシャルコミュニティを支援する柱として、「パーティプレイ」、「カスタムゲーム」、「シアター」を紹介


■ オンライン時代の「勝ち組メディア」はPCとモバイル機器
   業界の第一人者たちはユーザー参加型の動画投稿サイトの現状にも理解を示す

本セッションにはゲームとアニメ業界を代表する3名の人物が登壇。メディア戦略の現状と展望を語った
 カンファレンスの第2セッションでは、日本のゲームと映像コンテンツ業界の第一人者たちによる、コンテンツ業界がこの先意識するべきメディアミックス戦略の展望が語られた。登壇者はソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント テレビ部門日本代表 兼 アニマックスブロードキャスト・ジャパン代表取締役社長の滝山雅夫氏、セガ R&Dクリエイティブオフィサー CS開発統括部副統括部長 兼 NEソフト研究開発部長の名越稔洋氏、小学館キャラクター事業センター・センター長の久保雅一氏。

・レーティング制度に縛られがちなゲーム業界。「玩具」から「メディア」への脱却が必要

セガのゲーム製作をリードし続ける名越氏。代表作「龍が如く」は実写映画化され、今秋にはDVD版がリリースされる
 セガで長くゲーム製作に携わってきた名越氏は「龍が如く」シリーズにて実写映画化というメディアミックスを成功させた。同作品のゲーム作品としてのユニーク性は、裏社会と暴力という、TVゲームではあまり触れられこなかったテーマにある。名越氏はその経験を踏まえて、現行のゲームのレーティング制度を、玩具から始まったゲームというメディアが次の段階へ脱却する上で障害になりかねないという持論を展開した。

 名越氏は「倫理問題、これをブレークスルーしなければ未来はないと、現場では強い思いとして出てきています」と語る。その背景にはタイトルの審査段階で「下着じゃなくて水着なのでOK」、「ゾンビなので虐殺してもOK」といったレーティングの評価基準があるという。表現の本質的な意味でなく、表面的な言葉や形だけの審査で規制されるかどうかが決まるという現状に強い不満を抱いているようだ。

 同氏が手がけた「龍が如く」シリーズは、家庭用ゲーム機向けとしてはかなりダークな主題を扱っている。そのため審査段階の障害も多かったのであろう。名越氏は、同作品の方向性として「ケンカはするが、売られたケンカを買うだけ」、「その先の本質には人間ドラマが描かれている」とし、そういった本質的な部分では「GTA」などの暴力ゲームとは対極にあることを強調、倫理審査のハードルを乗り越える苦労を味わいながらも、だからこそ実写映画化というメディアミックス展開が可能だったという認識を披露した。

 名越氏は倫理規定について「ゲームは玩具から始まった束縛を受けている」という認識を語りつつ、「ゲームは今、スポーツ、SF、ファンタジー、歴史物くらいのジャンルでマーケットの殆どが占められている。インタラクティブメディアとして最も優れているメディアが一番閉鎖的だという現状は容認できません」と語った。そんな中で同氏は、ゲームが一番学ぶべきメディアはTV番組だという。「モニタがなければゲーム産業はありえない。リビングに座ってソフトが動く、それで産業が動いていくということを考えると、TV業界は参考にして学んでいく価値があります」として講演を締めくくった。

写実的なゲーム映像ゆえに、イメージを損なうことなく実写映画化の形でメディアミックスを果たした「龍が如く」。名越氏は映像のイメージを大事にするため、コミック化という形は取らなかったのだという

・アメリカ型のコスト構造を持つアニメ業界は世界展開の最先端を走る

アニマックスブロードキャスト・ジャパンを率い、世界中に日本アニメを配信してきた滝山氏は、アニメ業界のコスト構造に注目して講演を行なった
アメリカは映画業界が隆盛を極め続け、人材がTV業界に吸収されることがなかった。日本のアニメ業界はその北米スタイルのコスト構造に近いという
 ANIMAXチャンネルを率い日本アニメの世界展開を手がける滝山氏のセッションでは、世界へ普及するアニメ作品の歴史と展望、ゲーム業界への教訓について講演が行なわれた。同氏の語る要点として、アニメ業界のコスト構造が米国の映像業界に近いという事実が挙げられている。

 これについて滝山氏は、映画製作スタジオと放送ネットワーク企業がそれぞれに成長したアメリカでは、ネットワーク各社と映画会社の統合が進んだ現在においても映像作品の独立性が強く、権利関係の処理が厳密に行なわれている背景があるとのこと。日本の映像産業については、「映画文化が早くから小規模化し、TV業界に吸収された結果、製作スタジオの独立性が低く、権利関係の処理もあいまいになってしまった」という経緯を紹介。このため海外展開において映像、音楽、あるいは俳優などの契約、権利関係の処理が難しく、映像ソフト化など2次展開以降の歩みが困難なのだという。

