|
会場:ロッテワールド
「Gravity Festival」の期間中に開かれた「ラグナロクオンライン II」の記者懇談会は、今年一押しの新規タイトルということもあって、海外メディアと韓国メディアに向けて別々に時間を取って行なわれた。弊誌では両方の記者懇親会に参加したが、オープンβテスト中の韓国のメディアと、これからサービスが始まる海外のメディアで、その反応に明らかな温度差があり、期待と不安が入り交じる記者懇談会となった。 本稿では、海外向け、韓国向けの両方の記者懇親会と、同作プロデューサー パク・ヨンウー氏の個別取材から、「ラグナロクオンライン II」の最新の開発状況をお伝えしたい。
■ 完成形が見えない「ラグナロクオンライン II」。正式サービスはまだ先か?
ただし、いまのところMMORPGとしての完成度はいまひとつで、韓国では非常に高い注目を集めながらも、早くもユーザー離れが発生している。これはゲームの出来が悪いというわけではなく、MMORPGとしては致命的な弱点である奥行きの浅さゆえ。ポテンシャルとしては非常に高いものを持ちながら、コンテンツアップデートが間に合っていないというのが実状だ。たとえば、7月11日のアップデートでは、ステータスの効果や取得経験値の調整といったバランスチューニングのほか、「クラスの差別化を図るためにスペシャリティーに登録可能なスキルを制限する」といった具合に、ゲームの根幹に関わる部分の仕様変更も続いている。 スペシャリティーシステムとは、各職業で獲得したスキルを他の職業でも継続して使用可能にするシステムで、前職のキャリアを活かし、現職業の能力に幅を持たせる同作の目玉機能のひとつだ。今回の修正では、高レベルのスキルは原則としてその職業の専用スキルとなり、職業の存在が明確化された一方で、全方位的な脱「RO」を目指しながら、実際は逆戻りしてしまっているなど、開発方針のブレが目立つ。 今回の記者懇談会は、日本でのクローズドβテストを8月に控えていることもあり、充実した新要素の発表が期待されたが、発表内容の大半は「ラグナロクオンライン II」をよく知らない海外メディアのために企画コンセプトの紹介に費やされ、今後のアップデート予定として、フレンドリストや縁切りシステム、シナリオクエストなどが紹介されるに留まった。 そのほか、開発の方向性として、同作をクエストベースのMMORPGにすることや、Ellr、Dimagoという2つの新種族、そしてPvPシステムや競技システムなどが示されたが、実装時期についてはまったくの未定で、本当に見せられるものが何もないといった印象だった。 シナリオクエストは、同作の根幹となる要素で、今後の大幅拡充が期待される分野である。基本的な内容は、「ラグナロクオンライン」でもあるようなキャラクタイラストとテキストでイベントが提示され、ストーリーが展開されるというもの。「ラグナロクオンライン」ではNPCに話しかけることで発生していたが、「ラグナロクオンライン II」では、特定の箇所に移動したり、エリアチェンジしたりすることで、イベントシーンが強制的にカットインされるようになっている。「ファイナルファンタジー XI」のクエストシステムをイメージするとわかりやすいだろうか。 クエストの内容は、現状実装されている限りでは、戦闘中のNPCを助けるものが多く、NPCと協力して敵を倒すことで再びイベントシーンがカットインされ物語が進んでいく。この一連のクエストは第三者の干渉を受けず、自分の力だけでクリアする必要がある。このシステムにより、ユーザーは新しいマップやエリアに足を踏み入れるたびに、新たなエピソードが展開されることになる。 パク氏の話によれば、シナリオクエストには多彩なキャラクタが登場し、プレーヤーは徐々に複雑な事件に巻き込まれていくという、日本のコンシューマー向けRPGのような展開が待ち受けているようだ。ビジュアルはイラスト、ストーリーはテキストという見た目はオーソドックスなシステムだが、自分だけのストーリーが堪能できるなかなか凝ったクエストシステムだ。
ところが、現状を見る限りでは、このシナリオクエストの開発構想そのものがボトルネックになっており、新エリアの拡張が思うように進展しない遠因になっているようだ。というのも、このシナリオクエストは、マップと同時並行して設計されており、実装は常にワンセットとなっているからだ。すべてのマップに、シナリオをドライブさせるというゲームデザインは素晴らしいが、シナリオが未完成だからマップが実装されないのでは本末転倒だろう。世界の狭さからユーザーを解放させるためにも、マップの先行実装が望まれるところである。
■ 新種族の実装は時期未定、ビジネスモデルは月額制を希望
まず、新種族の追加については、Ellrの開発が先行して進められており、次に実装されるのはDimagoではなく、Ellrになるという。ただし、実装時期は、ノーマン(人間)のアップデートがまだ十分ではないため、実装時期は確定していないという。一方、Dimagoは、現在仕様の変更を進めており、新たに企画から起こしているという。 Ellrの成長システムは、ノーマンとはまったく異なり、レベルは存在するものの、職業の概念が存在しない。Ellrは職業の代わりに、「魔法の石」を身につけることでスキルを獲得する。Ellrは魔法を得意とする種族という設計で、スキルはすべて魔法となっている。ノーマンが修得できる魔法に比べて、Ellrはさらに高位の魔法を扱えるようだ。 「魔法の石」を一度に装着できる数には制限があり、また「魔法の石」には武器と同じようにレベルの概念も存在する。Ellrはこの「魔法の石」の組み合わせによってキャラクタの個性を発揮する設計になっているということだ。なお、パク氏によれば、新種族の実装を待たずに正式サービスをスタートさせる可能性もあるという。新種族の開発が予想以上に難航している様子がうかがえる。 次にPvPと競技システムについては、「まだ企画段階だが、戦闘だけではない」と意味深な発言をしてくれた。「ラグナロクオンライン II」はインターフェイスにFPSスタイルを採用し、ジャンプやスイミングなど、MMORPGとしては比較的高いアクション要素を備えている。どうやらこれら機能を活かしたコンテンツということになりそうだ。 正式サービス開始時期は、2007年内のスタートを目標に現在開発が進められているという。自社パブリッシュの韓国、北米の2カ国に加え、日本、タイ、シンガポール、マレーシアの6カ国で2007年中のサービスインを見込む。ビジネスモデルは経営判断となるため不明だが、プロデューサーレベルでは月額制で15,000ウォン(約2,000円)ぐらいを希望しているという。
パク氏の脳内には、比較的カッチリしたビジョンがある様子がうかがえたが、NASDAQ上場企業の最重要戦略コンテンツであるため、軽々しく口にできず、「どれもこれも未定ですいません」としきりに恐縮していたのが印象的だった。正直なところ、同作の正式サービスの開始時期は、すでに経営判断に委ねられている感もあるが、優れたポテンシャルを持つタイトルだけにぜひじっくりと腰を据えて成功を目指してもらいたいところだ。
□Gravityのホームページ (2007年7月23日) [Reported by 中村聖司] また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|