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会場:幕張メッセ国際会議場
聴衆の多くの興味のひとつに「プレイステーション 3の値下げ」についてのアナウンスメントがあると思われる。昨年ちょうど同じタイミングで行なわれた久夛良木健氏の基調講演では電撃的に (発売前であるにもかかわらず) 値下げに関する発表が行なわれ、驚かされた。結論を先に言えば今年は値下げに関する発表はなかった。この理由については8月に行なわれた平井氏への弊誌インタビューで語られているとおりで、「価格は重要だが、まずは遊べるプラットフォームであるべき」とし、ラインナップの強化が急務だという点にある。真意についてはわからないが、値下げについてはまだ発表する機会はあると見ているのだろう。 逆にゲームファンからすれば大きな発表がいくつか行なわれ注目度は高い。特に注目なのは6軸検出システムと振動機能を共存させたプレイステーション 3用新型コントローラ「DUALSHOCK 3」だろう。日本では11月に発売される。また「グランツーリスモ5 Prologue」の発売日が12月13日と発表された。こちらはディスクメディアとダウンロード販売の両方が行なわれることが明らかにされた。 順に追っていくと、基調講演はタイトル通り「プレイステーション」プラットフォーム全般を網羅する形で行なわれた。平井氏はまずはプレイステーション市場全般について言及。市場規模は「ワールドワイドで2兆円の市場となった」とし、コンピュータエンタテインメント市場に貢献できるところまで来たと語った。そしてそんな中で、平井氏が常々口にするよう「原点を見つめ直し、楽しめるソフトの提供していかなければならない」と続けた。 プレイステーション 2については特に欧米を中心に堅調だという。常々「プレイステーション」プラットフォームは息の長い市場とされているが、今回出されたデータによれば、PS1が1億台達成まで11年かかったが、PS2は6年で達成。この8月には1億2千万台を記録したという。さらに発売されたタイトル数は9千タイトルで12億枚という驚異的な数字となっている。最後に平井氏は「プレイステーション 2ビジネスのさらなる普及に邁進する」と締めくくった。 そして、ちょうど新型機が発売された「プレイステーション・ポータブル」に関しては、「携帯型ゲーム機市場は我々にとってはチャレンジャー」としながらも、各国でミリオンセラーが出る市場にまで育ってきた点を強調。先週発売されたPSP-2000同梱パッケージ「クライシス コア -ファイナルファンタジーVII- FFVII 10th Anniversary Limited」は7,777本限定での発売となったが、数時間で完売したという。PSPについて平井氏は「デジタルエンターテインメントが楽しめる、高画質で高機能な携帯デバイスが求められている。圧倒的なパワーを持つCPUをもつPSPはコストダウンをはかりながら積極的に拡大していきたい」と意欲的だ。 PSPの強みのひとつにプレイステーション 3との連携が挙げられるが、ここで松井氏によるリモートプレイのデモンストレーションが行なわれた。PSPからプレイステーション 3にアクセスし、リモートで起動させ、「まいにちいっしょ」を立ち上げてプレイして見せた。もちろんPSPからシャットダウンさせることもできる。今後はインターネット上からプレイステーション 3を起動させ、様々なゲームなどのコンテンツをPSP側に転送しプレイし、その結果をプレイステーション 3側に再度アップ。最後はシャットダウンできるところまでアップデートで対応する予定だという。 またPSPとプレイステーション 3との連携についても若干アイディアが出された。ひとつは、PSPをコントローラとして使用し、手元のPSPのディスプレイに付加情報を表示させる第2のディスプレイとして使用する点や、音声認識コントローラとして使用するアイディア、複数のPSPからアクセスし、スポーツ観戦できるようにしてみたり、これまでは実現不可能だった様々なことが可能になるとした。平井氏はこれを「パーソナルなPSPとパワフルなPS3の融合でこれまでにない未来を思い描くことができる」と表現。アイディア次第でまだまだ可能性が広がる点を示した。 プレイステーション 3については「残念ながら一気呵成の立ち上げはならなかった」と切り出し、その反省材料から現状、ソニー・コンピュータエンタテインメントとしてやらなければならないことを挙げていった。