 その滝山氏によれば、日本の映像業界において例外的な立場にあるのがアニメ業界。もともと子供向けというスケールで展開してきたアニメ業界は玩具企業とのタイアップや映像ソフト化によるコスト回収という必要性に迫られていたため、作品にまつわる権限が集中しており海外展開においても問題が少ないのだという。また重要なポイントとして「子供向けコンテンツは、成長途上の子供向けであるがゆえに各国固有の文化障壁が低い」という事実を紹介。当然ながら日本独自に発展したコンテンツとして競争力の高さもある。

 何よりも重要な普及段階の戦訓について滝山氏は、柔軟な権利処理を挙げ、「これはだめ、あれはだめ、ということでは新しいメディアに対応できなくなってしまう。YouTubeやニコニコ動画なども含め、セールスプロモーションの充実をはかり、もっと訴求していきましょう」とした。そのためにも作品に関連する権利関係は担当者に集中させ、戦略的展開を容易にすることを求めた。またゲームとのクロスメディア展開についても、ゲームコンテンツが進化してきたことによりコミック原作からゲーム原作への流れを意識。ゲームメーカーと共同してどんどん作品を作っていきたい、と意気込みを披露した。

・「勝ち組メディア」たるPCとモバイル機器。業界の新しいクロスメディア展開とは

久保氏は「ポケットモンスター」の映画、キャラクタグッズなどの仕掛人として活躍した人物だ
 最後に登壇した久保雅一氏は、小学館キャラクター事業センターの長として「ミニ四駆」、「ポケットモンスター」シリーズなど、数多くのTV番組・映画の企画およびプロデュースを手がけてきた。特に「ポケモン」において氏は、ゲーム・コミック・TVアニメ・映画・キャラクタグッズといったメディアミックス展開の仕掛け人として知られている。

 久保氏は現代メディア事情のオーバービューとして、映像・音楽・ゲーム・出版の各分野における市場規模の推移を紹介。その中で特に落ち込みが激しいのが映像のDVD販売、音楽のCD販売や、パッケージソフト販売といったもので、いわゆる物理メディアの低調ぶりが激しい。逆に追い風を受けて伸びているのがオンラインコンテンツであり、久保氏はその舞台となっているPCや携帯機器を指して「勝ち組メディア」と表現。これからのコンテンツ業界がいかにしてこれらのメディアに展開していくかが重要だという認識を披露した。

 そのための戦略として氏は、「顧客のライフルスタイルをチェックすること」を第一に掲げ、TV番組の視聴率の低下傾向の背景に「mixi」、「Yahoo!オークション」、「Amazon」など、ユーザーの生活を変えつつあるWebサービスに注目。氏が手がける「ポケモン」では公式サイトの設営に「億単位のコストをかけてゲームを楽しめるサイトを用意しました」と、実際の取り組みを披露した。

 氏は「ケータイに関して、ポケモンはまだうまくやれてないかもしれません」としながらも、人気TV番組の放映時間帯を狙ってニュースメールを配信するなど、細かい部分からライバルとの戦いを意識しているようだ。久保氏は最後に「コンテンツビジネスは、まず人の心を動かしてからモノが動くという、非常にエモーショナルな産業なのです」と語り、産業界が戦略を立てるうえでまずユーザー心理をつく必要性を強調し、講演を終えた。

近年の傾向として映像・ゲーム業界ともにオンライン化の波が激しい。ゆえにそのデバイスとなるPCと携帯機器への展開が、今後コンテンツ業界が避けることのできないメディア戦略の要諦になるという


 本セッションの最後に行なわれたパネルディスカッションでは、「YouTube」、「ニコニコ動画」などユーザー参加型の動画サイトに無断で掲載される映像作品の扱いについて、講演者各位の寛容な姿勢が印象的だった。

 ANIMAXの滝川氏は「権利者のお考えも尊重してますけど、あまり目くじらを立てることもありません。皆さんが見ていただけるということは作品の活性化につながりますし、こういうものがあるなら積極的に使いたいし、パートナーとしてやっていきたい」とコメント。

 セガの名越氏は自身が熱心なユーザーであるようで、「毎日のように見てますし、ユーザーが作品の匂いを嗅ぎ取って扱いを決めているという、それが新しい形のマーケティングになっているかなと思います。リアルタイムマーケティング的な、ネットをつかった正しい市場調査のやりかたを作り出す必要があります」と、ユーザーコミュニティの動向に強い関心を示していた。

 コンテンツ業界の将来を占う上で、Web技術の進化と社会の対応というものが強いインパクトを持ちうるというのは当然の理解だろう。そのような時代の中で日本のゲームをはじめとするコンテンツが強い競争力を持つためには、本セッションの講演者たちにみられたような柔軟な思考こそが求められるのかもしれない。そんな印象を抱く内容だった。

□JAPAN国際コンテンツフェスティバル実行委員会のホームページ
http://www.cofesta.jp/
□関連情報
【9月19日】「JAPAN国際コンテンツフェスティバル」グランドオープニングセレモニー開催
堀井雄二氏やピカチュウが出席
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070919/cofesta.htm

(2007年9月21日)

[Reported by 佐藤“KAF”耕司]



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