ひとつは様々な場面で平井氏が述べているとおり、原点に返りゲーム機として楽しめるようにソフトウェアのラインナップを充実させることにある。その上でデジタルホームエンタテインメントの中核となるよう進めていくとしている。 ユーザーに潤沢なソフトウェアのラインナップを提供するために、開発会社に制作してもらうことが重要となる。このため制作側とプレイステーション 3用ゲームソフトの制作に関する情報を共有し、改善点の洗い出しや話し合いを行なっているという。制作ツールについては以前SNシステムズを買収しているが、その成果については近々リリースすることができるとしている。一方、開発環境を改善し制作スタジオの開発力の強化を挙げ、9月18日にラリーゲームの制作で知られるevolution studiosとbigBiG studiosを買収したことを明らかにした。このほかにも半導体のシュリンクなどでのコストダウンなどを行ないPS3の事業を加速させたいとしている。 同じく重要なのはユーザーの声だが、その点についてはいち早く反映させたとして、その成果として発表されたのが前述の「DUALSHOCK 3」だ。振動機能を付けて欲しいという声は大きく、それに答えたという。当初が技術的な理由から六軸センサーと振動機能をパックすることが難しかったというが、なんとか乗り越えることができたという。デザイン的な変更点がないと言うことが何より凄い。さらに対応タイトルがすでに9タイトル、東京ゲームショウでも出展されている。今後も増えるのはもちろんのこと、これまでのソフトも、ネットワークによるパッチのダウンロードで、対応ソフトとして楽しめるようになる。 ここでネットワーク関連の発表に移り、明らかになったのが「Home」のサービス開始時期の延期だ。今年中とされていたが、世界中の人が満足する仕様を入れ込むために、開発を続けているという。平井氏は「適当なものを出すよりはこれぞというものまで開発してからリリースする」としており、まだ仕様の策定までには時間がかかりそうだ。平井氏は「来年の春に延期する」と約半年の延期を発表した。 基調講演の全体的な印象としては、これまでバラバラだった細かな内容を有機的に結びつけ、平井氏としてプレイステーション 3をインタラクティブエンタテインメントとしてさらに延ばしていこうという姿勢がはっきりしたといえる。一方で、新しい発表が少なかったとも言える。プレイステーション 3に関して言えば日本での発売から1年経っておらず、まだまだスタート地点に着いたところという言い方もできる。
平井氏はこのあとの質疑応答でゲームについてと聞かれ「私にとってはゲームとはインタラクティブエンタテインメント。そういった意味では広い」としている。つまり「Home」も十分にゲームの範疇となりうるわけだ。さらに平井氏は「グランツーリスモ5」を例に挙げ「画像が綺麗になったことが取り上げられがちだが、それだけではなく運転技術によって車の挙動の変化が違うといった点やゲームの世界観、空気感などに注目して欲しい」とゲーム性の変化が重要だと示している。
東京ゲームショウではそういった点に注目しながら最新のゲームをプレイしてみるのも良いだろう。 □「東京ゲームショウ2007」のホームページ http://tgs.cesa.or.jp/ □ソニー・コンピュータエンタテインメントのページ http://www.scei.co.jp/ □ニュースリリース (PDF形式) http://www.scei.co.jp/corporate/release/pdf/070920a.pdf □関連情報 【9月3日】ソニー・コンピュータエンタテインメント、平井一夫社長兼グループCEOインタビュー 価格付けは重要だが、楽しんで貰えるプラットフォームにすることが先決 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070903/scej.htm 【2006年9月22日】東京ゲームショウ2006・基調講演、久夛良木健SCEI代表取締役社長兼CEO 「プレイステーション」が創り出す夢……いま始まる http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060922/tgsf.htm (2007年9月20日) [Reported by 船津稔]
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